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第3章 北の大国フェーブル
第114話 魔法薬の成分
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国王は動揺を抑えながらウルマノフに尋ねた。
「まさか……、まさか、前王妃サントリナも……?」
フェーブル王が一番最初に娶ったサントリナは五年目でやっと王女を授かり、その後もまた不妊で苦しみ心を病んだ。子のできにくい体質だったのかと思いきや、娘のカレンデュラはエルシアンに嫁いですぐ懐妊し、その後も立て続けに出産し今や子だくさんな王太子妃となっている。
もしやサントリナの不妊ももともとの体質ではなかったとしたら……。
「う~ん、遺体を掘り返し薬の残滓があるかどうかで判断できるがな。もっとも死後十年以上たっておるから、マグノリア・ブラウシュテルンと違って、さすがにきれいな状態では保存されていないだろうがの」
ウルマノフは思案した。
「ちょっと、待ってください! ヴィオレッタ嬢の母君のマグノリア殿もさっき説明されていた薬を服用していたというのですか?」
ウルマノフの言葉を聞いてユーベル公子が口をはさんだ。
「ああ、その通りじゃ」
ウルマノフが答えた。
「あの、お待ちください。先ほど若さを保ち避妊効果があるとおっしゃっていましたが、あの当時の母にそのような薬が必要であったとは……?」
ヴィオレッタが割って入って疑問を呈した。
「ふむ、先代マグノリア公爵の状況を考えると確かにその通りじゃな。だが薬というのは、自分の意思で服用するだけでなく知らぬ間に飲まされていることもある」
ウルマノフが答えた。
「「あっ!」」
先ほど激高した元ティスルの付き人にして、マグノリアの夫の後妻カルミアを二人は思い出した。
いったいなぜ、と、疑問に思う彼らにウルマノフは答えた。
「その疑問に答えるためには、そもそもこの薬の本質的な効能を説明せねばならんの。まず人間の体を建物に例えるなら目に見えないほど小さいレンガが積み重なっているのじゃ」
細胞ってやつですね、わかります。
彼らの会話を黙って聞いていたサフィニアは即座に理解してうなづいた。
しかし他の者たちはきょとんとした顔で老魔導士の言葉を聞いていた。
前世の日本の義務教育スゴイ!
こっちの世界じゃ細胞はもちろん、人間の臓器の名前も医療の専門家でないと知らないくらいなんだよね。
おお、同じく日本の前世を持つロゼさんも理解しているかのようにうなづいているよ。
「続けるぞ。そのレンガのようなものは時の経過とともに劣化して新しいものと入れ替わる。人間の体の見えない部分にはそういう働きがあるのじゃ。例の薬はそのレンガの時を完全に止めてしまう効果があるのじゃ。時を止めてしまうから若さは保てる」
夢のような薬に聞こえる。
しかし、ウルマノフはその薬の影響について『爪痕』とか『災い』とかいう言葉を使っていた。
それは一体?
「なぜ避妊、あるいは不妊効果があるかというと、時を止めてしまうということは新しいものが生まれないということじゃ。腹の中で赤子を育てるというのは新たな肉体を作り上げるということじゃからな、ここまではわかるかの?」
できるだけわかりやすい言葉でウルマノフは説明した。
母親の腹の中の子=新しい肉体を構築するために、新しいレンガが必要という理論で多くの人は理解できたようだ。
「そしてな、この薬はある状態の人間に続けて服用させると、次第に体を衰弱させる毒薬のような効果もあるのじゃ」
さらに衝撃的なことをウルマノフは言った。
「まさか……、まさか、前王妃サントリナも……?」
フェーブル王が一番最初に娶ったサントリナは五年目でやっと王女を授かり、その後もまた不妊で苦しみ心を病んだ。子のできにくい体質だったのかと思いきや、娘のカレンデュラはエルシアンに嫁いですぐ懐妊し、その後も立て続けに出産し今や子だくさんな王太子妃となっている。
もしやサントリナの不妊ももともとの体質ではなかったとしたら……。
「う~ん、遺体を掘り返し薬の残滓があるかどうかで判断できるがな。もっとも死後十年以上たっておるから、マグノリア・ブラウシュテルンと違って、さすがにきれいな状態では保存されていないだろうがの」
ウルマノフは思案した。
「ちょっと、待ってください! ヴィオレッタ嬢の母君のマグノリア殿もさっき説明されていた薬を服用していたというのですか?」
ウルマノフの言葉を聞いてユーベル公子が口をはさんだ。
「ああ、その通りじゃ」
ウルマノフが答えた。
「あの、お待ちください。先ほど若さを保ち避妊効果があるとおっしゃっていましたが、あの当時の母にそのような薬が必要であったとは……?」
ヴィオレッタが割って入って疑問を呈した。
「ふむ、先代マグノリア公爵の状況を考えると確かにその通りじゃな。だが薬というのは、自分の意思で服用するだけでなく知らぬ間に飲まされていることもある」
ウルマノフが答えた。
「「あっ!」」
先ほど激高した元ティスルの付き人にして、マグノリアの夫の後妻カルミアを二人は思い出した。
いったいなぜ、と、疑問に思う彼らにウルマノフは答えた。
「その疑問に答えるためには、そもそもこの薬の本質的な効能を説明せねばならんの。まず人間の体を建物に例えるなら目に見えないほど小さいレンガが積み重なっているのじゃ」
細胞ってやつですね、わかります。
彼らの会話を黙って聞いていたサフィニアは即座に理解してうなづいた。
しかし他の者たちはきょとんとした顔で老魔導士の言葉を聞いていた。
前世の日本の義務教育スゴイ!
こっちの世界じゃ細胞はもちろん、人間の臓器の名前も医療の専門家でないと知らないくらいなんだよね。
おお、同じく日本の前世を持つロゼさんも理解しているかのようにうなづいているよ。
「続けるぞ。そのレンガのようなものは時の経過とともに劣化して新しいものと入れ替わる。人間の体の見えない部分にはそういう働きがあるのじゃ。例の薬はそのレンガの時を完全に止めてしまう効果があるのじゃ。時を止めてしまうから若さは保てる」
夢のような薬に聞こえる。
しかし、ウルマノフはその薬の影響について『爪痕』とか『災い』とかいう言葉を使っていた。
それは一体?
「なぜ避妊、あるいは不妊効果があるかというと、時を止めてしまうということは新しいものが生まれないということじゃ。腹の中で赤子を育てるというのは新たな肉体を作り上げるということじゃからな、ここまではわかるかの?」
できるだけわかりやすい言葉でウルマノフは説明した。
母親の腹の中の子=新しい肉体を構築するために、新しいレンガが必要という理論で多くの人は理解できたようだ。
「そしてな、この薬はある状態の人間に続けて服用させると、次第に体を衰弱させる毒薬のような効果もあるのじゃ」
さらに衝撃的なことをウルマノフは言った。
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