Geekに恋した2人

べいかー

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三角関係 七

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 しかし、奏以上に、予想外の緊張をしたのは、ユイカの方であった。

 奏に初めて会った時、そして奏とあいさつをした時、ユイカの中で、何かがはじけた。一応、奏の作品は全部読んできたので、奏の人となりは、それなりに理解して来たつもりである。でも、実際の奏は、違った。いや、これが他の人なら、「単に書いてあるものと、会った時の印象とが違う。」というだけのことであるかもしれない。しかし、ユイカの感情は、それとも違う。

 奏を見た瞬間、その一瞬で、ユイカの心は、奏に奪われた。それは、単に奏の見た目だけに惹かれたのではなく、奏の著作からのエネルギーが、奏の全身に、集約されているかのようなものであった。

 「私は、もしかして、奏さんのことが好き…?」

ユイカは、次の瞬間そう思ったが、すぐに、その感情を打ち消そうとした。

 ユイカは今まで、その美貌や性格から、多くの男性に好意を寄せられるタイプであった。そのため、特に学生時代など、例えば同じクラスの男子から告白されたことも、1度や2度ではない。

 そして、その告白を受け入れ、男子と付き合ったこともあるし、またユイカの方からある男の子を好きになり、告白して付き合ったこともある。ユイカの性格上、男遊びが激しい方では決してなかったので、今まで付き合った男性の人数は、多い方ではなかったが、それでもユイカは、決して自分は恋愛慣れしていないタイプではない、と、自分自身で思っていた。

 また、ユイカは、「交際するなら、真剣にしたい。」と思うタイプであったので、いわゆる一目ぼれなどしないと、自分で思っているタイプであった。実際、今まで好きになった人、付き合った人は、一目ぼれではなく、よく考えた上で、そういう関係になった人ばかりである。だから、ユイカは、自分は一目ぼれとは無縁であると、勝手に思っていた。

 そのため、

「奏さんに出会い、自分がこんな気持ちになるなんて、完全に予想外だわ。」

ユイカは、そう思った。そして、「一目ぼれを絶対にしないポリシー」を持っていることから、また、仕事のオンとオフを使い分けるユイカの性格から、ユイカは、奏に対する思いを、打ち消そうとした。

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