アナグシマンドホス

壱(いち)

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膨大な爆薬を使用し粉々になったコンクリート。
所々では火が上がるも消火に繋がるものはなにもない。
大神薬局があった広い敷地は見渡す限りが瓦礫の山。砂埃で辺りは視界が塞がっている。
ぽろぽろと転がるコンクリートで出来た石ころ。
シンと静まる辺り一面は不気味さを伴った静寂。

「………っ」

瓦礫の山に微かな音。

「………っ、おいおい、冗談だろ」

静寂を破り、出て来たのは湿った体にコンクリートが砕け、粉になったのをそこかしこに付け素っ裸な人。

「あー?いや、なんだこれ。準備いいな」

ごっそりと引き上げたのは筒型の大きなボストンバッグ。

「こんなの用意しといて簡単に死んでたらアイツの墓の前で大笑いしてやる」

地面にバッグを置き、しゃがんでガサゴソと物色したものを次々と身に着けていく様は間抜けにも圧巻といえよう。
人がいれば猥褻罪で捕まる。
準備がいいのか、服を着る前に入っていたバスタオルで体を拭いたら使いものにならない状態になっていった。

「さて、どうするか」

適当に掴んだ服を身に纏ったのは淡い水色のシャツに黒のスーツ。あてがったように、サイズに間違いはない。
流石だ崎。ピッタリな点は薄ら寒いから忘れてやる。

「真夏じゃなくて良かった」

暑かったら怨んじゃうね、俺。

用意周到にノートパソコンとガムテープに書かれた物を発見。あいつ、俺を原始人と間違えてないか?

「ノートパソコンくらい知ってるっつーの!いやに小さいし軽いけど」

壊れてないよな?修理なんて無理だぞ、おい。まあ、やっとここまで進歩したのか。考えてたより普通だな…。

まともな形のコンクリートの上に座り、太股の上にパソコンを置いて電源を入れ、立ち上げる。

ビバ!コードレス。

何時間使えるか分かんねぇから取り敢えず。

『やぁ、彬。目覚めはどうだい?』

お前が映る動画を先に観といてやるよ。

「良好だ。暫く見ない間に老けたな、崎」

シンと静まるここは、結構堪えるよ。何も音を遮るものがない。ただ、お前の声と俺の独り言が聞こえるだけ。強いて言えば建物が崩れて砂埃が凄いこと。

「すっげ目が痛いんだけど」







準備は整った。
再生 END.
甦るための最終兵器。






20150716.投稿
20160211.アルファ投稿
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