47 / 120
第1章 山岳国家シュウィツアー
第47話 ロゼライン顕現する
しおりを挟む
兄王子からのあからさまな敵意に弟王子は言葉を返さず、ただ目線でのみそれを跳ね返した。
二人の王子の様子に、どちらの陣営に属するかを決めておらず日和っていた貴族たちも、どちらについたほうがいいかを頭の中で計算し始めた。
王太子派のノルドベルクが没落し他の公爵家の当主が二人とも王太子の『処分』を求めている。
王太子はだめだな。
そう考える貴族が大半を占めた。
問題は国王がどう考えるかだ。
浅慮なところが欠点だが、社交的で華やかな魅力にあふれた王太子の資質を国王が惜しんでいるのも事実であった。
「いろいろ不幸な偶然が積み重なったようだが、あの辛気臭いロゼラインが死んでくれて、お前にとっては良かったようだな、ゼフィーロ!」
パリスの言葉にゼフィーロはカッとした。
そして、ロゼラインも。
今自分のことが見えている者、それは自分の死を惜しんでくれている者。
その中にゼフィーロもいる。
あんたは今でもわたしを見ることができていないくせに、よくもぬけぬけとそんなことを。
あんたと対立することをあれだけ悩んでいたゼフィーロに、よくもそんな心ないことを!
「よさぬか、パリス! なぜ今ロゼライン嬢がゼフィーロの傍に立っているのか、その意味も分からぬか!」
国王が大声でパリスをいさめた
へっ?
国王陛下、視えているの?
ロゼライン及び、ロゼラインが見えているゼフィーロやゲオルグなどがきょとんとした顔をした。
さらにロゼラインが見えているであろう他の貴族たちもざわざわしだした。
「第二王子の傍にいるのはやはり……」
「目の錯覚ではなかったのか」
そのざわめきに対する不快感にパリスは耐えきれなくなった。
「ばかばかしい! 付き合ってられるか!」
そう言い捨てて踵を返し笑いながら法廷を後にした。
「いやぁ、すがすがしいくらいの……」
その様子を見て黒猫クロが口を開いた。
「うんうん、あれだけ徹底して惜しまれてないとなると逆にスッキリするわね」
ロゼラインも感想を述べる。
「いや、あたしは『すがすがしいくらいのクズっぷり』って言おうとしたのよ」
「確かにこの期に及んでも自分の責任はかけらも痛感せず、下手を打った家臣や婚約者のせいで、自分がまずい立場に追い込まれたって思っていそうな態度だったね。できることなら生きている間にそのクズっぷりを私の方が指摘して婚約破棄宣言できるような立場や状況であったならよかったのだけど」
「まあ、その……、家族すらクズの無理ゲーだったからね……」
国王陛下は嫡男の傍若無人な態度にため息を漏らしながら、ロゼラインを見つめ、そして、力なくつぶやいた。
「ロゼライン、そなたが生きてくれていたなら……」
国王のつぶやきはロゼラインの心に響かなかった。
アイリスやゼフィーロ、そしてゾフィらが、自分の死を心から惜しんでくれてそして自分の姿を視認できていると知った時の感情とは違い、ロゼラインの国王に対する気持ちは冷ややかだった。
「最後のサービスだ、ここにいる全員にそなたの姿が視えるようにしてやろう」
いつの間にかロゼラインの後ろに立っていた精霊サタージュがロゼラインの耳元で呟いた。
その瞬間、金色の光が法廷内を包みロゼラインの姿が廷内にいるすべての人間の視えるようになり、あたかも光とともにロゼラインが顕現したかのようであった。
「これは!」
「一体、何の奇跡だ!」
その場にいた人間が皆驚いた。
ちょっと、何してくれてるのよ、この精霊は!
ロゼラインは内心焦った。
なに、この空気?
自分を殺した相手たちを裁判で有罪にして無念を晴らしたあたしが、国王陛下を対峙して、それで……。
なんかさ、流れ的には国王陛下や裁判に携わった人間に感謝の意を述べて、そして国の繁栄を祈って消えていきました的な感動的なものを期待されてない?
個人的にゼフィーロやアイリス、ゾフィーやゲオルグには感謝しているわ。
でもね、国王陛下とか、その他大勢に対しては違うのよ。
むしろぶちまけたい、これまでの怒りを、恨みを!
空気読んだ発言なんかしたくない!
二人の王子の様子に、どちらの陣営に属するかを決めておらず日和っていた貴族たちも、どちらについたほうがいいかを頭の中で計算し始めた。
王太子派のノルドベルクが没落し他の公爵家の当主が二人とも王太子の『処分』を求めている。
王太子はだめだな。
そう考える貴族が大半を占めた。
問題は国王がどう考えるかだ。
浅慮なところが欠点だが、社交的で華やかな魅力にあふれた王太子の資質を国王が惜しんでいるのも事実であった。
「いろいろ不幸な偶然が積み重なったようだが、あの辛気臭いロゼラインが死んでくれて、お前にとっては良かったようだな、ゼフィーロ!」
パリスの言葉にゼフィーロはカッとした。
そして、ロゼラインも。
今自分のことが見えている者、それは自分の死を惜しんでくれている者。
その中にゼフィーロもいる。
あんたは今でもわたしを見ることができていないくせに、よくもぬけぬけとそんなことを。
あんたと対立することをあれだけ悩んでいたゼフィーロに、よくもそんな心ないことを!
「よさぬか、パリス! なぜ今ロゼライン嬢がゼフィーロの傍に立っているのか、その意味も分からぬか!」
国王が大声でパリスをいさめた
へっ?
国王陛下、視えているの?
ロゼライン及び、ロゼラインが見えているゼフィーロやゲオルグなどがきょとんとした顔をした。
さらにロゼラインが見えているであろう他の貴族たちもざわざわしだした。
「第二王子の傍にいるのはやはり……」
「目の錯覚ではなかったのか」
そのざわめきに対する不快感にパリスは耐えきれなくなった。
「ばかばかしい! 付き合ってられるか!」
そう言い捨てて踵を返し笑いながら法廷を後にした。
「いやぁ、すがすがしいくらいの……」
その様子を見て黒猫クロが口を開いた。
「うんうん、あれだけ徹底して惜しまれてないとなると逆にスッキリするわね」
ロゼラインも感想を述べる。
「いや、あたしは『すがすがしいくらいのクズっぷり』って言おうとしたのよ」
「確かにこの期に及んでも自分の責任はかけらも痛感せず、下手を打った家臣や婚約者のせいで、自分がまずい立場に追い込まれたって思っていそうな態度だったね。できることなら生きている間にそのクズっぷりを私の方が指摘して婚約破棄宣言できるような立場や状況であったならよかったのだけど」
「まあ、その……、家族すらクズの無理ゲーだったからね……」
国王陛下は嫡男の傍若無人な態度にため息を漏らしながら、ロゼラインを見つめ、そして、力なくつぶやいた。
「ロゼライン、そなたが生きてくれていたなら……」
国王のつぶやきはロゼラインの心に響かなかった。
アイリスやゼフィーロ、そしてゾフィらが、自分の死を心から惜しんでくれてそして自分の姿を視認できていると知った時の感情とは違い、ロゼラインの国王に対する気持ちは冷ややかだった。
「最後のサービスだ、ここにいる全員にそなたの姿が視えるようにしてやろう」
いつの間にかロゼラインの後ろに立っていた精霊サタージュがロゼラインの耳元で呟いた。
その瞬間、金色の光が法廷内を包みロゼラインの姿が廷内にいるすべての人間の視えるようになり、あたかも光とともにロゼラインが顕現したかのようであった。
「これは!」
「一体、何の奇跡だ!」
その場にいた人間が皆驚いた。
ちょっと、何してくれてるのよ、この精霊は!
ロゼラインは内心焦った。
なに、この空気?
自分を殺した相手たちを裁判で有罪にして無念を晴らしたあたしが、国王陛下を対峙して、それで……。
なんかさ、流れ的には国王陛下や裁判に携わった人間に感謝の意を述べて、そして国の繁栄を祈って消えていきました的な感動的なものを期待されてない?
個人的にゼフィーロやアイリス、ゾフィーやゲオルグには感謝しているわ。
でもね、国王陛下とか、その他大勢に対しては違うのよ。
むしろぶちまけたい、これまでの怒りを、恨みを!
空気読んだ発言なんかしたくない!
4
あなたにおすすめの小説
【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます
腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった!
私が死ぬまでには完結させます。
追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。
追記2:ひとまず完結しました!
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
喪女だった私が異世界転生した途端に地味枠を脱却して逆転恋愛
タマ マコト
ファンタジー
喪女として誰にも選ばれない人生を終えた佐倉真凛は、異世界の伯爵家三女リーナとして転生する。
しかしそこでも彼女は、美しい姉妹に埋もれた「地味枠」の令嬢だった。
前世の経験から派手さを捨て、魔法地雷や罠といったトラップ魔法を選んだリーナは、目立たず確実に力を磨いていく。
魔法学園で騎士カイにその才能を見抜かれたことで、彼女の止まっていた人生は静かに動き出す。
貴族令嬢、転生十秒で家出します。目指せ、おひとり様スローライフ
凜
ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞にて奨励賞を頂きました。ありがとうございます!
貴族令嬢に転生したリルは、前世の記憶に混乱しつつも今世で恵まれていない環境なことに気が付き、突発で家出してしまう。
前世の社畜生活で疲れていたため、山奥で魔法の才能を生かしスローライフを目指すことにした。しかししょっぱなから魔物に襲われ、元王宮魔法士と出会ったり、はては皇子までやってきてと、なんだかスローライフとは違う毎日で……?
3歳で捨てられた件
玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。
それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。
キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。
神様の忘れ物
mizuno sei
ファンタジー
仕事中に急死した三十二歳の独身OLが、前世の記憶を持ったまま異世界に転生した。
わりとお気楽で、ポジティブな主人公が、異世界で懸命に生きる中で巻き起こされる、笑いあり、涙あり(?)の珍騒動記。
ヒロインですが、舞台にも上がれなかったので田舎暮らしをします
未羊
ファンタジー
レイチェル・ウィルソンは公爵令嬢
十二歳の時に王都にある魔法学園の入学試験を受けたものの、なんと不合格になってしまう
好きなヒロインとの交流を進める恋愛ゲームのヒロインの一人なのに、なんとその舞台に上がれることもできずに退場となってしまったのだ
傷つきはしたものの、公爵の治める領地へと移り住むことになったことをきっかけに、レイチェルは前世の夢を叶えることを計画する
今日もレイチェルは、公爵領の片隅で畑を耕したり、お店をしたりと気ままに暮らすのだった
老女召喚〜聖女はまさかの80歳?!〜城を追い出されちゃったけど、何か若返ってるし、元気に異世界で生き抜きます!〜
二階堂吉乃
ファンタジー
瘴気に脅かされる王国があった。それを祓うことが出来るのは異世界人の乙女だけ。王国の幹部は伝説の『聖女召喚』の儀を行う。だが現れたのは1人の老婆だった。「召喚は失敗だ!」聖女を娶るつもりだった王子は激怒した。そこら辺の平民だと思われた老女は金貨1枚を与えられると、城から追い出されてしまう。実はこの老婆こそが召喚された女性だった。
白石きよ子・80歳。寝ていた布団の中から異世界に連れてこられてしまった。始めは「ドッキリじゃないかしら」と疑っていた。頼れる知り合いも家族もいない。持病の関節痛と高血圧の薬もない。しかし生来の逞しさで異世界で生き抜いていく。
後日、召喚が成功していたと分かる。王や重臣たちは慌てて老女の行方を探し始めるが、一向に見つからない。それもそのはず、きよ子はどんどん若返っていた。行方不明の老聖女を探す副団長は、黒髪黒目の不思議な美女と出会うが…。
人の名前が何故か映画スターの名になっちゃう天然系若返り聖女の冒険。全14話+間話8話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる