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第1章 山岳国家シュウィツアー
第7話 虚空の裂け目から
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「復讐したいか?」
もう一度同じ言葉がロゼラインの頭の中に響いた。
「誰? どこからしゃべってるの?」
ロゼラインはあたりを見回しながら叫んだ。
すると虚空の裂け目からすらりとした体の黒猫が現れた。
「あなたが死んだ時点でこの国の『道理』に黄色信号が灯った。だから私が派遣された。どうだ? あなたを死に追いやった連中に復讐したいか?」
黒猫がしゃべった!
いや、もはや驚くまい。魂だけの状態で王宮内をうろついているロゼライン自身も奇々怪々な存在なのだから。
「あの……、私、たぶん毒を盛られて死んだのだけど、だれがどういう風にやったのか、とか、わからないのよね……。復讐って私を殺した人限定? 私としてはさっき会話していた連中すべてにお灸を据えたいと思っているのだけど?」
ロゼラインは疑問を呈した。
「ボン!素晴らしい!それでこそ私が声をかけた魂というもの!」
また別の声が響いた。
そして現れたのは、今度は猫ではなく人間だったが、その姿にロゼラインは目を見張った。
ロゼラインはさっきまでいたパリス王太子の部屋から、一人と一匹の存在とともに、コリント式の柱が立ち並ぶ真っ白な廊下がのびた光あふれる空間へと移動していた。
そしてその場所でロゼラインの前に立った人間。
背が低くお腹の突き出た外国人の男で、それはイギリスの名優デビット・スーシェに瓜二つだった。
デビット・スーシェとは高名な推理小説家アガサ・クリスティ原作の『名探偵ポワロ』の主演を務めてきた名優である。
「驚かれましたかな、マドモワゼル」
声やしゃべり方までそっくりだった。
「このような姿をしておりますが、私はあなたが思う役者その人ではありません。私は次元を超えていくつもの世界の管理を任された、ええと……、何と言いましょうか? 精霊と言われたり、神と言われたり、すなわち……」
「推理の神……?」
ロゼラインがあてずっぽうに言った。
「いえいえ、確かに『推理』というのは表に現れたものから隠された事柄を推し量ることであり、その隠された事柄が正義に反したことの場合、私が対処しなければならない事柄にはなります。けど、まあ……、この姿は、あなたの頭の中を失礼ですがのぞかせていただき、今一番必要な素養を持った人間のイメージを形どっただけです」
名探偵の姿をした存在は説明した。
「はあ?」
説明が抽象的過ぎてロゼラインには理解できない。
「ふむ、この姿がお気に召しませんかな? でしたら、あなたの前世があった国の名探偵の姿で」
お腹の出た外国人から和装で髪がぼさぼさの男に姿が変わった。
「ちょっと、フケ飛ばさないでよ!」
ロゼラインが文句を言った。
「これもお気に召さない? でしたら、あなたの記憶の中の一番新しい探偵の姿でどうです。実に面白いでしょう」
「イケメンすぎるわ!」
ピント外れに次から次へと違う探偵の姿に変化する謎の存在に、ロゼラインは訳が分からず、もはや何にでも文句をつけていた。
「ごめんなさいね、うちのあるじ、人と話すのが久しぶりだから力みすぎちゃってて」
名探偵の足元にまとわりついていた黒猫が言った。
「おい、こら! 人を発表会かなんかを前にした緊張しいのようにいうではない!」
黒猫に向かって名探偵が言う。
「あの……?」
一人と一匹の意味不明のやり取りにロゼラインは疲れ始めていた。
「しかたがない、普段使っている一般的なイメージの姿に戻ろう。私の名は……、複数あってどれを名乗ればいいのかわからぬな。私は君がさきほどまでいた世界や君の前世の北山美華がいた世界など含む数多くの世界において、ある概念をつかさどる上級の精神生命体だ」
名探偵は白銀のローブをまとった美麗な男性の姿に変化しそう語った。
もう一度同じ言葉がロゼラインの頭の中に響いた。
「誰? どこからしゃべってるの?」
ロゼラインはあたりを見回しながら叫んだ。
すると虚空の裂け目からすらりとした体の黒猫が現れた。
「あなたが死んだ時点でこの国の『道理』に黄色信号が灯った。だから私が派遣された。どうだ? あなたを死に追いやった連中に復讐したいか?」
黒猫がしゃべった!
いや、もはや驚くまい。魂だけの状態で王宮内をうろついているロゼライン自身も奇々怪々な存在なのだから。
「あの……、私、たぶん毒を盛られて死んだのだけど、だれがどういう風にやったのか、とか、わからないのよね……。復讐って私を殺した人限定? 私としてはさっき会話していた連中すべてにお灸を据えたいと思っているのだけど?」
ロゼラインは疑問を呈した。
「ボン!素晴らしい!それでこそ私が声をかけた魂というもの!」
また別の声が響いた。
そして現れたのは、今度は猫ではなく人間だったが、その姿にロゼラインは目を見張った。
ロゼラインはさっきまでいたパリス王太子の部屋から、一人と一匹の存在とともに、コリント式の柱が立ち並ぶ真っ白な廊下がのびた光あふれる空間へと移動していた。
そしてその場所でロゼラインの前に立った人間。
背が低くお腹の突き出た外国人の男で、それはイギリスの名優デビット・スーシェに瓜二つだった。
デビット・スーシェとは高名な推理小説家アガサ・クリスティ原作の『名探偵ポワロ』の主演を務めてきた名優である。
「驚かれましたかな、マドモワゼル」
声やしゃべり方までそっくりだった。
「このような姿をしておりますが、私はあなたが思う役者その人ではありません。私は次元を超えていくつもの世界の管理を任された、ええと……、何と言いましょうか? 精霊と言われたり、神と言われたり、すなわち……」
「推理の神……?」
ロゼラインがあてずっぽうに言った。
「いえいえ、確かに『推理』というのは表に現れたものから隠された事柄を推し量ることであり、その隠された事柄が正義に反したことの場合、私が対処しなければならない事柄にはなります。けど、まあ……、この姿は、あなたの頭の中を失礼ですがのぞかせていただき、今一番必要な素養を持った人間のイメージを形どっただけです」
名探偵の姿をした存在は説明した。
「はあ?」
説明が抽象的過ぎてロゼラインには理解できない。
「ふむ、この姿がお気に召しませんかな? でしたら、あなたの前世があった国の名探偵の姿で」
お腹の出た外国人から和装で髪がぼさぼさの男に姿が変わった。
「ちょっと、フケ飛ばさないでよ!」
ロゼラインが文句を言った。
「これもお気に召さない? でしたら、あなたの記憶の中の一番新しい探偵の姿でどうです。実に面白いでしょう」
「イケメンすぎるわ!」
ピント外れに次から次へと違う探偵の姿に変化する謎の存在に、ロゼラインは訳が分からず、もはや何にでも文句をつけていた。
「ごめんなさいね、うちのあるじ、人と話すのが久しぶりだから力みすぎちゃってて」
名探偵の足元にまとわりついていた黒猫が言った。
「おい、こら! 人を発表会かなんかを前にした緊張しいのようにいうではない!」
黒猫に向かって名探偵が言う。
「あの……?」
一人と一匹の意味不明のやり取りにロゼラインは疲れ始めていた。
「しかたがない、普段使っている一般的なイメージの姿に戻ろう。私の名は……、複数あってどれを名乗ればいいのかわからぬな。私は君がさきほどまでいた世界や君の前世の北山美華がいた世界など含む数多くの世界において、ある概念をつかさどる上級の精神生命体だ」
名探偵は白銀のローブをまとった美麗な男性の姿に変化しそう語った。
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