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第1章 うろうろ迷子と運命の出会い?
第030話 幕間 サージェス達の裏話
しおりを挟むアイリスが連れ去られた後、仕切り直して俺達は話し合いを続けた。
「それにしても冒険者のモラルってどうなってんだろうな」
「隠れてたのはゴブリンくらいなら普通に狩れる1人前の奴等が多かったって聞くしな」
「死にそうになって隠れるんならまだしも……な。生き汚いっちゅうか何ちゅうか」
「最悪村の柵を使っての防衛戦も想定していたけど、リリスちゃんのお陰でしないで済んだわね」
「ああ、確かに……リリスが冒険者を見つけてなければそうなっていた可能性もあっただろうな」
「そうなれば残ってた村人は逃がせたか分からんし、畑は壊滅、家だって被害は免れなかっただろうな」
「まあお陰でサージェスの案が上手く行かなかったけど」
「俺の案じゃねえよ! マジで止めてくれよなギルド長!!」
本当この人は面白がってるんだろうが俺からしたら全然笑えんぞ。
「でもまあこれから冒険者ギルドの評判は下がるし、冒険者を此方に引き込めれば結果的に冒険者の数を減らせる上に傭兵の数も増やせるから返って良かったかもしれないわね」
「どう言う事です?」
エリックがギルド長に問い掛けるけど余計な事聞くなよ? 巻き込まれるぞ? て言うか俺が此処にいる必要無いだろ? 帰りたいんだけど?
「今回のスタンピードは冒険者の無選別な魔物の乱獲の所為でしょ? 此方はずっと前から警告してたのよ。それが広まればどうなるかしら? 冒険者はやり辛いでしょうね?」
まあ町の評判は駄々下がりだろうな。
「それでコッチに流れて来ると?」
「ええ、まあ選別も教育も必要でしょうけど、上手く乗り切れればこの町での影響力も大きくなるわ」
冒険者を盾にしようとしたり取り込もうとしたり良く楽しそうに出来るな。人の生き死にを勘定に入れるなんて俺には真似出来ん。
「長年冒険者でやって来た奴等が傭兵になって簡単に馴染めるかね?」
「無理だな、俺達が今更冒険者になれるかって言ったら無理なのと一緒だ」
エリックとレイクに激しく同意だ。俺も元は冒険者だったが傭兵業に慣れるのはそれなりに大変だった。ランクが上がる程知識が必要になるし脳筋冒険者共には無理だろう。
「それに高ランク程自分のランクを惜しんで移籍しないと思うしな。俺が冒険者ギルドの人間なら仲間意識を高めて移籍する裏切り者を出し辛くするくらいはするだろうな」
「流石サージェス、腹黒いわね」
「……忘れてくれ」
藪蛇だった。
「私も簡単に行くとは思ってないわよ。高ランクだからって特別扱いするつもりも無いしね」
「でもある程度配慮しないと高ランクは誰も来ないって事になるんじゃないか?」
「今回のメインターゲットはこれから冒険者になろうって子達よ」
机上の空論だな。まあギルド長は頭を使う仕事がメインだから分からんか。
「……ギルド長、多分それも難しいぞ?」
「あらサージェス、どうしてかしら?」
「まず傭兵ってのがまだまだ知名度が低い。今回の件で多少は知られるだろうがあくまで遠い存在としてだろう。その上で冒険者の高ランクがそのまま残れば低ランクの奴等も移籍し辛くなる。冒険者が変わらず残っていれば新人も安心して冒険者になるだろうさ」
「ああ、俺もそう思うな。今まで何人か傭兵ギルドに誘ったけど、周りの奴等が身勝手な仲間意識を出して邪魔をして来るんだ。泥舟と分かっていても残ってしまうだろうな」
「成る程、ね。――とするとどうしましょっか」
「まあそれでも理に聡い奴等は何人かコッチに来ると思うけどな」
「……ん~、聖女様は傭兵でしたって事でどうかしら?」
「「「「!!!?」」」」
「……本気かギルド長?」
アイリスの事をバラす気か!?神聖教会が黙ってないぞ? 流石に相手が悪過ぎる。
「冗談に決まってるでしょ。リスクが高過ぎるわよ」
「ふう、……脅かすなよ。正気を疑ったぞ」
冗談に思えないんだよアンタの場合は! 目的の為なら手段を選らばなそうだからな! アンタならやりかねないと思えてしまうんだよ!?
「ふふ、まあ良いわ。今回は冒険者ギルドの評判を落としてウチが上がったって事で納めましょう。まあ他にも色々やりようはあるしね」
これからまだ何かやる気か!? 正気かよ? マジで関わりたくねえんだけど!!
「アイリスちゃんがこのライハルト子爵領の起爆剤になりそうよね」
ああ、アイリスの聖女問題はまだまだこれからか。それをどうするつもりなんだか。関わりたくねー。
「ギルド長、アンタは今回のスタンピードで冒険者を人柱にして数を減らすつもりだったのか?」
エリックが怖い顔をしてギルド長に迫って行った。オイオイ止めてくれよ、それはもう終わった事だろ。
「一石二鳥でしょ?」
「ギルド長っ!!」
「何かしら?」
エリックが激昂してるけどギルド長は意に介さずニコニコしてる。すっげえ怖い、何で俺はこんな所にいるんだ? ケンカなら俺のいない所でやってくれよ。
「……やって良い事と悪い事があるんだぞ?」
「そうね?」
「アンタはっ!」
「じゃあ聞くけどどうすれば良かったと言うの? 教えてくれるかしらエリックさん?」
「……くっ」
――まあ、そうなるよな。なんだかんだ言って他に方法があるかって言うと俺じゃ後から考えてもこれが最善だったとしか思えん。
「エリック、俺から見てもギルド長は出来る手は打っていたと思うぞ。町長や冒険者ギルドのギルド長を動かしたのも、レイク達みたいな凄腕を呼び寄せていたのも俺等には出来ない仕事だ。今回のスタンピードの1番の功労者はこのギルド長だろう」
まあ言い方はアレだしぶっちゃけ怖いから関わりたく無いんだけど。
「冒険者、兵士、村人、何処かを犠牲にするとなったら原因を作った冒険者になるでしょう。まあアイリスさんのお陰でほとんど犠牲者は出なかったですけど」
「副ギルド長」
「それに、想定外の事もあった。予想では村の南東側のゴブリン集落から夏頃にスタンピードが発生すると考えていたんだ。だからその前、春頃に大規模な狩りを行う予定だったんだ。スタンピードを起こさせない為にな」
「サージェス。そうか、予防まで考えていたのか……」
「西に流れて魔狼の縄張りで大繁殖してるとは思わなかったがな」
「ふふ、皆んな私の事をそんなに理解してくれるなんて嬉しいわ。今回は色々な所から搾り取れそうだし美味しい仕事だったわね」
言い方ぁーーっ!! 煽ってんの? 煽ってんのか!?
「さて、私は暫く此処を離れるからレーナ、宜しくね?」
「はい、お任せを」
副ギルド長、レーナって名前だったのか。
「どっか行くのか?」
「ええ、ちょっとエルビアにね」
「エルビア?」
「エルビアの町がシラルの町と同様に動いていればスタンピードに間に合っていた筈だったんですよね」
「あっちの傭兵ギルドのギルド長が向こうの町を説得出来なくてね? 結局ウチがお金を出す事で向こうの兵士と冒険者を後詰めとしてだけど何とか動かせたのよ?」
「エルビアの兵士と冒険者にウチが金を出すのか?」
意外……でもないか。このギルド長は必要と思った事は泥を被ってでもやりそうだ。
「逆にたっぷり搾り取ってやるわよ。ついでに向こうの傭兵ギルドのギルド長も教育して来るわ」
うん、――まあコッチの方がよりこのギルド長らしいな。教育がお仕置き(拷問)に聞こえたのは勘違いじゃ無いだろう、ご愁傷様だな。
「そう言えばレイクやサージェスは何時までコッチに居るんだ?」
「俺は一旦村に戻って残った東側の調査をする。まあゴブリンは無いと思うがな、念の為だ。それが終わったら元の町に戻るよ」
「俺はサージェスのその調査次第だからもう暫く此処に残る事になるな」
「他に呼んだ人達もサージェスの調査次第ね。後レイク、私の護衛でエルビアに付いて来て欲しいんだけど」
「仲間に聞いておきます」
「お願いね」
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