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第3章 なりきり学生生活は問題だらけ?
第014話 むじょくしぇい魔法
しおりを挟む何か知らんが戦える事になった。初めからそうしろよ、とは思うけど俺は大人だからな、俺の胸の内に収めておくよ。
『………………はぁ』ジト目
戦うのは噛みつきネズミだ。スライム? 知らんな。酸で剣を傷めるって言うしリリィが傷付くとは思わないけどそれはそれで不自然だからな。
階段を離れて別の道を進んで行く。スライムを避けて進むと前方に噛みつきネズミがいた。俺が先頭に回って両脇にナージャさんとミリアーナ、後ろにヴェルンさんの位置どりで進んで行く。
「キキー!」
俺に気付いた噛みつきネズミが瞬足を活かして突っ込んで来た。腰を落として精霊剣リリィを抜いてタイミングを測って振り下ろす。
「シッ」
って突然直進から手前でカーブを描くように曲がりやがった! クソっ、剣を避けられてそのまま足首に噛み付かれた!
「ギュキッ!?」
次の瞬間ヴェルンさんに噛みつきネズミは斬り捨てられた。
「大丈夫ですかアイリス」
何だよそれ! イヤ痛くも何ともないけどさ、皆んな簡単に倒してたじゃん!?
「アイリスちゃん痛くない?」
「防具の方は何ともないですね」
「むう、……何で」
何かが当たった感触はあったけどその程度だよ。凄いなこの防具。まあそんな事より仕切り直しだ。
「噛みつきネズミは直前で噛み易い所を狙って方向転換して来ますから、それに合わせて剣を振るうのは難しいのかも知れませんね」
「私は強引に合わせちゃったけどねぇ」
『確かにミリアーナは身体強化魔法で強引に剣筋を変えておったのじゃ』
俺には無理だな。て言うか1層でコレって手強くね?
『ヴェルンは噛みつきネズミが曲がってから素早く斬り捨てていたしナージャは体を引きながら距離を稼いで斬っていたの』
――出来そうなのはナージャさんのかな? 暫く歩くと2匹の噛みつきネズミがいてミリアーナとナージャで殲滅、そのまま進むと1匹の噛みつきネズミがいたから前に出て俺が相手をする。
「キキー」
さっきナージャさんのを見てたからな、近づいて曲がった瞬間に下がりながら剣を当てていく。目が良くなってるからタイミングも取りやすい。
シュバッと真っ二つ、とはイカないけど首から胴体を斬り裂いて致命傷を与えられた。油断せずに更に横なぎに斬って絶命させる。
パチパチパチパチ
「アイリスちゃん良かったよ。やれば出来るじゃない」
「ふふ、お見事です。最後まで油断しなかったのも良かったですよ」
「そうですね。それにその剣も思った以上に良く切れるようです」
ミリアーナ、ナージャ、ヴェルンと褒めてくれる。念の為に剣を無属性魔法で切れ味を強化してたんだよな。また失敗したら恥ずかしいしちょっとでも深手を与えられるように。まあ上手くいって良かったよ。
『(切れ味強化は高等技術、今の主では気休め程度の効果じゃが敢えて言う必要の無いかの)』
その後2匹3匹と斬って行く。失敗したくないからかなり神経を使いながら狩りを続けていった。
そしてある程度進むと時間を考えて階段の方に向かって別の道で戻って行く事になった。偶に失敗するけど靴に噛みつかれても痛くないから怖くない。
「ひゃっ!?」
って思ってたら剣を避けられ靴に噛みつかないで、そのまま俺の体をよじ登って来やがった!?
『任せぃ!』
バシィッ「キュキィッ!!」
リリィが精霊剣の内蔵魔力を使って噛みつきネズミを弾き飛ばした。噛みつきネズミがよろめいてるけど俺も体勢を崩してしまった。そこに再び俺に向かって来たから体勢を崩したまま何とか横なぎに斬って倒した。
「「アイリスちゃん!?」」
「ん?」
「えっと、アイリスちゃん今のは……?」
「…………今の?」コテ
『無属性魔法じゃ無属性魔法、リリィが魔法の盾で弾き飛ばしたじゃろ』
ああアレな、ナイスタイミングだったぜ、あんな事出来たんだなリリィ。
『うむうむ、そうじゃろそうじゃろ。リリィの能力も上がったからの、……ってじゃなくてその事を聞かれとるのじゃろ!?』
「噛みつきネズミを弾き飛ばしたでしょ? どうやったの?」
おお、そうだった。
「んと、……魔法……むじょくしぇい魔法」
「「『むじょくしぇい?』」」
ぎゃあーーっ! 噛んだぁーーーーっ!!
「成る程、むじょくしぇい魔法ですか」
「ええー、むじょくしぇい魔法って使えないって聞くけどどうなの? アイリスちゃん」
むうぅううーーっ! ナージャさんとミリアーナめ、ニヤニヤしやがって。コイツら分かってて揶揄ってるな! クソ、顔が赤くなって戻らないじゃないか!
「無属性魔法は消費魔力が大きいと言われてますが詠唱もなく瞬時に発動出来たのは素晴らしいですね」
赤くなった頬を両手で押さえているとヴェルンさんだけは揶揄わないでくれた。まともなのはヴェルンさんだけかよ。リリィまでニヤニヤしてやがるし。
「しかし油断しましたね。2階層から着けるつもりでしたが、ここからはゴーグルを着けて行きましょう」
全員目の保護の為ゴーグルを着けて再び階段まで進んで行く。ナージャさんが俺にゴーグルを着けようとしたけど奪い取ってヴェルンさんに着けて貰った。
ナージャさんは侍女だからか俺に世話を焼きたがるけどさっき揶揄った仕返しだ。謝って来てるけど許してやらない。けどプイってしたら何か満足そうな顔をされた。解せん、何でだ?
「ねえナージャ、迷宮って結構手強いのかしら? 噛みつきネズミって嫌な相手よね。素早いし小さいし勢い余って床を叩いて剣を傷めそうになるし」
「いえ、普通は硬いブーツを履いて噛みつかせて動かなくなった所を剣や棒で叩いて倒します」
「えっ? そんなんで良いの!?」
「ええ、安全第一ですから」
「だったら何であんな戦い方をさせたのよ!?」
「ミリアーナなら出来ると思ったのですが……、思ったより剣の扱いが雑でしたね」
「うぐっ、……はぁ、確かに苦手なのよね。特に最近は身体強化魔法の特訓で力任せな戦い方に寄ってたし」
2階層に行くにあたって隊列を戻して前でミリアーナとナージャさんが話してる。でもそんなんで良かったのか。
「僕も、出来ると思った?」
「ええ、アイリスは剣の扱いが丁寧ですからちょっと慣れれば出来ると思っていましたよ。実際に出来てますよね?」
「ん、……出来た」
チラッと後ろを振り返ってヴェルンさんに聞いてみると薄っすらと笑みを浮かべながら答えてくれた。ヴェルンさんみたいな上級者に認められるのは純粋に嬉しい、思わず笑みが溢れてしまったぜ。
「ミリアーナ見ました? あの顔」ボソ
「微笑ましいわね。嬉しそうにしちゃって、……可愛いわぁ」ボソ
それにしても僕って言うの慣れないなぁ。体裁があるから僕にしなさいって言われてるけどまだ恥ずかしい。
階段の所まで戻ると他の探索者達が2組離れて休憩をとっていた。俺達も距離をとって小休止する事にした。
「2階層からは吸血蝙蝠が出て来て来ます。肌が露出してる部分に噛み付いて来ますから気を付けて下さい。それと吸血蝙蝠は大振りすると剣を避ける事がありますのでなるべく大振りしないようにして下さい」
2層の注意事項をヴェルンさんから聞きながら軽食を摂っていく。さっき小休止したばかりだけどそろそろ昼前の時間だったからな。
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