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第3章 北の大国フェーブル
第96話 地下牢でも自然体
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目の前からクロとユーベルが消えたのち、ロゼは再び地下の階段を降り始め、半時間ほどかかって最下層までたどり着いた。
その場所にあった最重要犯罪者を収容するための牢は……?
それを見たとき、精霊ロゼは自分の目がおかしくなったのかと思った。
王侯貴族しか使えないようなふかふかのベット、天井にはシャンデリアがつるされ、地下最下層の陰鬱さは全く感じられない。そこで魔導士ウルマノフは鼻歌を歌いながら寝そべっていた。
「おい、ジジイ! ベットを出すなら俺の分も出してくれればいいだろうが! 食事にしたって硬いパンと具のないスープしかないのを、自分だけ豪華ディナーに替えやがって!」
おつきの少年ヴォルフの声が響いた。
「お前さんも魔導士の端くれなら自分で出してみんかい。見本ならこの通り目の前にあるんじゃし、それを出せる空間ならたくさんあるじゃろうて」
ひょうひょうとした佇まいで老魔導士は少年に言った。
その様子を唖然とした表情で見ていたロゼに牢にいた二人はようやく気付いた。
「これはこれは! こんなところに別嬪さんが! いったい何のサービスかのう?」
「いかがわしい言い方すんじゃねえ、ジジイ!」
ウルマノフとヴォルフがそれぞれ口を開いた。
「私はネイレと行動を共にしている者。それを言えばおわかりでしょう。あなたにお頼みことがあってきました。それからお伝えしたいこともございます」
気を取り直しロゼは魔導士ウルマノフこと精霊ウルマフに語りかけた。
「ほほう、するとあんたがフェノーレス山地の新たな住民か? ええのう、正真正銘の美人さんが仲間になるとは」
ウルマフは相好を崩した。二人のやり取りを少年ヴォルフは首をかしげながら見ている。
「お話をしてもよろしいですか」
そう断るとロゼは、ヴィオレッタが命を狙われていること、とりあえず眷属のクロとユーベル公子を公爵邸に送り込んだこと、さらに、王妃からもらった薬の鑑定の件も語った。
「まじかよ、そこまで切羽つまっていたのかよ」
ヴォルフがヴィオレッタの件についてもらした。
「とりあえず、クロたちは無事に公爵邸を出ることはできたみたい、あ、私とクロは魂の糸でつながれているということらしくて、お互いの状況が離れていてもわかるのですよ」
ロゼが安心するよう説明した。
「クロって確か……、あの時の黒猫か? お姉さんの猫だったのか」
ヴォルフが建国パーティ翌日の会合の時にあった黒猫を思い出していった。
「ふむ、そういうことなら、急がずともよさそうじゃ。まず王妃からもらった薬を調べてみようかの。少々待っとれ」
老魔導士ウルマノフが瓶から薬を数滴取り出し、自身のが作った魔法の珠の中に入れた。
「ユーベル公子がヴィオレッタの母親の遺体の状態を気にしていましたわ。その時も何らかの薬を取り出したのですよね」
「ああ、あれな。あの薬はちょいと訳ありでな」
「墓まであばいていったい何をお調べになっていたのですか?」
「いや、その弟子の不始末の落とし前をな……」
「……?」
「この薬は王妃からもらったんじゃな」
「ええ、若さを保つ美容薬で避妊効果もあると言っていました」
そしてしばらく待ったのち、
「おお、これも同じ薬じゃ、ティスルめ、この地を去った後も悪しき影響を残しおって」
ウルマノフは声を上げた。
「どういうことです、同じ薬って? 若さを保つ薬は死体の腐敗も防いでいたってことですか?」
ロゼは尋ねた。
「まあ、その……、話せば長くなるのじゃがな……」
ウルマノフは口ごもった。しかし、改めて説明しようとした矢先、
「ちょっと待って、クロの分身から連絡が入ったわ」
ロゼがさえぎって王宮内で起こっている出来事を知らせた。
その場所にあった最重要犯罪者を収容するための牢は……?
それを見たとき、精霊ロゼは自分の目がおかしくなったのかと思った。
王侯貴族しか使えないようなふかふかのベット、天井にはシャンデリアがつるされ、地下最下層の陰鬱さは全く感じられない。そこで魔導士ウルマノフは鼻歌を歌いながら寝そべっていた。
「おい、ジジイ! ベットを出すなら俺の分も出してくれればいいだろうが! 食事にしたって硬いパンと具のないスープしかないのを、自分だけ豪華ディナーに替えやがって!」
おつきの少年ヴォルフの声が響いた。
「お前さんも魔導士の端くれなら自分で出してみんかい。見本ならこの通り目の前にあるんじゃし、それを出せる空間ならたくさんあるじゃろうて」
ひょうひょうとした佇まいで老魔導士は少年に言った。
その様子を唖然とした表情で見ていたロゼに牢にいた二人はようやく気付いた。
「これはこれは! こんなところに別嬪さんが! いったい何のサービスかのう?」
「いかがわしい言い方すんじゃねえ、ジジイ!」
ウルマノフとヴォルフがそれぞれ口を開いた。
「私はネイレと行動を共にしている者。それを言えばおわかりでしょう。あなたにお頼みことがあってきました。それからお伝えしたいこともございます」
気を取り直しロゼは魔導士ウルマノフこと精霊ウルマフに語りかけた。
「ほほう、するとあんたがフェノーレス山地の新たな住民か? ええのう、正真正銘の美人さんが仲間になるとは」
ウルマフは相好を崩した。二人のやり取りを少年ヴォルフは首をかしげながら見ている。
「お話をしてもよろしいですか」
そう断るとロゼは、ヴィオレッタが命を狙われていること、とりあえず眷属のクロとユーベル公子を公爵邸に送り込んだこと、さらに、王妃からもらった薬の鑑定の件も語った。
「まじかよ、そこまで切羽つまっていたのかよ」
ヴォルフがヴィオレッタの件についてもらした。
「とりあえず、クロたちは無事に公爵邸を出ることはできたみたい、あ、私とクロは魂の糸でつながれているということらしくて、お互いの状況が離れていてもわかるのですよ」
ロゼが安心するよう説明した。
「クロって確か……、あの時の黒猫か? お姉さんの猫だったのか」
ヴォルフが建国パーティ翌日の会合の時にあった黒猫を思い出していった。
「ふむ、そういうことなら、急がずともよさそうじゃ。まず王妃からもらった薬を調べてみようかの。少々待っとれ」
老魔導士ウルマノフが瓶から薬を数滴取り出し、自身のが作った魔法の珠の中に入れた。
「ユーベル公子がヴィオレッタの母親の遺体の状態を気にしていましたわ。その時も何らかの薬を取り出したのですよね」
「ああ、あれな。あの薬はちょいと訳ありでな」
「墓まであばいていったい何をお調べになっていたのですか?」
「いや、その弟子の不始末の落とし前をな……」
「……?」
「この薬は王妃からもらったんじゃな」
「ええ、若さを保つ美容薬で避妊効果もあると言っていました」
そしてしばらく待ったのち、
「おお、これも同じ薬じゃ、ティスルめ、この地を去った後も悪しき影響を残しおって」
ウルマノフは声を上げた。
「どういうことです、同じ薬って? 若さを保つ薬は死体の腐敗も防いでいたってことですか?」
ロゼは尋ねた。
「まあ、その……、話せば長くなるのじゃがな……」
ウルマノフは口ごもった。しかし、改めて説明しようとした矢先、
「ちょっと待って、クロの分身から連絡が入ったわ」
ロゼがさえぎって王宮内で起こっている出来事を知らせた。
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