拾った剣が精神汚染して来るんだけど!?⇔拾われた剣、主に振り回される!?

ゆうきゅうにいと

文字の大きさ
30 / 278
第1章 うろうろ迷子と運命の出会い?

第030話 幕間 サージェス達の裏話

しおりを挟む

 アイリスが連れ去られた後、仕切り直して俺達は話し合いを続けた。 
「それにしても冒険者のモラルってどうなってんだろうな」
「隠れてたのはゴブリンくらいなら普通に狩れる1人前の奴等が多かったって聞くしな」
「死にそうになって隠れるんならまだしも……な。生き汚いっちゅうか何ちゅうか」
「最悪村の柵を使っての防衛戦も想定していたけど、リリスちゃんのお陰でしないで済んだわね」
「ああ、確かに……リリスが冒険者を見つけてなければそうなっていた可能性もあっただろうな」
「そうなれば残ってた村人は逃がせたか分からんし、畑は壊滅、家だって被害は免れなかっただろうな」
「まあお陰でサージェスの案が上手く行かなかったけど」
「俺の案じゃねえよ! マジで止めてくれよなギルド長!!」
 本当この人は面白がってるんだろうが俺からしたら全然笑えんぞ。
 
「でもまあこれから冒険者ギルドの評判は下がるし、冒険者を此方に引き込めれば結果的に冒険者の数を減らせる上に傭兵の数も増やせるから返って良かったかもしれないわね」
「どう言う事です?」
 エリックがギルド長に問い掛けるけど余計な事聞くなよ? 巻き込まれるぞ? て言うか俺が此処にいる必要無いだろ? 帰りたいんだけど?
「今回のスタンピードは冒険者の無選別な魔物の乱獲の所為でしょ? 此方はずっと前から警告してたのよ。それが広まればどうなるかしら? 冒険者はやり辛いでしょうね?」
 まあ町の評判は駄々下がりだろうな。
「それでコッチに流れて来ると?」
「ええ、まあ選別も教育も必要でしょうけど、上手く乗り切れればこの町での影響力も大きくなるわ」
 冒険者を盾にしようとしたり取り込もうとしたり良く楽しそうに出来るな。人の生き死にを勘定に入れるなんて俺には真似出来ん。
「長年冒険者でやって来た奴等が傭兵になって簡単に馴染めるかね?」
「無理だな、俺達が今更冒険者になれるかって言ったら無理なのと一緒だ」
 エリックとレイクに激しく同意だ。俺も元は冒険者だったが傭兵業に慣れるのはそれなりに大変だった。ランクが上がる程知識が必要になるし脳筋冒険者共には無理だろう。
「それに高ランク程自分のランクを惜しんで移籍しないと思うしな。俺が冒険者ギルドの人間なら仲間意識を高めて移籍する裏切り者を出し辛くするくらいはするだろうな」
「流石サージェス、腹黒いわね」
「……忘れてくれ」
 藪蛇だった。

「私も簡単に行くとは思ってないわよ。高ランクだからって特別扱いするつもりも無いしね」
「でもある程度配慮しないと高ランクは誰も来ないって事になるんじゃないか?」
「今回のメインターゲットはこれから冒険者になろうって子達よ」
 机上の空論だな。まあギルド長は頭を使う仕事がメインだから分からんか。
「……ギルド長、多分それも難しいぞ?」
「あらサージェス、どうしてかしら?」
「まず傭兵ってのがまだまだ知名度が低い。今回の件で多少は知られるだろうがあくまで遠い存在としてだろう。その上で冒険者の高ランクがそのまま残れば低ランクの奴等も移籍し辛くなる。冒険者が変わらず残っていれば新人も安心して冒険者になるだろうさ」
「ああ、俺もそう思うな。今まで何人か傭兵ギルドに誘ったけど、周りの奴等が身勝手な仲間意識を出して邪魔をして来るんだ。泥舟と分かっていても残ってしまうだろうな」
「成る程、ね。――とするとどうしましょっか」
「まあそれでも理に聡い奴等は何人かコッチに来ると思うけどな」
「……ん~、聖女様は傭兵でしたって事でどうかしら?」
「「「「!!!?」」」」
「……本気かギルド長?」
 アイリスの事をバラす気か!?神聖教会が黙ってないぞ? 流石に相手が悪過ぎる。
「冗談に決まってるでしょ。リスクが高過ぎるわよ」
「ふう、……脅かすなよ。正気を疑ったぞ」
 冗談に思えないんだよアンタの場合は! 目的の為なら手段を選らばなそうだからな! アンタならやりかねないと思えてしまうんだよ!?
「ふふ、まあ良いわ。今回は冒険者ギルドの評判を落としてウチが上がったって事で納めましょう。まあ他にも色々やりようはあるしね」
 これからまだ何かやる気か!? 正気かよ? マジで関わりたくねえんだけど!!

「アイリスちゃんがこのライハルト子爵領の起爆剤になりそうよね」
 ああ、アイリスの聖女問題はまだまだこれからか。それをどうするつもりなんだか。関わりたくねー。
「ギルド長、アンタは今回のスタンピードで冒険者を人柱にして数を減らすつもりだったのか?」
 エリックが怖い顔をしてギルド長に迫って行った。オイオイ止めてくれよ、それはもう終わった事だろ。
「一石二鳥でしょ?」
「ギルド長っ!!」
「何かしら?」
 エリックが激昂してるけどギルド長は意に介さずニコニコしてる。すっげえ怖い、何で俺はこんな所にいるんだ? ケンカなら俺のいない所でやってくれよ。
「……やって良い事と悪い事があるんだぞ?」
「そうね?」
「アンタはっ!」
「じゃあ聞くけどどうすれば良かったと言うの? 教えてくれるかしらエリックさん?」
「……くっ」
 ――まあ、そうなるよな。なんだかんだ言って他に方法があるかって言うと俺じゃ後から考えてもこれが最善だったとしか思えん。
「エリック、俺から見てもギルド長は出来る手は打っていたと思うぞ。町長や冒険者ギルドのギルド長を動かしたのも、レイク達みたいな凄腕を呼び寄せていたのも俺等には出来ない仕事だ。今回のスタンピードの1番の功労者はこのギルド長だろう」
 まあ言い方はアレだしぶっちゃけ怖いから関わりたく無いんだけど。
「冒険者、兵士、村人、何処かを犠牲にするとなったら原因を作った冒険者になるでしょう。まあアイリスさんのお陰でほとんど犠牲者は出なかったですけど」
「副ギルド長」
「それに、想定外の事もあった。予想では村の南東側のゴブリン集落から夏頃にスタンピードが発生すると考えていたんだ。だからその前、春頃に大規模な狩りを行う予定だったんだ。スタンピードを起こさせない為にな」
「サージェス。そうか、予防まで考えていたのか……」
「西に流れて魔狼の縄張りで大繁殖してるとは思わなかったがな」
「ふふ、皆んな私の事をそんなに理解してくれるなんて嬉しいわ。今回は色々な所から搾り取れそうだし美味しい仕事だったわね」
 言い方ぁーーっ!! 煽ってんの? 煽ってんのか!?

「さて、私は暫く此処を離れるからレーナ、宜しくね?」
「はい、お任せを」
 副ギルド長、レーナって名前だったのか。
「どっか行くのか?」
「ええ、ちょっとエルビアにね」
「エルビア?」
「エルビアの町がシラルの町と同様に動いていればスタンピードに間に合っていた筈だったんですよね」
「あっちの傭兵ギルドのギルド長が向こうの町を説得出来なくてね? 結局ウチがお金を出す事で向こうの兵士と冒険者を後詰めとしてだけど何とか動かせたのよ?」
「エルビアの兵士と冒険者にウチが金を出すのか?」
 意外……でもないか。このギルド長は必要と思った事は泥を被ってでもやりそうだ。
「逆にたっぷり搾り取ってやるわよ。ついでに向こうの傭兵ギルドのギルド長も教育して来るわ」
 うん、――まあコッチの方がよりこのギルド長らしいな。教育がお仕置き(拷問)に聞こえたのは勘違いじゃ無いだろう、ご愁傷様だな。
「そう言えばレイクやサージェスは何時までコッチに居るんだ?」
「俺は一旦村に戻って残った東側の調査をする。まあゴブリンは無いと思うがな、念の為だ。それが終わったら元の町に戻るよ」
「俺はサージェスのその調査次第だからもう暫く此処に残る事になるな」
「他に呼んだ人達もサージェスの調査次第ね。後レイク、私の護衛でエルビアに付いて来て欲しいんだけど」
「仲間に聞いておきます」
「お願いね」




しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ゲームコインをザクザク現金化。還暦オジ、田舎で世界を攻略中

あ、まん。@田中子樹
ファンタジー
仕事一筋40年。 結婚もせずに会社に尽くしてきた二瓶豆丸。 定年を迎え、静かな余生を求めて山奥へ移住する。 だが、突如世界が“数値化”され、現実がゲームのように変貌。 唯一の趣味だった15年続けた積みゲー「モリモリ」が、 なぜか現実世界とリンクし始める。 化け物が徘徊する世界で出会ったひとりの少女、滝川歩茶。 彼女を守るため、豆丸は“積みゲー”スキルを駆使して立ち上がる。 現金化されるコイン、召喚されるゲームキャラたち、 そして迫りくる謎の敵――。 これは、還暦オジが挑む、〝人生最後の積みゲー〟であり〝世界最後の攻略戦〟である。

万物争覇のコンバート 〜回帰後の人生をシステムでやり直す〜

黒城白爵
ファンタジー
 異次元から現れたモンスターが地球に侵攻してくるようになって早数十年。  魔力に目覚めた人類である覚醒者とモンスターの戦いによって、人類の生息圏は年々減少していた。  そんな中、瀕死の重体を負い、今にもモンスターに殺されようとしていた外神クロヤは、これまでの人生を悔いていた。  自らが持つ異能の真価を知るのが遅かったこと、異能を積極的に使おうとしなかったこと……そして、一部の高位覚醒者達の横暴を野放しにしてしまったことを。  後悔を胸に秘めたまま、モンスターの攻撃によってクロヤは死んだ。  そのはずだったが、目を覚ますとクロヤは自分が覚醒者となった日に戻ってきていた。  自らの異能が構築した新たな力〈システム〉と共に……。

魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。

カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。 だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、 ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。 国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。 そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

ブラックギルドマスターへ、社畜以下の道具として扱ってくれてあざーす!お陰で転職した俺は初日にSランクハンターに成り上がりました!

仁徳
ファンタジー
あらすじ リュシアン・プライムはブラックハンターギルドの一員だった。 彼はギルドマスターやギルド仲間から、常人ではこなせない量の依頼を押し付けられていたが、夜遅くまで働くことで全ての依頼を一日で終わらせていた。 ある日、リュシアンは仲間の罠に嵌められ、依頼を終わらせることができなかった。その一度の失敗をきっかけに、ギルドマスターから無能ハンターの烙印を押され、クビになる。 途方に暮れていると、モンスターに襲われている女性を彼は見つけてしまう。 ハンターとして襲われている人を見過ごせないリュシアンは、モンスターから女性を守った。 彼は助けた女性が、隣町にあるハンターギルドのギルドマスターであることを知る。 リュシアンの才能に目をつけたギルドマスターは、彼をスカウトした。 一方ブラックギルドでは、リュシアンがいないことで依頼達成の効率が悪くなり、依頼は溜まっていく一方だった。ついにブラックギルドは町の住民たちからのクレームなどが殺到して町民たちから見放されることになる。 そんな彼らに反してリュシアンは新しい職場、新しい仲間と出会い、ブッラックギルドの経験を活かして最速でギルドランキング一位を獲得し、ギルドマスターや町の住民たちから一目置かれるようになった。 これはブラックな環境で働いていた主人公が一人の女性を助けたことがきっかけで人生が一変し、ホワイトなギルド環境で最強、無双、ときどきスローライフをしていく物語!

戦場の英雄、上官の陰謀により死亡扱いにされ、故郷に帰ると許嫁は結婚していた。絶望の中、偶然助けた許嫁の娘に何故か求婚されることに

千石
ファンタジー
「絶対生きて帰ってくる。その時は結婚しよう」 「はい。あなたの帰りをいつまでも待ってます」 許嫁と涙ながらに約束をした20年後、英雄と呼ばれるまでになったルークだったが生還してみると死亡扱いにされていた。 許嫁は既に結婚しており、ルークは絶望の只中に。 上官の陰謀だと知ったルークは激怒し、殴ってしまう。 言い訳をする気もなかったため、全ての功績を抹消され、貰えるはずだった年金もパー。 絶望の中、偶然助けた子が許嫁の娘で、 「ルーク、あなたに惚れたわ。今すぐあたしと結婚しなさい!」 何故か求婚されることに。 困りながらも巻き込まれる騒動を通じて ルークは失っていた日常を段々と取り戻していく。 こちらは他のウェブ小説にも投稿しております。

ハズレスキル【地図化(マッピング)】で追放された俺、実は未踏破ダンジョンの隠し通路やギミックを全て見通せる世界で唯一の『攻略神』でした

夏見ナイ
ファンタジー
勇者パーティの荷物持ちだったユキナガは、戦闘に役立たない【地図化】スキルを理由に「無能」と罵られ、追放された。 しかし、孤独の中で己のスキルと向き合った彼は、その真価に覚醒する。彼の脳内に広がるのは、モンスター、トラップ、隠し通路に至るまで、ダンジョンの全てを完璧に映し出す三次元マップだった。これは最強の『攻略神』の眼だ――。 彼はその圧倒的な情報力を武器に、同じく不遇なスキルを持つ仲間たちの才能を見出し、不可能と言われたダンジョンを次々と制覇していく。知略と分析で全てを先読みし、完璧な指示で仲間を導く『指揮官』の成り上がり譚。 一方、彼を失った勇者パーティは迷走を始める……。爽快なダンジョン攻略とカタルシス溢れる英雄譚が、今、始まる!

A級パーティから追放された俺はギルド職員になって安定した生活を手に入れる

国光
ファンタジー
A級パーティの裏方として全てを支えてきたリオン・アルディス。しかし、リーダーで幼馴染のカイルに「お荷物」として追放されてしまう。失意の中で再会したギルド受付嬢・エリナ・ランフォードに導かれ、リオンはギルド職員として新たな道を歩み始める。 持ち前の数字感覚と管理能力で次々と問題を解決し、ギルド内で頭角を現していくリオン。一方、彼を失った元パーティは内部崩壊の道を辿っていく――。 これは、支えることに誇りを持った男が、自らの価値を証明し、安定した未来を掴み取る物語。

処理中です...