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運命の人 五
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「ここのレストラン、ほんとにおいしいね。奏、連れてきてくれてありがとう。」
「ううん。そう言ってくれて嬉しいよ。」
「でも、好きな人と一緒に食べると、もっとおいしいかも。」
奈美が少し照れながら、そう言った。普段はどちらかというとシャイな方で、こういったことは言わないタイプの奈美であったが、時折見せる大胆な発言、表情は、奏をどきどきさせる。
「僕もそう思うよ。今日は奈美とこの場所に来れて、本当に良かった。」
「ありがとう、奏。」
今度は奈美が、満面の笑みを見せた。いつも思うことだが、奈美は笑顔が素敵で、そのことが奏を余計に夢中にさせる。また、さっきの発言の時の照れた表情と、満面の笑みとのギャップが、奏の心を掴んで離さない。
「そういえば奏、今でも小説、書いてるの?」
「うん、書いてるよ。」
奏と奈美との話題が小説のことになり、奏は少しだけ、ヒートアップし始めた。
「そうだね。ここの所は、仕事から帰るとずっと、執筆してるかな。前までは見てたテレビもほとんど見てないし、ネットもあんまりしてないね。これじゃあまるで、小説のgeekギークになったみたい。」
「えっ、ギークって何?」
「ごめんごめん、ギークっていうのは、英語でオタクのことだよ。自分ではオタクになってるつもりはないけど、傍から見たら、完全にオタクになってるかな?」
「そんなことないよ、って言った方がいいのかな?でも、そう言ったらオタクの人に失礼になっちゃうね。どっちにしろ、何か夢中になれるものがあるってことは、幸せだし、素敵なことだと思うよ。」
奈美の一言に、奏は改めて、励まされた。奈美と付き合い始めて以来、何度奈美の言葉、そして笑顔に、励まされてきたことだろう。
「それで、いつも言ってるけど、僕、プロの作家になることが夢なんだ。もちろん、プロの世界は厳しいし、そう簡単にはなれないことは分かってる。でも、僕は挑戦してみたい。もちろん、今の仕事を辞めるつもりはないよ。介護士の仕事を捨てて、作家一本でいくことは、リスクが大きすぎるからね。ちゃんと、地に足をつけて、その上で、作家の夢を追いかけたい。それに、今売れている作家の中にも、別の仕事と掛け持ちしている、兼業作家が多くいるんだ。僕がそうなれるかは分からないけど、とりあえず新人賞に応募して、自分の実力を、試していきたい、そう思ってるよ。」
「うん。奏の夢の話、何度聴いても、飽きないよ。」
奏は少し早口になりながら、奈美に今の思いを伝えた。気づけば、今日のために予約したレストランのコースは、デザートが出る順番まで来ていた。自分へのごほうびのため、そして大好きな奈美のためにセッティングした楽しい時間も、もう少しで終わりを迎える。
「そうか~。プロの作家か。でも、それでもし、奏が新人賞に受かって、作家デビューしたら、人生、変わっちゃうね。」
奈美は冗談交じりで、こう言った。
「それで、書いた小説がどんどん売れ出して、一流作家の仲間入り、なんてことになったらどうする?」
「それは、嬉しいけど…。」
「そうなったら、印税収入がたくさんだね。そしたら、私のために、好きなブランドのバッグや小物、いっぱい買ってくれる?」
「もちろん、そうなればだけど、奈美のためなら何でもするよ。」
奈美の冗談に、奏は答えた。奏は、奈美にはこういう、かわいらしい所もあるのだと、思った。
「ありがとう。じゃあ期待して待っておくね。でも、もし奏が一流作家になったら、私のことなんか忘れて、他の女の人と、付き合い始めたりして。」
「そんなこと言わないでよ。僕にとって、奈美は1番の存在なんだ。だから何が起こっても、奈美とは別れたくない。」
どうやら奈美は、少しだけ飲んだお酒に、酔っているようだ、奏はそう思った。奏も奈美も、お酒には決して強くはない。
「冗談だよ冗談。困らせてごめんね。でも、ムキになった奏、ちょっとかわいかった。
私は、一流作家の印税や肩書きも、高級ブランドのバッグも、何もいらない。ただ、奏と一緒に過ごせて、一緒に笑い合って、辛い時、悲しい時には一緒に泣いて、そうやって奏と一緒に毎日いられたら、それでいいんだ。だからこれからも、よろしくお願いします!
もちろん、奏が作家になりたいのなら、全力で応援するよ。奏の力になりたいから、何かあったらいつでも言ってね。
ちょっとしんみりさせちゃって、ごめんね。」
最後に奈美は、満面の笑みを見せた。奏は、自分は何て幸せなんだろう、奈美のためにも、作家という夢だけでなく、介護士の仕事も、しっかり頑張らなければいけない、と思い、その決意を新たにした。
「そろそろ時間だね。帰ろうか。」
奏と奈美は、レストランを後にした。介護士の仕事をしている奏は、次の日から、また仕事に向かわなければならない。奏は、レストランを出る前に決意した、仕事も頑張らねばならない、という思いと、仕事も何もかも忘れて、このまましばらくの間、奈美とずっと過ごしたいという、2つの相反する思いを抱えて、レストランから出たのであった。
「ううん。そう言ってくれて嬉しいよ。」
「でも、好きな人と一緒に食べると、もっとおいしいかも。」
奈美が少し照れながら、そう言った。普段はどちらかというとシャイな方で、こういったことは言わないタイプの奈美であったが、時折見せる大胆な発言、表情は、奏をどきどきさせる。
「僕もそう思うよ。今日は奈美とこの場所に来れて、本当に良かった。」
「ありがとう、奏。」
今度は奈美が、満面の笑みを見せた。いつも思うことだが、奈美は笑顔が素敵で、そのことが奏を余計に夢中にさせる。また、さっきの発言の時の照れた表情と、満面の笑みとのギャップが、奏の心を掴んで離さない。
「そういえば奏、今でも小説、書いてるの?」
「うん、書いてるよ。」
奏と奈美との話題が小説のことになり、奏は少しだけ、ヒートアップし始めた。
「そうだね。ここの所は、仕事から帰るとずっと、執筆してるかな。前までは見てたテレビもほとんど見てないし、ネットもあんまりしてないね。これじゃあまるで、小説のgeekギークになったみたい。」
「えっ、ギークって何?」
「ごめんごめん、ギークっていうのは、英語でオタクのことだよ。自分ではオタクになってるつもりはないけど、傍から見たら、完全にオタクになってるかな?」
「そんなことないよ、って言った方がいいのかな?でも、そう言ったらオタクの人に失礼になっちゃうね。どっちにしろ、何か夢中になれるものがあるってことは、幸せだし、素敵なことだと思うよ。」
奈美の一言に、奏は改めて、励まされた。奈美と付き合い始めて以来、何度奈美の言葉、そして笑顔に、励まされてきたことだろう。
「それで、いつも言ってるけど、僕、プロの作家になることが夢なんだ。もちろん、プロの世界は厳しいし、そう簡単にはなれないことは分かってる。でも、僕は挑戦してみたい。もちろん、今の仕事を辞めるつもりはないよ。介護士の仕事を捨てて、作家一本でいくことは、リスクが大きすぎるからね。ちゃんと、地に足をつけて、その上で、作家の夢を追いかけたい。それに、今売れている作家の中にも、別の仕事と掛け持ちしている、兼業作家が多くいるんだ。僕がそうなれるかは分からないけど、とりあえず新人賞に応募して、自分の実力を、試していきたい、そう思ってるよ。」
「うん。奏の夢の話、何度聴いても、飽きないよ。」
奏は少し早口になりながら、奈美に今の思いを伝えた。気づけば、今日のために予約したレストランのコースは、デザートが出る順番まで来ていた。自分へのごほうびのため、そして大好きな奈美のためにセッティングした楽しい時間も、もう少しで終わりを迎える。
「そうか~。プロの作家か。でも、それでもし、奏が新人賞に受かって、作家デビューしたら、人生、変わっちゃうね。」
奈美は冗談交じりで、こう言った。
「それで、書いた小説がどんどん売れ出して、一流作家の仲間入り、なんてことになったらどうする?」
「それは、嬉しいけど…。」
「そうなったら、印税収入がたくさんだね。そしたら、私のために、好きなブランドのバッグや小物、いっぱい買ってくれる?」
「もちろん、そうなればだけど、奈美のためなら何でもするよ。」
奈美の冗談に、奏は答えた。奏は、奈美にはこういう、かわいらしい所もあるのだと、思った。
「ありがとう。じゃあ期待して待っておくね。でも、もし奏が一流作家になったら、私のことなんか忘れて、他の女の人と、付き合い始めたりして。」
「そんなこと言わないでよ。僕にとって、奈美は1番の存在なんだ。だから何が起こっても、奈美とは別れたくない。」
どうやら奈美は、少しだけ飲んだお酒に、酔っているようだ、奏はそう思った。奏も奈美も、お酒には決して強くはない。
「冗談だよ冗談。困らせてごめんね。でも、ムキになった奏、ちょっとかわいかった。
私は、一流作家の印税や肩書きも、高級ブランドのバッグも、何もいらない。ただ、奏と一緒に過ごせて、一緒に笑い合って、辛い時、悲しい時には一緒に泣いて、そうやって奏と一緒に毎日いられたら、それでいいんだ。だからこれからも、よろしくお願いします!
もちろん、奏が作家になりたいのなら、全力で応援するよ。奏の力になりたいから、何かあったらいつでも言ってね。
ちょっとしんみりさせちゃって、ごめんね。」
最後に奈美は、満面の笑みを見せた。奏は、自分は何て幸せなんだろう、奈美のためにも、作家という夢だけでなく、介護士の仕事も、しっかり頑張らなければいけない、と思い、その決意を新たにした。
「そろそろ時間だね。帰ろうか。」
奏と奈美は、レストランを後にした。介護士の仕事をしている奏は、次の日から、また仕事に向かわなければならない。奏は、レストランを出る前に決意した、仕事も頑張らねばならない、という思いと、仕事も何もかも忘れて、このまましばらくの間、奈美とずっと過ごしたいという、2つの相反する思いを抱えて、レストランから出たのであった。
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