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第2部第1章 ひたひた進む新展開?
第003話 幕間 レンリート家(男性限定)の受難、論功行賞前編
しおりを挟むレンリート家の長男レシュレートは妻のピアジェシカと次男ラウレスに第3王女エミリアーナ姫、白銀騎士隊一行と共にフォシュレーグ王国王都の王城に来ていた。
王都に入る際はエミリアーナ姫の白銀騎士隊の先導でアデール王国との戦勝パレードまで行われていた。
彼等が王都に来た目的はアデール王国との戦争の論功行賞である。
活躍したレンリート伯爵家は辺境伯へと陞爵される事となり、そこで長男であるレシュレートに代替わりする事を認めてもらう事になっている。
更にもう1つ、レンリート伯爵領隣りの領地で、アデール王国に一部奪われていたマルトア伯爵領の奪還による褒章として、元マルトア伯爵領を次男のラウレスが与えられ、第3王女エミリアーナ姫を降嫁させ婚約する事も決まっている。
此方の婚約はフォシュレーグ王家からの要請で、空いたマルトア伯爵領をランドリッピ公爵の貴族派に与えない様に影響力を削る目的で決められた。
ついでに王家側の人間で配下を固める事で肥大するレンリート家との繋がりの強化に監視と牽制の意味もある。
フォシュレーグ王国王城、玉座のある謁見の間で式典は行われる。
そこでは王都住まいの貴族達は勿論、全国から当主または代理の者達がこぞって集まって来ている。それは単に呼ばれたと言うだけではなく、派閥同士の示威活動の場になっているからだ。
そんな国中の貴族達が集まる中で、玉座の前に片膝を付きレシュレートとラウレスは頭を下げていた。
――だが2人は褒美を受けると言うのに顔面蒼白だった。
それには理由がある。献上品として持って来た竜の鱗がエミリアーナ姫によって盗まれてしまっていたのだ。レシュレートとラウレスは大いに取り乱しだがそれも仕方のない事だろう。
論功行賞の前、王城に着いたエミリアーナは敵対勢力から献上品を守るには王家の私が適任だと献上品を護衛して来た兵士達を言い包め、白銀騎士隊に自身の研究棟に持って来させていた。
エミリアーナの研究棟には様々な薬品や鉱物植物に魔物資源が所狭しと陳列さらているが、中央の机にはひと際異彩を放つ竜の鱗が鎮座していた。
エミリアーナはそれをどう扱おうかと目をキラキラさせていた。
「姫様。本当によろしかったのでしょうか」
「んん~? コレの事? 良いに決まってるじゃない。ラウレスは私の婚約者、ならアレの持ち物は私の物でしょ? そもそも王家に献上するなら王家の私が扱って当たり前じゃない」
「……それなら献上されてから貰い受けるべきではないでしょうか」
「それじゃ時間が掛かるから面倒なのよ。相手も手前が省けてお得でしょ?」
絶対にそんな事はない。誰もが分かる理屈だが、エミリアーナも分かってやっているので白銀騎士隊では止めようが無い。
――彼女達は心の中でレンリート家に詫びるしかなかった。
レシュレート達は王城で案内された部屋で一息付いてから、ようやくその事態に気付いて大いに慌てていた。
「りゅ、竜の鱗が無い! どう言う事だ!?」
「どっ、どうすんだよ兄上!! 献上品として持って来たんだぞ!?」
「警備は何をやっていたんだ! 城に着くまでは確かにあっただろう! ――はあっ?? 白銀騎士隊が持ち去ったぁ!!!」
「――っ! エミリアーナ姫か!! ヤバいぞ兄上! 取り返せないじゃないか!!」
「くそっ! ……まさか、王家が俺達のメンツを潰そうとしたのか!?」
「落ち着いて2人共。幸か不幸か、急ぎの日程だった所為で献上品についてはまだおおやけになってないわ。今回は褒章を受ける為に呼ばれたのだから献上品は無くても構わないでしょう?」
「ピアジェシカ。それは、……そうだが。王家に何と言えば良いのか」
「下手に突ついてエミリアーナ姫や王家と微妙な関係になるより、無かった事にした方が良いわよ?」
「だが、それでは……」
「その内、今後取り引きが増える精霊王国側のお酒や化粧品でも送れば充分取り返せるわよ」
「……はぁ、ピアジェシカは落ち着いてるな」
「兄上、良いのか?」
「良いも悪いも、どうにもならないだろう」
「そうですね。でもせっかく持って来たのに、……父上に顔向け出来ないですよね」
今回献上品は必ずしも必要なモノでは無かったが、レンリート家側にとって明らかな失態である。
更に王家の姫の愚行は王家側にとっても大失態と言え、そんな状況に追いやってしまった自分達の脇の甘さに責任を感じてしまったのだ。
――顔面蒼白になるのも当然だろう。
「レンリート伯爵家はアデール王国の卑怯な奇襲にあい、我が国の領地が次々と削られて行く中、逆にアデール王国の領地に攻め入り次々と領地を削り取って戦争の流れを変え、攻め入れられていたラーダンス子爵領にまで兵を送りアデール王国兵を排除した」
「レンリート伯爵家が居なければ我が国はもっと深くまで攻め込まれていただろう。アデール王国の領地を削り自領を増やした事も加味し、レンリート伯爵家をレンリート辺境伯家とする。これからもフォシュレーグ王国西の雄として剣となり盾となり国の繁栄に貢献せよ」
「はい! 有り難き幸せにございます。必ずやご期待に沿ってみせます!」
「うむ、……続いて「待った!」ん? ……何だランドリッピ公爵」
「国の防衛など、今の体制で出来ているのであればわざわざ爵位を上げる必要も無いであろう!」
「ラーダンス子爵領だけでなく結果的に見ればマルトア伯爵領まで守ったのだぞ? それなのにマルトア伯爵と同じ伯爵位では見合わんだろう。領地も増えたしな」
「ぐっ!」
ランドリッピ公爵家は特にルードルシア教王国ラージヒルド商業王国を利用して自身の影響力を増して来た家だ。
その2国の影響力を排除して来たレンリート家の台頭は、ルードルシア教王国ラージヒルド商業王国にとってもランドリッピ公爵にとっても面白くないのだ。
しかし王家にとっては寧ろ彼等の方が厄介であり、今回は真っ当な理由があってやり返す事が出来たのだった。
「では続いて我が娘、エミリアーナとレンリート家次男ラウレスとの婚約をこの場にて発表する!」
「なっ!? 正気かゼルファー!!」
「呼び捨てか、随分偉くなったものだなランドリッピ公爵?」
「ぐぐっ、~~失礼、しました」
「レンリート家の軍と国軍を率いて奪われたマルトア伯爵領の領地を取り返した褒美だ」
「そんなものレンリートの奴を辺境伯にしただけで充分であろう!?」
「それだとマルトア伯爵領を取り戻した褒美もレンリート家に与えねばならん。当然そこには取り戻したマルトア伯爵領も含まれるのだぞ?」
「そもそも何故レンリート家の者にマルトア伯爵領の奪還を任せたのだ! 儂の所でも良かろう!!」
「マルトア伯爵はお前の派閥であろうが! 敵国との戦争中に内乱を起こす馬鹿の居る派閥に任せられるか!!」
「ぐっ……、しかしマルトア伯爵領にいたアデール王国軍はその小僧が行く前に瓦解していて勝敗は決していたのであろう? それがそこまでの功績か!?」
「その瓦解をさせていたのもレンリート家であろうが。であるならば同じレンリート家のラウレスが後詰めに兵を動かしてマルトア伯爵領を解放した事もレンリート家の働きとして正しく評価せねばならん」
「だが言った様にマルトア伯爵の領地までレンリート辺境伯家に取り込ませては流石に力が集まり過ぎる。だからこそラウレスにエミリアーナを娶らせ独立させる事となったのだ」
「うぬぅっ、…………しかし、それなら逆にその程度の功績では足りないのでは? まあ、それに見合った献上品でもあれば別ですがな」
王家としてもレンリート家としても醜聞になるので秘匿していたが、ランドリッピ公爵はレンリート家が持ち込んだ献上品があった事を、そしてそれをエミリアーナ姫に強奪されたと言う情報を手にしていた。
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