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プロローグ
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『人と食事をする時、我々は体の栄養だけでなく、心の栄養をも手に入れるのだ』
──美食の国、スラッキオのある料理家の名言
食事。食事は生きていく上で必要不可欠なものだ。けれど食事とは生きるためだけにするものではない。他者との交流や、友情、愛情を芽生えさせるきっかけや、逆にそれらを知る手段でもある。
****
ファミリー3では自炊が当たり前である。食費を抑えるには自炊が1番いいからである。外食はあまりしない。4人全員まともに料理をできる人だったため、皆でローテションを組んで当番制で食事を作っている。だが皆まともに料理ができると言ってもやはりそれぞれの料理にも特性があるわけで……。
「めっちゃいい匂い! 今日のごはん何ー?」
るいが家に帰ってリビングに入って来るなり、キッチンに立っている湊音に向かって聞いた。今日の夕飯担当は湊音らしい。
「今日はレモンカラメルかけた野菜炒め」
「やったー! 今ちょうど食べたかった!」
「おっレモンカラメル使うの? 湊音の十八番じゃん」
「湊音のレモンカラメルソースって美味しいんだよね」
「そりゃあ、僕はきちんとレシピを守って作ってるからね」
照れ隠しなのか困ったように笑う湊音に悠乃が首を傾げた。
「レシピ通りに作らない人なんている?」
悠乃の問いに澪と湊音が同時にるいの方を見た。
「え、るい……? でもレシピ通りに作らない人って大体不味くなる傾向にあるよね? るいのは普通においしいけど」
「そう。それがこいつのわけわかんないとこなんだよ」
「感覚で作って成功してる稀なパターン」
いいたい放題の兄弟達にるいが厶っとしたように言った。
「私だってレシピ見る時はみてるよ!」
「結構な割合で創作料理作ってますよね??」
澪が突っ込んだ。
「この前美味しいやつあって、見たことない料理で、るいのことだから異国料理かなと思って聞いたわけ。そしたら『私が自分で考えた』と抜かしたことを僕は忘れてませんけど??? しかもそれも数回では済まない回数あったことも覚えてるぞ」
「え、それどの料理」
「この前のスープとか」
「あ、あれか! え、普通に美味しかったんだが」
「自作料理が美味しいのってもう才能あるよ」
「いや、まだ事故ってないだけで、今後大事故の可能性ない?」
「……胃薬買っとくか……」
自分の余計な一言のせいで余計いいたい放題になってしまった。なんなら分が悪くなってきている。るいは流れを変えようと湊音の方を向いた。
「私のことは置いといて、湊音と悠乃はどっちかといえば理屈派だよね」
「話そらしたな? まあいいけど。そうだなぁ、僕はレシピとかをちゃんと守るかも。それにレシピで適量とか言われるとキレそうになる」
「分かる~、『適量って何?! どれくらい?!』ってなるよね」
湊音の答えに悠乃が激しく頷いた。
「うちで1番料理上手いのって澪だと思うけどさ、澪の料理方法はどっちよりなの?」
分かり合ってる2人を横目にるいは澪に尋ねた。料理が趣味ですらある澪の料理はとても美味しい。澪以外の3人は澪が料理当番の時、自分が料理をしなくていい喜びにプラスで澪の料理が食べれる喜びもあって、他の当番じゃない日に比べてちょっと喜び度合いが上なのだ。
「僕はるいと2人のいいとこ取りのハイブリッド型かも」
「え、感覚あるわけ?」
「うん、それこそ『適量』とか、レシピ通りに作った時の味が微妙な時とか、感覚でやってるよ」
「意外」
「ほら、感覚もまちがってないってことじゃん!」
るいが、聞いたことか! とばかりに悠乃達を振り返った。
「あ、ごめん、るい。お前の感覚とはちょっと違うと思う。お前のはもうなんか違う領域入ってるから」
すかさず否定する澪。
「だろうよ」
「だろうね」
そしてすかさず肯定する2人。るいはがっくりと項垂れた。
「まあまあ、がっかりすんなって。ご飯できたぞ。みんな自分のやつ持ってて」
「「「はーい」」」
****
「いただきまーす!」
カラメルソースがたっぷりかかった肉を口いっぱいに頬張ったるいが、思わず笑みをこぼした。
「ん~っ、やっぱこれよ! この味だよ!」
「そりゃ良かったです」
湊音が肩をすくめて笑った。
「こうして一緒に食べるだけで、なんか元気出るよね」
「お腹だけじゃなくて心も満たされるってやつだな」
今日も相変わらずファミリー3の夕食は賑やかで、あたたかい。そしてきっと、明日も、明後日も、誰かがリビングでこう尋ねるのだ。
「今日のごはん何ー?」
と。
****
レモンカラメルソースの作り方
〈材料〉
・水
・砂糖
・レモン汁
〈作り方〉
1. まずは水に砂糖を溶かします。きちんと溶かし切りましょう。砂糖が残っているとカラメルにするときに焦げ付きます。
2. 砂糖水ができたらフライパンでも鍋でもなんでもいいので砂糖水を熱してカラメルを作ります。
3. 砂糖水がブクブクしだして、ねっとりしてきたらレモン汁をさっと注ぎます。回すように入れましょう。(この時「じゅっ!!!」というものすごい音がしますが大丈夫です。基本。)
4. そのままほんのりカラメル色になるまで火を通しておしまいです。焦げ風味のカラメルがいい人は焦がしましょう。
〈一言〉
作中でやっているように普通の野菜炒め(薄味にしたもの)によく合います。野菜炒め以外はまだ試してませんが、なんとなく野菜単体や肉単体にも合いそうな味です。たぶんプリンの普通のカラメル代わりでもいけると思います。
〈あとがき的ななにか〉
今回のレシピは筆者考案のレモンカラメルソースの作り方でした。分量まできちんと書いたレシピをメモしてたはずなんですがちょっと見当たらないので分量は諦めました。(筆者考案レシピはこういうことが多いです。)確か普通のカラメルソースの分量に、レモン1個分のレモン汁だったねと思うんですけどね……
ちなみに筆者の料理スタイルはるいよりの澪スタイルですね……るいほどではないものの筆者もたまに創作料理を作りますが(↑のカラメルソースとか)るいと同じでまだ事故ったことはないです(笑)
──美食の国、スラッキオのある料理家の名言
食事。食事は生きていく上で必要不可欠なものだ。けれど食事とは生きるためだけにするものではない。他者との交流や、友情、愛情を芽生えさせるきっかけや、逆にそれらを知る手段でもある。
****
ファミリー3では自炊が当たり前である。食費を抑えるには自炊が1番いいからである。外食はあまりしない。4人全員まともに料理をできる人だったため、皆でローテションを組んで当番制で食事を作っている。だが皆まともに料理ができると言ってもやはりそれぞれの料理にも特性があるわけで……。
「めっちゃいい匂い! 今日のごはん何ー?」
るいが家に帰ってリビングに入って来るなり、キッチンに立っている湊音に向かって聞いた。今日の夕飯担当は湊音らしい。
「今日はレモンカラメルかけた野菜炒め」
「やったー! 今ちょうど食べたかった!」
「おっレモンカラメル使うの? 湊音の十八番じゃん」
「湊音のレモンカラメルソースって美味しいんだよね」
「そりゃあ、僕はきちんとレシピを守って作ってるからね」
照れ隠しなのか困ったように笑う湊音に悠乃が首を傾げた。
「レシピ通りに作らない人なんている?」
悠乃の問いに澪と湊音が同時にるいの方を見た。
「え、るい……? でもレシピ通りに作らない人って大体不味くなる傾向にあるよね? るいのは普通においしいけど」
「そう。それがこいつのわけわかんないとこなんだよ」
「感覚で作って成功してる稀なパターン」
いいたい放題の兄弟達にるいが厶っとしたように言った。
「私だってレシピ見る時はみてるよ!」
「結構な割合で創作料理作ってますよね??」
澪が突っ込んだ。
「この前美味しいやつあって、見たことない料理で、るいのことだから異国料理かなと思って聞いたわけ。そしたら『私が自分で考えた』と抜かしたことを僕は忘れてませんけど??? しかもそれも数回では済まない回数あったことも覚えてるぞ」
「え、それどの料理」
「この前のスープとか」
「あ、あれか! え、普通に美味しかったんだが」
「自作料理が美味しいのってもう才能あるよ」
「いや、まだ事故ってないだけで、今後大事故の可能性ない?」
「……胃薬買っとくか……」
自分の余計な一言のせいで余計いいたい放題になってしまった。なんなら分が悪くなってきている。るいは流れを変えようと湊音の方を向いた。
「私のことは置いといて、湊音と悠乃はどっちかといえば理屈派だよね」
「話そらしたな? まあいいけど。そうだなぁ、僕はレシピとかをちゃんと守るかも。それにレシピで適量とか言われるとキレそうになる」
「分かる~、『適量って何?! どれくらい?!』ってなるよね」
湊音の答えに悠乃が激しく頷いた。
「うちで1番料理上手いのって澪だと思うけどさ、澪の料理方法はどっちよりなの?」
分かり合ってる2人を横目にるいは澪に尋ねた。料理が趣味ですらある澪の料理はとても美味しい。澪以外の3人は澪が料理当番の時、自分が料理をしなくていい喜びにプラスで澪の料理が食べれる喜びもあって、他の当番じゃない日に比べてちょっと喜び度合いが上なのだ。
「僕はるいと2人のいいとこ取りのハイブリッド型かも」
「え、感覚あるわけ?」
「うん、それこそ『適量』とか、レシピ通りに作った時の味が微妙な時とか、感覚でやってるよ」
「意外」
「ほら、感覚もまちがってないってことじゃん!」
るいが、聞いたことか! とばかりに悠乃達を振り返った。
「あ、ごめん、るい。お前の感覚とはちょっと違うと思う。お前のはもうなんか違う領域入ってるから」
すかさず否定する澪。
「だろうよ」
「だろうね」
そしてすかさず肯定する2人。るいはがっくりと項垂れた。
「まあまあ、がっかりすんなって。ご飯できたぞ。みんな自分のやつ持ってて」
「「「はーい」」」
****
「いただきまーす!」
カラメルソースがたっぷりかかった肉を口いっぱいに頬張ったるいが、思わず笑みをこぼした。
「ん~っ、やっぱこれよ! この味だよ!」
「そりゃ良かったです」
湊音が肩をすくめて笑った。
「こうして一緒に食べるだけで、なんか元気出るよね」
「お腹だけじゃなくて心も満たされるってやつだな」
今日も相変わらずファミリー3の夕食は賑やかで、あたたかい。そしてきっと、明日も、明後日も、誰かがリビングでこう尋ねるのだ。
「今日のごはん何ー?」
と。
****
レモンカラメルソースの作り方
〈材料〉
・水
・砂糖
・レモン汁
〈作り方〉
1. まずは水に砂糖を溶かします。きちんと溶かし切りましょう。砂糖が残っているとカラメルにするときに焦げ付きます。
2. 砂糖水ができたらフライパンでも鍋でもなんでもいいので砂糖水を熱してカラメルを作ります。
3. 砂糖水がブクブクしだして、ねっとりしてきたらレモン汁をさっと注ぎます。回すように入れましょう。(この時「じゅっ!!!」というものすごい音がしますが大丈夫です。基本。)
4. そのままほんのりカラメル色になるまで火を通しておしまいです。焦げ風味のカラメルがいい人は焦がしましょう。
〈一言〉
作中でやっているように普通の野菜炒め(薄味にしたもの)によく合います。野菜炒め以外はまだ試してませんが、なんとなく野菜単体や肉単体にも合いそうな味です。たぶんプリンの普通のカラメル代わりでもいけると思います。
〈あとがき的ななにか〉
今回のレシピは筆者考案のレモンカラメルソースの作り方でした。分量まできちんと書いたレシピをメモしてたはずなんですがちょっと見当たらないので分量は諦めました。(筆者考案レシピはこういうことが多いです。)確か普通のカラメルソースの分量に、レモン1個分のレモン汁だったねと思うんですけどね……
ちなみに筆者の料理スタイルはるいよりの澪スタイルですね……るいほどではないものの筆者もたまに創作料理を作りますが(↑のカラメルソースとか)るいと同じでまだ事故ったことはないです(笑)
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