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第12話 会食での嫌がらせ
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形式だけの結婚なので『家族』といわれてもピンとこなかったが、メルは初めて王家一家がそろう夕食の席に足を向けた。
侍従に案内され部屋に足を踏み入れると、
「あら、来たの?」
と、王妃が冷淡な言葉をかけた。
その部屋には王家の人々となぜかエメもいた。
しかし、夫である王太子ベネットはいない。
「そこに席を作ってあげなさい」
王妃の指令でメルの席が長テーブルの入り口に一番近いところに作られた。
部屋にいる者たちにはすでに食前酒と前菜が給されている。
メルに急きょ用意されたものは彼らのものより質素で見た目も劣るものであった。
「このグランシャーモンのカナッペとても美味しいですわね、クレール様」
「そうだろう、このルオマールも試してごらんよ」
メルの扱われ方をよそ眼に、彼らはどうやら侍従の言っていたアクタラッサの献上品である魚介類を楽しんでいた。
いったいどういうつもりで自分を呼んだのか、と、メルはいぶかった。
その後、スープ、メインディッシュと進んでいっても、メルの料理だけいつも食している平凡な、彼らが食べている者よりは一段劣るものであった。
王家の者とエメはまるでメルをいないもののように扱い、自分たちの食事に舌鼓を打ちながら、時々ちらちら彼女の方を見てはほくそ笑んでいた。
「失礼します!」
メインディッシュの途中で突然、王太子ベネットが入ってきた。
「なんですか、突然!」
「ベネット、不作法だぞ!」
王妃と国王が口々に入ってきた王太子ベネットをとがめた。
「無作法、これは異なことを? 我が妻をテーブルの端に座らせて一段劣るメニューの食事を提供し、まるで使用人のような扱いをしている。これは明らかに礼を失しているのではないですか?」
「しょ…、食材が足りなかったのだ……。急きょメルの妹もディナーに参加することになってな……。メルはほら、姉だからいつも一つしかない場合は妹のエメに譲っていたと父親の侯爵からも聞いておったので、こういう次第に……」
ベネット王太子の質問に国王がしどろもどろになりながら答えた。
「急きょ、と、おっしゃる割には私がやってきたとき、エメはすでに着席して前菜や食前酒も他の方と同じように配ぜんされていました。やってきた私に王妃様は……」
メルは国王の言うことを否定した。
「まあまあ、王妃殿下ときたら、最初から王太子殿下を仲間外れにしてさらし者にする目的で呼びつけたというわけでしょうかね?」
ひときわ大きな声でベネットの後ろに控えていたばあやが大きな声で無邪気に感想を述べた。
「仲間外れだなんて人聞きの悪い!」
ばあやの声に王妃はきっと反論する、そして、
「どういうこと? 聞いていた話とはずいぶん違うじゃないの? 妹のエメに譲るって話にしたらあの子は何も言わないんじゃなかったの?」
隣に座っていたクレールに耳打ちした。
「そんなこと、僕に言われたって、エメが……」
「聞こえてますよ、母上、クレール」
ベネットが母と弟をにらみつけた。
侍従に案内され部屋に足を踏み入れると、
「あら、来たの?」
と、王妃が冷淡な言葉をかけた。
その部屋には王家の人々となぜかエメもいた。
しかし、夫である王太子ベネットはいない。
「そこに席を作ってあげなさい」
王妃の指令でメルの席が長テーブルの入り口に一番近いところに作られた。
部屋にいる者たちにはすでに食前酒と前菜が給されている。
メルに急きょ用意されたものは彼らのものより質素で見た目も劣るものであった。
「このグランシャーモンのカナッペとても美味しいですわね、クレール様」
「そうだろう、このルオマールも試してごらんよ」
メルの扱われ方をよそ眼に、彼らはどうやら侍従の言っていたアクタラッサの献上品である魚介類を楽しんでいた。
いったいどういうつもりで自分を呼んだのか、と、メルはいぶかった。
その後、スープ、メインディッシュと進んでいっても、メルの料理だけいつも食している平凡な、彼らが食べている者よりは一段劣るものであった。
王家の者とエメはまるでメルをいないもののように扱い、自分たちの食事に舌鼓を打ちながら、時々ちらちら彼女の方を見てはほくそ笑んでいた。
「失礼します!」
メインディッシュの途中で突然、王太子ベネットが入ってきた。
「なんですか、突然!」
「ベネット、不作法だぞ!」
王妃と国王が口々に入ってきた王太子ベネットをとがめた。
「無作法、これは異なことを? 我が妻をテーブルの端に座らせて一段劣るメニューの食事を提供し、まるで使用人のような扱いをしている。これは明らかに礼を失しているのではないですか?」
「しょ…、食材が足りなかったのだ……。急きょメルの妹もディナーに参加することになってな……。メルはほら、姉だからいつも一つしかない場合は妹のエメに譲っていたと父親の侯爵からも聞いておったので、こういう次第に……」
ベネット王太子の質問に国王がしどろもどろになりながら答えた。
「急きょ、と、おっしゃる割には私がやってきたとき、エメはすでに着席して前菜や食前酒も他の方と同じように配ぜんされていました。やってきた私に王妃様は……」
メルは国王の言うことを否定した。
「まあまあ、王妃殿下ときたら、最初から王太子殿下を仲間外れにしてさらし者にする目的で呼びつけたというわけでしょうかね?」
ひときわ大きな声でベネットの後ろに控えていたばあやが大きな声で無邪気に感想を述べた。
「仲間外れだなんて人聞きの悪い!」
ばあやの声に王妃はきっと反論する、そして、
「どういうこと? 聞いていた話とはずいぶん違うじゃないの? 妹のエメに譲るって話にしたらあの子は何も言わないんじゃなかったの?」
隣に座っていたクレールに耳打ちした。
「そんなこと、僕に言われたって、エメが……」
「聞こえてますよ、母上、クレール」
ベネットが母と弟をにらみつけた。
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