異世界に射出された俺、『大地の力』で快適森暮らし始めます!

らもえ

文字の大きさ
78 / 117
眠り姫

157.新酒

しおりを挟む





「ふんふんふ~ん♪」

 クーデリアが鼻歌を歌っている。
 随分と機嫌が良さそうだ。

「どうした? クー。ご機嫌じゃないか」

 頭の上にルンを乗せた俺がクーデリアに尋ねる。

「あ、コウヘイさん! 良いお酒が出来たのです!」

 クーデリアがパアッと花開くような笑顔で言う。

「へえ、お酒か。俺たちあまり飲まないからなぁ……」

 銀月亭などで出されれば飲むが、自分からは飲もうと思えないんだよな。
 ドワーフみたく酒に強いわけじゃないし。
 なので、ウチの食卓ではお茶が並ぶ事が多い。

「今回のはコウヘイさんにも楽しんでいただけるでしょう!」

 自信有りげにクーデリアは平たい胸を張った。
 とりあえず自信作ということらしい。
 それじゃあ、ということで倉庫の隣の酒蔵へ。

 クーデリアが試飲用のグラスを取り出し、樽からグラスへと注ぎ込まれる。
 ふわっと酒の匂いが広がる。
 まるでフルーツを思わせるような香りだ。

 がれたグラスをクーデリアから受け取り、息いっぱいに匂いを嗅ぐ。
 酒とは思えない上品な甘い匂いだ。
 ルンも不思議そうに体を伸ばしてグラスを覗き込む。

 グラスをかざしてみると透明な液体が向こう側の景色を映す。
 ニコニコとしたクーデリアがグラス越しに見える。
 ……まるで水のようだ。

 一口、口に含む。
 やさしい甘みとほどよい酸味、爽やかな発泡感と意外な飲み口に、俺は目を白黒とさせた。
 アルコール度数も低いようだ。

「これは……うまいな」

「そうでしょう、そうでしょう。ボクの自信作です。とは言えドワーフには物足りないでしょうが」

 たしかに、酒飲みのドワーフには度数が低すぎるのかも知れない。
 しかし、あまり酒を飲まない俺たちのために作ってくれたんだと考えると、ジーンと来るものがある。
 ルンが俺の腕を伝い、グラスに体を伸ばしていた。

「これは、何から作ったんだ?」

「えっと、泥麦からです……」

 クーデリアが恥ずかしそうに言う。
 この世界じゃ未だに家畜の餌って認識だからな、泥麦は。

「いや、良いと思うぞ? 俺は」

 形は違うが日本酒のような物だろうか?
 俺はうんうんと頷きながらクーデリアの方を伺う。
 ルンはグラスを器用に傾け、中のお酒を摂取していた。

「えへへ、ありがとうございます」

 クーデリアが照れたようにはにかむ。
 それはお日様に照らされたヒマワリのような笑顔だった。


「そう言えばクーの実家ってどんなところなんだ?」

「ボクの実家ですか? ウルフガンツは侯爵になりますね。とは言え、他の国の貴族とは様子が違うようですが」

 なんでもクーデリアの家は代々国に鍛冶師を排出している家で、侯爵と言っても普通の貴族とは違うんだとか。
 なんだかんだ言っても侯爵だろ? 結構いいとこのお嬢さんなんじゃないか?

「へえ、すごいじゃないか」

「いえ、まぁ鍛冶馬鹿なだけですよ。ボクの家系は」

 クーデリアが苦笑しながら答える。

「クーデリアも鍛冶をやるのか?」

「う~ん、ボクにはそっちの方の才能は無かったみたいなんですよね。でも簡単な物なら出来ますよ?」

「鍛冶場が必要なら言ってくれよな。作るから」

「はい! その時はお願いします!」

 クーデリアが鍛冶まで出来るとは驚きだ。
 でもドワーフだから当然なのか?
 いや、決めつけはよくないな。

「ウチなんかに来て、実家は何も言ってこないのか?」

「ドワーフの国を救ったと言っても過言でないコウヘイさんの所ですから!」

 えっへん! とクーデリアが言う。

「みんながいたからだよ」

 俺は照れくさくなり、頭をポリポリかいた。

「コウヘイさんのお力があってのことだとボクは思います!」

「そうか。ありがとう」

「いえ、こちらこそ」

 お互いに礼を言い合っていたら、頭がコツンと当たった。
 えへへ、とはにかむクーデリア。
 ちくしょう、可愛いな。
  俺はクーデリアの可愛さに思わず顔を背けた。

「何か生活で足りないものはあるか?」

「いえ、コウヘイさん。ここには全て揃っています。ボクも酒蔵でお酒を作れるようになりましたし、何と言っても温泉がありますからね!」

 クーデリアがうっとりした顔で言う。
 ここに来た当初と違って、クーデリアの髪はしっとりサラサラだ。
 俺は見違えるようにキレイになった髪に見蕩みとれる。
 思わず手にとってみたくなるようだ。

「クーデリアは実家とは連絡を取っているのか?」

「はい、時々ですが手紙のやり取りがありますよ」

 そりゃ良かった。
 この拠点に来ることで没交渉になってしまったら、なんだか申し訳なくなっちまう。

 ガタッ
 物音がしたので目を向けると、ルンが何やら震えている。

「どうした? ルン」

 俺はルンを抱きかかえて撫でてやった。

 ミョンミョンミョン!
 どうやらクーデリアの作ったお酒がお気に召したらしい。

「ははっ。ルンもクーデリアのお酒が美味しいってさ」

「わぁ、ありがとうございます!」

 ルンも炭酸飲料を結構好むよな。
 このクーデリアが作ったお酒はエウリフィアなんかも好きなんじゃないだろうか?
 心なしか火照っているルンを抱え、俺たちは酒蔵を出た。

「このお酒、みんなにお披露目するのはいつだ?」

「はい、今晩にでもみんなにお出ししようかと思います。」

「きっと、みんなも喜ぶさ」

「はい!」

 俺はクーデリアの花開くような笑顔を見つめるのだった。
しおりを挟む
感想 36

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~

いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。 他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。 「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。 しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。 1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化! 自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働! 「転移者が世界を良くする?」 「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」 追放された少年の第2の人生が、始まる――! ※本作品は他サイト様でも掲載中です。

五十一歳、森の中で家族を作る ~異世界で始める職人ライフ~

よっしぃ
ファンタジー
【ホットランキング1位達成!皆さまのおかげです】 多くの応援、本当にありがとうございます! 職人一筋、五十一歳――現場に出て働き続けた工務店の親方・昭雄(アキオ)は、作業中の地震に巻き込まれ、目覚めたらそこは見知らぬ森の中だった。 持ち物は、現場仕事で鍛えた知恵と経験、そして人や自然を不思議と「調和」させる力だけ。 偶然助けたのは、戦火に追われた五人の子供たち。 「この子たちを見捨てられるか」――そうして始まった、ゼロからの異世界スローライフ。 草木で屋根を組み、石でかまどを作り、土器を焼く。やがて薬師のエルフや、獣人の少女、訳ありの元王女たちも仲間に加わり、アキオの暮らしは「町」と呼べるほどに広がっていく。 頼れる父であり、愛される夫であり、誰かのために動ける男―― 年齢なんて関係ない。 五十路の職人が“家族”と共に未来を切り拓く、愛と癒しの異世界共同体ファンタジー!

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

アイテムボックスの最も冴えた使い方~チュートリアル1億回で最強になったが、実力隠してアイテムボックス内でスローライフしつつ駄竜とたわむれる~

うみ
ファンタジー
「アイテムボックス発動 収納 自分自身!」  これしかないと思った!   自宅で休んでいたら突然異世界に拉致され、邪蒼竜と名乗る強大なドラゴンを前にして絶対絶命のピンチに陥っていたのだから。  奴に言われるがままステータスと叫んだら、アイテムボックスというスキルを持っていることが分かった。  得た能力を使って何とかピンチを逃れようとし、思いついたアイデアを咄嗟に実行に移したんだ。  直後、俺の体はアイテムボックスの中に入り、難を逃れることができた。  このまま戻っても捻りつぶされるだけだ。  そこで、アイテムボックスの中は時間が流れないことを利用し、チュートリアルバトルを繰り返すこと1億回。ついにレベルがカンストする。  アイテムボックスの外に出た俺はドラゴンの角を折り、危機を脱する。  助けた竜の巫女と共に彼女の村へ向かうことになった俺だったが――。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

勇者召喚の余り物ですが、メイド型アンドロイド軍団で冒険者始めます

水江タカシ
ファンタジー
28歳独身、一般事務の会社員である俺は、勇者召喚に巻き込まれて異世界へと転移した。 勇者、聖女、剣聖―― 華やかな肩書きを持つ者たちがもてはやされる中、俺に与えられたのは聞いたこともないスキルだった。 【戦術構築サポートAI】 【アンドロイド工廠】 【兵器保管庫】 【兵站生成モジュール】 【拠点構築システム】 【個体強化カスタマイズ】 王は落胆し、貴族は嘲笑い、俺は“役立たず”として王都から追放される。 だが―― この世界には存在しないはずの“機械兵器”を、俺は召喚できた。 最初に召喚したのは、クールな軍人タイプのメイド型戦闘アンドロイド。 識別番号で呼ばれる彼女に、俺は名前を与えた。 「今日からお前はレイナだ」 これは、勇者ではない男が、 メイド型アンドロイド軍団と共に冒険者として成り上がっていく物語。 屋敷を手に入れ、土地を拠点化し、戦力を増強しながら、 趣味全開で異世界を生きていく。 魔王とはいずれ戦うことになるだろう。 だが今は―― まずは冒険者登録からだ。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。