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第6章 びくびくお城の招待と新たな仲間?
第009話 アリアとカチュアとお昼寝と
しおりを挟む「アイリスちゃん朝ですよー? 起きてくださーい」
「んみゅ、うーん」
翌朝、アリアとカチュアは雇い主と言う事でアイリスを早起きして起こしに来ていた。2人は似た環境からかとても仲良くなっていた。
アリアとカチュアにはカントラス王国の王都に入ってから奴隷の首輪をさせている。そう言う法律だし、奴隷を持てるのは裕福な者達だけなので権力者に保護されている証にもなるのだ。
ナージャがせめて可愛い物をと髪色に合わせてアリアには黒に赤いリボン、カチュアには茶色に白いリボンの首輪を買っていた。
2人より少し年上? に見えるアイリスだがその愛らしい顔つきと幼い言動に2人の警戒心は無く、今もカチュアがアイリスの頬を楽しそうにむにむにしている。
「起きないねえ。どうしよっかアリアちゃん」
「うーん、……くすぐる?」
「「……」」
暫くして息も絶え絶えなアイリスの姿があった。新たなアイリスの弱点が発覚した瞬間である。
『弱点ばかりじゃの、コヤツは』呆れ顔
「着替えくらい自分でやらせなさい!」
「でもアイリスちゃんのお着替えは私のっ、私の仕事ですよ!?」
「そんな仕事はありません! 貴女が勝手にやっていただけでしょう!?」
「それならアイリスちゃんのお着替えは私が! アリアちゃんとカチュアちゃんは私を着替えさせると言うのはどうですか!?」
「意味が分かりません! いい加減にしなさい! 貴女には貴女の仕事があるでしょう!?」
侍女長のアリーニャとナージャが争う様を眺めてミリアーナがヴェルンに話している。
「ねえヴェルン、ナージャって何でビアンカ様に連れられて来たの?」
「――俺もそうだがナージャの家は代々レンリート伯爵家に仕えているんだ。それでナージャはビアンカお嬢様に年齢が近かったから幼い頃からお側に仕えていたんだよ」
「幼い頃から、ねえ」
「後は単純に腕が立つからだな」
部屋の外が騒がしかったけど、眠気とくすぐりのダメージが抜けないままアリアとカチュアに手を引かれて食堂に連れられると見知った顔があった。確かビアンカお姉様の友達だったよな?
『うむ、タヒュロス王国の公爵令嬢マリアンヌじゃったかの』
相変わらずリリィは良く覚えてんな。
「あら子供達が増えたのね」
左右から俺の両手を引くアリアとカチュアを見て微笑んでいるマリアンヌ様。子供好きかな? ビアンカお姉様に比べて大人っぽいと言うか包容力がありそうな雰囲気がする人だ。
でもアリアとカチュアが緊張してるのか手に力が入ってるのが伝わって来る。まあお貴族様相手じゃ無理ないか。俺も初めは緊張したもんだよ。
『今は見る影も無いがの。と言うかお主ビアンカと初めて会った時、ビアンカの父親の目の前でシャルロッテの膝枕で眠りこけておったじゃろ?』
そうだっけ?
「2人は道中寒村で請われてアイリスちゃんが引き取る事になったのです。2人共、この方はタヒュロス王国の公爵令嬢マリアンヌ様よ。ご挨拶なさい」
「アッ、アリアです」
「……カチュア、です」
「マリアンヌよ。暫くこの屋敷にご厄介になる事になったから宜しくね」
「はっ、はい」はい」
2人を下がらせてから何故か俺も一緒に朝食を摂らされた。マリアンヌ様は国の事情で城に捕らわれていたらしい。何故か俺のお陰で救い出されたとか言ってお礼を言われたけど意味が分からん。
お礼の品とか言われても身に覚えが無いし怖いんだけど??
「ふふっ、アイリスちゃんは謙虚なのね。皆がそうならもっと世界は平和だったでしょうに」
『……謙虚? 平和??』
何だよ?
「……今は何も考えずマリアンヌ様はゆっくり休んで下さい」
「そうですね。有り難う御座いますビアンカ様」
『(ビアンカも複雑そうなのじゃ。アイリスの所為で何故か騒動の中心に居たりするからの)』
アイリスの所為と言っているが、リリィの能力あってこそだと言う事からはリリィも目を反らしていた。
ビアンカお姉様は何とか国に帰りたい様だけど、それまでの方針は決まってないそうで暫くはお休みだそう。学院も無しだから剣でも振ろうかと思ったけど、アリーニャさんに捕まってアリアとカチュアと一緒に勉強させられた。
雇われの身だしまあ2人の主として付き合ってやるのも良いかな。
アリアとカチュアは言葉使いや基本的なマナー、俺はリアースレイ精霊王国の歴史本を読まされた。世界の成り立ちや国の在り方とかそれなりに面白かったな。
昼食を食べてから3人でお昼寝させられる。俺が親代わりの様なものだから子供を安心させて寝かし付けるのも役目だろう。
『そう言うお主が何時も真っ先に寝とるんじゃがの』ジト目
最近では調整中に目が覚めない様にはしていたが、リリィが寝かせるまでもない程寝つきが良くなっていた。
「――寝ちゃった?」
「うん、もう寝ちゃったみたい」
アリアとカチュアはこの数日でアイリスが異様に寝つきが良いのを知っていた。
「アイリスちゃん、可愛いね」
「うん、髪も長いし男の子とは思わなかった」
2人は胸まで伸びた艶やかな桃色の髪の毛を撫でたりぷにぷにの頬をつついたりしながら仲良く話していく。村では一日中働き詰めでお昼寝と言う習慣が無かった為に中々値付けなかったのだ。
2人のアイリスに対する印象は初めは魔法が使える上に可愛い過ぎるからお貴族様に優遇されているのかと思っていた。
2人の居た領地を治める貴族は傲慢で恐怖の対象でしかなかった。けどアイリスがお菓子を要求してぐずったり、主であるビアンカを抱き枕にして眠ったり優遇の域を超えたやりたい放題ぶりを見て此処は違うのかもしれないと思い始めていたのだ。
ナージャが怒られても自分達の世話を焼こうとするのも大きい。
自分達にもアイリスによる貴重な筈の回復魔法が施されたし、今まで食べた事も無い豪華な食事に初めての甘味まで口にした。
馬車では移動中と言う事で日持ちのする簡素なクッキーだけだったが、2人からすれば高価な砂糖を使われた初めての甘味で、余りの美味しさに2人で涙を流しながら黙々と食べてしまった。
――周りには村が恋しくて泣いていると思われていたけど。
「勉強を教えて貰えてるのは良い事だと思うの。使い潰すつもりならこんなに色々と教えたりいっぱい食べさせたりしないんじゃないかな」
「そうか、そうだね。アリアちゃんは頭が良いね」
2人は似た境遇から直ぐに仲良くなっていた。
アイリスも妹が身売りされそうになって自分から村を出たと聞いて2人はアイリスにも親近感をもっていた。
――実年齢は聞いていないので子供同士としてだが。
「はあ、お腹いっぱい食べられるしお菓子まで貰えるし、皆んなにも食べさせたいな」
「うん。でもお金は貰えるらしいから貯めれば送れるんじゃないかな。そうすればもう身売りされる子供が居なくなるかもしれないよ?」
「そっか! そうだね。頑張ろうアリアちゃん」
「うん、一緒に頑張ろうカチュアちゃん」
『こ奴等の方が大人に見えてくるのじゃ』渋面
「ひゃっ!?」
「えっ! 何っ!? ってナージャさん??」
「あら、起きてしまわれましたか。お早うございます」
「んん~、……すやぁ」
アリアとカチュアに付き合ってお昼寝をしていたらアリアの悲鳴で目が覚めた。何時の間にかナージャさんが一緒に寝ていたらしい。そのまま二度寝しようとしたら2人に叩き起こされてしまった。……眠い。
騒ぎを聞き付けたアリーニャさんに激怒されてたけどナージャさん大丈夫かな? しかし睡眠途中で起こされて体調が悪い。
『調整途中で目覚めてしまったからの。相変わらずリリィの回復魔法に弱いのじゃ』
起きたら精霊剣の清浄過ぎる魔力で満たされてるとか、危うく精神が浄化されるかと思ったぞ?
普段なら起きる時間を見計らって清浄な魔力の使用を止めて行くらしいけどアリアの悲鳴で目覚めてしまったから失敗したのだろう。
体調が良いのに体が重い、眠くないのに目蓋が重い、目がしぱしぱする。
午後からはダンスの練習と言う事でナージャは子供達を連れて大広間に向かって行った。
「ビアンカお嬢様、マリアンヌ様も、此方にいらして居たのですか」
「……何故ナージャはアイリスちゃんを抱っこしてるのかしら?」
「寝起きにぐずってしまって大変可愛いらしかったので」
『情けないのじゃ』ジト目
お前が言うな。いや久しぶりだったし寝起きに精霊剣の魔力を不意打ち食らわされたんだからな? マジでキツいんだぞ? ナージャさんに抱っこされながら徐々に自分の魔力に染め直して行ってるんだけど、まだ起きるのもキツいんだよ?
「説明になって無いわよ。貴女仕事があるでしょう? 早く戻りなさい」
「そんな!? これから初めてのダンスレッスンなんですよね? 私も見たいです!」
「ふふっ、相変わらず愉快な侍女ですねビアンカ様」
「マリアンヌ様、……お恥ずかしい限りです」
「でも私達も見学に来てるのですから、他人の事を言えませんわね」
碌に情報も無いまま城に囚われ明日をも知れぬ立場にされていたマリアンヌは一目で分かる程精神的に疲弊していた。ビアンカはそれに気を使って子供達の初めてのダンスレッスンの見学に誘っていたのだった。
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