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第51話 少年の夢【完】
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「やっぱり! この城にいたのは偽者のお父さんとお母さんだったんだね。僕ずっと待っていたんだよ。いつか本当の両親が迎えに来てくれるって!」
少年の突飛な発想に二人は度肝を抜かれた。
現王太子夫妻の第一王子ラザール。
二人にとっては、自分の弟と妹の子だから面差しが似ていても不思議はない……。
自分たちは、もう二度とベネットや歴代の『呪われた王子』と同じ目に、この少年が合わないようにと危険を冒して呪いを無効化することを選んだ。
ただ計算外だったのは、そうやって呪いを免れた我が子を彼らの弟妹達が大事にしようとしなかったことだ。
それは虐げられていた子がすがりつく夢のようなものだった。
自分を虐める『親』とは血のつながりがなく、いつか本当の親が迎えに来てくれる、と。
「本当のお母さんの髪や目の色はそんな風だったんだ! あいつらそこまではまねできなかったみたいだ!」
確かにエメとメルは双子で違うのは髪や目の色だけ。
はしゃぐ少年の両肩に手を添えてメルは言った。
「よくわかったわね。ごめんなさい、迎えに来るのが遅くなって」
メルにも覚えがあった。
自分をいじめる家族ではない『本当』の家族がどこかに存在するという夢。
往々にしてそれは夢に過ぎないんだが、少年を取り巻く過酷な環境。
それを考えると自分がそれに応えてもいいのでは、と、いう気になった。
「一緒にいさせて……」
「もちろんだ」
ベネットもそれに応えることにした。
「迎えに来るのが遅くなってごめんよ」
「偽物は本当のお母さんと同じ髪や目の色にすることができなかったんだ。僕はだまされなかった」
「えらいな、誰にでもわかることじゃない」
赤ん坊のころに悪者にさらわれた自分を探しにきてくれた本当の親、そんな少年のおとぎ話にベネットは付き合い返事をする。
「人が来るわ、急ぎましょう!」
彼らの声をききつけて、わずかに残っていた王家側の兵士が走ってくる。
二人は少年をリザに乗せ飛び立った。
「一般市民にまでは被害は出てないようですね」
「ああ、もともと統率の取れた軍隊だからね」
それなら一安心、と、彼らは今は故国のニードルの首都へと帰っていった。
その翌日、奇妙な報告がオーブリー辺境伯の元に寄せられた。
王太子宮で王太子夫妻が息子のラザール王子とともに魔獣のような生き物に乗って飛び立ったといううわさが、王宮内の兵士たちの間で広まっていた。
しかし、王太子夫妻は王宮の中にいるのが間諜によって確認されている。
「ただ、第一王子の姿が王太子宮のどこにもなく……」
「どういうことだ?」
「うわさを広めている兵士たちには嘘をついているそぶりはなく、全員が同じ幻覚を見たというのもなんだか、とにかく奇妙な話です」
「とりあえず、クレールたちは王宮にいるのだろう、それならいい。王子はまだ五歳だったな。どうしても発見できなければ、病死か、戦闘に巻き込まれて死亡、ということにすればいい」
そう言って報告の者を下がらせた。
オーブリーは報告の内容が書かれた紙をもう一度読み返し考えに耽った。
「王太子夫妻に似た男女。妃の方は月の光の影響か、髪色が少し違って見えた……」
ふうと大きく息を吐くとオーブリーはそれを考えの外に押しやった。
「勝者とていばらの道だ、この国の運営に携わるということは」
一方、リザを借りて故国メディアの様子を見てきたベネットとメルは、彼らによく似た五歳の男の子をつれて帰ってきて、レナートたちを驚かせた。
二人は自分たちの子供にラザールを新しい兄弟だと言って紹介した。
風の便りにメディア国に新王が誕生し、元国王と元王太子、そして妃らは処刑は免れたが幽閉されたことを聞く。
そして、それ以降、彼らの話が耳に入ってくることはなかった。
二人の間の実の息子とラザールは同い年で、いずれ年を経ればラザールも真実を知るだろう。
だが今は、ラザール元王子も、そしてメルやベネットも傷ついた心が癒えるまで。
呪いが生み出した醜い心から彼らはようやく逃げ出すことができたのだから。
【作者あいさつ】
最後まで読んでいただきありがとうございました。
裏設定ですが、クレールとエメはかつてメルとベネットが住んでいた離宮に護送され幽閉されました。
政治的な問題もあるので、監視体制はしっかりしているようです。
ちなみに国王夫妻の幽閉先は王宮内にある塔のてっぺんです。
メルとベネットの子は長男がラザール元王子と同い年でメル似。長女が三歳でベネット似という設定です。
それではまた次回作で\(^o^)/!
少年の突飛な発想に二人は度肝を抜かれた。
現王太子夫妻の第一王子ラザール。
二人にとっては、自分の弟と妹の子だから面差しが似ていても不思議はない……。
自分たちは、もう二度とベネットや歴代の『呪われた王子』と同じ目に、この少年が合わないようにと危険を冒して呪いを無効化することを選んだ。
ただ計算外だったのは、そうやって呪いを免れた我が子を彼らの弟妹達が大事にしようとしなかったことだ。
それは虐げられていた子がすがりつく夢のようなものだった。
自分を虐める『親』とは血のつながりがなく、いつか本当の親が迎えに来てくれる、と。
「本当のお母さんの髪や目の色はそんな風だったんだ! あいつらそこまではまねできなかったみたいだ!」
確かにエメとメルは双子で違うのは髪や目の色だけ。
はしゃぐ少年の両肩に手を添えてメルは言った。
「よくわかったわね。ごめんなさい、迎えに来るのが遅くなって」
メルにも覚えがあった。
自分をいじめる家族ではない『本当』の家族がどこかに存在するという夢。
往々にしてそれは夢に過ぎないんだが、少年を取り巻く過酷な環境。
それを考えると自分がそれに応えてもいいのでは、と、いう気になった。
「一緒にいさせて……」
「もちろんだ」
ベネットもそれに応えることにした。
「迎えに来るのが遅くなってごめんよ」
「偽物は本当のお母さんと同じ髪や目の色にすることができなかったんだ。僕はだまされなかった」
「えらいな、誰にでもわかることじゃない」
赤ん坊のころに悪者にさらわれた自分を探しにきてくれた本当の親、そんな少年のおとぎ話にベネットは付き合い返事をする。
「人が来るわ、急ぎましょう!」
彼らの声をききつけて、わずかに残っていた王家側の兵士が走ってくる。
二人は少年をリザに乗せ飛び立った。
「一般市民にまでは被害は出てないようですね」
「ああ、もともと統率の取れた軍隊だからね」
それなら一安心、と、彼らは今は故国のニードルの首都へと帰っていった。
その翌日、奇妙な報告がオーブリー辺境伯の元に寄せられた。
王太子宮で王太子夫妻が息子のラザール王子とともに魔獣のような生き物に乗って飛び立ったといううわさが、王宮内の兵士たちの間で広まっていた。
しかし、王太子夫妻は王宮の中にいるのが間諜によって確認されている。
「ただ、第一王子の姿が王太子宮のどこにもなく……」
「どういうことだ?」
「うわさを広めている兵士たちには嘘をついているそぶりはなく、全員が同じ幻覚を見たというのもなんだか、とにかく奇妙な話です」
「とりあえず、クレールたちは王宮にいるのだろう、それならいい。王子はまだ五歳だったな。どうしても発見できなければ、病死か、戦闘に巻き込まれて死亡、ということにすればいい」
そう言って報告の者を下がらせた。
オーブリーは報告の内容が書かれた紙をもう一度読み返し考えに耽った。
「王太子夫妻に似た男女。妃の方は月の光の影響か、髪色が少し違って見えた……」
ふうと大きく息を吐くとオーブリーはそれを考えの外に押しやった。
「勝者とていばらの道だ、この国の運営に携わるということは」
一方、リザを借りて故国メディアの様子を見てきたベネットとメルは、彼らによく似た五歳の男の子をつれて帰ってきて、レナートたちを驚かせた。
二人は自分たちの子供にラザールを新しい兄弟だと言って紹介した。
風の便りにメディア国に新王が誕生し、元国王と元王太子、そして妃らは処刑は免れたが幽閉されたことを聞く。
そして、それ以降、彼らの話が耳に入ってくることはなかった。
二人の間の実の息子とラザールは同い年で、いずれ年を経ればラザールも真実を知るだろう。
だが今は、ラザール元王子も、そしてメルやベネットも傷ついた心が癒えるまで。
呪いが生み出した醜い心から彼らはようやく逃げ出すことができたのだから。
【作者あいさつ】
最後まで読んでいただきありがとうございました。
裏設定ですが、クレールとエメはかつてメルとベネットが住んでいた離宮に護送され幽閉されました。
政治的な問題もあるので、監視体制はしっかりしているようです。
ちなみに国王夫妻の幽閉先は王宮内にある塔のてっぺんです。
メルとベネットの子は長男がラザール元王子と同い年でメル似。長女が三歳でベネット似という設定です。
それではまた次回作で\(^o^)/!
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