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第8章 のろのろ帰還と運命の再会?
第015話 治療とバブルクリーン!?
しおりを挟むそんな地獄の空気もアイリスは気付かない。寝惚けたままだ。
目を閉じて頭をふらふらさせながら自分の状況を思い出していた。
えーっと、……治療、治療だっけか……。怪我人、居るんだっけ?? て言うかいっぱい居るんだよね? この匂いの中でやりたくないな~。
うーん、……皆んな何とかならない?
『……言いたい事は山程あるのじゃが、風魔法で匂いの元を風下になる様にすれば良いのじゃ』
『ネネェが風魔法でやるなのー!』
『あっ、ちょっと待っ!?』
ネネェがそう言った瞬間、リリィが止める間も無く俺の中からごっそりと魔力が抜けて魔法の風が巻き起こった。
「「きゃあっ!?」」
「何だっ!」
それは思いもよらぬ強風で、少女達を吹き飛ばす程ではないが身を屈めて堪えなければならない程であった。
『ネネェやり過ぎなのじゃ! そよ風で良いのじゃ!! 一旦止めるのじゃ!!』
『はいなのー』
その後そよ風に切り替えたのだが、アイリスはいきなり吹いた強風の説明を求められてしまった。
当然アイリスに上手い言い訳など出来る訳もなく、理由と加減を間違えた事を伝えられ白銀騎士隊の面々は更に肩をガックリと落とす事になった。
(それにしてもごっそり魔力を使ったな。アレ上手く絞ったら狼位なら吹き飛ばせるんじゃないかな?)
『出来るなのー!』
『今やるでないぞ!? それより砂を風魔法で操り、相手の顔にでも吹き付ける方が目潰しにもなって魔力の節約にもなるのじゃ』
成る程、格好悪いけど言われてみると確かにそうかも。
「悪いが俺は武装放棄するつもりは無いし、アイリスさんを1人で連れて行かせる事もさせない」
精神的ダメージを引き摺ったまま治療についてデイジー達はレイクと話し合いをしていた。そこで結論づけたのはレイク達の武装放棄と、アイリス1人を怪我人の元に連れて行き、取り敢えず治療をさせてその腕を確認すると言う事だ。
レイクは当然の様に却下。シーラが事前にエミリアーナ姫を含めてもアイリスとユニコーンを最上位として扱う様言い含めてられていたからだ。
「我々はエミリアーナ姫様に付く白銀騎士隊だぞ!?」
「ふん、此方は神に連なる巫女様と聖獣ユニコーンだ。この神聖なる魔力が分からないのか?」
デイジー以外の白銀騎士隊のメンバーも確かにアイリスとユニコーンに神秘的な雰囲気を感じていた。だが高濃度の聖素までは距離があって感じていなかった。
アイリス経由でキーちゃんに送られていたリリィ達の聖素も、今は止めていて魔法を使っていないアイリスは聖素をあまり発していないと言うのもある。
だがだからこそあくまでも自分達は姫と貴族令嬢であり、この国の人間であれば敬うべきだと考えた。だと言うのにそんな自分達に対して余りにも不敬な態度ではないかと憤りを感じていたのだ。
「此方の事情を察してくれると助かるのだがな」
「無理だな。お前達にとっての姫様が俺にとってのアイリスさんだと言えば多少は分かるんじゃないか?」
「……成る程、……確かにそう言われると、何も言えないな」
「副隊長!?」「デイジー貴様!!」
「分かっている! コチラも引けない状況なのは! だからこそ妥協点を探ろうとしてるのだ!?」
何とか間に入ろうとするデイジーだが、彼女だけはレイクが言う神聖な魔力を感じていたのだ。
別にデイジーが鋭い訳ではない。端にレイクから抱っこ紐をほどく手助けをした時に、アイリスに間近に接してその濃密な聖素を感じてしまっていたからだ。
「まずは、本当に治療が出来るのかどうか他の者で確認したいが、魔力にも限りはあるだろう。姫様と同レベルの症状の者の診察だけしてもらうと言うのはどうだ?」
「ふっ、アイリスさんの魔力は膨大だ。スタンピードが起きた折も数十人の重軽傷者をあっという間に治療してしまわれたのだからな」
「何だと!?」
何故かレイクが得意気にアイリスの自慢話をし始める。ルードルシア教王国に目を付けられない様に隠れて暮らしていた事。スタンピードの折、傷付き倒れて行く者達を見捨てられずに力を発揮し、次々と人々を救う様はまるで天使の様であり、その後実際に聖女様などと呼ばれていた事実を。
――因みにあくまでもレイク視点での話しである。
当のアイリスはぽかーんとして聞いている。まるで見知らぬ他人の話しを聞いてるかの様だ。
しかしそれを聞いて騒然としたのは白銀騎士隊の面々だ。聖女の噂は聞いていた。珍し物好き、新し物好きのエミリアーナ姫が面白がる情報として集めさせていたのだ。
当然話しを聞いてエミリアーナは会いに行こうとしたのだが、消息不明と聞いてそれだけの能力を持つ者ならばその内また世に出て来るだろうと一時断念していた。
それが本当に目の前の少女(?)ならと取り敢えず1人、一番重症な者を連れて治療してもらう事になった。姫と同レベルの症状の者をと言っていたがそこまで自信があるならばとなったのだ。
その者は麻痺だけでなく深手を負っていた為、どのみち長くは持たないだろうと思われていた。それがもしかしたら本当に治せるのかも知れない。皆がそんな微かな希望を抱いて連れて来たのだ。
――しかし小さな事件がその前に起きていた。
「バブルクリーン」
風で匂わなくしても汚ならしい姿で近付かれたくはない。アイリスは近付くデイジーに白く濁ったお湯の球を発生させて纏わせた。
「なっ、何だコレはっ!?」
突然の事で咄嗟に逃げようとするデイジーにアイリスはリリィ達に動けなくさせてそのまま発生させた水球で体を洗っていった。
「か、体が動かない!」
「デイジー大丈夫か!?」
そう、この魔法は体を洗う魔法である。リリィ達の指導で漸く実用化に漕ぎ着けたのだ。リリィとしては魔力操作能力の向上の為に実用的な魔法を教えたに過ぎないが、だからこそ苦戦を強いられた。
見えない程の細かい泡をどう作るのか、何故それで綺麗になるのか分からない。結局理論ではなくリリィがアイリスの魔力を操作して感覚で覚えさせる事になったのだが、それでも此処まで時間が掛かってしまった。
白く濁った液体は汚れを吸い、茶色くなっては棄てられ新たに生成されていく。命に別状は無さそうだがその液体に触れても良いのかも分からず周りの少女達はただ周囲を固めるしか出来なかった。
取り敢えず首から下は終わったかな? 後は上だけど、レイクの服を引いて息を止めて貰う様に言ってもらった。いきなりお湯で顔を被ったら呼吸が出来ないもんね。こう言う気遣いが出来るって大人だよね? えっへん。
「プルゥ(リリちゃん偉いー)」
『気遣い出来る者はオナゴに臭い等とは言わんのじゃ』ジト目
『なのー』ジト目
顔から髪の先まで綺麗にし終わった頃に怪我人が連れて来られた。取り敢えずあの娘を治せば良いのか。
そう考えているとデイジーと呼ばれていた女性が近付いて来た。
「済まん、敵意は無い。どうやら綺麗にされた時に鼻の調子も戻ってしまった様でな。流石に仲間の匂いがキツい、とは言えなかったのだ。此方に居させてくれ」
デイジーは心配して寄って来ようとする仲間を何でもないといなし、理由を着けて何とかアイリス達の下にやって来たのだった。申し訳無さそうに言って来るデイジーに、レイクも警戒は緩めないが理解は出来るので一応受け入れた。
『腹の傷と腕の骨折、それに体全体の麻痺じゃな』
先に麻痺を治さないと傷を治すのにも邪素の影響もあって、激しい痛みを感じるらしいので麻痺の治療から入る。
『魔物の麻痺毒が治療し辛いのは魔物の邪素が回復を邪魔しとるからなのじゃ』
『高濃度の霊素たっぷりのネネェ達の魔力なら問題無いなのー!』
普通の回復魔法は本人の治癒力を上げるモノで麻痺や毒には効き辛い。更に人の魔力は聖素寄りとは言え邪素をどうにか出来る程の効果はない。
自身の魔力の自然回復によって邪素を徐々に弱めて行くしか無いのだが、受けた麻痺や毒によって長い闘病生活や後遺症が余儀無くされるらしい。
まあ俺には関係無い話しだな。邪素は聖素の回復魔法を使うと自然に消えちゃうし、麻痺もメメントリア王国のお姫様達の毒に比べれば簡単簡単。
後はちょちょっとお腹の傷を治して、腕の骨折はリリィ達に合わせてもらってくっつけちゃう。これで終わり。
――じゃない、ついでにバブルクリーン!! よし! 綺麗になった、今度こそ終わり!! って先にやれば良かったよ! 臭かった!!
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