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第5章 くたくた迷宮探索の敵は移動とご飯?
第028話 幕間 夏休み表、決意
しおりを挟むゼルアス侯爵家3男ダントルは相変わらず揺れの酷い馬車の中で考える。戦争は勝った。俺も指揮(と言う立場)で活躍したのだから本来の3男としての立場に戻れるだろう。
しかしこれだけ苦しい思いをしてそれだけか? とも思う。兄達など戦争にも行かずに今も豪華な食事をしているのだろう。父親だって戦争に行った事など無いではないか。
でもだからと言って何が出来るでも無い。兄達を殺したところで危険人物として父親に処されるだけだ。
抑えきれない怒りを胸に父親の居る王都の屋敷に帰って来た。戦争に勝ったと言うのに何故か王都は覇気が無く荒れている様に見えた。
だけど自分には関係無い事、先ずは父親に面会して報告をする。行く時は、帰る時にはもっと誇り高い晴れがましい気持ちで会う事を想像していたがそんな気持ちには到底なれなかった。
「お前か、……ただ生きて帰るとはな。せめて何らかの功績か死んでくれれば役に立てたものを……、もう良い下がれ」
「……はっ」
もし以前のダントルであったなら父親の冷たい視線に恐怖していただろう。だが今のダントルは陰鬱とした気持ちの中で憎悪の炎がメラメラと燃え上がっていた。
きっかけとなったアイリスは当然憎い、けど庶民1人殺したところでもう俺の気は晴れない。
贅沢をしてる兄達が憎い、理不尽な命令をした父親が憎い、俺に偉そうに説教をした上官が憎い、俺が吐いたのを影で笑ってた奴等が憎い。
憎い憎い憎い……、何もかもが憎い……。
「俺は、……理不尽が嫌いだ」
そう呟いた瞬間ダントルは攻め入った町や村で死んでいた子供達の光景が思い出された。
「………………」
1番理不尽な目に遭ったのは俺か? あの俺より幼かった子供達か? 目を見開き指の爪を噛みダントルは深い思考に落ちて行った。
ビアンカは副都に行く前に隣国のカントラス王国王都へ行って移り住む手続きをする事になった。
本当なら自領に帰してくれたら良かったんだけど、国交がまだ無いから仕方がないのよね。
「たった半日でカントラス王国の王都まで来てしまうなんてね」
「ふふっ、今までの常識が崩されてしまいますわねビアンカ様」
「ええ、本当にそうですわねスカーレット姫様」
ここはフォシュレーグ王国の西、アデール王国の更に西隣りの国カントラス王国の王都である。
ビアンカは王城に出向きダールトンの紹介で国王へ謁見、滞在の許可を貰って今はメメントリア王国の第一王女スカーレット・メメントリアのお屋敷にダールトンと共に招かれている所だ。
「ビアンカ様は私が此処に居る理由を知りたいのではないですか?」
「それは……、はい」
以前スカーレット姫は人質としてアデール王国に来ていると言っていた。
勝手に逃げ出せば祖国が再び侵略される口実になりかねないから逃げる事も出来ないと悲しげに笑っていた。
「私も当初渋っていたのですが、ダールトン様に現状あの国に残っていても意味が無くなると言われたのです」
「どう言う事でしょう?」
スカーレットのメメントリア王国は小国であり、元々余り食糧事情の良くない土地柄だった。そこにアデール王国に戦争を仕掛けられ敗北し、更に数少ない食糧庫と言える土地を奪われてしまったのだ。
その上でスカーレットは人質としてこの国に囚われている。
いずれ食糧難の為メメントリア王国は土地を取り戻すべく戦争を起こすしかない。そしてスカーレットは処刑される。そう言う運命だと言って、それを受け入れていた様だったのに。
「我々が突如撤退した事で王都では物資不足が起こります。当然フォシュレーグ王国との戦争にも影響が出るでしょう。更に王都民達は国や商業ギルド、神聖教会に対して強い不信感をもっています」
スカーレット姫がダールトン様に目をやると頷いて更に説明し初める。
「王都では物資不足、戦争では戦果も無い。そんな中で益もない他の国と戦争など出来ようがありません」
「私はダールトン様のその言葉を信じました。私の国を攻めても取れる物等たかが知れていますから。それに、リアースレイ精霊王国はずっと後ろ盾として私を守って下さいましたから」
「えっ?」
どう言う事?
「スカーレット姫の側仕えは多くが我々が紹介した方達でしたからな。それが後ろ楯となってスカーレット姫の御身を守って来られたのです」
「私の国では側仕えも碌に用意出来なかったのです。そこで商工ギルドに相談したところ、リアースレイ精霊王国縁の者達が側仕えになる事で王公貴族の無茶振りを避けて来られたのです」
もしそれが無ければあの王族のオモチャにされ常人なら誰もが目を背けたくなるような最後を迎えていただろう。
「……商業ギルドに頼まなくて良かったですね」
「あそこの評判は私の国でも良くないですから。それに比べて商工ギルドは王都の人達の評判も良かったのでダメ元で押し掛けて見たのですよ?」
ふふっと笑うその笑顔は今までに無い柔らかいモノだった。色々な重圧から抜け出せた安堵があるのかも知れないわね。
「ならスカーレット姫様は掛けに勝ったのですね?」
「いえ、私本当は祖国への援助をお願いしたのです」
私の言葉にスカーレット姫は悲しげに首を横に振って答えた。
しかし無理も無い。スカーレット姫のメメントリア王国は小国な上、高地にある為農地も少なく、魔物の森が近い危険な所だと本人が言っていたのだ。
「私の力不足です、申し訳ありません」
「いえ、ダールトン様は良くして下さいました。今冷静に考えると援助を受ければアデール王国の反感を買って再度侵略をしに来ていたでしょう。それを思えば寧ろ良かったと思います」
「そう言って頂けると救われます」
その後同じく避難して来ていたタヒュロス王国の公爵令嬢マリアンヌ・ルクセンガング様にもご挨拶をしてから再びアデール王国の副都へと戻って行った。
「副都に降り立ちますと飛空艇を手に入れようと国軍等が動いて来ますからな。アイリス様が戻られるまで副都に飛空艇を置く事は出来ないでしょう」
と言う事で途中から馬車に移り、隠れて副都に入って行く事になった。因みに私側の人間は執事長のヒストロスとアリーニャ、後は若いメイド2人だけで残りはカントラス王国に残して来た。
「さてビアンカ様、飛空艇は帰してしまったので帰りは馬車での移動になります。情勢によってはレンリート伯爵領へお帰り頂けるかも知れませんが余り期待しない様に」
「分かっていますわ」
そして今私は副都の探索者ギルドの客室にいる。用意出来る屋敷もあるけど国軍が動いている以上防犯的に相応しく無いそうだ。
「伯爵家の令嬢がこの様な場所で寝泊まりするとは……」
ヒストロスが嘆いているけどアイリスちゃんをリアースレイ精霊王国に取られる訳にはいかないのだから仕方ないじゃない。
――でも何時戻って来るのか分からないのよね。
「本当、居ても居なくても引っ掻き回してくれるわね。あの子は」
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