31 / 278
第1章 うろうろ迷子と運命の出会い?
第031話 武器屋防具屋、にカリンとデート?
しおりを挟む昨日はあれから寮を引き払って傭兵ギルド本館4階、職員用の仮眠室の一屋に移った。荷物は着替えと武器防具くらいだから簡単だったけど、部屋が広くなったなあ。
翌朝カリンに連れられて買い物に行く事に、服はカリンに借りた黄色いワンピースに白のベストを着て上からコートを羽織っている。カリンは160cmある。頭1個半は大きいしミリアーナ並みの巨乳だし当然サイズが合わなくてブカブカだ。
これはこれで目立つだろうけど仕方がない。念の為顔を隠すのに広めのツバがある帽子を被ってる。
ワンピースは何かひらひらしたのが付いているし中にパンツを履いてるけど落ち着かない。膝を紐で結んで足が余り開かない様にさせられてるし歩き辛い。外に出る前から疲れちゃったよ。
「……歩き辛い、です」
「我慢ですよ我慢、女の子のオシャレは我慢との勝負なのです」
そんなの求めて無いんだけど? 女言葉まで強要されるし。
「んふふっ、良いですよリリスちゃん。可愛いです、もうむしゃぶり尽くしたくなりますよ」
「ひっ!」
ぞわぞわって来たよ!?
「ああ、同じ金髪だし可愛い妹が出来た気分です。コレでお姉ちゃんと呼んでくれたら最高なのに」
呼びたくねー、絶対暴走するだろ。て言うか妹か、せめて兄にならないかね? ……ならないか。機嫌が良さそうに俺の周りをクルクル周ってる。目立つ行動はやめた方が良いんじゃないかな?
「最初は剣の鞘を作って貰うんでしたね。まあ仕方がないです。楽しみは後に取っておきましょう」
どうやら服を買ったり食事をしたりしたいらしい。俺にとっては全く楽しみじゃないんだけど。
商店通りを抜けて職人通りに入って行って武器屋に入る。武器屋と言っても種類ごとに一振り二振りあるくらいで置かれてる武器はそう多くない。この町に鍛冶屋は一つしか無いから良し悪しなんて比べようもないからな。
「いらっしゃい、あらあら可愛いらしいお嬢さん達だね。何がお望みかしら?」
お嬢さん扱いを華麗にスルーして俺は布に巻いた精霊剣を出して渡した。ちなみにリリィの意匠は細剣でファンシーなままだった。
『邪剣ぽくならずに良かったではないか』
リリィは機嫌良さそうだな。まあ俺としても本当に邪剣みたいになったら持ってられないから良いけど。
『(受け入れたの、女装させられて色々諦めが付いたのかの?)』
「この、剣の鞘を……」
「コレがアイ……リリスちゃんの剣ですかー。可愛いくて似合ってるけど、こんなの使ってる何て意外です」
俺もこんなの使う事になるなんて意外だったよ? て言うか今アイリスって言おうとしたな。
まあ良い、カリンは前の剣の状態を知らないから見せても大丈夫だろ。エリック達にはカリンがいない所で新しく買ったって事にすれば良いし何とかなるかな。
『この少女向けファンシーな精霊剣を選んで買ったと思われるがの』ボソッ
「あんたぁ、客だよー」
「おうよ、ちょっと待ってな」
「この剣の鞘が欲しいんだってさ」
「おおう、――コイツはまた……偉い、可愛らしいな。で、どんなのが良いんだ?」
「んと、白、……木で……」
金属だと重いからな。色は黒って事にしようかと思ったけど、この剣にはどうあっても合いそうに無いから仕方がない。
「なら4万イェンだな。剣を預けるか型を取っておけば明日の昼には渡せるぞ」
「……型、取る方で」
「毎度あり。んじゃちゃちゃっと型取っちまうからよ」
『今入って来た男、お主が腕を繋げた奴じゃな』
「ふえっ?「んっ?」
ああ、良く覚えてるな。って声出ちゃったじゃねえか。コッチ見てるよどうすんだよ。
『あの時は繋げるだけで傷痕が残っておるハズじゃ。治しておくのじゃ』
何でだよ! 今は俺の命の危機でも何でも無いしやらないぞ!?
『検証の続きなのじゃ。実地でもやっておいた方が良いじゃろ。何、赤く跡が残りそうなのを消すだけなのじゃ。簡単じゃからお主の体内魔力だけで賄えるのじゃ』
て言うか聖女ってバレないように変装してんの忘れたのかよ!?
『あ!』
忘れてたな……どうすんだよコレ。ガッツリ見られてるぞ!?
「もしかしてアンタ、聖「んっ!」ブンブン
「おっ、おう」
「えーっと、リリスちゃんどうしたんですかぁ?」
両手でバツを作って黙らせたけどカリンに気付かれてしまった。武器屋の隅に移動して人目につかないようにした。ああクソ、またリリィの所為で。
『いや、今のは本当にリリィが悪かったのじゃ。すまんなのじゃ』
もう黙ってろ、取り敢えず押し切ってみる。
「えーっと……」
「聖女、違う」
「えっ、でも」
「腕の傷痕……治す、ですね」
「えっ? 今聖女じゃないって……」
「んっ(コクリ)治して良い、ですか?」
「ああイヤ、――この腕の傷痕は聖女様に癒やして貰った俺の誇りだ……です。何時か結婚して子供が出来たら自慢するんで残しておきたい、です」
その聖女偽物だぞ? て言うか男だぞ? 何とも言えない気持ちになるな。
「分かります。ア、リリスちゃんに癒やして貰ったらそうなっちゃいますよね? でもでも、この事は内緒ですからね?」
「おっ、おう」
「リリスちゃんも気持ちは分かるけど正体がバレるような行動は控えて下さいね?」
お前は絶対俺の気持ちを分かってないぞ? その後再度口止めして男と別れて武器屋を出て商店通りに……ってカリンに手を掴まれた。
「リリスちゃん、防具も買わないと」
「ん?」コテン
「今までと同じじゃ何か引っかかる人がいるかも知れないじゃないですか?」
いや、何処にでもありそうな目立たない格好だぞ?
「男が着ける防具としてはありふれてるかも知れないけど、可愛い可愛い女の子のリリスちゃんがそんな格好してたら逆に目立っちゃいますよ?」
ぐっ、無駄な出費が出そう。
「ほらほら納得したら入りましょ。すいませーん防具一式お願いしまーす」
「はぁいどうぞ。2人共かい?」
「いえいえ、コッチの娘です」
「あーらコレまた偉い可愛い子ちゃんだね!」
「そうでしょうとも! うんうん、そうですよね!?」
何故カリンが胸を張る? 強引に隣の防具屋に入れられたら店のおばさんと話し始めてしまった。このお店何時もは旦那の方が応対してくるのに女って事にしてるからか?
「それでですね。この娘が着けて目立たなくて、ちょおーっと可愛い感じになる防具ありますか?」
「うーん、お嬢ちゃんはあんまり重いのは無理だろ? 小さいし子供用で、要所要所を守る。頭はコレ、に胸当て……と胴周りをコレで下は……ってこんな感じかね」
「全然可愛くないですぅ。何ですかコレ!」
「可愛い防具なんて置いといてポンポン売れると思うのかい? それも子供用、そりゃお嬢ちゃんには似合うだろうさ。けど大抵の女の子達も尻込みして避けてくよ」
おばさんがため息を吐きながら正論を吐いていく。でもコレなら今持ってるのとたいして変わらないんだよな。――て言うか今まで着けてた防具も子供用だったのか? 何気にそれが1番ショックなんだけど!?
『――自分が可愛い防具が似合うのは否定せんのじゃな』
「うぬぬ、あれ? コレ金属?」
「ああ、防具は基本金属性だよ。音を消す為に魔狼の皮で覆ってるのさ」
「でも皆んな同じようなデザインじゃ面白く無いと思いません?」
「作り手の手間を考えなよ。同じ形だから作り手もそれを作るのに特化した技術が身に付くってもんなのさ」
今の形になったのも理由があるって事だよな。
「まあ、とは言っても男女で多少の違いがあるんだけどね」
「そうなんですか?」
「まず胸当てが違うね。女性の方が深く丸みがあるし裏に衝撃吸収の為に布を多く入れてある。他にも全体的に丸みを帯びた形が多いかね。男物と見比べれば良く分かるよ」
「おお、本当だ。こうして見るとちょっと可愛くない事も、ないかも?」
「オシャレしたいなら高くつくけど特注にするか自分で改造するんだね。人によっては色々やってるのもいるみたいだし、冒険者はそういう事をしてるのも多いしね?」
確かに奇抜な格好したヤツとかいるよ。でもそんなモン参考にすんなよ?
2
あなたにおすすめの小説
万物争覇のコンバート 〜回帰後の人生をシステムでやり直す〜
黒城白爵
ファンタジー
異次元から現れたモンスターが地球に侵攻してくるようになって早数十年。
魔力に目覚めた人類である覚醒者とモンスターの戦いによって、人類の生息圏は年々減少していた。
そんな中、瀕死の重体を負い、今にもモンスターに殺されようとしていた外神クロヤは、これまでの人生を悔いていた。
自らが持つ異能の真価を知るのが遅かったこと、異能を積極的に使おうとしなかったこと……そして、一部の高位覚醒者達の横暴を野放しにしてしまったことを。
後悔を胸に秘めたまま、モンスターの攻撃によってクロヤは死んだ。
そのはずだったが、目を覚ますとクロヤは自分が覚醒者となった日に戻ってきていた。
自らの異能が構築した新たな力〈システム〉と共に……。
魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。
カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。
だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、
ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。
国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。
そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。
【アイテム分解】しかできないと追放された僕、実は物質の概念を書き換える最強スキルホルダーだった
黒崎隼人
ファンタジー
貴族の次男アッシュは、ゴミを素材に戻すだけのハズレスキル【アイテム分解】を授かり、家と国から追放される。しかし、そのスキルの本質は、物質や魔法、果ては世界の理すら書き換える神の力【概念再構築】だった!
辺境で出会った、心優しき元女騎士エルフや、好奇心旺盛な天才獣人少女。過去に傷を持つ彼女たちと共に、アッシュは忘れられた土地を理想の楽園へと創り変えていく。
一方、アッシュを追放した王国は謎の厄災に蝕まれ、滅亡の危機に瀕していた。彼を見捨てた幼馴染の聖女が助けを求めてきた時、アッシュが下す決断とは――。
追放から始まる、爽快な逆転建国ファンタジー、ここに開幕!
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
ブラックギルドマスターへ、社畜以下の道具として扱ってくれてあざーす!お陰で転職した俺は初日にSランクハンターに成り上がりました!
仁徳
ファンタジー
あらすじ
リュシアン・プライムはブラックハンターギルドの一員だった。
彼はギルドマスターやギルド仲間から、常人ではこなせない量の依頼を押し付けられていたが、夜遅くまで働くことで全ての依頼を一日で終わらせていた。
ある日、リュシアンは仲間の罠に嵌められ、依頼を終わらせることができなかった。その一度の失敗をきっかけに、ギルドマスターから無能ハンターの烙印を押され、クビになる。
途方に暮れていると、モンスターに襲われている女性を彼は見つけてしまう。
ハンターとして襲われている人を見過ごせないリュシアンは、モンスターから女性を守った。
彼は助けた女性が、隣町にあるハンターギルドのギルドマスターであることを知る。
リュシアンの才能に目をつけたギルドマスターは、彼をスカウトした。
一方ブラックギルドでは、リュシアンがいないことで依頼達成の効率が悪くなり、依頼は溜まっていく一方だった。ついにブラックギルドは町の住民たちからのクレームなどが殺到して町民たちから見放されることになる。
そんな彼らに反してリュシアンは新しい職場、新しい仲間と出会い、ブッラックギルドの経験を活かして最速でギルドランキング一位を獲得し、ギルドマスターや町の住民たちから一目置かれるようになった。
これはブラックな環境で働いていた主人公が一人の女性を助けたことがきっかけで人生が一変し、ホワイトなギルド環境で最強、無双、ときどきスローライフをしていく物語!
A級パーティから追放された俺はギルド職員になって安定した生活を手に入れる
国光
ファンタジー
A級パーティの裏方として全てを支えてきたリオン・アルディス。しかし、リーダーで幼馴染のカイルに「お荷物」として追放されてしまう。失意の中で再会したギルド受付嬢・エリナ・ランフォードに導かれ、リオンはギルド職員として新たな道を歩み始める。
持ち前の数字感覚と管理能力で次々と問題を解決し、ギルド内で頭角を現していくリオン。一方、彼を失った元パーティは内部崩壊の道を辿っていく――。
これは、支えることに誇りを持った男が、自らの価値を証明し、安定した未来を掴み取る物語。
戦場の英雄、上官の陰謀により死亡扱いにされ、故郷に帰ると許嫁は結婚していた。絶望の中、偶然助けた許嫁の娘に何故か求婚されることに
千石
ファンタジー
「絶対生きて帰ってくる。その時は結婚しよう」
「はい。あなたの帰りをいつまでも待ってます」
許嫁と涙ながらに約束をした20年後、英雄と呼ばれるまでになったルークだったが生還してみると死亡扱いにされていた。
許嫁は既に結婚しており、ルークは絶望の只中に。
上官の陰謀だと知ったルークは激怒し、殴ってしまう。
言い訳をする気もなかったため、全ての功績を抹消され、貰えるはずだった年金もパー。
絶望の中、偶然助けた子が許嫁の娘で、
「ルーク、あなたに惚れたわ。今すぐあたしと結婚しなさい!」
何故か求婚されることに。
困りながらも巻き込まれる騒動を通じて
ルークは失っていた日常を段々と取り戻していく。
こちらは他のウェブ小説にも投稿しております。
能力『ゴミ箱』と言われ追放された僕はゴミ捨て町から自由に暮らすことにしました
御峰。
ファンタジー
十歳の時、貰えるギフトで能力『ゴミ箱』を授かったので、名門ハイリンス家から追放された僕は、ゴミの集まる町、ヴァレンに捨てられる。
でも本当に良かった!毎日勉強ばっかだった家より、このヴァレン町で僕は自由に生きるんだ!
これは、ゴミ扱いされる能力を授かった僕が、ゴミ捨て町から幸せを掴む為、成り上がる物語だ――――。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる