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Geekに恋した2人 五
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「お久しぶりです、奏さん。」
「久しぶりです。ユイカさん。」
ユイカは後日、奏をユイカの自宅の近所の公園に呼び出した。その日は奏もユイカも午前中は仕事がなく、午後から仕事が入っていたので、待ち合わせにはちょうど良かった。また、平日の午前中ということもあり、その公園には奏とユイカ以外、誰もいなかった。
この日のユイカの服装は、いつものユイカらしからぬ、ジャージ姿であった。化粧も、うっすらとはしているが、ほぼノーメークに近い、ナチュラルメイクであった。思えばユイカは、好きな男性と会うというのに、どうしてこのような、手抜きともとれるような格好をしたのだろうか?それは、ユイカ本人にもはっきりとは分からないが、ユイカは奏に、よそ行きの自分とは違う、素の自分を見て欲しかったのかもしれない。また、前回奈美と会った時の、高圧的な態度はもうとりたくないという、ユイカの意思の表れなのかもしれない。
「その後、仕事は順調ですか?奏さん。」
「そうですね…一応小説は、次回作を書いています。こっちの作品も、ブレイクするといいんですが…。でも、こればっかりは分かりませんね。
あと、介護士の方の仕事は、順調ですよ。介護の仕事って、大変なことも多いですが、人の役に立つ仕事なので、やりがいも大きいです。
ユイカさんは、仕事は順調ですか?」
「はい。ご存知かとは思いますが、今度、2時間ドラマに出演するんです。それで、少し前に、撮影が終了して、後はオンエアを待つだけです。お芝居の仕事は初めてだったので、緊張しましたが、楽しく演じることができました。
2時間ドラマ、頑張ったので、奏さんにも見て欲しいです!」
「もちろんです!ちゃんとチェックしますよ。」
「ありがとうございます!また感想、聞かせてくださいね。
それで、今日は、奏さんに謝りたいことがあって、お時間、頂きました。」
「謝りたいことですか?」
「はい。実は先日、奏さんの彼女の、木村奈美さんに、お会いしました。」
「えっ!?」
「びっくりしますよね。当然です。だって奏さんは前に、彼女がいる、ってことは教えてくれたけど、名前までは言っていませんから。
私、奏さんに振られた後、家に帰って、気持ちを落ち着けようとして、でも、奏さんのことが忘れられなくて、それで、勝手に奏さんのSNSを見ちゃったんです。そこからたどっていって、奏さんの彼女の、木村奈美さんのページを見つけてしまって…。それで、奈美さんが○○保育園に勤務している、ということまで調べてしまって、その後すぐに、奈美さんの保育園まで押しかけてしまったんです。
そこで私は…、奈美さんにひどいことを言ってしまいました。
『あんたなんか、奏さんにふさわしくない。』
とか、
『私の方が、奏さんにふさわしい。』
っていうような内容のことです。
今考えても、私のしたことは、最低のことだと思います。言い訳はしません。それで、奈美さんにも謝ろうと思ったのですが、合わせる顔がなくて。」
「そうですか。実はつい先日、僕は奈美に振られました。
『奏だったら、ユイカさんの方がお似合いだよ。』
というようなことを、言っていましたね。でも、その時はそんな一件があったとは、思いませんでしたが…。」
「えっ、そんな。私、大変なことを…。」
「いいんです。奈美に振られたのは、僕の責任で、ユイカさんは関係ないと思います。それと奈美には、ユイカさんが謝っていたこと、伝えておきます。」
「ありがとうございます。奏さんはやっぱり、優しいですね。」
そしてユイカは、この日言おうとしていたこと、1番言いたかったことを、話し始めた。
「それで私、気づいたことがあります。
私、やっぱり奏さんのことが好きです。この気持ちを、自分の中で何度も確かめましたが、その答えに変わりはありません。
私は奈美さんに、ひどいことをしました。それは、謝るべきことだと、思っています。でも、奏さんを簡単に諦めきれない、私がいます。だから、今度は正々堂々と、奈美さんと勝負させてください。
これは私にとって、奏さんへの2度目の告白、そして、最後の告白です。もし奏さんが、それでも奈美さんのことが好き、と言われるなら、私は身を引きます。奈美さんと、幸せになってください。
でももし、奏さんが私を選んでくれるなら、絶対に、そのことを後悔させません。私は、全力で奏さんを幸せにします。
だからゆっくり考えて、答えを出してくれたら、ありがたいです。返事はいつでもいいです。いい答え、期待しています。
こう見えてって言ったら何ですが、私、けっこう自信があったりするんですよ…!」
冗談っぽく言った、最後のユイカの言葉は、奏の中で、とても可愛らしく響いた。これが、外見だけでなく、中身も超一流の、トップモデルの言葉なのだろう、奏はその時、そう思った。
「では私はこれで、失礼します。奏さんも、気をつけて帰ってくださいね。」
「分かりました。ありがとうございます。」
ここで、奏とユイカは別れた。ユイカは奏に思いの全てを伝え、晴れやかな表情であった。また、今日の気温も、冬にしては少し暖かめで、それがやがて訪れる、春の気配を予感させた。
「久しぶりです。ユイカさん。」
ユイカは後日、奏をユイカの自宅の近所の公園に呼び出した。その日は奏もユイカも午前中は仕事がなく、午後から仕事が入っていたので、待ち合わせにはちょうど良かった。また、平日の午前中ということもあり、その公園には奏とユイカ以外、誰もいなかった。
この日のユイカの服装は、いつものユイカらしからぬ、ジャージ姿であった。化粧も、うっすらとはしているが、ほぼノーメークに近い、ナチュラルメイクであった。思えばユイカは、好きな男性と会うというのに、どうしてこのような、手抜きともとれるような格好をしたのだろうか?それは、ユイカ本人にもはっきりとは分からないが、ユイカは奏に、よそ行きの自分とは違う、素の自分を見て欲しかったのかもしれない。また、前回奈美と会った時の、高圧的な態度はもうとりたくないという、ユイカの意思の表れなのかもしれない。
「その後、仕事は順調ですか?奏さん。」
「そうですね…一応小説は、次回作を書いています。こっちの作品も、ブレイクするといいんですが…。でも、こればっかりは分かりませんね。
あと、介護士の方の仕事は、順調ですよ。介護の仕事って、大変なことも多いですが、人の役に立つ仕事なので、やりがいも大きいです。
ユイカさんは、仕事は順調ですか?」
「はい。ご存知かとは思いますが、今度、2時間ドラマに出演するんです。それで、少し前に、撮影が終了して、後はオンエアを待つだけです。お芝居の仕事は初めてだったので、緊張しましたが、楽しく演じることができました。
2時間ドラマ、頑張ったので、奏さんにも見て欲しいです!」
「もちろんです!ちゃんとチェックしますよ。」
「ありがとうございます!また感想、聞かせてくださいね。
それで、今日は、奏さんに謝りたいことがあって、お時間、頂きました。」
「謝りたいことですか?」
「はい。実は先日、奏さんの彼女の、木村奈美さんに、お会いしました。」
「えっ!?」
「びっくりしますよね。当然です。だって奏さんは前に、彼女がいる、ってことは教えてくれたけど、名前までは言っていませんから。
私、奏さんに振られた後、家に帰って、気持ちを落ち着けようとして、でも、奏さんのことが忘れられなくて、それで、勝手に奏さんのSNSを見ちゃったんです。そこからたどっていって、奏さんの彼女の、木村奈美さんのページを見つけてしまって…。それで、奈美さんが○○保育園に勤務している、ということまで調べてしまって、その後すぐに、奈美さんの保育園まで押しかけてしまったんです。
そこで私は…、奈美さんにひどいことを言ってしまいました。
『あんたなんか、奏さんにふさわしくない。』
とか、
『私の方が、奏さんにふさわしい。』
っていうような内容のことです。
今考えても、私のしたことは、最低のことだと思います。言い訳はしません。それで、奈美さんにも謝ろうと思ったのですが、合わせる顔がなくて。」
「そうですか。実はつい先日、僕は奈美に振られました。
『奏だったら、ユイカさんの方がお似合いだよ。』
というようなことを、言っていましたね。でも、その時はそんな一件があったとは、思いませんでしたが…。」
「えっ、そんな。私、大変なことを…。」
「いいんです。奈美に振られたのは、僕の責任で、ユイカさんは関係ないと思います。それと奈美には、ユイカさんが謝っていたこと、伝えておきます。」
「ありがとうございます。奏さんはやっぱり、優しいですね。」
そしてユイカは、この日言おうとしていたこと、1番言いたかったことを、話し始めた。
「それで私、気づいたことがあります。
私、やっぱり奏さんのことが好きです。この気持ちを、自分の中で何度も確かめましたが、その答えに変わりはありません。
私は奈美さんに、ひどいことをしました。それは、謝るべきことだと、思っています。でも、奏さんを簡単に諦めきれない、私がいます。だから、今度は正々堂々と、奈美さんと勝負させてください。
これは私にとって、奏さんへの2度目の告白、そして、最後の告白です。もし奏さんが、それでも奈美さんのことが好き、と言われるなら、私は身を引きます。奈美さんと、幸せになってください。
でももし、奏さんが私を選んでくれるなら、絶対に、そのことを後悔させません。私は、全力で奏さんを幸せにします。
だからゆっくり考えて、答えを出してくれたら、ありがたいです。返事はいつでもいいです。いい答え、期待しています。
こう見えてって言ったら何ですが、私、けっこう自信があったりするんですよ…!」
冗談っぽく言った、最後のユイカの言葉は、奏の中で、とても可愛らしく響いた。これが、外見だけでなく、中身も超一流の、トップモデルの言葉なのだろう、奏はその時、そう思った。
「では私はこれで、失礼します。奏さんも、気をつけて帰ってくださいね。」
「分かりました。ありがとうございます。」
ここで、奏とユイカは別れた。ユイカは奏に思いの全てを伝え、晴れやかな表情であった。また、今日の気温も、冬にしては少し暖かめで、それがやがて訪れる、春の気配を予感させた。
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