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第11話 かりそめの王太子妃
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王太子夫妻お披露目のパーティは、国内の貴族や外国の要人を招いて華やかに催される。
メルの瞳によく合うセージグリーンのドレスは王太子の上着の色とお揃いでこしらえた。
そこに王妃たちも欲しがった大粒のピンクダイヤモンドのブローチを胸元にあしらい、この日ばかりはメルの装いが一番輝いて見えた。
メルの装身具を見て王妃や王女が少し顔をしかめていたが、主役は何と言っても王太子夫妻なのだから、それに文句をつけることはできない。
呪いのことは王族とそれにかかわるごく一部しか知らないことで、対外的には王太子は暗殺防止のため、昔から仮面をかぶっているという風に伝えられていた。
呪いのおかげで、魔力が封じ込められている魔石が王家所有の山から大量に採掘することができ、それが王家の富の源と言われている。
平凡な農業国のメディアの王族が他国の王侯貴族を圧倒するほどの富を誇っているのは、歴代の王太子が呪いをかぶり続けているからである。
お披露目が滞りなく終えることができた翌日からは、メルは王太子妃としての書類仕事を任されることとなった。
その大半は王妃の裁量で王太子妃に任される書類仕事である。
「いずれ私が王太子の座を降りるのは決定事項なのですから、臨時の王太子妃のメルに過剰な業務を任せるのはおかしいでしょう。後になって困るのは母上と後任の王太子妃ではありませぬか?」
ベネット『王太子』は母である王妃に意見した。
「おだまりなさい! これは彼女の実家の侯爵家からも言われているからなのですよ!」
「なぜ彼女の実家が?」
「あちらにはあちらの考えがあって長女の処遇について私たちに要望を出してきたのです。その通りにして何が悪いの?」
王妃は自分の意見を通すためにメルの実家の『要望』というものをねじ込んできた。
そしてどうやらこれは本当のことであるようだ。
「わかりました。しかし彼女の自由時間を過度に奪ったり、心身の健康を損なうような使い方をされることは絶対に許しませんからね!」
これ以上の議論は無駄と判断し、ベネットは話を切り上げて王妃にくぎを刺した。
「まったく忌々しい。ああ、いつになったら私は唾棄すべき過去から解放されるのか。はやくオーブリーかクレールに本当の王太子にふさわしい素養を身に着けてもらわなければ……」
ベネットが部屋から出て言ったのを見届けてから王妃はつぶやいた。
長男ベネットの代わりとなるのが、第二王子のオーブリーか、第三王子のクレールかは、メルにもベネットにも興味のない事柄であったので、そちらの動きに関する情報はいっさい入ってこぬまま、粛々とそれぞれの義務を果たす日々が十日ほど続いた。
ある日のこと、侍従がメルの執務室を訪れる。
「失礼いたします、王太子妃殿下。昨日海に面したアクタラッサより献上品がございまして、それらの食材を使ったディナーが催されるので、夕刻、大食堂へお出まし願います」
メルの瞳によく合うセージグリーンのドレスは王太子の上着の色とお揃いでこしらえた。
そこに王妃たちも欲しがった大粒のピンクダイヤモンドのブローチを胸元にあしらい、この日ばかりはメルの装いが一番輝いて見えた。
メルの装身具を見て王妃や王女が少し顔をしかめていたが、主役は何と言っても王太子夫妻なのだから、それに文句をつけることはできない。
呪いのことは王族とそれにかかわるごく一部しか知らないことで、対外的には王太子は暗殺防止のため、昔から仮面をかぶっているという風に伝えられていた。
呪いのおかげで、魔力が封じ込められている魔石が王家所有の山から大量に採掘することができ、それが王家の富の源と言われている。
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その大半は王妃の裁量で王太子妃に任される書類仕事である。
「いずれ私が王太子の座を降りるのは決定事項なのですから、臨時の王太子妃のメルに過剰な業務を任せるのはおかしいでしょう。後になって困るのは母上と後任の王太子妃ではありませぬか?」
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「なぜ彼女の実家が?」
「あちらにはあちらの考えがあって長女の処遇について私たちに要望を出してきたのです。その通りにして何が悪いの?」
王妃は自分の意見を通すためにメルの実家の『要望』というものをねじ込んできた。
そしてどうやらこれは本当のことであるようだ。
「わかりました。しかし彼女の自由時間を過度に奪ったり、心身の健康を損なうような使い方をされることは絶対に許しませんからね!」
これ以上の議論は無駄と判断し、ベネットは話を切り上げて王妃にくぎを刺した。
「まったく忌々しい。ああ、いつになったら私は唾棄すべき過去から解放されるのか。はやくオーブリーかクレールに本当の王太子にふさわしい素養を身に着けてもらわなければ……」
ベネットが部屋から出て言ったのを見届けてから王妃はつぶやいた。
長男ベネットの代わりとなるのが、第二王子のオーブリーか、第三王子のクレールかは、メルにもベネットにも興味のない事柄であったので、そちらの動きに関する情報はいっさい入ってこぬまま、粛々とそれぞれの義務を果たす日々が十日ほど続いた。
ある日のこと、侍従がメルの執務室を訪れる。
「失礼いたします、王太子妃殿下。昨日海に面したアクタラッサより献上品がございまして、それらの食材を使ったディナーが催されるので、夕刻、大食堂へお出まし願います」
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