2 / 5
青天の霹靂
02
しおりを挟む気紛れに女と事に及んだことは数あれど、男と致した事はない。
「小綺麗な男め」
なんだか体が重いと思えば向かい合わせに寄り添い、相手の腕が腰辺りにあってこの重りかと納得して目が覚め、寝ていても美形と言える外見に息を飲めば下半身から異様な鈍痛を訴えられた。
く……っ、尻がいてぇ!
あだだだっ、とベッドで蠢いていれば男に腰を撫でられる。
「おはよう」
若干険しい顔をして掠れ声はセクシーにきめ目が覚めた模様の男へ痛みに悶え苦しんでいた俺は下から睨みつけてやった。
「涙目ってそそるよな」
「冷水浴びて目を覚ませや……っ」
大声を出せば力んだのか例の場所がズキン!とし俯せになって痛みに耐えた。
「おい、痛むのか」
「……ってぇ……っ、このヘタクソ!ぐあっ」
怒鳴れば痛いっていう悪循環。
この男、あれだけアフターケアも兼ねてローションとかスキンとか準備してたくせにこの始末だ!
「……あれだけやれば痛みがあっても普通だろ。どれだけイったか覚えてないのか?」
ブツブツ悪態を付くも昨夜のことは忘れていない俺は男の科白に全て思い出す。
「ぐあああ……っ、いてぇ!」
よしよしと頭を撫でられるが顔なんて上げられる状態じゃない。きっといま俺の顔は羞恥に染まっていることだろう。
顔が熱い!
「なあ、体の相性もいいって分かったし、俺と付き合う条件は満たしたよな?まあ、計五回も自分だけイって気絶したし無理とは言わないと思うが」
そのうちの三回は抜かずのなんとかだったなと苦笑混じりに言われ、途中、行動が読まれていて内心ギクリとした。
コイツは名前も知らない俺がバイトする店の常連客。何を血迷ったのか来る度に俺のことを構い、あろうことか口説いてくる。
最初は冗談かと思い笑顔で流していたら高価なプレゼント攻撃やバイトが終わる時間まで待ち伏せたりと、女が喜びそうなことを何度かされオーナーに問われるわ散々な目に遭ったのは数知れず、3ヶ月が経とうとした昨日。
いま思えば精神的ダメージがあったに違いない。昨夜はずっとバイトが終わるまで店に居続けた男に根気負けし、食事だけならと承諾して連れて行かれたのは創作料理の店。金は男持ちだと思った俺は店のオススメだというワインを調子に乗って飲み過ぎた。
フルコースのディナーは洋を基調とした日本食混合ときて、思わずときめいた結果がこれだ。酔っ払ったが、記憶がなくなるほど飲んだ訳じゃない。酔った勢いで出した体の相性が良かったら考えるというのを真に受けるコイツもどうかと思うが、勢いとはいえ善くして貰って散々喘いだこっちとしてはシーツに伏せるほかなく……。
「ヨウ」
耳元で囁かれる名はバイトで使っている偽名。強ち本名と大差ないが。
何を思ったか男は勢いよく俺を俯せから仰向けに返した。
「ちょ……っ、もうちょい加減にしろ」
「返事は?」
顔の横に肘をつき真っ正面から顔を見れば美形と納得しても高鳴る容姿に腹が立つ。
「痛い」
「俺はこの倍以上いてぇ」
むにっと両頬を摘んでやり、引き延ばしたあと勢いよく放してやった。
「おい」
この男、調子に乗って下半身を俺に押し付けてきた。そういや俺もコイツも隔てのない真っ裸!
「なに勃起してんだ」
「可愛いことするお前が悪い」
んー……と言ったかと思えば首に擦りよってくる。
「ちょっと待てって!」
「無理」
中途半端に止められて苛立つのは分かるが、昨夜あんだけやっといてまだやるか!
ぐぐっと近い顔を押しやって奴の方に手を置くと何を勘違いしたのか脂下がったような顔をされた後、濃厚な口付けを交わす。
「んんっ」
手を上げたのをいいことにタイミングよくシーツの上へホールドされてしまえば、動くのは上半身と下半身しかなくなりバタバタとベッドの上で抵抗すればなんなく足を絡めとられ、唇を噛んでやる!と意気込めば勘がいいのか離れたものの至近距離。
「積極的」
「違う!人の話を聞けって」
もう疲れちゃった、こんだけ動いただけなのに。未だ腰や尻は痛いし!
「なんだ、焦らしてんのか」
可愛いとかいうコイツの感覚が分からん。
「そうじゃねぇ、名前」
「あ?」
「な・ま・え。俺、あんたの名前知らないんだけど」
やっぱ、するなら必要じゃない。ムード考えたらさ。
呆気にとられたような顔をする男に、もしや勘違い?と思い段々と恥ずかしさが増してきた。
「お前な……」
ぽすっと丁度俺の胸の所に顔を置き、ぐったりと乗ってきたからかなり重い。
「ちょ、くるし……っ」
「なんで知らねぇんだ」
俺はあそこの客だぞとくぐもった声がし、そのうえ胸へ息がかかり擽ったい。
裏方だから、俺の仕事。フロアの内部事情は知らない。限られた時間で如何に手際よく作るかを一番に気にする。
そういえば昨日、母さんにゲイバーのウェイターだととっさに嘘をついてしまった。あの人の事だから嘘だってバレてそうだけど。水商売は間違いじゃないが、ホストクラブとは流石に言えなかった。
ホストやってる訳じゃないのに。
「………、だ」
「え?」
やべ、考え事してて聞いてなかった。
「木佐 礼二だ」
「……フルネームかよ」
「あ?なんか文句あんのか」
「いや、ないけど。そんな間近かで凄むなって」
皿洗いとか雑用全般のバイトなのにフルネーム聞いていいのかって気を使っただけなんだけど。がぶっと片方の肩を噛まれた。
歯形付けんな。
「ってことでもう1ラウンド付き合え」
「無理だって、俺いまから講義あるし……っ、マジ勘弁!」
「聞こえない」
なんて都合のいい耳してんの?!
昨夜の快感に慣らされた自分の体は思いとは裏腹に首筋から胸へと唇が掠めるだけで過剰反応し、突起をこねられたり舐められたら力が抜け落ちていく。
「肌触りがいいから離れ難い」
なんて、下から聞こえても弱いところを責め立てられて喘いで答えることなんか出来なかった。
結局1ラウンドと言いながら止めどなく行為は続けられ、気を失う俺。
この木佐礼二との出会いが、後々厄介なことになるなんて。
「俺を落とした代償は取って貰う」
知る由もない。
0
あなたにおすすめの小説
風に立つライオン
壱(いち)
BL
BL非王道全寮制学園の生徒会役員の主人公。王道転入生によって学校内の秩序や生徒会の役割だとかが崩壊した。金、地位、名誉、名声、権力、全てを手にしている者になったつもりでいたのは誰だったのか。
王道を脇役に主人公は以前出会った生徒会長の父との再会、恋人だった義父の病んでそうなカンジに眩暈がしそうだった。
犬に叱られる夢をみる
壱(いち)
BL
→アンチ寄りの非王道全寮制男子校が舞台ですが王道に辛辣なので苦手な方はご注意くださいませ。
王道を脇役に自治委員長が王道ホイホイになっちゃうかもしれなーい。なんちゃって。ありえません。
→予約更新の為、連載になりますが完結済み。最終は2/20です。
俺の人生を捧ぐ人
宮部ネコ
BL
誰かを好きになるなんて、気持ち悪いと思ってた幼少期の自分。
高校一年の途中、あいつと再会したことでその気持ちが揺らぐ。
気付いたら止められない気持ちを一体どうすればいいのか。
俺はずっと持て余し、十年ほどの片思いを続けた後、決めた。気持ちを伝えようと。
※一応完結しましたが、現在修正しています。
そのため一度連載中に戻していますのであしからず。
目立たないでと言われても
みつば
BL
「お願いだから、目立たないで。」
******
山奥にある私立琴森学園。この学園に季節外れの転入生がやってきた。担任に頼まれて転入生の世話をすることになってしまった俺、藤崎湊人。引き受けたはいいけど、この転入生はこの学園の人気者に気に入られてしまって……
25話で本編完結+番外編4話
百合豚、男子校に入る。
揺
BL
百合をこよなく愛する男子高校生・眞辺恵。
母の歪んだ価値観により共学への進学を断たれ、彼が入学させられたのは――
男同士の恋愛が“文化”として成立している、全寮制男子校《私立瑞嶺学園》だった。
この学園では、生徒会長は「抱かれたいランキング」で選ばれ、美貌こそが正義とされる世界。
それでも眞辺は決意する。
生徒会長になり、この学校を“共学”に変え、間近で百合を拝むことを。
立ちはだかるのは、顔面至上主義の学園制度、性に奔放すぎるイケメンな幼馴染、そして彼らに憧れ恋をする生徒たち。
さらに何故か、学園の人気者たちに次々と目をつけられてしまい――。
百合を拝むため男子校を変えようとする異端者が、歪んだ王道学園を改革する物語。
双子の神様(弟)は大天使に愛される
ユーリ
BL
「さあ、祈りましょう」
双子の神様(弟)であるリリィは困っていた。兄が長期不在のため、代わりにと置いていったのが大天使のルークである。リリィにとっての特別な存在である神官になりたいと言われてーー「お前は綺麗だ。お前は美しい」世話焼き大天使×自分に自信のない泣き虫美少年神様「僕は美しくなんてない。だって僕は…」
代わりでいいから
氷魚彰人
BL
親に裏切られ、一人で生きていこうと決めた青年『護』の隣に引っ越してきたのは強面のおっさん『岩間』だった。
不定期に岩間に晩御飯を誘われるようになり、何時からかそれが護の楽しみとなっていくが……。
ハピエンですがちょっと暗い内容ですので、苦手な方、コメディ系の明るいお話しをお求めの方はお気を付け下さいませ。
他サイトに投稿した「隣のお節介」をタイトルを変え、手直ししたものになります。
寂しいを分け与えた
こじらせた処女
BL
いつものように家に帰ったら、母さんが居なかった。最初は何か厄介ごとに巻き込まれたのかと思ったが、部屋が荒れた形跡もないからそうではないらしい。米も、味噌も、指輪も着物も全部が綺麗になくなっていて、代わりに手紙が置いてあった。
昔の恋人が帰ってきた、だからその人の故郷に行く、と。いくらガキの俺でも分かる。俺は捨てられたってことだ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる