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ジェラシー 五
しおりを挟む「何、急に改まって、話って?」
奏が奈美に、そう尋ねた。奈美は、ユイカとの一件から数日後、奏を、
「ちょっと、話がしたいんだけど…。」
と言って、近くのレストランに呼び出していた。
「うん、それなんだけど…。
私たち、今日で別れない?」
「えっ、何で急に?」
「私、思ったんだ。奏は、夢だった小説の新人賞をとって、これから作家として、活動していくじゃない?そんな奏に、私みたいな彼女がいたら、たぶん、じゃまになるよ…。」
「そんなことないよ!」
「ありがとう。でも、私なんか、特に才能があるわけでもないし、どこかのお嬢様なんかでもないし…。やっぱり、奏とは釣り合わないよ。
そう、これからの奏にとって必要な人は、もっとしっかりした女の子だと思う。例えば…、ユイカさんとか。」
「どうしてユイカさんの名前が出てくるの?」
奏は奈美の発言に、困惑した。
「だって、この間、奏が『ユイカさんと対談する』って言ってたじゃない?それに、奏、ユイカさんのファンだったよね?だったら、告白して付き合っちゃいなよ。」
「それとこれとは話が別だよ。僕は奈美と…」
「ごめん、私の言いたいことはそれだけ。じゃあ私、帰るね。今まで本当にありがとう。私、奏に出会えて良かった。お金は私が払うから、置いていくね。
さよなら。」
奏は奈美を引き止めようとしたが、その制止を振り払うかのように、奈美はレストランを出て行った。奈美のいなくなったレストランには、奈美の置いていったお札と、伝票とが置かれていた。いつもは奏が多めに払うか、割り勘にしていたデートの費用なのに、今日という日は、そんなところから違和感だらけだなと、奏は思った。また、外は、奈美と奏がレストランに入った時は曇り空であったが、みるみるうちに雨が降り出し、奈美が出て行った頃にはどしゃ降りになっていた。「その雨は、今の2人の心境を表している…。」奏は作家にしては、やや月並みな表現を思いつき、ちょっとありきたり過ぎるかなと、一人で苦笑した。そしてその直後、涙が止まらなくなった。降り出した雨は、本当に、奏の今の気持ちを、表していた。
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