3 / 4
003
しおりを挟むしまった……、とはこういう時に使うんだろうか。
『いけません!マクシム様!!ここへは誰も立ち入れるなと陛下に言われて……!!』
『騒ぐな』
先程から起きるタイミングを見計らっていいれば、悪代官みたいな偉い奴が来たお陰で瞼を開けられないでいた。
どうすっかなー……、コイツが立ち去るまで待つべきか。
未だ続く言い争い、悪代官は素知らぬ様子だが続いていて正直、子供のように苛ついた。
『そこを退け』
『成りません!マクシム様!!』
微かに動く足の音。耳を澄ませば二人のもののみだと分かった。
言っていることは自己中極まりないが、気配からどうやら結構出来る奴らしい。
『おい』
徐々に眠る寝台まで近付いていたのか、声は俺の側で放たれた。
『起きてるんだろう』
『何を言って……彼はまだ』
「なんだ、バレてたんだ」
「へ?」
ごそりと布団らしきものから起き上がると、今まで彼を止めていた人物は背を俺に向けたまま驚いた声を出した。
「分からないのはコイツくらいだ」
「そ、そんな?!」
位置的に寝台の左側横にいる二人を起きた俺はまじまじと見てしまった。
いや、普通にして可笑しいだろ。
西洋の甲冑を軽装にし、肩から背へブルーのマントなんかしたのが一人と長袖のTシャツらしきものの上に胸元を編み上げたベストを着て、巻きスカートに下は膝上ほどのスパッツにロングブーツを履いた少年がいた。
映画か舞台衣装?騎士と従者のような出で立ちだ。
良く見れば騎士の方は、やたらと目鼻立ちの整ったパーツにシャープな輪郭。
髪は天然の蜂蜜色で瞳は澄み渡った晴れた空に良く似た青で……これが俗に言う白馬の王子さま?と首を傾げたくなる。
従者らしき少年は艶やかな栗色の髪に幼さの残った輪郭をし、茶系の明るい瞳。
目は大きめで鼻はすっと通り、ふっくらした唇。
アヌビスってこんな感じか。
それにしても、なんだこのスイートルームは。俺のいるベッドなんかキングサイズの天蓋付き。
テレビ番組でしか見たことないぞ。内心、動揺を隠せない俺をどう思ったのか、近付いた騎士の格好をした奴にいきなり剣で切りつけられた。
「マ、マクシム様!!」
慌てる少年を余所に俺はとっさに動き、近くにあった枕を囮に投げつける。呆気なく切り捨てられ、それに構わず次に布団らしきものを無礼な男に向かってめくり上げた。
形振り構っている余裕はない。相手は武器を持ち、こっちは武器を持ち合わせてない。
「お止め下さい殿下!」
大した効力もない制止の声。少年には悪いが、背に腹は代えられない。
「すまん、その短剣借りるぞ」
「え?!」
暴れる奴をなんとか布団にくるみ、踏みつけてベッドから降りた俺は制止する美少年から脇に持つ短剣を取り振り返ると。
「貴様!!」
踏みつけられたのがどうやら、頗(すこぶ)るほど感に障ったようでご立腹だ。先程確認した剣の切れあじと殺気にワクワクとした高揚が胸を占める。
ここがどこで、コイツ等が誰か知らないが。
「人に対して無闇やたらに剣を向けろって誰に習った」
「それを聞いてなんになる」
「お止め下さい殿下!!」
「お前は黙ってろ」
険しい顔は、妙に胡散臭い笑みをして俺に向かってきた。
0
あなたにおすすめの小説
【完結】雨降らしは、腕の中。
N2O
BL
獣人の竜騎士 × 特殊な力を持つ青年
Special thanks
表紙:meadow様(X:@into_ml79)
挿絵:Garp様(X:garp_cts)
※素人作品、ご都合主義です。温かな目でご覧ください。
偽りの聖者と泥の国
篠雨
BL
「感謝すら忘れた者たちに、明日を語る資格はない」
自らの都合で聖王セシルを追放し、異世界から新たな「勇者」を召喚したアドレアン聖王国。
しかし、その身勝手な選択が、国を、大地を、そして人々の心を根底から腐らせていく。
壊れゆく少年勇者と、彼を歪に愛した騎士。
二人の執着が交わったとき、聖王国は二度と再生不能な終焉へと突き進む。
裏切り者たちには、因果応報という名の、容赦なき報いが下る。
これは、傲慢な国が崩壊するまでの、無慈悲な記録。
-----------------------------------------
『嘘つき王と影の騎士』から引き続き読んでくださる皆様へ
この物語は、セシルを虐げた者たちが、ただただ因果応報の末路を辿るだけの物語です。
本編に救いはありません。
セシルたちのその後が気になるという方は、本編は飛ばして、最終話の後に掲載する「閑話」のみをお読みいただくことをお勧めいたします。
本作は『嘘つき王と影の騎士』の続編となりますが、前作をお読みでない方でも一つの物語としてお楽しみいただけます。
執着
紅林
BL
聖緋帝国の華族、瀬川凛は引っ込み思案で特に目立つこともない平凡な伯爵家の三男坊。だが、彼の婚約者は違った。帝室の血を引く高貴な公爵家の生まれであり帝国陸軍の将校として目覚しい活躍をしている男だった。
αからΩになった俺が幸せを掴むまで
なの
BL
柴田海、本名大嶋海里、21歳、今はオメガ、職業……オメガの出張風俗店勤務。
10年前、父が亡くなって新しいお義父さんと義兄貴ができた。
義兄貴は俺に優しくて、俺は大好きだった。
アルファと言われていた俺だったがある日熱を出してしまった。
義兄貴に看病されるうちにヒートのような症状が…
義兄貴と一線を超えてしまって逃げ出した。そんな海里は生きていくためにオメガの出張風俗店で働くようになった。
そんな海里が本当の幸せを掴むまで…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる