拾った剣が精神汚染して来るんだけど!?⇔拾われた剣、主に振り回される!?

ゆうきゅうにいと

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第8章 のろのろ帰還と運命の再会?

第016話 香り高い者達!?

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 アイリスの治療を受けた少女は自身がもう生きてこの迷宮から帰る事は無いだろうと理解していた。下位貴族、男爵家の次女でとある伯爵家の爺の妾にされそうな所をエミリアーナ姫に救い上げられたのだ。
 この様な結末になってしまったのは残念だが、それまでの色々な冒険は辛くもあったが何よりも自由があって楽しかった。
 自分を救ってくれた姫様と共に逝くのであれば、諦めも付く。未練は多くあるが体の不調が自身の状況を受け入れさせた。
 そんな中、仲間達が私を担架に乗せ表に連れ出したのだ。そこで聞いたのは回復魔法の使い手が救出に来たと言う事だ。
 だが今の私の状態はかなり悪い。余程の高位の使い手でも難しいだろう。私は無理だと判断されるだろうが何人かは麻痺は兎も角、怪我は治して貰えるかも知れない。
 麻痺で上手く話せないが、無駄に魔力を使わせるよりもエミリアーナ姫の治療を優先してくれと言いたかった。
 そう考えていたら私の前に来たのは10歳かそこらの幼く美しい少女だった。
 桃色の大きな瞳と腰まである艶やかな長い髪、光を反射するかの様な白い肌。幼いながらも整った顔立ちに体全体から神秘的な雰囲気を醸し出していて、近寄り難くすら感じる。
 その雰囲気に圧され、何も言えずにいると治療が始まってしまった。そして先ず麻痺毒による体の痺れが取り祓われていき驚愕した。それから傷付いたお腹が暖かく感じたと思ったらどんどん痛みが小さくなっていき傷と共に消えてしまった。
 その間僅か数分、もう腹の治療が終わったのかと余りの早さに、いやそもそも治療出来てしまった事に驚いていた。しかし更に突然骨折していた腕が何かで固定されたかの様に動かなくなり、パキパキと音をたてながら腕の痛みも消えていくのを感じた。……ちょっと怖かった。
 麻痺毒や骨折は回復魔法でも時間が掛かるモノ、重症なお腹の傷なんて普通は治療すら出来ないのだ。私も唖然としていたが周囲の仲間も同じであった。
 そのまま唖然として、考えも纏まらない内に何故か白いお湯にくるまれてしまった。ちょっと慌てたがデイジー副隊長が大丈夫と言うのでされるがままにしている。
 茶色くなったりまた白くなったりしているのは汚れを取っているのかな? ちょっと恥ずかしいんだけど? けど抗えないのよね。だって長い事お風呂になんて入れなかったのもあってお湯がとっても気持ち良いんだもん!
 最後に顔と髪まで洗ってもらってスッキリとした所で皆が私の回復を喜び抱き付いて来た。
 気持ちは分かる。
 私も皆んなのその気持ちが嬉しい。
 ――けど臭い! 臭過ぎる!! 助けてデイジー副隊長ぉーーっ!!!


 アイリスによって治療を受けた少女メルティナはデイジーに呼ばれて急いで集団から抜け出して来た。
「あっ! 此処は匂わない??」
「それは良いが、先ず言う事があるだろう」
「ああっ! そうでしたっ!! 治療ありがとうございますお嬢様!! 私もう駄目かと、分かってはいたのですがっ、諦め切れずにっ、……ひっく、ごわがったんでず~~!」
 そう言ってアイリスの前にしゃがみこんでわんわん泣くメルティナに、アイリスはちょっと引きながらも取り敢えず頭を撫でてあげていた。そしてそれを見て一緒に慰めようとしてくる仲間達をデイジーが制してメルティナに優しく語りかけた。
(お嬢様って、俺おじさんだし女装もしてないんだけどな。……あれ? してないよね??)
『一応、……してないのじゃ』
『(男物着てても女の子にしか見えないから)気にしても無駄なのー』
「プルルン(女装は分かんないけどリリちゃんは良い匂いだよー)」
 アイリスはちょっと混乱しかけたけどリリィ達の言葉を信じて落ち着いた。
「ああ、良かったなメルティナ。私も嬉しいぞ。さあエミリアーナ姫様に完治の報告に行ってくれ」
「っはい! ……えっ!?」
「――頼んだぞ? 姫様もお喜びになられるだろう」
 がっしりとメルティナの肩を掴んで笑顔で凄むデイジーに色々と察した。
「……デイジー副隊長も、行かれるのですよね?」
「私は必要無いだろう」
 メルティナはデイジーも巻き込もうとしたがバッサリと断られた。
 そうして匂いの下へ、もといエミリアーナ姫の下へ足取り鈍く戻って行くのだった。

 一番の重傷者が瞬く間に癒されたと聞き第3王女エミリアーナは驚き、実際に元気になったメルティナを見て喜びに震えた。
 回復は絶望的で、仮に助かるとしたら大人数で高位のクランに地上まで運ばれて長期の治療を受ける位しか無いだろうと考えていたのだ。そしてそんなクランが此処には存在しない事も知っていたからこそ、その喜びは計り知れない程大きかった。
「何と言う……僥倖、……魔物の、麻痺毒すらも……癒してしまうとは……、それが、件の……聖女とは……」
「はっ、姫様の徳が為せる業かと」
「重傷者から……、癒させなさい」
「――はっ」
 メルティナと共に付いて来た騎士達がエミリアーナの言葉を聞き動き出す。本当はエミリアーナ姫自身を優先させて欲しい所だが、こう言う事で引かない事は分かっている。
 今のエミリアーナ姫にはその問答すらも辛いだろうとすぐに行動に移して行く。
 自由奔放なだけでなく、そうした高潔さを持ち合わせているからこそ自分達はエミリアーナ姫を尊敬し付いて来たのだ。
「ではっ、私も失礼します!」
「あっ……」
 そう言うとメルティナも敬礼して走り去ってしまった。エミリアーナは聖女の話しを聞きたかったのだが仕方がないと諦めた。
 ――ただ先ほど涙を流しながら喜んでいるメルティナが、若干顔をひきつらせている様に見えたのだけが引っ掛かっていた。


 その後1人1人重傷者から治療していくのだが、アイリスはまずバブルクリーンで身綺麗にしてから治療していく事にした。
(だって臭いんだもん)
 麻痺毒以外はそれ程重症の者は居らず、魔物の邪素特効の聖素の魔力を持つアイリスにとっては簡単な作業であった。
 しかし当然20以上の怪我人を癒し、更に魔力を使って綺麗にしていけば魔力が足りずリリィとネネェに魔力の供給を受ける事になる。
 ――ああ、また……。お馴染みの聖素たっぷり神聖な魔力を注ぎ込まれ、自身の魔力が精神と共に創り変えられていく感覚に侵されていく。
『バブルクリーン等使わなければ、此処まで早く魔力も枯渇せんで済んだのじゃがの』
『ネネェの風魔法もなのー』
 分かってはいたけど匂いに耐えられなかったのだから仕方がない。もう一度同じ状況に陥ったとしてもアイリスは同じ事をしているだろう。
 ――だって臭いんだもん。




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