Geekに恋した2人

べいかー

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Geekに恋した2人 六

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 奏はその日の晩、奈美とユイカ、2人の女性について、考えた。そして―。




 「ごめんなさい。ユイカさん、やっぱり、あなたと付き合うことはできません。」

ユイカを奏が、前に来た公園に呼び出したのは、数日後のことであった。

「やっぱり僕、奈美のことが好きなんです。」

「…そうですか。分かりました。なら、仕方ないですね。

 私、奏さんと出会って、胸がキュンとしました。そして、人に恋する気持ち、人を愛しく思うことの大切さを、知りました。まあ、付き合った彼氏は、昔にもいたんですけどね。

 それは関係ないですけど、とにかく私、奏さんと出会えて、本当に良かった。これで、私の気持ちにも整理がつきました。これからは、奏さんと奈美さんとの関係、全力で応援します。もしよければ、これからも友達として、仕事の愚痴なんかあれば、言ってきてくださいね。」

「分かりました。本当にすみません。」

「いいんです。それにしても、この私を振るなんて、いい度胸だと思いますよ!普段こんなこと、絶対に言わないんですけど、今日だけは言ってみちゃった。許してくださいね。」

 奏はユイカの一言に、笑みを見せた。

「そうですよね。だって、トップモデルのユイカさんですもんね。」

「本当は私、そんな女じゃないんですけど…。今日だけですよ!

 最後になりますが、本当に、ありがとうございました!」

「こちらこそ。ありがとうございました!」

 ユイカは、奏との最後の時間を、深々とした礼で終わらせた。その礼は、この場にしては少し不自然で、ユイカにしてみれば、少しおどけたつもりである。奏の方からも、その姿と、この状況のギャップに、少しだけ笑いがこぼれた。

 今日のユイカの格好は、全体的にラフであったが、数日前のジャージ姿ではなかった。ユイカとしては、今日の日のため、少しガーリーに、おしゃれをしてきたつもりである。そのおしゃれをした結果は、結局実らなかったが、ユイカの心の中に、後悔の2文字は全くなかった。

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