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第3章 北の大国フェーブル
第79話 墓荒らし
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ザッ、ザッ、ザッ。
人気のない深夜の時間帯に土を掘り返す音だけが響いている。
連れてきた従者とともに土を掘り返させられているユーベルは、なぜこんなことに、と、疑問に思いながらも体を動かし続けていた。
建国パーティの翌日に魔導士ウルマノフと約束させられ、マルベロ侯爵のパーティを辞してから王都の郊外まで馬車で走り、つれていかれたところは貴族階級の者たちが眠る墓地であった。
そしてとある人物の墓を掘り返してほしいと言われて驚いたが、墓碑に書かれた故人の名を読んでまた驚いた。
「ちょっとな、とある悪事をいろいろ調査していてな、遺体の状態を調べたいのじゃよ。前にも言ったがヴィオレッタ嬢にも無関係とは言えんじゃろ」
それ以上のことをウルマノフは教えてくれなかった。
まあ、このジイさん、他人を自分のペースにはめるのが上手いようで、気づいたら彼の言う通り、墓の土を掘り始めていた。
「いやあ、年寄りと子供ではこの作業はできんから助かるわい」
それで連れてきたのか!
理不尽さを感じながらもユーベルと従者は掘り続ける。
やがて埋まっていた棺が姿を現し、ウルマノフが朽ちた木棺のふたを開けた。
「「「……っ!」」」
遺体の状態を見て、その場にいたウルマノフ以外の人間が皆絶句した。
「ありえない! 五、六年前に亡くなった人間の遺体がこの状態だなんて!」
肌の弾力や髪の状態など生きている時と同じ状態を保ち続け、ただ眠っているように見える麗人の遺体をみてユーベルは言った。
「やはりな。まあ、これが確認したかったのじゃ。とりあえず、遺体が今の状態を保っている原因となっている魔法薬を取り出すぞ。この遺体をどう扱うかは遺族の意見も聞かなならんから半分だけ取り出そう。成分を調べるにはそれで十分じゃ」
ウルマノフは魔力で遺体から何かを取り出してそれを瓶の中に入れた。
その後、再び棺に蓋をし、魔法でもって掘り返した土を元に戻した。
掘り返した時と違ってあっという間である。
自分たち要らなかったんじゃないのか、と、言いたげなユーベルたちに対し、
「いやいや、下手に魔法で作業をして、問題の薬品の成分が変質してしまったら調べられんからの。掘り出すまでは人力が必要だったんじゃよ。助かったよ」
と、言ってねぎらった。
さて、魔導士コンビとユーベル公子がヴィオレッタにもかかわりのある案件でいろいろ奮闘していた頃、彼女の妹のサフィニアは自分がどうすればいいのかわからず途方に暮れていた。
あの夜、盗み聞きしていたことを両親に打ち明けてやめてもらう?
逆に両親は何とか自分を説得するだろう。
自分たち家族が幸せになるためだとかなんとか。
罪もない者を殺して何が幸せか、と、思うが。
告発するにも今の段階ではただ話を聞いただけなので証拠がない。
内容が内容なので誰に相談していいのかもわからない。
数日誰にも言えず悩んでいたが、庭を散歩していると以前会ったしゃべる黒猫が顔を出した。
「は~い、久しぶりね。あなたにちょっと確かめたいことがあったので来たの」
「……?」
「ねえ、あなた、『日本』っていう国を知ってるでしょう?」
「……!」
人気のない深夜の時間帯に土を掘り返す音だけが響いている。
連れてきた従者とともに土を掘り返させられているユーベルは、なぜこんなことに、と、疑問に思いながらも体を動かし続けていた。
建国パーティの翌日に魔導士ウルマノフと約束させられ、マルベロ侯爵のパーティを辞してから王都の郊外まで馬車で走り、つれていかれたところは貴族階級の者たちが眠る墓地であった。
そしてとある人物の墓を掘り返してほしいと言われて驚いたが、墓碑に書かれた故人の名を読んでまた驚いた。
「ちょっとな、とある悪事をいろいろ調査していてな、遺体の状態を調べたいのじゃよ。前にも言ったがヴィオレッタ嬢にも無関係とは言えんじゃろ」
それ以上のことをウルマノフは教えてくれなかった。
まあ、このジイさん、他人を自分のペースにはめるのが上手いようで、気づいたら彼の言う通り、墓の土を掘り始めていた。
「いやあ、年寄りと子供ではこの作業はできんから助かるわい」
それで連れてきたのか!
理不尽さを感じながらもユーベルと従者は掘り続ける。
やがて埋まっていた棺が姿を現し、ウルマノフが朽ちた木棺のふたを開けた。
「「「……っ!」」」
遺体の状態を見て、その場にいたウルマノフ以外の人間が皆絶句した。
「ありえない! 五、六年前に亡くなった人間の遺体がこの状態だなんて!」
肌の弾力や髪の状態など生きている時と同じ状態を保ち続け、ただ眠っているように見える麗人の遺体をみてユーベルは言った。
「やはりな。まあ、これが確認したかったのじゃ。とりあえず、遺体が今の状態を保っている原因となっている魔法薬を取り出すぞ。この遺体をどう扱うかは遺族の意見も聞かなならんから半分だけ取り出そう。成分を調べるにはそれで十分じゃ」
ウルマノフは魔力で遺体から何かを取り出してそれを瓶の中に入れた。
その後、再び棺に蓋をし、魔法でもって掘り返した土を元に戻した。
掘り返した時と違ってあっという間である。
自分たち要らなかったんじゃないのか、と、言いたげなユーベルたちに対し、
「いやいや、下手に魔法で作業をして、問題の薬品の成分が変質してしまったら調べられんからの。掘り出すまでは人力が必要だったんじゃよ。助かったよ」
と、言ってねぎらった。
さて、魔導士コンビとユーベル公子がヴィオレッタにもかかわりのある案件でいろいろ奮闘していた頃、彼女の妹のサフィニアは自分がどうすればいいのかわからず途方に暮れていた。
あの夜、盗み聞きしていたことを両親に打ち明けてやめてもらう?
逆に両親は何とか自分を説得するだろう。
自分たち家族が幸せになるためだとかなんとか。
罪もない者を殺して何が幸せか、と、思うが。
告発するにも今の段階ではただ話を聞いただけなので証拠がない。
内容が内容なので誰に相談していいのかもわからない。
数日誰にも言えず悩んでいたが、庭を散歩していると以前会ったしゃべる黒猫が顔を出した。
「は~い、久しぶりね。あなたにちょっと確かめたいことがあったので来たの」
「……?」
「ねえ、あなた、『日本』っていう国を知ってるでしょう?」
「……!」
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