婚約破棄された公爵令嬢ですが、魔女によって王太子の浮気相手と赤ん坊のころ取り換えられていたそうです

玄未マオ

文字の大きさ
11 / 23

第11話 逢魔の森とクローディアの真実(1)

しおりを挟む
「ああ、そうじゃよ。まあ、その話は瘴気満ちるこの場所ではなく、森に入ってからにしようか。おいで」

 老婆は優しくシエラの手を取り、壁の外へといざなった。

 シエラの元に届いた手紙の内容はこうだった。

『あなたを殺さない、私を信じよ。追伸、メエルの実の種を何らかの手段を使って持ってきてほしい。実はいらないので食べてもいいからね』

 魔女はうんうんとうなづくとおもむろに背筋を伸ばした。

「森に入ったし、もう元の姿に戻ってもいいわね」

 そういうと老婆は大人の女性へと姿を変えた。
 その黒髪の女性は二十代は過ぎているようだがまだ若々しく、重ねた年齢が彼女をよりつやっぽく見せていた。

「よかったわ信じてくれて。あなた以外の人には読めないように魔力を込めて書いた。魔力を込めた字はそんなにたくさん綴れないから、手短に書くしかなかったの」

 女性はシエラににこやかな表情を見せた。

「メエルという果実の話に字数を割かなければ、もうちょっと丁寧に説明できたんじゃないですか?」

 木の陰から若い男が出てきて二人に近づいて言った。
 その男はシエラがいた国の騎士たちが、魔物退治のときに使う防具に似たものを身に着けていた。

「しかたないでしょう。メエルの種を手に入れるのは国にとっても重要なことなんだから」
「あなたの好物ってだけでしょう」
「あなただって食べたでしょう! 美味しい、美味しいって言っていたくせに」
「でもたかが、果実の種で……」

「この実はね、特産品として国外に流出しないように、植物全体に国が特殊な魔法をかけているの。他国の者が種を持ち出そうとすると、発芽能力が抑制されるのね。輸出の際にも同様の魔法がかけられる。だからこの国の人間に持ち出してもらうことが重要だったのよ」

 なるほど、と、男が納得する。

「あの……」

 おずおずと二人にシエラが声をかけた。

「よろしかったらこれをどうぞ。書かれていたのでメエルをたくさん買って馬車の中でも食べていたけど、多すぎてまだ残ってますから」

 二人にシエラはメエルの実を差し出した。

「えっ、いいの? ありがとう! う~ん、これこれ!」

 シエラから実を受け取ると、黒髪の女はそれにかじりついた。

「まあ、確かに美味しいですけどね。それよりも彼女に説明を」

 男の方も食べながら言った。

「ええ、そうね。まず自己紹介をするわね。私の名はクローディア。二十年前にあの国から逢魔の森に追放された女よ」

「えっ! 魔物に殺されたんじゃ……?」

「疑問に思うのは当然よね。でも生きているわ。確かにこの森は魔物が徘徊するけど、人間の味方がいないわけじゃない。その者たちに助けられ私はこの森の反対側にある国に連れていかれたの。そこに住むことを許され、今じゃこれでも三人の子の母よ」

 クローディアの言葉にシエラは目を白黒させた。

「本当ですよ。彼女は何を隠そう、わが国の英雄の一人、ヴァイスハーフェン公爵の奥方様ですから」

 男がシエラに説明した。

「僕はアルベルト・ブリステル。王国駐屯騎士団の一員です」

 そして自己紹介した。

「王国って、あの、どこの……?」

 シエラは不思議に思った。

「とりあえず戻りましょう。森は瘴気の原と違って空気は清浄だけど、魔物が現れないとも限りませんから。駐屯地についたら、ゆっくり説明しますよ」

 男は馬を二頭連れていた。

 一頭にクローディアがまたがり、もう一頭に男はシエラを乗せ自分も乗った。

「しっかりつかまってくださいね」

 馬は走り出し、シエラは彼らとともに森の奥へと向かうのだった。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

白い結婚を捨てた王妃は、もう二度と振り向かない ――愛さぬと言った王子が全てを失うまで』

鍛高譚
恋愛
「私は王妃を愛さない。彼女とは白い結婚を誓う」 華やかな王宮の大聖堂で交わされたのは、愛の誓いではなく、冷たい拒絶の言葉だった。 王子アルフォンスの婚姻相手として選ばれたレイチェル・ウィンザー。しかし彼女は、王妃としての立場を与えられながらも、夫からも宮廷からも冷遇され、孤独な日々を強いられる。王の寵愛はすべて聖女ミレイユに注がれ、王宮の権力は彼女の手に落ちていった。侮蔑と屈辱に耐える中、レイチェルは誇りを失わず、密かに反撃の機会をうかがう。 そんな折、隣国の公爵アレクサンダーが彼女の前に現れる。「君の目はまだ死んでいないな」――その言葉に、彼女の中で何かが目覚める。彼はレイチェルに自由と新たな未来を提示し、密かに王宮からの脱出を計画する。 レイチェルが去ったことで、王宮は急速に崩壊していく。聖女ミレイユの策略が暴かれ、アルフォンスは自らの過ちに気づくも、時すでに遅し。彼が頼るべき王妃は、もはや遠く、隣国で新たな人生を歩んでいた。 「お願いだ……戻ってきてくれ……」 王国を失い、誇りを失い、全てを失った王子の懇願に、レイチェルはただ冷たく微笑む。 「もう遅いわ」 愛のない結婚を捨て、誇り高き未来へと進む王妃のざまぁ劇。 裏切りと策略が渦巻く宮廷で、彼女は己の運命を切り開く。 これは、偽りの婚姻から真の誓いへと至る、誇り高き王妃の物語。

夫が運命の番と出会いました

重田いの
恋愛
幼馴染のいいなづけとして育ってきた銀狼族の族長エーリヒと、妻ローゼマリー。 だがエーリヒに運命の番が現れたことにより、二人は離別する。 しかし二年後、修道院に暮らすローゼマリーの元へエーリヒが現れ――!?

主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します

白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。 あなたは【真実の愛】を信じますか? そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。 だって・・・そうでしょ? ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!? それだけではない。 何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!! 私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。 それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。 しかも! ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!! マジかーーーっ!!! 前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!! 思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。 世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。

【完結】これをもちまして、終了とさせていただきます

楽歩
恋愛
異世界から王宮に現れたという“女神の使徒”サラ。公爵令嬢のルシアーナの婚約者である王太子は、簡単に心奪われた。 伝承に語られる“女神の使徒”は時代ごとに現れ、国に奇跡をもたらす存在と言われている。婚約解消を告げる王、口々にルシアーナの処遇を言い合う重臣。 そんな混乱の中、ルシアーナは冷静に状況を見据えていた。 「王妃教育には、国の内部機密が含まれている。君がそれを知ったまま他家に嫁ぐことは……困難だ。女神アウレリア様を祀る神殿にて、王家の監視のもと、一生を女神に仕えて過ごすことになる」 神殿に閉じ込められて一生を過ごす? 冗談じゃないわ。 「お話はもうよろしいかしら?」 王族や重臣たち、誰もが自分の思惑通りに動くと考えている中で、ルシアーナは静かに、己の存在感を突きつける。 ※39話、約9万字で完結予定です。最後までお付き合いいただけると嬉しいですm(__)m

お飾り王妃の死後~王の後悔~

ましゅぺちーの
恋愛
ウィルベルト王国の王レオンと王妃フランチェスカは白い結婚である。 王が愛するのは愛妾であるフレイアただ一人。 ウィルベルト王国では周知の事実だった。 しかしある日王妃フランチェスカが自ら命を絶ってしまう。 最後に王宛てに残された手紙を読み王は後悔に苛まれる。 小説家になろう様にも投稿しています。

『白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?』

夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」 教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。 ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。 王命による“形式結婚”。 夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。 だから、はい、離婚。勝手に。 白い結婚だったので、勝手に離婚しました。 何か問題あります?

愛に代えて鮮やかな花を

ono
恋愛
公爵令嬢エリシア・グローヴナーは、舞踏会の場で王太子アリステアより婚約破棄を言い渡される。 彼の隣には無垢な平民の娘、エヴァンジェリンがいた。 王太子の真実の愛を前にしてエリシアの苦い復讐が叶うまで。 ※ハッピーエンドですが、スカッとはしません。

愚か者が自滅するのを、近くで見ていただけですから

越智屋ノマ
恋愛
宮中舞踏会の最中、侯爵令嬢ルクレツィアは王太子グレゴリオから一方的に婚約破棄を宣告される。新たな婚約者は、平民出身で才女と名高い女官ピア・スミス。 新たな時代の象徴を気取る王太子夫妻の華やかな振る舞いは、やがて国中の不満を集め、王家は静かに綻び始めていく。 一方、表舞台から退いたはずのルクレツィアは、親友である王女アリアンヌと再会する。――崩れゆく王家を前に、それぞれの役割を選び取った『親友』たちの結末は?

処理中です...