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第3章 なりきり学生生活は問題だらけ?
第021話 幕間 ピリララとビアンカそれぞれの日常
しおりを挟む「おうピリララ、朝帰りかよ。直接学院に来るとは思わなかったぞ?」
「はあ、……私も帰るつもりだったわよ」
「で? 精霊の愛し子はどうだった?」
「――その前に何か言う事無いの? そんなんだからアンタ達は脳筋だって言われるのよ」
アデール王国王都第1学院の一室、リアースレイ精霊王国の留学生が占有してる一画のその一部屋でピリララと仲間のアシュトンとマルドレの獣人達が話していた。
「んあー、何か……変わったか?」
「えーっと……?」
「「「………………はぁ」」」
一目で分かるくらい肌も毛も見違える程艶やかになったのにこの反応。流石にピリララと共に行った付き人2人もため息をつくしか無かった。
「もう良いわ。愛し子だったわね、アイリスちゃんはそうね。……天然じゃないかしら? この間皆んなで会った時以上のイメージだったわ」
「そうですね。10人の女の子とお風呂に入ったのに1番反応したのは私達の毛並みと耳と尻尾、肉球ですからね」
「おいおい、一緒に入ったってアレ男だろ!? 何考えてんだよ!」
「貴方が怒る事じゃ無いでしょう?」
「ぐっ……~~、クソ!」
従者の言葉に反応してピリララに噛み付いたアシュトンだがピリララに一蹴された。
「ピリララは男心を学んだ方が良い」
「どう言う意味よマルドレ、アンタ達こそ女心を学びなさいよね? 皆んな呆れてるわよ?」
どうやら獣人留学生3人共異性の男女の機微には疎かったようだ。
「そもそも何で一緒に風呂なんか入ったんだよ」
「アイリスちゃんが侍女と一緒に入ってるって聞いて、もしかしたらレンリート伯爵家じゃそうやって女性で釣っていたんじゃないかと思ったのよ。それでそらなら私も体を使って誘ってみようと思ったのよ」
「「体って……(ゴクリ)」」
「ちょっ、何見てんのよ! いやらしい!」
不満を口にしたアシュトンたがピリララの台詞に思わず想像して注視してしまう。慌てて目を逸らすけど時すでに遅し、女性陣に睨まれてしまった。――やはりデリカシーに欠けてる様である。
「まあそれでアイリスちゃんと仲良くなるつもりだったんだけど、ビアンカまでお付きの人間と入って来て当てが外れたわ。何時もあんなんならそりゃ誘惑もされないわ」
「お前の魅力が足りなかったんじゃないのか?」
「――何ですって?」
アシュトンとマルドレは視線に気づいてないが、ピリララだけじゃなく一緒に風呂に入った従者達も2人に鬼のような顔つきになっていた。
――暫くするとズタボロになった2人の馬鹿を余所に幾分スッキリしたピリララと従者2人が会話を続けていた。
「観光くらいなら誘っても良いかなって思ってたんだけど、一度精霊王国に来れば誰だって移住したがるでしょう?」
「それはそうだと思います。けどそれを精霊神様が望んでいないかも知れませんよ?」
「どう言う事よ?」
「あの方を愛し子にしたのは精霊神様です。もしかしたらビアンカの領地に我々の勢力を伸ばせって事なのかも知れません」
「ああ、成る程。だからあんな領地に愛し子が生まれたと?」
「可能性はあるかと、少なくとも私達が勝手に進めて良い案件ではありません。精霊神社の本分でしょう」
「……そうね、確かに。なら私達に出来る事は愛し子と仲良くしておく事くらいかしら」
「はい、ビアンカとも距離を縮めておいた方が良いかと」
「ならこれからもあの子の屋敷に遊びに行かせてもらわないとね?」
「ええ、ですがあの美容魔法……、人見知りで奥手な子ってイメージだったのですけど、魔法を初めた途端明るくなって人格が変わった様でしたね」
「能力も、……アレは本当に大巫女並みではないでしょうか」
「どうかしら? 巫女に美容魔法を掛けて貰うなんて事ないもの。大巫女と何てそもそも比べようも無いわ」
「痛ぅ、けど精霊神社も認めてたじゃないか。なあアシュトン」
「ああ、大巫女に美容の為の魔法をさせたようなもんか。偉くなったもんだなお前等」
「まだ調教が足りなかったようね?」
「「もう充分だよ!!」」
「兎に角っ、無理強いした訳じゃないんだからね? ダールトンだって問題視してないでしょ!?」
「何ならお2人も美容魔法を受けてみたらどうですか? メロメロになっちゃいますけど」
「……止めとく」「俺も」
「それよりアレから王族の動きは何かあった?」
「特に無えな。ククッ、ぶちのめした王子はキレてたみたいだけどな」
「念の為今朝顔を見に行ってやったけど何も言って来なかったぞ?」
「おう、顔を真っ赤にして睨み付けてたけどな。コッチが睨み返したら目ぇ逸らしてやがったよ、ブハハハッ」
「そう、ビアンカの所にも来なかったわね。何かあるかもって思ってたけど」
「まだ安心は出来ないでしょう」
「そうね。この国はビアンカのフォシュレーグ王国を下に見てるから、強引な手を使って来ないとも限らないのよね」
「そこら辺はダールトン辺りが何とかするだろ。俺等が考えてもしょうがねえよ」
「そうよね、まあ私達は普通に仲良くしてれば良いって事よね?」
「それで良いと思います。難しい事は商工ギルドと精霊神社に任せましょう」
「――ところで愛し子はお前の裸見て、本当に男として反応して無かったのか?」
「……殺すわよ?」
「ビアンカ様は今日も一段と肌艶が輝いていらっしゃいますね?」
昼食時、今日は獣人達が来なかったのでビアンカは何時もの少数派の弱小グループで食事を摂る事になっていた。
「ええ本当に、秘訣でもあるのかしら?」
獣人達の影がチラつく為、直接的には問われないが確かな圧力を感じるビアンカ。小国とは言えタヒュロス王国の公爵令嬢マリアンヌ・ルクセンガングとメメントリア王国の第一王女スカーレット・メメントリアに挟まれ針のむしろであった。
しかしここでアイリスの事を洩らしてしまえばこの国の王侯貴族は遠慮なくアイリスを差し出す様に迫って来るだろう。
そうなればリアースレイ精霊王国も黙っていない。自身の言動一つで下手をすれば戦争になる。そんな事態はビアンカの処理能力を大きく超えている。どうにかやり過ごさなければならないのだ。
とは言えマリアンヌとスカーレットにも引くに引けない事情がある。小国である両国は何時アデール王国に滅ぼされるか分からない状況で、リアースレイ精霊王国とのパイプを持てるかどうかは自国にとって死活問題なのだ。
神聖教会の総本山ルードルシア教王国、商業ギルドの総本山ラージヒルド商業王国。多くの国々から利益を掠め取る悪名高きこの大陸の2大超大国。そこに精霊神社と商工ギルドを擁するリアースレイ精霊王国が勢力を広げ3番手の超大国として名乗りを上げたのだ。
商工ギルドの飛空艇を初めとした超技術に様々な高品質な商品、精霊神社の格安で超高度な回復魔法を施し、その技術を広める姿勢。受け入れたどの国でも平民の評判は良い。
今後も2大国家に潰される事なくこの先も力を伸ばして行くだろうと思われ、直接取り引き出来ればアデール王国への大きな牽制になる。そしてそれこそが2人が求めるモノなのだ。
「そうだビアンカ様。今度ビアンカ様のお屋敷に遊びに行っても良いですか? 最近ゆっくり話せておりませんし、久しぶりに行ってみたいわ」
「まあ、マリアンヌ様はビアンカ様のお屋敷に行った事があるのですね。それでしたら是非私もビアンカ様に招待して頂きたいですわ」
あああ……、アイリスちゃん、やってくれたわね。
「ええ、機会が合えば是非に」
にこやかに返すビアンカ、こうしてビアンカは新たな戦いに身を投じるのであった。
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