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てんと せん

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るい直伝!おかずホットケーキ

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「かんっぜんに寝過ごした……」

午前11時17分。日曜日の昼前、寝巻き姿のファミリー3の面々はリビングで意気消沈していた。

「今日は朝早く起きて映画見ようと思ってたのに……」

「それを言うなら私は10時で終わるゲームのイベント周回しようと思ってたんだよ……」

「ここまで誰も起きない日って珍しいよなぁ……」

「いつもなら誰かは起きてたもんね……」

暗い空気の中、誰かのお腹が鳴った。

「今日の朝ごはん担当だれ?」

澪がみんなを見回して聞いた。

「るいじゃない?」

「私だね」

「でも、もはや昼ごはんの時間だぞ」

「確かに」

「昼ごはん担当は?」

「……僕」

机に突っ伏して悠乃が手だけ上げた。

「ちなみに僕はお腹空きすぎてご飯なんか作れないと思う」

「さっきの音はおまえだったか……」

「るいー……代わりに作ってよぉー」

「仕方ないなー。一個貸しだよ?」

るいはそういうと立ち上がって冷蔵庫をのぞいた。残念ながら料理の残り物は何もない。何か絶対に作らなくてはならないようだ。

「んー。簡単なものでいいか……」

るいは冷蔵庫に卵、牛乳、生クリーム、野菜、ミンチ肉が十分あるのを確認すると、キッチンの後ろの戸棚を開けた。

「ホットケーキミックス? ホットケーキにするの?」

ホットケーキミックスを戸棚から引っ張り出してきたるいに湊音が聞いた。

「普通のホットケーキでもいいんだけど。それだとつまらないので。ちょっとてを加えるの」

「「「……」」」

「信用して! これは昔一回作ったことあって美味しかったから大丈夫だって!」

本当に美味しくなるのかと疑心暗鬼の男達をよそにるいは料理を始めた。

****

「……みた感じ普通のホットケーキミックスから作るホットケーキみたいだけど」

15分後。心配になって見にきた澪が、普通にホットケーキミックスを袋の裏のレシピ通りホットケーキのもとにしていくるいを見て不思議そうに言った。

「ここからだよ」

るいはそういうと、ホットケーキのもとを混ぜ終わったのか、ボウルを置いて横にあった微塵切りにされ、炒められたニンジン、小松菜、合いびき肉を指差した。

「これが『おかずホットケーキ』の具だよ」

「……それ美味しいの?」

空腹が少し癒えた悠乃が不安そうに聞いた。

「大丈夫だって!」

「ああぁ……。混ぜちゃった……」

「どの具も火は通ってるし、大丈夫だよ」

「今のはそういう心配じゃないだろ。絶対」 

るいはホットケーキのもとと具材をしっかり混ぜた。

「めっちゃ心配なんだけど」

「いやまあ、何が出てきても食べるけどさ」

「僕は何気に泡立ててある生クリームについて心配してるんだけど。あれで食べるわけじゃないよね?」

「まさか。おかずだぞ?」

るいに聞こえないよう食卓に戻ってコソコソと話す男子3人。るいはそんなことはつゆ知らず、セルクルを用意してホットケーキを焼いていた。

「やっぱりこういうのって高さがある方がいいよね。中の具も見やすいし」

****

 ホットケーキのもとを全て焼き終わると、るいはお皿に「おかずホットケーキ」を盛り付けた。

「できたよ!」

嬉しそうなるいに対して浮かない顔の3人。

「本当に大丈夫だって! 結構美味しいよ? ちなみに味はついてないからケチャップか生クリームをかけるんだけど……」

「生クリームは絶対ないだろ」

「やっぱり生クリームそのためだったんだ……」

「ただでさえ結構挑戦的な料理してるのに最後の挑戦が大冒険すぎる」

「えー。生クリームで食べるおかずホットケーキ美味しいのに……」

「そんなに言うならるいがまず食べて見てよ」

湊音が腕を組んで言うと、るいはふふんと胸を張った。

「もちろん。というか私は最初から生クリームで食べる気しかなかったもん」

るいは皿に乗ったおかずホットケーキに泡立てた生クリームポトンとそれなりの量を乗せた。白いクリームがほんのり湯気を立てる生地の上でとろけていくのを、男子3人はやや引いた目で見ていた。

「じゃ、いただきまーす!」

るいがナイフでホットケーキを切り分けて口に運ぶ。もぐもぐ……と数回噛み、口の中で味を確かめる。

「……ん~! やっぱり美味しい! この生クリームが絶妙なんだよねー!」
目を輝かせて続きを夢中で食べるるい。

「マジか……」

「るいの味覚が終わってるとかそういうことはない?」

心配そうにする3人。そんな3人をよそにるいはケーキを次々と切り分けて口に運んでいる。

「失礼な。どうしても生クリームが嫌ならケチャップで食べれば? 生クリームの美味しさには劣るけど」

ハフハフとまだ熱いホットケーキを口にしながらるいがケチャップを指差した。未知の料理に警戒心が解けない3人。と、そのとき、悠乃のお腹が盛大に鳴り響いた。

「……お腹すいた……」

「食べなって。そんなに警戒することないよ? 普通に結構美味しいもん」

空腹には勝てなかったのか、悠乃は椅子に着くとおかずホットケーキの端っこにケチャップをちょっぴりかけてフォークとナイフでその部分を切り取った。後ろで兄2人がマジか、食べるのか、と騒いでいたが、無視してケーキのかけらを口に入れた。

「……!」

「どーよ!」

もう自分のおかずホットケーキをほとんど食べ終わったるいが方づえをついて悠乃を見つめていた。その目は自信満々だ。

「普通に美味しい……おかずとしてありだと思う……! ここまでくると生クリームも気になる!」

「いいよ~! はい、ここからとって」

るいから泡立てた生クリームの入ったボウルとスプーンを受け取ると悠乃は先程のるいを見習ってたっぷりの生クリームを乗せた。

「え、めちゃくちゃ美味しい。ケチャップも美味しかったけど、こっちの方が美味しい。なんの味もついてない生クリームがすごく馴染んでて、味がまろやかになるっていうか」

「でしょ? このホットケーキ、塩胡椒は肉にしかついてないから、そのまま食べるとぼやぁっとした味なんだけど。生クリームが入ることで調和される感じだよね。おかわり、いる?まだ結構あるよ」

「え、ぜひ」

「……そんなに?」

「悠乃が美味しいっていうなら……」

おずおずと兄2人も席についてケチャップがけのものと生クリームがけのものとを食べ比べた。

「「…………!」」

「……これはアリだわ。うまいわ」

「具と合うのか心配だったけど、2人のいうこと、分かったわ。なんか優しい味になるっていうか、説明難しいな。でも美味しい」

「いい意味で期待はずれ」

「ほらね! 言ったじゃん! ところで私もうおかわりするけどみんなの分残した方がいい感じ?」

「お願いします」

「あ、僕も」

「あと1.7枚ぐらい食べれる」

こうしてこのブランチメニューはファミリー3の間で伝説となり、作る手間もまあまあ簡単なため、ファミリー3の手軽な料理レシピに殿堂入りしたのだった。

****

るい直伝!おかずホットケーキ(4人分)

〈材料〉
・ホットケーキミックス (4人分)
・ホットケーキミックスに書いてある、牛乳、卵などのホットケーキの元(焼く前のドロっとした液体のこと)を作るのに必要なもの(お持ちのホットケーキミックスの指示に従ってください)
・小松菜 (8株ぐらい お好みで)
・にんじん (1本 こちらもお好みで)
・合いびき肉 (240g こちらもお好みでもいいが、野菜とバランスを合わせた方がいいです)
・塩 (少々)
・胡椒 (少々)
・生クリーム (かけたい量)
・ケチャップ (こちらもかけたい量)

〈作り方〉

1. まず普通にホットケーキミックスの袋などに書いてある指示に従ってホットケーキのもとを作りましょう。

2. ホットケーキのもとができたら具に取り掛かります。小松菜とにんじんをみじん切りにしましょう。

3. 合いびき肉を炒めます。材料欄にはないですがちゃんと油やバターを引いてから炒めてください。

4. 合いびき肉に火が通ったら肉をホットケーキのもとが入ったボウルに入れましょう。フライパンや鍋に残った油で今度はにんじんと小松菜を炒めましょう。にんじんはしっかり火を通して、小松菜はサッと火を通すぐらいで十分です。

5. 野菜に火が通ったら、野菜もホットケーキのもとと混ぜましょう。

6. 具が入ったら、ホットケーキのもとをしっかり混ぜます。

7. しっかり混ぜたら、焼きに入ります。るいのようにセルクルを使って焼けば映えますが、めんどくさい人は普通に焼いてしまいましょう。

8. 焼いてる間にでも生クリームを泡立てましょう。電動泡立て器を使うと早いです。

9. 焼き上がったホットケーキにお好みでケチャップ、または生クリームをかけましょう。

〈一言〉
作中でるいも言っていますが、ケチャップも美味しいですが生クリームがけの方が断然美味しいです。非常に強くおすすめします。

〈あとがき的な〉
今回のレシピも筆者の自作レシピです。あの、生クリームほんとに合うので試してみてください。騙されたと思って。

今回のレシピは、野菜をいれるんですけど、細かくして入れるとあまり味の主張がなくなるんですね。だから、野菜が苦手な子どもにもいいかもしれないです。作者の知り合いに野菜嫌いの子どもがおらず、試したことはないので説得力はゼロなんですが……。
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