拾った剣が精神汚染して来るんだけど!?⇔拾われた剣、主に振り回される!?

ゆうきゅうにいと

文字の大きさ
228 / 305
第7章 ふわふわ空飛ぶ旅は旅行気分?

第008話 マリアンヌの嫉妬と希望

しおりを挟む

 マリアンヌは祝福しながらも微かに嫉妬していた。
 同じ小国でありながらフォシュレーグ王国、リアースレイ精霊王国との国交で亡国の危機から脱しつつあるメメントリア王国に、その友人であるスカーレット姫に。
 しかしそれは今困惑に変わっていた。シャルロッテがタヒュロス王国にも同様の取り引きを持ち掛けて来たからだ。
 リアースレイ精霊王国との交易はメメントリア王国のスカーレット姫がかねてより熱望していたものだ。メメントリア王国はアデール王国北の山間部の高地にあり、その険しさからルードルシア教王国もラージヒルド商業王国も直接的な取り引きの無い国だ。
 敵国であるアデール王国からの輸入品に頼る現状を打破したいと言うのは当然だろう。飛空挺であればどれだけ道が険しかろうが関係無いのだから。

 しかしリアースレイ精霊王国との取り引きには大きな壁がある。先ずは交易品、此方が何を輸出品とするかだ。アデール王国やカントラス王国は宝石を含む鉱石等で賄っているらしい。
 スカーレット姫のメメントリア王国には其れが無いがフォシュレーグ王国が代わりに輸出して賄うそうだ。
 もう一つはルードルシア教王国ラージヒルド商業王国の妨害に対抗出来るかどうかだ。簡単に滅ぼされる様な国では意味が無い。
 だがメメントリア王国は山々に囲まれフォシュレーグ王国としか接していないし、そのフォシュレーグ王国がリアースレイ精霊王国との橋渡しをしようと言うのだ。ルードルシア教王国ラージヒルド商業王国も圧力の掛けようも無い。

 とは言え制限もある。小国であるが故に精霊神社に巫女を常駐させる事は出来ないそうだ。中堅国家でも1人しか居ないのに小国に常駐させてしまうと逆に優遇してしまう事になるからだ。
 飛空挺の数もカントラス王国では4便なのに1便だ。その1便も9割はフォシュレーグ王国が抑える形になるそうだ。だが両国の交易の地となるだけで充分な利益が見込める。
 スカーレット姫としてはそれで充分。隣国がアデール王国から友好的なフォシュレーグ王国に替わり、超大国のリアースレイ精霊王国とも伝が出来たのだ。当面の亡国の危機は去ったと見て良いだろう。
(それは笑みもこぼれるでしょうね)

 私達タヒュロス王国には交易に使えそうなリアースレイ精霊王国の気を引く様な物は無い。その上周辺国はルードルシア教王国ラージヒルド商業王国の影響力の強い国々が囲んでいる。
 だと言うのにそんな私達にリアースレイ精霊王国との取り引きを持ち掛けるなんてどの様な思惑があるのか。
「我が国タヒュロス王国ではアデール王国にカントラス王国、更に南西にグードルス王国がいて其処に入っている教王国商業王国からの圧力で勝手に精霊王国との国交を築く事は出来ないのですよ。下手をすればその圧力で国ごと磨り潰され兼ねない」
 お父様がキリリとした真面目な顔で発言をする。あれで視線が相手の胸部に行っていなければまともに見えるのに、……とても残念です。
「アデール王国を我々が手に入れればカントラス王国にも手を出させないわ。それどころか両国からグードルス王国に手を出さない様に圧力を掛ける事も出来る」
 私がお父様を残念そうに見ているとシャルロッテ様はその不躾な視線を流し、同じ女性の私でも見惚れる様な自信溢れる目で微笑んでそう返しました。

「先ず、カントラス王国に関しては先の王城での魔剣騒動で時間的に余裕が出来たのよ」
「どう言う事でしょうか?」
「あの件で活躍したアイリスちゃんに手を出さない様に、リアースレイ精霊王国がカントラス王国の王族貴族に釘を刺していたと聞くわ。そこには保護者であるビアンカ様にも適用される」
 ダールトン様が頷くのを見て私もお父様に頷いて事実であろう事を伝えます。
「ふーむ、……それで?」
「アデール王国への侵攻戦にビアンカ様の名を使えばカントラス王国は更に手を出し辛くなるわ。此方にはアデール王国への侵攻も報復と言う大義名分があるけど彼等には無いからね。それが無ければとっくにカントラス王国とのアデール王国の領地切り取り合戦になっていたわ」
「私の名前って……」
「あら、アデール王国を出る時にお屋敷を王族に襲撃されたと聞いていますよ? 理由には充分ではないかしら?」
「それは、そうでしょうけど……。はあ、まあ好きになさい」
 嫌そうな顔をしながらも渋々受け入れたビアンカ様に同情してしまうわ。私だって戦争の顔になんてされたくないもの。
 仮に私がカントラス王国で処刑されそうになったからと言っても、私の名を使って戦争等して欲しくない。……まあタヒュロス王国の国力では出来る訳ないでしょうけど。
 それにしてもシャルロッテと言う人は身分は低いらしいですけど、フォシュレーグ王国では発言力が高い様ですね。身分より能力で高い地位に着けると言うのも凄いですが素晴らしいとも思います。こう言う国が強国となっていくのでしょうか。

「しかし1割と言うのはちょっと」
「メメントリア王国のギリアム国王ともそれで既に話しは着いています」
 お父様達が何とかならないかと私の方を見てくる。ですがダールトン様の方を見ても首を横に振るだけです。
 これでは妥当なのか交渉の余地が無いのか判断が出来ません。
「初めは5分を提示されて何とか交渉して1割に持っていった、とでも言えば良いのですわ」
「ユリアンヌ」
「それでも充分此方にも利益のある話しなのでしょう?」
「ええ勿論ですわ」
 お父様がお母様を窘め様としましたけど、お母様はそれを制してシャルロッテ様に続きを促しました。そこで聞く内容は私の見て来たものと重なり充分説得力のある魅力的な話しです。
 リアースレイ精霊王国からの技術、その知識を得られればアデール王国やカントラス王国の王都の様な街並みを造る事が出来るのかも知れません。

 このタヒュロス王国では王都に次ぐこの公爵領ですら公爵邸以外殆んどが木造の平屋建てです。でももし精霊王国の建築技術を得られれば木造でも燃えない高層建築が出来る様になるらしいのです。
 密集していて脇道は馬車も通れない細い通りを広く出来るし、火事の心配も減らす事が出来る。それにその技術を使えば他の町や村の防衛力を上げられるかも知れない。
 あくまでもシャルロッテ様の言う通りアデール王国が崩壊すれば、ですけど。
 生活必需品も陸続きになるフォーシュレーグ王国の方々がリアースレイ精霊王国からの輸入品と引き換えに適正に売買しても良いと言いますし、ビアンカ様も何も言わない事から嘘ではないでしょう。
 リアースレイ精霊王国との国交があるカントラス王国も手を出し辛くなるだろうし、グードルス王国を抑えられれば他の国々はタヒュロス王国程ではないけど小国ばかりです。フォシュレーグ王国と同盟を組めれば手を出して来る事も無くなる筈。
 ――この国の未来は明るくなるかも知れません。


「メメントリア王国のギリアム国王にも今日中にこの子を連れて帰ると伝えてあるので時間は無いのです」
「そ、れは……」
 結局シャルロッテ達は王妹である前領主夫人が来る前にアデール王国崩壊後の国交について一方的に要望を伝えて帰って行った。
 最後に「国交が結ばれたらアイリスちゃんの施術を受ける機会もあるでしょう」と爆弾を落として。
 ユリアンヌとしては何処まで現実味のある話しか分からないが、国交が築かれるのを願うしかなかった。
「マリアンヌ、本当にお疲れ様でした。暫くはゆっくりお休みなさい」
「お母様、……はい。そうさせて頂きますわ」
 マリアンヌはアデール王国で人質生活、カントラス王国で処刑未遂と怒涛の人生を送り漸く実家に帰ったのだが一息つく間もなかったのだ。
(――何だか嵐の後の様な気分です)
「うむ、ご苦労だったなマリアンヌ」
「有り難うございますお父様」
「貴方? ……貴方とは、ゆっくりとお話ししないといけませんね?」
「ん? うむ?」
(お父様はこれから嵐の中に向かうのですね)
 シャルロッテに目を奪われていた父親にマリアンヌの同情は無かった。




しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

俺得リターン!異世界から地球に戻っても魔法使えるし?アイテムボックスあるし?地球が大変な事になっても俺得なんですが!

くまの香
ファンタジー
鹿野香(かのかおる)男49歳未婚の派遣が、ある日突然仕事中に異世界へ飛ばされた。(←前作) 異世界でようやく平和な日常を掴んだが、今度は地球へ戻る事に。隕石落下で大混乱中の地球でも相変わらず呑気に頑張るおじさんの日常。「大丈夫、俺、ラッキーだから」

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

治療院の聖者様 ~パーティーを追放されたけど、俺は治療院の仕事で忙しいので今さら戻ってこいと言われてももう遅いです~

大山 たろう
ファンタジー
「ロード、君はこのパーティーに相応しくない」  唐突に主人公:ロードはパーティーを追放された。  そして生計を立てるために、ロードは治療院で働くことになった。 「なんで無詠唱でそれだけの回復ができるの!」 「これぐらいできないと怒鳴られましたから......」  一方、ロードが追放されたパーティーは、だんだんと崩壊していくのだった。  これは、一人の少年が幸せを送り、幸せを探す話である。 ※小説家になろう様でも連載しております。 2021/02/12日、完結しました。

レベル1の時から育ててきたパーティメンバーに裏切られて捨てられたが、俺はソロの方が本気出せるので問題はない

あつ犬
ファンタジー
王国最強のパーティメンバーを鍛え上げた、アサシンのアルマ・アルザラットはある日追放され、貯蓄もすべて奪われてしまう。 そんな折り、とある剣士の少女に助けを請われる。「パーティメンバーを助けてくれ」! 彼の人生が、動き出す。

俺の好きな人は勇者の母で俺の姉さん! パーティ追放から始まる新しい生活

石のやっさん
ファンタジー
主人公のリヒトは勇者パーティを追放されるが別に気にも留めていなかった。 ハーレムパーティ状態だったので元から時期が来たら自分から出て行く予定だったし、三人の幼馴染は確かに可愛いが、リヒトにとって恋愛対象にどうしても見られなかったからだ。 だから、ただ見せつけられても困るだけだった。 何故ならリヒトの好きなタイプの女性は…大人の女性だったから。 この作品の主人公は転生者ですが、精神的に大人なだけでチートは知識も含んでありません。 勿論ヒロインもチートはありません。 他のライトノベルや漫画じゃ主人公にはなれない、背景に居るような主人公やヒロインが、楽しく暮すような話です。 1~2話は何時もの使いまわし。 亀更新になるかも知れません。 他の作品を書く段階で、考えてついたヒロインをメインに純愛で書いていこうと思います。

現代にダンジョンが現れたので、異世界人とパーティ組んでみた

立風館幻夢/夜野一海
ファンタジー
世界を研究する「普通」の女子大学院生、「猪飼瑠璃(いかいるり)」、彼女は異世界人と友達になることを夢見て、日々研究に勤しんでいた。 ある日、いつものように大学院に向かっている最中、大地震に巻き込まれる。 ……揺れが収まり、辺りを見ると、得体のしれないモンスターと猫獣人が現れた!? あたふたしているうちに、瑠璃はダンジョンの中へと迷い込んでしまう。 その中で、エルフの少女、吸血鬼の少女、サキュバスの女性、ドワーフの男性と出会い、彼らとパーティを組むことになり……。 ※男性キャラも数人登場しますが、主人公及びヒロインに恋愛感情はありません。 ※小説家になろう、カクヨムでも更新中

パーティーを追放されるどころか殺されかけたので、俺はあらゆる物をスキルに変える能力でやり返す

名無し
ファンタジー
 パーティー内で逆境に立たされていたセクトは、固有能力取得による逆転劇を信じていたが、信頼していた仲間に裏切られた上に崖から突き落とされてしまう。近隣で活動していたパーティーのおかげで奇跡的に一命をとりとめたセクトは、かつての仲間たちへの復讐とともに、助けてくれた者たちへの恩返しを誓うのだった。

転落貴族〜千年に1人の逸材と言われた男が最底辺から成り上がる〜

ぽいづん
ファンタジー
ガレオン帝国の名門貴族ノーベル家の長男にして、容姿端麗、眉目秀麗、剣術は向かうところ敵なし。 アレクシア・ノーベル、人は彼のことを千年に1人の逸材と評し、第3皇女クレアとの婚約も決まり、順風満帆な日々だった 騎士学校の最後の剣術大会、彼は賭けに負け、1年間の期限付きで、辺境の国、ザナビル王国の最底辺ギルドのヘブンズワークスに入らざるおえなくなる。 今までの貴族の生活と正反対の日々を過ごし1年が経った。 しかし、この賭けは罠であった。 アレクシアは、生涯をこのギルドで過ごさなければいけないということを知る。 賭けが罠であり、仕組まれたものと知ったアレクシアは黒幕が誰か確信を得る。 アレクシアは最底辺からの成り上がりを決意し、復讐を誓うのであった。 小説家になろうにも投稿しています。 なろう版改稿中です。改稿終了後こちらも改稿します。

処理中です...