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第8章 のろのろ帰還と運命の再会?
第038話 家族の、団欒??
しおりを挟む「隣はアネモネの部屋なんだよ。今シュミル達も呼んで来るからな」
繋がった部屋はねぇねの部屋だったらしい。ランディ兄さんはシュミル兄さん達を呼んで来ると言って出て行った。全員隣同士の続き部屋なのだそうだ。
「ねぇねー、ギューッ」
ひとしきり皆んなに撫で回されながら何とかねぇねの所まで行ってギュッと抱き締めてあげる。前に見た時より顔色も良くなっている様だ。
借金の肩替わりをして俺の奴隷となってしまっているが、家族と暮らしていると言う事で安心出来るのだろう。俺がその輪の中に居てあげられなかったのは不服だけど仕方がない。
「ねぇね、ねぇね」
良かった良かった。思わず涙が零れてしまうけどこれも仕方がないよね? せめて声を出さない様にして抱き締めて頬をすりすりする。ねぇねが背中をぽんぽんと擦ってくる。ああーー、余計涙が止まらなくなっちゃったよ。
「ねぇね、ぐすっ、――ねぇねぇ……」
ねぇねの温もりが、吐息が、心臓の鼓動が伝わってくる。ねぇねに触れている。20年離れ離れだったのがこれからは一緒に居られるんだよ? そう思うと嬉しくて胸がいっぱいになっていく。
「くっ、ママにリリちゃん取られた」ボソッ
「懐かれてるわね。やっぱりユミルちゃんの妹なんじゃない?」ボソッ
「そっちの方が現実感がありそう」ボソッ
何かユミル達がボソボソ言ってるけどねぇねとこうして居られるなんて嬉しいな。
ふわわぁ~……、もう、……幸せだなぁ~。
ずっとこうしてたい~。
…………………………。
………………。
ゴン!
「んにゃ!?」
「何時まで妹に抱きついてるんだ!」
!!? なっ、何ごとっ!? 頭を殴られた??
混乱していると襟首を引っ張られてねぇねと引き剥がされてしまった。引っ張った相手を見上げるとシュミル兄さんだ。そう言えば母親が呼んで来るって言ってたな。
「全く、大人としての自覚があるのかお前は?」
シュミル兄さんが呆れた様に言ってくる。
――――ねぇねを助けたのは俺なのに……。
――シュミル兄さんはずっとねぇねと一緒にいた癖に……。
ちょっと抱き付いただけで何で殴られなきゃイケないんだよ!
『お、おい主?』
ズルい、ズルい、ズルい、ズルい、ズルい、ズルい、ズルい、ズルい、ズルい、ズルいぃーーっ!!
俺だって! ずっとねぇねと一緒に居たかったのにぃーー!!
「ううぅーー、うあぁああああーーーーーーん!」
畜生畜生! せっかく我慢してたのにぃいいーー!! もう涙が止まらないじゃんかぁああーーっ!!!
アイリス兄さんが泣き出してしまった。いやシュミル兄さんの所為なんだけどね。私も何時まで抱き付かれていれば良いのか、振り解いて良いのか考えていたから他人事じゃないんだけど。
「うえぇええええーーーーーーん! うえぇーーん!!」
シュミル兄さんの娘のマリエルと私の娘のユミル、それにランディ兄さんの娘のセディナも慰めるけど全然泣き止まない。幼い子供って1度泣き出すと中々止まらないのよね。
「うえぇええええーーーーーん! ねぇね、ねぇねー」
そして大泣きしながら私に抱き付いて来るアイリス兄さんの背中を撫でて慰める。ユミル達が羨ましそうに見てくるんだけど、そんな目で見られても私にはどうしようもないわよ?
「ちょっと、部屋を移すわね」
流石にうるさ過ぎて皆んなに迷惑でしょ。
私も幼い頃からアイリス兄さんの世話をさせられていて、疎ましく思っていた頃もあったのよね。
でも夫が亡くなって借金まみれになって、どうしようもなくなった時に助けてくれたのはアイリス兄さんだった。その感謝は忘れていない、……けど。
「…………はあ」
今はランディ兄さんの部屋のソファーで愚図るアイリス兄さんを抱っこしてなだめている。
ユミルも偶に愚図ってこうしてるけど、最近は無くなってきたと言うのに実の兄をこうしてをなだめる事になるなんて思わなかったわ。
ユミルの成長はやっぱり親戚家族が周りに沢山居る様になって、精神的に安心出来る様になったからかしらね。同年代のマリエルに年上のお姉さんのセディナが居るのも大きいかしら。娘の成長を嬉しく思う反面、全く成長しないアイリス兄さんにどう言う気持ちで接すれば良いのか分からなくなるわ。
――ユミルからあの話しを聞いてからは特に無下に扱えなくなっているのよね。
それはアイリスに助け出されて皆んなでレンリート伯爵領に着いて、一息付いた頃にユミルから聞いた一言が原因だった。
「ねえねえママ、お爺ちゃんに聞いたんだけどリリちゃんってママの為に家を出たって本当?」
「えっ!?」
何それどう言う事!? 私は気が動転したまま父とシュミル兄さんに問いただしたら思わぬ答えが返ってきた。
「あの頃は不作が何年も続いていてねえ。どうしようもなくなって貴女を売る話しをシュミルとしていたのよ。で、次の日にはリリちゃんは黙って家を出ていたのよ?」
「ああ、俺は実際に聞かれたよ。アイリスは自分を売れば良いって言ってたけど、アイツは何をしでかすか分からんからな。家にとばっちりが来かねないし。それで断ったら自分が家を出たら負担が減って、お前を売らずに済むかって聞かれて……」
「そうだって……、答えたの?」
気まずそうに頷く両親2人を見て私は目の前が真っ暗になって気がついたら部屋で寝ていた。ショックで倒れてしまったらしい。
でも話しを思い出すと手足が冷たくなる程に血の気が引いていく。もし私が売られていたら家族と離れて厳しい生活をさせられていただろう。
貧しい村では良くある事だし両親を恨む気にはなれない。けど家を出たアイリス兄さんの事は皆んなが諦めていた。
あの兄さんがまともに生き残れる筈が無い。死ぬより酷い目に遭っているかも知れない。そう思っても探しに行く余裕も無い。私は何も知らずに勝手に家を出たアイリス兄さんを怒りながらももう世話しなくて済むと思ってしまっていた。
――奴隷になってしまったのを助けてくれたのもアイリス兄さんだったと言うのに。
結局私を一番助けてくれたのはアイリス兄さんだった。帰って来たらちゃんと謝ろう、そして少しでも恩を返して行こう。そう心に決めていたのだ。
「大丈夫だよママ、リリちゃんママにぞっこんだもん! 甘やかしてあげれば良いんだよ!」
娘の言葉を聞いて脳裏に娘より幼い見た目と精神をしたままの甘えん坊なアイリス兄さんの姿が蘇った。
「…………そうかも」
アイリスを見に来た子供達を部屋から出した後、アネモネは漸く寝息をたて始めたアイリスを撫でながら、ユミルとの会話を思い出していた。
「アイリスはどうだった?」
「アネモネ叔母さんにソファーで抱っこされながら寝ているわ」
「はあ、とんだ歓迎会になったな」
アイリスが帰って来ると事前に聞いていた皆んなはその為に集まっていたのだ。
「シュミル叔父さんがリリちゃんをイジメるから……」
「うっ! いやアレは、何時までも妹に抱き付いているから。俺がやらなきゃ親父やランディ兄さんがやってただろ!?」
「いや、俺はやらんなあ」
「……俺も」
「いや目を逸らしてるじゃんか! 嘘って丸分かりだからな!?」
「ちょっとパパ! 反省してるの!?」
「うっ! いやいや! だってあんなので泣くとは思わないだろ?」
「何言ってるのよ! 1年振りの家族との再会を殴られて邪魔されたのよ!? 私だって泣くわよ!」
「そりゃマリエルは10歳の子供だからだろ!?」
「歳なんて関係無いわよ! て言うかあんなに小っちゃくて可愛いんだからもっと甘やかしてあげても良いじゃない!」
「小っちゃいって、マリエルと変わらないだろ!?」
「貴方、その辺で謝っておいたらどうかしら? 皆んなの目を見てご覧なさい?」
そこには娘のマリエルだけじゃなくユミルやセディナまでが自分に冷たい視線を向けていた。
「うっ、……いや」
「それに、リリちゃんの機嫌を損ねてあの美容魔法を受けさせて貰えなくなったら、どうするのよ?」
妻のエイミーのその言葉でその場に居た女達の冷たい視線が一気に怒気へと変化した。セドナ村でアイリスの美容魔法を受けていたエイミーにとって、その価値は計り知れないモノとなっていたのだ。
「済みませんでしたあ!!」
その光景を見て父親と長男はやらなくて良かったと安堵していた。
「「――危ねえ……」」
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