拾った剣が精神汚染して来るんだけど!?⇔拾われた剣、主に振り回される!?

ゆうきゅうにいと

文字の大きさ
47 / 278
第2章 ゆるゆる逃避行は蚊帳の外?

第006話 ステータスとセドナ村への帰郷

しおりを挟む

「ナージャ、何か弾いて貰えるかしら?」
 馬車の中でシャルロッテさんから言われナージャさんは上の棚から楽器らしい物を取り出した。それは木製で弓の様な形をした物に縦に弦が沢山張られていた。
「それ楽器なの? 何か変わった形をした楽器ね」
 ミリアーナが驚いてるけど無理は無い。俺も町で見るのは木箱を棒で叩いたり、5・6本弦を貼り付けて弾くようなのくらいだからな。これは10本以上、15本くらいあるんじゃないかな?
「リーフと言います。まあ練習用の物だから良い音はしないのですけど」
「これで練習用なの?」
 ナージャさんはそのリーフを膝の上に乗せて指で弦を弾いて音を出して行く。
 ポローン、ポロローン
 綺麗な澄んだ音が響く、音の調整を終えて曲を弾き出した。リズムの良い明るい曲だ。でも町の騒がしいだけのモノと違って情感を動かされるような曲だな。
 流れるような指使いで何かカッコいい。これが多分本物の音楽と言うヤツなんだろうな。
『主よ、コレット達と別れたから今日からまたお主の調整を再開するのじゃ』
 気持ちが落ち着いて来たからかリリィが話し掛けてきた。でも調整なぁ、身体の調子は良くなったけど強くなった気がしないんだよなあ。
『なっ、何を言うのじゃ! 魔法の発動がしやすくなったと言うておったではないか』
 ああー、確かに。でもそれ以外でさ、力が上がったとかの実感が無いんだよな。俺って強くなってんのかね。コレット達にもどんどん追い付かれて来てたし。
『お主が言うからあの娘等の調整をしたんじゃろが! そもそもあの娘等は素で成長期なんじゃし初めた頃が1番伸びやすいのは当たり前じゃろ!』
 まあそう言われるとそうなんだけどね。
『仕方のない奴じゃ! 分かりやすく数値で教えてやるのじゃ!』

 アイリス 精霊剣拾得時→シラルの町最終日
 体力量  10→10
 魔力量  18→20
 筋力量  12→13
 瞬発力  13→15

 スキル
 魔力操作レベル013→016
 火魔法レベル 014→014
 回復魔法レベル000→010
[精霊剣保有魔力量   100]
[精霊剣魔法レベル   100]

 成人男性平均ー成人女性平均
 体力量  20ー15
 魔力量  05ー10
 筋力量  20ー17
 瞬発力  20ー18

 スキル 魔法使い平均
 魔力量     030
 魔力操作レベル 025
 各属性魔法レベル023

『スキルレベルは10を超えるのが使える目安なのじゃ。回復魔法は100を超えると部位欠損の治癒も出来るのじゃ。リリィもレベル100だから当然出来るのじゃ』
 ……身体能力が成人女性より低い、低過ぎる。いや、コレット達と行動していて分かってたけど数字で聞くとやっぱりショックだな。って、それより精霊剣魔法って何だ? レベル100って何だよ。
『精霊剣魔法はリリィの魔法なのじゃ。お主の適正に左右されとるがリリィは本来あらゆる魔法を使えるのじゃ。魔力量100とは精霊剣リリィが保有出来る魔力量の事なのじゃ。外魔力循環は時間が掛かるが元から保有しとる魔力でなら即時魔法を発動させられるのじゃ。――いざと言う時の為に普段は使わんようにしとるがの』
 あらゆる……って事は俺も使えるようになるのか? あと魔力操作レベルと火魔法レベルとかの違いって何だ?
『お主の資質次第なのじゃ。魔力操作レベルは魔力を集め放出、操作する技術の事なのじゃ。火魔法レベルは集めた魔力のその属性への変換効率の事じゃな。――回復魔法は知識技術が必要になるから別枠じゃがの』
 んー、成る程。でも魔法関係も低いな。これからどうしていけば良いんだか。
『魔力量と魔法操作レベルは我の調整である程度上げられるのじゃ。各属性の魔法レベルは魔法を使う技術じゃからお主の努力次第じゃな。じゃがリリィは精霊剣、お主には魔法剣士を目指して貰いたいのじゃ』
 魔法剣士……、どっちも中途半端だからな。まあ剣の拙い部分を魔法で補って来たからこれまでと変わらないか。
『(何と消極的な……、じゃが今の能力では仕方ないかもしれんの。鍛練もしとるし長い目で見てやるのじゃ)』
 
「ねえギルド長、今日中に次の町まで行っちゃうの?」
「いえ、途中の村で一泊するわ」
「ふうん、レイク達も馬に乗ってるから町まで行っちゃうのかと思ったわ」
 レイク達は何時の間にか馬に乗っていた。ミリアーナの言う通りこれなら1日で次の町まで行けるのに。普通馬車の護衛は軽装で警戒しながら走って付いて来るものだ。って言っても行商人の馬車の護衛くらいしか聞いた事ないけど。
「ふふっ、それよりギルド長はレーナに譲ったから、これからは名前で呼んで頂戴」
「ええ、……そうするわ」
「あらあら。人の事口説いておいて、私の名前も知らないのかしら?」
 おお、ギルド長の声が低くなった。まあ散々ちょっかい掛けてたからな。でも俺は関係ないですよ? 姿勢を正して目を閉じておこっと。
「もっ……ちろん知ってるわよ。ねえリリスちゃん?」
 そこで何故俺に振る? そっと目を開けるとギルド長と目が合ってしまった。
「ん、シャルロッテ、フローディア様」コクリ
 だが甘い、知っているのだよ。アンタみたいな危険人物の情報を覚えておかないでどうする。俺の処世術が火を吹くぜ、ふはははは。 
『処世術??』
「リリスちゃんは良い子ね。様付けは要らないわ。シャルロッテで良いわよ」
「へえ、苗字持ちって事は貴族様?」
「一応ね。でもその家の出ってだけよ?」
「「「…………」」」 
 ミリアーナの露骨な話題逸らしにシャルロッテさんは冷たい笑顔のままミリアーナを見つめている。俺もこの空気に耐えられずミリアーナにジト目を向ける。早く何とかしろよ。
「はぁ、降参、悪かったわよ。お詫びは今夜体で払うわ」
「…………要らないわ」
 このタイミングで良く言えたな。シャルロッテさんの視線が極冷えだぞ。ぶるりと震えちゃったじゃないか。
「そう言わずに、ね? 今ならリリスちゃんも付けるわよん?」
「ちょっ、やめっ」
 ミリアーナがいきなりスカートを捲ってきた。そうなのだ。今日は白いひらひらのスカートにブラウスを着させられているのだ。シャルロッテさんの護衛って事の筈だったのに!
「はぁ~、顔を赤くしちゃって可愛いわぁ」
「抱き付くな、んっ、やっ、めっ」
 その後抵抗虚しくオモチャにされてしまった。シャルロッテさんが憐憫の目を向けてくる。――けど助けてくれないんだよ? 上目遣いで訴えるけどニッコリ笑顔で返された。巻き込まれたく無いんですね? 分かります。

「シャルロッテ様、セドナ村に着きました」
「ふえっ!」
 御者をしてたヴェルンさんがシャルロッテさんに声を掛けて来た。ってちょっと待って? セドナ村?? 何で!?
「どうしたのリリスちゃん?」
「ふふっ、この村はリリスちゃんの故郷なのよ。もう簡単に来られなくなるんだから、此処で一泊しようと思ってね」
 いやもう20年近く来てないんですけど? 家族が今どうなってるかも知らないし、生きてたとして女装して会うなんてとんだ罰ゲームじゃない?
 俺の逡巡を無視して馬車は村へと進んで行ってしまう。 
 村に入る前にミリアーナとナージャさんが馬車を降りて、馬に乗ってリックとトマソンが歩いて村の中に入って行った。謎の行動だ。
 窓を小さく開けて外を見ると朧気ながらに覚えている村より大きくなってる気がする。しかしこの辺の村々は皆んな木造りの家で変わり映えはしないから懐かしい気はしないな。
「リリスちゃん、ずっと此処に来て無いんじゃない?」
 俺は頷く事しか出来ないでいるとシャルロッテさんが俺の手を取ってきた。
「大丈夫よ、貴女のご両親は健在だわ。会ってあげなさい」
 優しく微笑んでくるシャルロッテさん……貴女も俺を小娘扱いしてません? でも35歳のおっさんなのよ? 両親と20年振りの再会が女装してって、軽く地獄だよ?
「…………この格好で?」
 その笑顔のままピシリと固まるシャルロッテさん、考えてなかったのか。
「ええ~、良いじゃないその格好で、可愛いんだしぃ」
「そうね、室内でなら変装を解いても良いわ。今日はリリスちゃんはご両親と過ごしなさい」
 面白がってるだけだろミリアーナ。シャルロッテさんも結局同意してしまった。まあシャルロッテさんは純粋に俺と家族を引き合わせたかったんだろうけど。
 馬車を止めて御者のヴェルンさんとナージャさんが話しを通してシャルロッテさん達は村長の家に、俺は20年振りに実家に泊まる事になった。




しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

ゲームコインをザクザク現金化。還暦オジ、田舎で世界を攻略中

あ、まん。@田中子樹
ファンタジー
仕事一筋40年。 結婚もせずに会社に尽くしてきた二瓶豆丸。 定年を迎え、静かな余生を求めて山奥へ移住する。 だが、突如世界が“数値化”され、現実がゲームのように変貌。 唯一の趣味だった15年続けた積みゲー「モリモリ」が、 なぜか現実世界とリンクし始める。 化け物が徘徊する世界で出会ったひとりの少女、滝川歩茶。 彼女を守るため、豆丸は“積みゲー”スキルを駆使して立ち上がる。 現金化されるコイン、召喚されるゲームキャラたち、 そして迫りくる謎の敵――。 これは、還暦オジが挑む、〝人生最後の積みゲー〟であり〝世界最後の攻略戦〟である。

ブラックギルドマスターへ、社畜以下の道具として扱ってくれてあざーす!お陰で転職した俺は初日にSランクハンターに成り上がりました!

仁徳
ファンタジー
あらすじ リュシアン・プライムはブラックハンターギルドの一員だった。 彼はギルドマスターやギルド仲間から、常人ではこなせない量の依頼を押し付けられていたが、夜遅くまで働くことで全ての依頼を一日で終わらせていた。 ある日、リュシアンは仲間の罠に嵌められ、依頼を終わらせることができなかった。その一度の失敗をきっかけに、ギルドマスターから無能ハンターの烙印を押され、クビになる。 途方に暮れていると、モンスターに襲われている女性を彼は見つけてしまう。 ハンターとして襲われている人を見過ごせないリュシアンは、モンスターから女性を守った。 彼は助けた女性が、隣町にあるハンターギルドのギルドマスターであることを知る。 リュシアンの才能に目をつけたギルドマスターは、彼をスカウトした。 一方ブラックギルドでは、リュシアンがいないことで依頼達成の効率が悪くなり、依頼は溜まっていく一方だった。ついにブラックギルドは町の住民たちからのクレームなどが殺到して町民たちから見放されることになる。 そんな彼らに反してリュシアンは新しい職場、新しい仲間と出会い、ブッラックギルドの経験を活かして最速でギルドランキング一位を獲得し、ギルドマスターや町の住民たちから一目置かれるようになった。 これはブラックな環境で働いていた主人公が一人の女性を助けたことがきっかけで人生が一変し、ホワイトなギルド環境で最強、無双、ときどきスローライフをしていく物語!

【完結】妖精を十年間放置していた為SSSランクになっていて、何でもあり状態で助かります

すみ 小桜(sumitan)
ファンタジー
 《ファンタジー小説大賞エントリー作品》五歳の時に両親を失い施設に預けられたスラゼは、十五歳の時に王国騎士団の魔導士によって、見えていた妖精の声が聞こえる様になった。  なんと十年間放置していたせいでSSSランクになった名をラスと言う妖精だった!  冒険者になったスラゼは、施設で一緒だった仲間レンカとサツナと共に冒険者協会で借りたミニリアカーを引いて旅立つ。  ラスは、リアカーやスラゼのナイフにも加護を与え、軽くしたりのこぎりとして使えるようにしてくれた。そこでスラゼは、得意なDIYでリアカーの改造、テーブルやイス、入れ物などを作って冒険を快適に変えていく。  そして何故か三人は、可愛いモモンガ風モンスターの加護まで貰うのだった。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

A級パーティから追放された俺はギルド職員になって安定した生活を手に入れる

国光
ファンタジー
A級パーティの裏方として全てを支えてきたリオン・アルディス。しかし、リーダーで幼馴染のカイルに「お荷物」として追放されてしまう。失意の中で再会したギルド受付嬢・エリナ・ランフォードに導かれ、リオンはギルド職員として新たな道を歩み始める。 持ち前の数字感覚と管理能力で次々と問題を解決し、ギルド内で頭角を現していくリオン。一方、彼を失った元パーティは内部崩壊の道を辿っていく――。 これは、支えることに誇りを持った男が、自らの価値を証明し、安定した未来を掴み取る物語。

元公務員、辺境ギルドの受付になる 〜『受理』と『却下』スキルで無自覚に無双していたら、伝説の職員と勘違いされて俺の定時退勤が危うい件〜

☆ほしい
ファンタジー
市役所で働く安定志向の公務員、志摩恭平(しまきょうへい)は、ある日突然、勇者召喚に巻き込まれて異世界へ。 しかし、与えられたスキルは『受理』と『却下』という、戦闘には全く役立ちそうにない地味なものだった。 「使えない」と判断された恭平は、国から追放され、流れ着いた辺境の街で冒険者ギルドの受付職員という天職を見つける。 書類仕事と定時退勤。前世と変わらぬ平穏な日々が続くはずだった。 だが、彼のスキルはとんでもない隠れた効果を持っていた。 高難易度依頼の書類に『却下』の判を押せば依頼自体が消滅し、新米冒険者のパーティ登録を『受理』すれば一時的に能力が向上する。 本人は事務処理をしているだけのつもりが、いつしか「彼の受付を通った者は必ず成功する」「彼に睨まれたモンスターは消滅する」という噂が広まっていく。 その結果、静かだった辺境ギルドには腕利きの冒険者が集い始め、恭平の定時退勤は日々脅かされていくのだった。

勇者パーティーを追放されました。国から莫大な契約違反金を請求されると思いますが、払えますよね?

猿喰 森繁
ファンタジー
「パーティーを抜けてほしい」 「え?なんて?」 私がパーティーメンバーにいることが国の条件のはず。 彼らは、そんなことも忘れてしまったようだ。 私が聖女であることが、どれほど重要なことか。 聖女という存在が、どれほど多くの国にとって貴重なものか。 ―まぁ、賠償金を支払う羽目になっても、私には関係ないんだけど…。 前の話はテンポが悪かったので、全文書き直しました。

処理中です...