拾った剣が精神汚染して来るんだけど!?⇔拾われた剣、主に振り回される!?

ゆうきゅうにいと

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第2章 ゆるゆる逃避行は蚊帳の外?

第028話 新たな旅路

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 店に入ると食べ物の匂いが充満していた。1階は食料品と食事処のフロアだそう。2階に上がると日用品の細かな雑貨類、石鹸やタオルにオモチャなんてのも売っていた。
 ライハルト子爵領じゃどれも高級品になる物ばかりだ。値段の安さとそれを庶民が買っている事に恐ろしさを感じるね。
 まあ良い事なんだろうけど、こんなのが子爵領に入ってきたら既存の店なんか全部潰れちゃうんじゃ……まあ俺には関係ないし別に良いか。
 ――いや、良くねえわ! ラン兄の雑貨屋さんが潰れるわ!!
 うう~ん、後でシャルロッテさんに相談だな。
 3階にはカーテンやシーツに絨毯等、4階には服が売られていた。そして5階はちょっと高級な食事処になっていて俺達は今そこで休憩をとっている。幾つかお店があってこの店は甘味専門店だそうだ。素晴らしい。
 本が沢山あって読みながらお茶も出来るようになっている所もある。子爵領じゃ考えられないな。
「4階の服屋は既製品だから安いのよ」
 大量生産? とかで安くなっているらしい、良く分からん。
「隣りのお店はお酒の専門店ね。会員制でおかしな人は入れないのよ?」
 ビアンカ様が何か言ってるけど目の前のお菓子に比べれば些細な事だな。このクッキー、色んな形のクッキーに上にドライフルーツが付いているのもある。
 そしてジュース、コレも甘くて上手い! これは売れるぞぉーーっ!!
『もう売れとるようじゃがの』呆れ顔

「ママ……、領を越えるだけでこんなに食事って変わるんだね」
「……ええ、そうね」
 ねぇねは宿屋で食事を出していたらしいし思う所でもあったのかな?
「ママは料理作ってたんだし、こう言う仕事やってみたくない?」
「ねぇねの手料理!」
「あっ、私もママのご飯食べたい!」
「ここまで高度な料理を出されたら自信が無くなっちゃうわ」
 俺とユミルの頭を撫でながら諦めたように言うねぇね。ねぇねの手料理なら味なんてどうでも良いのに。
『ちょっとキモいぞお主』
「大丈夫よ。そもそもこのデパートで働いているのは殆どが庶民よ。貴女が気負う事は無いわ」
「下の大衆食堂であればさほど敷居は高くありません。アネモネさんは料理の技術はあるのでしょうから此方の知識を身に付ければ問題無いでしょう。此方では初心者からでも料理を出来るように教えていますから」
 ビアンカ様は明るくて強引な所があるけど結構気遣いをしてくるな。そしてナージャさんがその補足をしてる。
「料理を、……教えているんですか?」
「ええ、何処の店でも同じレベルの料理が出ないとイケませんから」
「無料で、……ですか」
 ねぇねが言うにはこう言う技術は安易に教えないものらしい。子爵領では味を盗まれないように人を雇う場合も奴隷と契約する事もあるそうだ。
「ふふっ、そんな事でお金を取っていたらお金持ちしか雇えませんわ。秘伝の技術という訳でもありませんし。ただ此処のスイーツ店は人気で、働きたいという人も沢山いますから望み通りに働けるとは限りませんよ?」
 俺としてはねぇね達には好きな事をさせたいと思うけど、こればかりは仕方がないか。ビアンカ様に直談判すれば出来そうだけど恨みを買いそうだし、安全ならそれで良いだろ。
 見る限りデパートは庶民の女性と子供の客が多いようだし貴族の後ろ盾もある。これ以上は望みようがないだろうな。
 クッキーとジュースを食べて一息ついた後は売り場を軽く見ながら傭兵ギルドに帰って行った。

 明日には馬車で隣国に向かうからねぇねとユミルとは今日で一旦お別れだ。皆んなで食事を摂るけどちょっとしんみりした空気が漂っている。
「お菓子無い」シュン
「リリちゃん? 今日はデパートで食べたでしょう?」
「たっ、食べれるもん」
 クッキーは1セット大体千イェン、安めの食事2食分だ。けど出せない程じゃないんだから。
「昨日も2人分食べたそうじゃない?」
 何かねぇねが迫力あるんだけど? ねぇねの有無を言わせぬ迫力に負けてお菓子を断念させられてしまった。 
「……食べれるのに」
 傷心のまま寝る事になってしまった。何時もはねぇねを俺とユミルで挟むように寝てたけど今日は2人に俺が挟まれながら寝る事になった。3人で寝られるのは今日で最後だし甘えたいんだろうな。
 何故かユミルに頭を撫でられてるけど、まあ姪っ子に嫌われるよりは良いか。
『お菓子で何時までも拗ねておるから慰められたのじゃ』ボソッ

 翌朝早朝ユミルに無理矢理叩き起こされてギルドの修練場で剣の鍛練に付き合わされた。寝ぼけたままだと危ないから念入りに準備運動をして体を暖めてから剣を交えた。ねぇねも準備運動だけ一緒にして見学してる。
 因みにねぇねだが度重なる自重しない回復魔法の結果20代前半くらいの見た目になってしまっているらしい。
『――妹大好きか』ジト目
 うっ、うるさいわ。その姿でそんな目をして言うなよな。
『リリィのこの姿はお主の希望に沿ったものじゃろ。お主はどうしようも無いシスコンなのじゃ』
 ねぇねも喜んでいるから良いんだよ!?
「んっ、大振りダメ」
 リリィの精神攻撃に耐えながらリリィに従ってユミルに指導していく。ユミルは攻撃が躱されると無理矢理当てようとして踏み込み過ぎる癖がある。寧ろ躱わされたら慎重に行ってほしいんだけど。
 その後悪癖が直るまで何度も注意していった。自分でも分かって来たようだし、鍛練を続けていたら護身術くらいにはなるだろう。
 途中ミリアーナやナージャさんヴェルンさん達が参加してきたけどユミルは最後だからと俺だけと鍛練をした。
「ふへ~、もう動かないー」
 大の字で地面に倒れて動かなくなってしまった。俺はこっそり回復魔法を使ってたけどユミルにも掛けていく。
「ありがとうー、リリちゃーん」
「うわっ、抱き付くにゃ!」
 汗臭いわ!
「アイリス様、旅の準備が整いましたので食事が終わったら出発致します。よろしいですか?」
「んっ」コクリ
 ナージャさんはこれまで女装してた時はお嬢様呼びだったのが様付けになっている。普通にしてくれって言ったのに聞いてくれなかったんだよな。ビアンカ様にも頼んだけど押し切られたそうだ。
 ビアンカ様を諦めさせるってどんだけ? まあ何のこだわりか知らないけど諦める。ビアンカ様も諦めたようだしな。

 皆んなでシャワーを浴びて食事を摂った後一息ついてからギルドを出た。
 ギルド前には既に馬車が来ていてビアンカ様は父親の領主と挨拶している。……俺はねぇねとユミルと抱き合っている。ああ、これで1年間お別れか。
『そんなに愛おしいならもっと頻繁に会えば良かったろうに』
 そんな余裕無かったんだよ。金も無いのに家に帰ったら泣きつくみたいでカッコ悪いし、負担になりたくなかったしな。まさか余所の街で奴隷に堕ちてるなんて夢にも思わなかったし。
「2人共これで最後の別れって訳じゃないのよ? 何時まで泣いているのよ」
 ねぇねに泣きじゃくったまま引き剥がされた俺とユミルは恨めしそうにねぇねを見るけどジト目で返された。
「ううぅ~、ねぇね~~……」
「リリちゃーん、うわーん、別れたくないよーー!」
『同レベルじゃの』ボソッ
「領主様方を待たせる訳にはいかないでしょ?」
「うっ、そうだねママ。……リリちゃん、また会おうね? 絶対だよ?」
 くっ、……領主め。
「領主様を睨んじゃ駄目でしょリリちゃん? 不敬罪になっちゃうよ? ビアンカ様とか他の人達相手にも言動に気を付けるのよ?」
 領主を睨み付けてたら何故か俺がねぇねに心配されてしまっている。俺はお前の息子かよ。
『いや寧ろ娘じゃろ』
 何を言っているんだお前は。
「……だいじょぶ」ボソッ
 思った以上に小声で返してしまった。ねぇねもユミルもそんな俺を見て心配になってしまったようだ。2人でナージャさんとヴェルンさんに俺の事をよろしく頼んでいる。――何その扱い?
『妥当な扱いじゃろ』
 シャルロッテさんはビアンカ様と何やら話し込んでいるけど何か心配そうだ。何かあるのかね?
 そうしてると時間切れになってミリアーナに引き摺られるように馬車に詰め込まれてしまった。窓からブンブン手を振るとユミルは返してくれるのにねぇねは小さく手を振って返すだけだ。
 恥ずかしがり屋さんめ、可愛いな。
『…………』




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