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第2章 ゆるゆる逃避行は蚊帳の外?
第027話 石ころお菓子?
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「失礼致します、お茶をご用意致しました」
「うむ、入れ」
甘い匂い! テーブルを見るとお姉さんがお茶とお菓子を並べている! おお、俺の前にも置かれているぞ。コレ食べて良いんだよね? 良いんだよね? 期待でついつい笑顔になってしまうぞ。
「どうぞ、食べたまえ」
『さっきまで泣いておったのに甘味を前にした途端にこの笑顔……、この幼子のような反応が皆を生暖かい空気にさせておるのじゃぞ?』
リリィが何か言ってるがお菓子の前じゃどうでも良い事だな。伯爵のおっさんが良いって言ったし食べるぞ。うはは、もう誰にも止められないぞ。
これは小さい石ころみたいだな。硬いパンみたい、匂いは良かったんだけど硬いのは苦手だぞ? うーむ、恐る恐る周りを見渡す。何で誰も手をつけないで俺を見てんだ?
「アイリスちゃん、これはクッキーと言うお菓子よ? 大丈夫だから食べてみなさい」
「クッキー……」
シャルロッテさんが言うなら大丈夫だろう。取り敢えず手に取って匂いを嗅ぐ。ほわぁ~、甘い匂い。思わず顔がほころんでしまうな。周りを見ながらゆっくりとクッキーを口に入れていく。
サクッ、サクッ
美味しい…………ふわぁ……、し、あ、わ、せ、だぁーーっ!!
ホロホロと口の中で崩れていって全然硬くない。寧ろサクサクした食感が面白い、凄く甘いしこんな食べ物初めてだな。まあお菓子自体ほとんど食べた事無かったんだけど。麦を潰して焼いた塩せんべいくらいか。甘味と言えば果物くらいだけど酸っぱいんだよなぁ。
一口一口幸せそうに食べるアイリスを見て微笑ましく思いながらもこいつスイーツなら釣れんじゃね? とその場にいる人間は思うのだった。
至福の時間はあっという間に終わってしまった。お皿に付いたクッキーのカスを指で取って食べて良いかな、って考えてたら目の前に新しいクッキーがやって来た。ビアンカ様が自分のクッキーを差し出して来たのだ。
「どうぞ、アイリスちゃんはクッキーが好きなのね?」
シャルロッテさんを見るとちょっと困った顔をしてたけど食べて良いと言質をもらった、いっただっきまーす。
『またちゃん付けされとるが……。最早慣れ切っておる、と言うかクッキーに夢中で気付いて無いのかの?』
「アイリスちゃん? この街ではまだこう言ったお菓子は少ししか無いのよ? でもレンリート伯爵領の領都には幾つか種類があるのよ?」
ほうほう、……二皿目クッキー、美味しいわぁ。しかしそれは是非とも領都に行かねばな。
「でもね?私が通っている隣国、アデールの王都ではもっと沢山のお菓子があるのよ?」
「…………沢山……」
「ええ、クッキーだけじゃなく他にもクッキーに負けないくらい人気のスイーツがあって私も食べきれていないの」
なん……、だと?
「それでね、私と一緒に来てくれたら私の代わりに王都中のスイーツを食べ歩いて調べて欲しいの、どう?」
「やる、いっぱい食べる」
一か月の馬車旅? 耐えるしかないわ! うへへ、お菓子が待ってるよ!?
『……お主、それで良いのか?』ドン引き
良いんだよ、こんな甘味が食べ放題なんだぞ? こんな美味しいモン食べた事無かったんだ。俺は今天上に呼ばれている気分なんだよ?
「そっ、そう、嬉しいわ。……でももうちょっとちゃんと考えた方が良いんじゃないかしら?」
「そうね、アイリスちゃん? アネモネさんやユミルちゃんとも話しておかないと、ね?」
「んっ? んっ」コクリ
そっか、当然連れて行くつもりだったけど、ねぇねも娘のユミルも俺が保護者として考えないと駄目だったな。
『チョロ過ぎて逆に引っ掛けた本人に心配されとるのじゃ。何なのなのじゃこの状況』ボソッ
「それとアネモネさん達は流石に連れて行けないわよ?」
「うにゅ!?(何で??)」
「ユミルちゃんも連れて行くと向こうの負担が大き過ぎるのよ。治安も此処ほど良くは無いしね」
レンリート伯爵領でなら仕事の融通も効くし安全性も高いそうだ。折角ねぇねと一緒になれたのにまた別れないと駄目なのか……。今更やっぱ止めたとは言えないかな?
でもねぇねに使ったお金も稼がないといけないし、流石にお貴族様だけあって1年付いて行くだけで大金が貰える。将来の事を考えると受けた方が良いのかな。――依頼内容はお菓子巡りだけど。
部屋に戻ったら皆んなにめっちゃ怒られた。解せない。皆んな羨ましいだけだろって呟いたら更にめっちゃ怒られた。俺が一番年上で大人で男なのに、……泣きそう。
『と言うか泣いておったのじゃ』ボソッ
まあ話し合いの結果ビアンカ様に付いて行く事は了承された。その方が安全になるって話しだったからだ。
でもねぇねとユミルは残る事になってしまった。3人一緒だと家族ってバレバレだし狙われてる俺とは離れていた方が安全だろうってなったのだ。
折角ねぇねと会えたのに悲しい。俺が一緒にいるだけで危険らしいから離れるのは仕方がないけど。
『妹に抱きつきながらボロボロ泣いておいて何が仕方ないのか』ボソッ
五月蝿いな。でも俺は今まで危険な目に遭った覚えは無いんだけどな。まあ2人に窮屈な思いをさせたくないから仕方がないか。
隣国には俺1人で付いて行くのかと思ったら御者として一緒だったナージャさん、ヴェルンさんも一緒だった、……それと。
「むふふぅ、私も行って良いってさ。アイリスちゃーん」
「ひゃんっ!」
いきなり抱き付くなミリアーナめ。変な声出ちゃっただろ!? デカい胸を押し付けるな、みゃっ、みっ、耳を舐めるな!
ミリアーナは俺のチームメンバーだからと自分から頼んで護衛として雇って貰っていた。ナージャさんヴェルンさんは元々伯爵家で雇われていて去年もビアンカ様に付いて行っていたらしい。
「うう~、私も行きたかったぁ!」
「何言ってるの! 危ないから駄目だって言われたでしょ? 戦えもしない癖に」
ユミルが駄々をこねてねぇねが諌めてたけど流石に連れて行けない。
「ちょっとは戦えるもん」
「いい加減にしなさい! それに暫くしたら従姉妹のマリエルちゃん達とお婆ちゃん達も来るのよ? 近くか一緒に暮らす事になるんだからそっちも楽しそうでしょ? それに、奴隷になった私1人で両親には会いたくなんかないわ」
何とか説得? には成功したようだ。
シャルロッテさんが居てくれれば心強かったのに来れないらしい。そのシャルロッテさんから幾つか約束させられた。
「アイリスちゃんは移動中の回復魔法は使用しないようにね? 目立ち過ぎますから」
それは寧ろ有難い。て言うか精霊剣の精神汚染に晒されなくて済むなんてもう旅行じゃないか、ウハウハだよ!
「後向こうに着いても同じよ? 見習い程度の回復魔法なら良いけど、それ以上は緊急性が無い場合はナージャとヴェルンの判断を良く聞くようにね?」
更に有難い。この2人は去年ビアンカ様に付いてアデール王国に行っているそうだから、何かあったら任せて良いそうだ。これなら何の心配もいらないな、楽しみだなぁ。
『急に危機意識が低下したのじゃ』
「それと、領都には寄らずにビアンカ様に付いて行くと言う事になるから此処までで2人の護衛依頼の完了とするわ」
ねぇねとユミルの新しい仕事場を確認したかったけど、2人の仕事は伯爵領の領都の予定なので無理だった。まあ商店で働くなら危険も無いだろう。
シャルロッテさんから此処までの護衛依頼としてミリアーナと金貨1枚、10万イェンずつ受け取った。最近大金貰い過ぎて価値観が壊れぎみだったけどコレでも多い。その大金もねぇねの事で使い切っちゃったからこれからは堅実に行かないとな。
「それと回復魔法は護衛依頼の範囲外だから別で払うわね。馬やレイク達への魔法で早く着く事が出来たわ。馬車の中で私達もして貰ったし」
そう言って俺に金貨が上乗せされた。100万イェン、これだけあれば10ヶ月はイケる。っていかん、金銭感覚が壊れそうだ。回復魔法は使わないように言われてるんだから、これからは早々こんな機会は早々無いだろう。引き締めないと。
翌日この街最大の雑貨屋、五階建てのデパートと言うらしいがそこに来てる。領都に伯爵領の本店がある店で、領都では更に2号店目が建設中らしい。その2号店がねぇねとユミルの新しい職場になる予定なので2人と一緒に今日はどんな店なのか見に来たのだ。
「ほら、早く来なさい」
ビアンカ様に連れられてオフホワイトの外壁の建物の中に入ると、更に奥行きもあって普通の小売店2、30件は入りそうな程広かった。それが5階建てなんて……どんだけデカいんだよ。
ミリアーナとナージャさんヴェルンさんも来てるけどミリアーナは俺達と同じようにキョロキョロして落ち着きが無くなってる。
「もう、ぼうっとしてないでちゃんと付いて来なさいよ。迷子になっても知らないわよ」
店の中で迷子って何だよ怖いな。
「ちょっ、待って下さいビアンカ様。私達本当にこんな所で働くのですか!?」
「何言ってるの、領都の2号店よ? もっと大きいし客も多いわよ」
マジか、ユミルが不安になってビアンカ様に聞いたけど返ってきたのはより不安にさせるものだった。
「大丈夫よ、売っているのは生活雑貨とか食料品。食事処でも基本お酒は出して無いしおかしな客なんて来れないから」
この店は伯爵家御用達らしい。貴族の、しかも領主の息が掛かっている店で馬鹿をやる人もいないか。しかし伯爵家御用達と言う事で寧ろねぇねとユミルは更に緊張してしまったのは計算外だな。
『いや、寧ろコレが普通の反応じゃろ』
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