拾った剣が精神汚染して来るんだけど!?⇔拾われた剣、主に振り回される!?

ゆうきゅうにいと

文字の大きさ
273 / 305
第8章 のろのろ帰還と運命の再会?

第015話 治療とバブルクリーン!?

しおりを挟む

 そんな地獄の空気もアイリスは気付かない。寝惚けたままだ。
 目を閉じて頭をふらふらさせながら自分の状況を思い出していた。
 えーっと、……治療、治療だっけか……。怪我人、居るんだっけ?? て言うかいっぱい居るんだよね? この匂いの中でやりたくないな~。
 うーん、……皆んな何とかならない?
『……言いたい事は山程あるのじゃが、風魔法で匂いの元を風下になる様にすれば良いのじゃ』
『ネネェが風魔法でやるなのー!』
『あっ、ちょっと待っ!?』
 ネネェがそう言った瞬間、リリィが止める間も無く俺の中からごっそりと魔力が抜けて魔法の風が巻き起こった。
「「きゃあっ!?」」
「何だっ!」
 それは思いもよらぬ強風で、少女達を吹き飛ばす程ではないが身を屈めて堪えなければならない程であった。
『ネネェやり過ぎなのじゃ! そよ風で良いのじゃ!! 一旦止めるのじゃ!!』
『はいなのー』
 その後そよ風に切り替えたのだが、アイリスはいきなり吹いた強風の説明を求められてしまった。
 当然アイリスに上手い言い訳など出来る訳もなく、理由と加減を間違えた事を伝えられ白銀騎士隊の面々は更に肩をガックリと落とす事になった。
(それにしてもごっそり魔力を使ったな。アレ上手く絞ったら狼位なら吹き飛ばせるんじゃないかな?)
『出来るなのー!』
『今やるでないぞ!? それより砂を風魔法で操り、相手の顔にでも吹き付ける方が目潰しにもなって魔力の節約にもなるのじゃ』
 成る程、格好悪いけど言われてみると確かにそうかも。

「悪いが俺は武装放棄するつもりは無いし、アイリスさんを1人で連れて行かせる事もさせない」
 精神的ダメージを引き摺ったまま治療についてデイジー達はレイクと話し合いをしていた。そこで結論づけたのはレイク達の武装放棄と、アイリス1人を怪我人の元に連れて行き、取り敢えず治療をさせてその腕を確認すると言う事だ。
 レイクは当然の様に却下。シーラが事前にエミリアーナ姫を含めてもアイリスとユニコーンを最上位として扱う様言い含めてられていたからだ。
「我々はエミリアーナ姫様に付く白銀騎士隊だぞ!?」
「ふん、此方は神に連なる巫女様と聖獣ユニコーンだ。この神聖なる魔力が分からないのか?」
 デイジー以外の白銀騎士隊のメンバーも確かにアイリスとユニコーンに神秘的な雰囲気を感じていた。だが高濃度の聖素までは距離があって感じていなかった。
 アイリス経由でキーちゃんに送られていたリリィ達の聖素も、今は止めていて魔法を使っていないアイリスは聖素をあまり発していないと言うのもある。

 だがだからこそあくまでも自分達は姫と貴族令嬢であり、この国の人間であれば敬うべきだと考えた。だと言うのにそんな自分達に対して余りにも不敬な態度ではないかと憤りを感じていたのだ。
「此方の事情を察してくれると助かるのだがな」
「無理だな。お前達にとっての姫様が俺にとってのアイリスさんだと言えば多少は分かるんじゃないか?」
「……成る程、……確かにそう言われると、何も言えないな」
「副隊長!?」「デイジー貴様!!」
「分かっている! コチラも引けない状況なのは! だからこそ妥協点を探ろうとしてるのだ!?」
 何とか間に入ろうとするデイジーだが、彼女だけはレイクが言う神聖な魔力を感じていたのだ。
 別にデイジーが鋭い訳ではない。端にレイクから抱っこ紐をほどく手助けをした時に、アイリスに間近に接してその濃密な聖素を感じてしまっていたからだ。
「まずは、本当に治療が出来るのかどうか他の者で確認したいが、魔力にも限りはあるだろう。姫様と同レベルの症状の者の診察だけしてもらうと言うのはどうだ?」
「ふっ、アイリスさんの魔力は膨大だ。スタンピードが起きた折も数十人の重軽傷者をあっという間に治療してしまわれたのだからな」
「何だと!?」
 何故かレイクが得意気にアイリスの自慢話をし始める。ルードルシア教王国に目を付けられない様に隠れて暮らしていた事。スタンピードの折、傷付き倒れて行く者達を見捨てられずに力を発揮し、次々と人々を救う様はまるで天使の様であり、その後実際に聖女様などと呼ばれていた事実を。
 ――因みにあくまでもレイク視点での話しである。
 当のアイリスはぽかーんとして聞いている。まるで見知らぬ他人の話しを聞いてるかの様だ。


 しかしそれを聞いて騒然としたのは白銀騎士隊の面々だ。聖女の噂は聞いていた。珍し物好き、新し物好きのエミリアーナ姫が面白がる情報として集めさせていたのだ。
 当然話しを聞いてエミリアーナは会いに行こうとしたのだが、消息不明と聞いてそれだけの能力を持つ者ならばその内また世に出て来るだろうと一時断念していた。
 それが本当に目の前の少女(?)ならと取り敢えず1人、一番重症な者を連れて治療してもらう事になった。姫と同レベルの症状の者をと言っていたがそこまで自信があるならばとなったのだ。
 その者は麻痺だけでなく深手を負っていた為、どのみち長くは持たないだろうと思われていた。それがもしかしたら本当に治せるのかも知れない。皆がそんな微かな希望を抱いて連れて来たのだ。
 ――しかし小さな事件がその前に起きていた。
「バブルクリーン」
 風で匂わなくしても汚ならしい姿で近付かれたくはない。アイリスは近付くデイジーに白く濁ったお湯の球を発生させて纏わせた。
「なっ、何だコレはっ!?」
 突然の事で咄嗟に逃げようとするデイジーにアイリスはリリィ達に動けなくさせてそのまま発生させた水球で体を洗っていった。
「か、体が動かない!」
「デイジー大丈夫か!?」
 そう、この魔法は体を洗う魔法である。リリィ達の指導で漸く実用化に漕ぎ着けたのだ。リリィとしては魔力操作能力の向上の為に実用的な魔法を教えたに過ぎないが、だからこそ苦戦を強いられた。
 見えない程の細かい泡をどう作るのか、何故それで綺麗になるのか分からない。結局理論ではなくリリィがアイリスの魔力を操作して感覚で覚えさせる事になったのだが、それでも此処まで時間が掛かってしまった。
 白く濁った液体は汚れを吸い、茶色くなっては棄てられ新たに生成されていく。命に別状は無さそうだがその液体に触れても良いのかも分からず周りの少女達はただ周囲を固めるしか出来なかった。

 取り敢えず首から下は終わったかな? 後は上だけど、レイクの服を引いて息を止めて貰う様に言ってもらった。いきなりお湯で顔を被ったら呼吸が出来ないもんね。こう言う気遣いが出来るって大人だよね? えっへん。
「プルゥ(リリちゃん偉いー)」
『気遣い出来る者はオナゴに臭い等とは言わんのじゃ』ジト目
『なのー』ジト目
 顔から髪の先まで綺麗にし終わった頃に怪我人が連れて来られた。取り敢えずあの娘を治せば良いのか。
 そう考えているとデイジーと呼ばれていた女性が近付いて来た。
「済まん、敵意は無い。どうやら綺麗にされた時に鼻の調子も戻ってしまった様でな。流石に仲間の匂いがキツい、とは言えなかったのだ。此方に居させてくれ」
 デイジーは心配して寄って来ようとする仲間を何でもないといなし、理由を着けて何とかアイリス達の下にやって来たのだった。申し訳無さそうに言って来るデイジーに、レイクも警戒は緩めないが理解は出来るので一応受け入れた。

『腹の傷と腕の骨折、それに体全体の麻痺じゃな』
 先に麻痺を治さないと傷を治すのにも邪素の影響もあって、激しい痛みを感じるらしいので麻痺の治療から入る。
『魔物の麻痺毒が治療し辛いのは魔物の邪素が回復を邪魔しとるからなのじゃ』
『高濃度の霊素たっぷりのネネェ達の魔力なら問題無いなのー!』
 普通の回復魔法は本人の治癒力を上げるモノで麻痺や毒には効き辛い。更に人の魔力は聖素寄りとは言え邪素をどうにか出来る程の効果はない。
 自身の魔力の自然回復によって邪素を徐々に弱めて行くしか無いのだが、受けた麻痺や毒によって長い闘病生活や後遺症が余儀無くされるらしい。
 まあ俺には関係無い話しだな。邪素は聖素の回復魔法を使うと自然に消えちゃうし、麻痺もメメントリア王国のお姫様達の毒に比べれば簡単簡単。
 後はちょちょっとお腹の傷を治して、腕の骨折はリリィ達に合わせてもらってくっつけちゃう。これで終わり。
 ――じゃない、ついでにバブルクリーン!! よし! 綺麗になった、今度こそ終わり!! って先にやれば良かったよ! 臭かった!!




しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

俺得リターン!異世界から地球に戻っても魔法使えるし?アイテムボックスあるし?地球が大変な事になっても俺得なんですが!

くまの香
ファンタジー
鹿野香(かのかおる)男49歳未婚の派遣が、ある日突然仕事中に異世界へ飛ばされた。(←前作) 異世界でようやく平和な日常を掴んだが、今度は地球へ戻る事に。隕石落下で大混乱中の地球でも相変わらず呑気に頑張るおじさんの日常。「大丈夫、俺、ラッキーだから」

追放されたので田舎でスローライフするはずが、いつの間にか最強領主になっていた件

言諮 アイ
ファンタジー
「お前のような無能はいらない!」 ──そう言われ、レオンは王都から盛大に追放された。 だが彼は思った。 「やった!最高のスローライフの始まりだ!!」 そして辺境の村に移住し、畑を耕し、温泉を掘り当て、牧場を開き、ついでに商売を始めたら…… 気づけば村が巨大都市になっていた。 農業改革を進めたら周囲の貴族が土下座し、交易を始めたら王国経済をぶっ壊し、温泉を作ったら各国の王族が観光に押し寄せる。 「俺はただ、のんびり暮らしたいだけなんだが……?」 一方、レオンを追放した王国は、バカ王のせいで経済崩壊&敵国に占領寸前! 慌てて「レオン様、助けてください!!」と泣きついてくるが…… 「ん? ちょっと待て。俺に無能って言ったの、どこのどいつだっけ?」 もはや世界最強の領主となったレオンは、 「好き勝手やった報い? しらんな」と華麗にスルーし、 今日ものんびり温泉につかるのだった。 ついでに「真の愛」まで手に入れて、レオンの楽園ライフは続く──!

治療院の聖者様 ~パーティーを追放されたけど、俺は治療院の仕事で忙しいので今さら戻ってこいと言われてももう遅いです~

大山 たろう
ファンタジー
「ロード、君はこのパーティーに相応しくない」  唐突に主人公:ロードはパーティーを追放された。  そして生計を立てるために、ロードは治療院で働くことになった。 「なんで無詠唱でそれだけの回復ができるの!」 「これぐらいできないと怒鳴られましたから......」  一方、ロードが追放されたパーティーは、だんだんと崩壊していくのだった。  これは、一人の少年が幸せを送り、幸せを探す話である。 ※小説家になろう様でも連載しております。 2021/02/12日、完結しました。

現代にダンジョンが現れたので、異世界人とパーティ組んでみた

立風館幻夢/夜野一海
ファンタジー
世界を研究する「普通」の女子大学院生、「猪飼瑠璃(いかいるり)」、彼女は異世界人と友達になることを夢見て、日々研究に勤しんでいた。 ある日、いつものように大学院に向かっている最中、大地震に巻き込まれる。 ……揺れが収まり、辺りを見ると、得体のしれないモンスターと猫獣人が現れた!? あたふたしているうちに、瑠璃はダンジョンの中へと迷い込んでしまう。 その中で、エルフの少女、吸血鬼の少女、サキュバスの女性、ドワーフの男性と出会い、彼らとパーティを組むことになり……。 ※男性キャラも数人登場しますが、主人公及びヒロインに恋愛感情はありません。 ※小説家になろう、カクヨムでも更新中

転落貴族〜千年に1人の逸材と言われた男が最底辺から成り上がる〜

ぽいづん
ファンタジー
ガレオン帝国の名門貴族ノーベル家の長男にして、容姿端麗、眉目秀麗、剣術は向かうところ敵なし。 アレクシア・ノーベル、人は彼のことを千年に1人の逸材と評し、第3皇女クレアとの婚約も決まり、順風満帆な日々だった 騎士学校の最後の剣術大会、彼は賭けに負け、1年間の期限付きで、辺境の国、ザナビル王国の最底辺ギルドのヘブンズワークスに入らざるおえなくなる。 今までの貴族の生活と正反対の日々を過ごし1年が経った。 しかし、この賭けは罠であった。 アレクシアは、生涯をこのギルドで過ごさなければいけないということを知る。 賭けが罠であり、仕組まれたものと知ったアレクシアは黒幕が誰か確信を得る。 アレクシアは最底辺からの成り上がりを決意し、復讐を誓うのであった。 小説家になろうにも投稿しています。 なろう版改稿中です。改稿終了後こちらも改稿します。

俺だけLVアップするスキルガチャで、まったりダンジョン探索者生活も余裕です ~ガチャ引き楽しくてやめられねぇ~

シンギョウ ガク
ファンタジー
仕事中、寝落ちした明日見碧(あすみ あおい)は、目覚めたら暗い洞窟にいた。 目の前には蛍光ピンクのガチャマシーン(足つき)。 『初心者優遇10連ガチャ開催中』とか『SSRレアスキル確定』の誘惑に負け、金色のコインを投入してしまう。 カプセルを開けると『鑑定』、『ファイア』、『剣術向上』といったスキルが得られ、次々にステータスが向上していく。 ガチャスキルの力に魅了された俺は魔物を倒して『金色コイン』を手に入れて、ガチャ引きまくってたらいつのまにか強くなっていた。 ボスを討伐し、初めてのダンジョンの外に出た俺は、相棒のガチャと途中で助けた異世界人アスターシアとともに、異世界人ヴェルデ・アヴニールとして、生き延びるための自由気ままな異世界の旅がここからはじまった。

「クビにされた俺、幸運スキルでスローライフ満喫中」

チャチャ
ファンタジー
突然、蒼牙の刃から追放された冒険者・ハルト。 だが、彼にはS級スキル【幸運】があった――。 魔物がレアアイテムを落とすのも、偶然宝箱が見つかるのも、すべて彼のスキルのおかげ。 だが、仲間は誰一人そのことに気づかず、無能呼ばわりしていた。 追放されたハルトは、肩の荷が下りたとばかりに、自分のためだけの旅を始める。 訪れる村で出会う人々。偶然拾う伝説級の装備。 そして助けた少女は、実は王国の姫!? 「もう面倒ごとはごめんだ」 そう思っていたハルトだったが、幸運のスキルが運命を引き寄せていく――。

地味な薬草師だった俺が、実は村の生命線でした

有賀冬馬
ファンタジー
恋人に裏切られ、村を追い出された青年エド。彼の地味な仕事は誰にも評価されず、ただの「役立たず」として切り捨てられた。だが、それは間違いだった。旅の魔術師エリーゼと出会った彼は、自分の能力が秘めていた真の価値を知る。魔術と薬草を組み合わせた彼の秘薬は、やがて王国を救うほどの力となり、エドは英雄として名を馳せていく。そして、彼が去った村は、彼がいた頃には気づかなかった「地味な薬」の恩恵を失い、静かに破滅へと向かっていくのだった。

処理中です...