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第1章 うろうろ迷子と運命の出会い?
第029話 今後の方針
しおりを挟む「アイリスちゃん、回復魔法は何時から使えたのかしら?」
10日前です、とは言えないよな。
「魔法、……昔? から」
魔法が使えるのは地道に訓練すれば10人に1人くらい使えるようになるって言われてるから、そこまで希少じゃない筈だ。
「でもアイリス、お前そんなに魔力多く無かったよな?」
エリック~、余計な事を言うなよなあ!?
「攻撃魔法、……苦手」
リリィが考えた言い訳を思い出しながらチラチラ周りの反応を伺って話していくけど、……大丈夫だよな?
「魔力が少ないってより攻撃魔法が苦手って事か」
「まさに聖女様って感じね。大神官クラスが1人2人癒やせるかってレベルの重傷者を何十人も魔法で癒やしていったんだし。ああ、神聖教会的には魔法じゃなくて祝福って言うらしいけど」
「大神官って国に数人しかいないレベルの人間なんだろ? そりゃ取り込もうとするんじゃないか?」
「既にコンタクトを取って来たわよ。まあ全部突っぱねたけどね」
早速神聖教会に目を付けられてんの俺? 金と権力の亡者のあの神聖教会に? ヤバいどうしよう、血の気が引いてきた。
「ああ、怖がらせるつもりは無いのよ? 私達はあくまで貴方の味方だからね?」
「そうですよアイリスちゃん。だからそんなに震えないでも大丈夫ですよ」
後ろからカリンが抱き締めて手を握って来た。後頭部に胸が当たってんだけど? コイツも胸がデカいな。ギルド長程じゃないけどミリアーナ並みか?
扱いが情け無いけど今は振り解く気にもなれないんだよ?
「今回皆んなを癒やしたのは何故かしら? こんな仕事してるんだから同じような機会は幾らでもあったでしょう?」
「んっと、……自分の……為」
「ううん、――隠して来たけど、スタンピードで自分が死ぬ危険性を感じて少しでも危険度を下げる為にやったって事かしら?」
「んっ(それそれ)」コクコク
「成る程、これまで何人もの人達を見捨てて来たけど自分の命は大事だったって事ね」
ああそうか、そう取られるか。でも上手い言い訳が思い付かないし否定出来ない。仕方ない受け入れるか。ギルドの評価が下がっても俺のランクじゃ関係無いしな。
「んっ」コクリ
「…………嘘ね」
「ひゃうっ!?(なっ、何でバレた!?)」
「んー、最近使えるようになった?」
ギルド長怖っ!真っ直ぐ見れない、目が泳ぐー!!
「成る程、何で隠しているのかしら?」
「…………(あわわわわ!?)」
言えない。あの剣が本当に希少な剣なら奪われるかも知れないし。
『希少も希少、精霊剣は神話級に次ぐ伝説級の魔武器なのじゃ!!』ドヤ顔
何か思ってたより凄そう!??
『なのじゃ!』ふんぞり
て言うかこの状況どうすんだよリリィ!
「ふう、――まあ良いわ。それでアイリスちゃんはこの先どうしたいのかしら?」
「……どう……?」コテン
「傭兵を続けたいのか神聖教会に行くのか。それとも他にやりたい事があるのか。傭兵を続けたいって言うのなら傭兵ギルドの名にかけてフォローするわよ?」
「傭兵、……する」
引退考えたい年なんだけど蓄えがなあ。他の生き方なんて知らないし教会なんて行っても使い潰される未来しか見えないし。
「この町で?」
この町で? ……うーん、今回のやらかしで教会に目を付けられたんなら居辛くなりそうだし、この町に思い入れがあるかって言ったら特に無いんだよな。ソロでやって来たのも他人との交流を避ける為だし。教会の事を考えると移住出来るならしたいくらいだもん。
「別に……」
「本当に? 別の場所に行く事になっても構わないの?」
「ん、良い」コクコク
「そう、それじゃアレ持って来て」
副ギルド長が奥に行って引き出しから箱を2つ持って来て開けた。
「此方が金髪、此方が黒髪のカツラです。聖女騒ぎを聞いてあらかじめ用意しておきました。ただこの2色しか用意出来なかったので気に入らなくても我慢して下さい」
「殆どの人がアイリスちゃんと聖女を別人として見ているの。知ってる人は極一部だけで口止めも済んでるわ」
「まあアイリスを知ってる奴等でも今のアイリスを見て同一人物とは思わんだろうな」
「桃色の髪と瞳を持つ小さな大人の傭兵と、偶々同じ色の髪目を持つ美少女聖女様って認識よね?」
「ああ、まあ背格好が似てるとは思うだろうけどな」
「でも念の為貴方には髪の色の違うただの美少女として当面は生活してもらうわ」
美? ……は良く分からんが何で女で? 男で良いじゃん。
「髪の色を変えてもその見た目でしょ? 男の格好をしても訳ありの男装の令嬢にしか見えないのよ」
俺の疑問を当たり前のように心を読んで答えて来る!? このギルド長怖い。
でもそこまでか? エリックを見る、頷く。サージェスを見る、視線を逸らされる。レイクを見る、微笑んで頷かれる。
副ギルド長もカリンも……イヤ、カリンは何かギラギラした目を向けてきて別の意味で怖いな。
「悪目立ちしちゃいますから仕方がないですよアイリスちゃん?」
カリンさん? 仕方がないって顔じゃないんだよ?
「――納得したかしら?」
ギルド長の笑顔怖っ、思わずうつむいたけど怖くて顔を上げられない。
「兎に角、貴方はなるべく寮から……。いえ、部屋を用意するから今日からこの本部で泊まりなさい。それと勝手に外に出ないように、良いわね?」
「…………あい」
子供かよ!? とは思うけど言い返せない。
「となるとアイリスは当面仕事は出来ないって事か?」
「それは町中の様子を見て考えるわ。それよりも今からこの子の事は別の名前を付けて呼びましょう。アイリスちゃん何か良い名前あるかしら?」
名前? そんな事いきなり言われてもな。
「ある程度今の名前に寄せた方が反応しやすいんじゃねえか?」
「でも近いと気付かれないか?」
「考え過ぎだろ。元々別人にしか見えないんだから、ちょっと変えるだけで充分だろ」
「「「うーん」」」
「子供の頃のあだ名とかどうだ? 何て呼ばれてたんだ?」
「…………リリちゃん」
「ガキの頃から女みたいに呼ばれてたんだな。ふはははっ」
黙れサージェス、昔は気付かなかったんだよ!
「でもそれだとアイリスちゃんの略称で呼んでるみたいです」
「じゃあ……リリス何てどうかしら」
「――ふむ、まあ良いんじゃないか?」
「アイリスはどうだ?」
「…………良い」
邪剣のリリィとリリス、似てるけどまあ良いか。
『だから邪剣と呼ぶでない、リリィの事はリリィと呼ぶのじゃ! 本当に邪剣みたいになるのじゃぞ!?』
目の前で手を振り上げてプンプンしながら抗議してくるリリィ、なんか幼児化してない?
「じゃあこれからこの娘はリリスちゃんね?」
「「はい」」「「「おう」」」
「ギルド長がリリスちゃんの名付け親なんですねぇ。羨ましいわぁ」
「カリン? 貴女はリリスちゃんが男とバレないように女の子としての生活の仕方を教えてあげて頂戴」
「任せて下さい! 一人前の箱入り令嬢にしてみせます!!」
は? 箱入り令嬢?? 何言ってんのこの人? 誰もそんな事言ってないよね??
「目立つと良くないから普通の女の子で良いわ」
「うぐ……そうでしたー」
本当に大丈夫かよこの女。
「んふふぅ、リリスちゃんはどっちのカツラが似合いますかねえ? んん~、どっちも似合うけど黒髪の方が色白の肌が映えますかねえ?」
「待って下さいカリンさん。アイリスさんであれば金髪も充分に映えます。光りの女神のようではありませんか」
「ああー、確かにレオンさんの言う通りですね! 光りの幼い女神様っ! うーーん、あっ、私も金髪だし姉妹プレイが出来ますね! うんうん、それしか無いですね! 金髪一択です!! ギルド長、リリスちゃんもう良いですか? 借りてっちゃって」
「報酬をちゃんとしてからにしなさいよ?」
「はぁーい。じゃあ行きましょうリリスちゃん!」
「……えっ……いや……」
コイツ等何を言ってんだ? 何かカリンの目が怖いし、絶対良からぬ事を考えてるだろ!?
「はっはっはっ、ダメダメ、か弱い抵抗ですね。無駄なんだから大人しくしなさいリリスちゃん!」
力強っ、嫌だ。絶対面白がってる。俺をオモチャにする気だろ! いやぁー! 誰か助けてぇええーーっ!?
「「「………………」」」
涙目になって訴える視線からそっと目を逸らす残りのメンバー達だった。
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