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第ニ帖 菊羽
2-1 転娘
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三日三晩、巽丸に鈍痛が襲いかかった。
最初の衝撃がやや治まってからどうにか移動を再開した巽丸は、時折吹き出る謎の泡を流し流し、高須の城を脱出した四日後には姫木に帰還し、父に短く報告のみしたところでまた、昏倒してしまっていた。
それからしばらく、伏せっていた。
玄信は気が気でない様子で巽丸に掛けられた術を探るが、答を見つけられずにいた。
その中で巽丸の持ち帰った情報の吟味もせねばならなかった。
巽丸が帰ってから四日目の、朝であった。
この数日、風呂屋にも行けずにいた。
「痛みが消えた――はは、どうだ生駒っ、おれは死んでないぞっ」
そう巽丸は笑い、寝床から跳ね起き――たところで、眉を寄せて怪訝な表情になる。
「んん……っ?」
汗で濡れた着物を脱ぐ。
件の怪泡がまだあった。
それを拭い取りながら自分の身体を見回し、手でも探り、じょじょに巽丸は目を丸くしてゆく。
「な……」
呟く声が震えていた。
「なんだ、これ……っ!?」
布団をがばと返し、脱いだものをばたばたと扇ぐ。
「ない……うそ、だろっ?」
もう一度両手で裸の全身を撫でまわし、体をひねり、少し仰け反ったのち前屈みになる。
数日前まで平らだった胸が、丸く柔らかなふくらみになっていた。
数日前まで確かに股間にあった男子のしるしが、なくなっていた。
「えええっっっ!!??」
声を聞きつけたらしい玄信が部屋に飛び込んでくる。
「どうした、巽ま――るっ!?」
変化していた息子の姿に驚いたか、語尾が浮く。
「巽丸――か?」
そうでなけれぱ、一見、玄信の前にいるのは若い娘のようであった。
あられもない姿で、広げた股を片手で探り、もう片方は胸元にある様子に、『息子』である証は薄かった。
「父上――そうだよ。霾玄信の息子の巽丸だ……っ」
口調と見上げる瞳には、面影がある。
しかしうっすらと紅潮した頬は曲者を追って発つ前よりいくぶん柔らかみを帯び、筋の立っていた手にも滑らかさが見え、ややくびれた腰から尻への線も、どれも少女のようだ。
もともと声変わり前ではあったが、声も、どこか高めになっていた。
その中、玄信は、髪を掻き上げて露になった耳を見ていた。
ひとつ頷いて腰を下ろし、脱ぎ散らかされていた巽丸の着物を拾う。
それを息子の肩から着せて、咳払いを何度か繰り返す。
「ど、どうしちゃったの、おれ――」
己は巽丸であると主張する少女の声はまだ、揺らいでいた。
「まず、そなたが巽丸だとして――」
「だから、そうだって。どうやって明かせば信じてくれるの?」
「――いや、わかった」
涙を滲ませる瞳に困惑したように玄信は手で巽丸を制し、間を置く。
「その、かけられたという妙な術のせいでは、ないのか」
巽丸が目を丸くして、口に手をやる。
唇も、艶とにくづきがいくらか増し、その感触に驚いたように巽丸は手を見る。
「しかしまあ――変わったものだなあ」
袖を通さず羽織ったままの格好で、肌を隠すことなくぺたんと座る我が子を、玄信はしげしげと眺める。
「すっかり、女子ではないか」
「おなご……」
巽丸にはまだ、女性経験はなかった。
女体は、風呂屋で見るばかりだった。
ふらふらと自分の体にまた手を這わせる。起伏のできた肢体をたどり、股間に行きついた。
「なく――なっちまった。そんな……」
呆然とした呟きをこぼし、肩を落とす。
「そんな、おれ、父上にも負けない乱波になって、霾の名を継げる強い男になりた……かったのに……」
娘のようになった息子の言葉を聞いた玄信は目を見開き、それからその目を細めて優しげな笑みを浮かべた。
「よいか――た、巽丸。
世の中には女の当主もおるし、女で腕の立つものもおる。女にしかできぬ技も、女でないとできぬつとめもある。
気概を失うな、よいな」
まだこの少女を息子と意識することに戸惑いを見せながらも、巽丸の細い肩を抱いて、ゆっくりと言う。
玄信は自身にも言い聞かせているようでもあった。
巽丸は、俯いたままでいたが、
「それに、妖かしの術でそうなったのならば、解く術もまたあるやも知れんぞ」
玄信の次の言葉でまた目を大きくして、父を見上げた。
「父上……?」
「確かにあるとはわしは言えんが、ないとも言えぬ、そう思わぬか?」
「は――はいっ」
巽丸の目に輝きが戻る。
だらりとしていた姿勢を座り直す。
「では父上、どうすれば――」
調子を拾いはじめた巽丸の頭を、玄信はぽんと撫でる。
安心したようにゆるりと笑って、言う。
「まずは、朝餉か。
――そのあと、わしと登城だ」
「登城?」
城はないが、便宜上そう云う。
「今回のつとめで、ご家老直々に労いたい、との仰せだ」
面倒そうな眉をわずかに作ってから、玄信は腰を上げた。
父の手を借りて、巽丸も立ち上がる。
「わしが叔父上を呼んでくるから、そなたは支度をしてくれるか」
「はいっ」
頷いて、巽丸はぱたぱたと駆けていった。
その様を見送ってまた玄信は複雑な表情をつくる。
「やはり、おなごのようだなあ……」
呟いて、頭を掻くのだった。
「なんと、女子であったか」
挨拶も早々に発した舎人の言葉は、驚きと自嘲を含んでいた。
「士別れて三日なれば刮目して相待すべし、というが、まさにそれか」
と、にこやかに膝まで叩く。
違うと、巽丸は言えずにいた。
目上に逆らえぬ、というところもあり、また、言ったところで『男として育てられた』ようにしか思われぬだろう。
あるいは『敵の術でこうなった』と説明しても、信じてもらえるかどうか定かではない。
舎人はいかにも面白いことに出会ったように、玄信の後ろに控えていた巽丸を近くに寄せ、しげしげと見る。
「少し前に会うたときはまだ男子のようじゃったが、すっかり、男の格好をしておっても娘と判るようになったのう」
「いや、その……」
陣屋の中ですれ違ったりしたことは別として、巽丸が舎人とこのように話すのは、数年ぶりであった。その時は確かに男だった。
巽丸も父も、正装であった。
この時も巽丸は、男の装いである。
それでも舎人は、姿を見せた巽丸のさまに、おなご、と言った。
「ご家老」
玄信が、巽丸の手を取ろうとしていた舎人を呼ぶ。
「仕様ない――巽丸、此度のはたらき、大義であった」
崩れ気味だった姿勢を戻して、舎人が言う。
さらに異を唱える機を逸して、巽丸は頭を下げる。
「ご家老、仔細話してもよい、とのことでしたが――」
「おお、そうであったな」
舎人は巽丸に、楽にするよう促してから話しはじめた。
「お主が奪った密書は、我が国の資源に関するものであった」
「資源――?」
「ははは、見当つかぬのも無理はない」
笑って、玄信に指示する。
舎人に代わって玄信が、巽丸に説明する。
「山から、有用なものを掘れるのだ。
たとえば、お前にも教えてある焔硝の材料に使う硫黄も、この領内で採れる」
焔硝とは、硝石のことを指すが、玄信がここで云ったのは精製し調合した玉薬、つまり黒色火薬のことであった。
玄信と巽丸は忍びの秘伝による硝石づくりと、そこからの玉薬調合を、家の風下になる場所で行っていた。
焙烙玉などを作るためである。
玄信がさらに言う。
「他にも少ないが鉄も出るし、良質な石もある。
先の間者が探っていたのは、どれほどそれが採れるのか、また、どのような質か、そういったことだ」
巽丸は曖昧に頷く。
「なにゆえ……」
「さて、それはまだ、仔細明らかとはいえぬ。これから吟味じゃな」
舎人が返して、しかし、と続ける。
「お主のはたらきで、どこの手のものか、また何を調べておるかわかった故、策の立てようも出てきた。
なかなかの娘乱波ではないか、のう左兵衛」
玄信は、小浦家に仕えるにあたり、官名として『左兵衛』を拝領していた。
娘、といわれ返答に窮したか口角をやや下げて、玄信は頭を垂れていた。
そうだ、と舎人が思い出したように話題を変える。
「元服の話をしておったが、女子だったとはなあ。
――これは、家内に任せるしかないか」
この時代、男子と女子では成人の儀礼が異なる。
「いや、あの――男のほうで、お願いしたく……」
どうか、という調子で巽丸が言う。
舎人が笑声をあげた。
「ならぬ」
短くいう。
「そこは分別をつけねばならぬぞ。女には女のつとめというものもある」
男の元服を否認する巽丸への口調はしかし、優しい。
「今は乱世でもないのだ。おなごが、男の役目を負うこともあるまい。
――まあ、格好までは咎めぬ。嫁入りまでこれまでと変わらぬ暮らしをしてもよかろう」
ただ、と言う舎人の目は、やはり柔らかだった。
「元服の時くらいは、女らしゅうしてもいいのではないかな?」
巽丸はもちろん玄信も、逆らえる立場ではなかった。
最初の衝撃がやや治まってからどうにか移動を再開した巽丸は、時折吹き出る謎の泡を流し流し、高須の城を脱出した四日後には姫木に帰還し、父に短く報告のみしたところでまた、昏倒してしまっていた。
それからしばらく、伏せっていた。
玄信は気が気でない様子で巽丸に掛けられた術を探るが、答を見つけられずにいた。
その中で巽丸の持ち帰った情報の吟味もせねばならなかった。
巽丸が帰ってから四日目の、朝であった。
この数日、風呂屋にも行けずにいた。
「痛みが消えた――はは、どうだ生駒っ、おれは死んでないぞっ」
そう巽丸は笑い、寝床から跳ね起き――たところで、眉を寄せて怪訝な表情になる。
「んん……っ?」
汗で濡れた着物を脱ぐ。
件の怪泡がまだあった。
それを拭い取りながら自分の身体を見回し、手でも探り、じょじょに巽丸は目を丸くしてゆく。
「な……」
呟く声が震えていた。
「なんだ、これ……っ!?」
布団をがばと返し、脱いだものをばたばたと扇ぐ。
「ない……うそ、だろっ?」
もう一度両手で裸の全身を撫でまわし、体をひねり、少し仰け反ったのち前屈みになる。
数日前まで平らだった胸が、丸く柔らかなふくらみになっていた。
数日前まで確かに股間にあった男子のしるしが、なくなっていた。
「えええっっっ!!??」
声を聞きつけたらしい玄信が部屋に飛び込んでくる。
「どうした、巽ま――るっ!?」
変化していた息子の姿に驚いたか、語尾が浮く。
「巽丸――か?」
そうでなけれぱ、一見、玄信の前にいるのは若い娘のようであった。
あられもない姿で、広げた股を片手で探り、もう片方は胸元にある様子に、『息子』である証は薄かった。
「父上――そうだよ。霾玄信の息子の巽丸だ……っ」
口調と見上げる瞳には、面影がある。
しかしうっすらと紅潮した頬は曲者を追って発つ前よりいくぶん柔らかみを帯び、筋の立っていた手にも滑らかさが見え、ややくびれた腰から尻への線も、どれも少女のようだ。
もともと声変わり前ではあったが、声も、どこか高めになっていた。
その中、玄信は、髪を掻き上げて露になった耳を見ていた。
ひとつ頷いて腰を下ろし、脱ぎ散らかされていた巽丸の着物を拾う。
それを息子の肩から着せて、咳払いを何度か繰り返す。
「ど、どうしちゃったの、おれ――」
己は巽丸であると主張する少女の声はまだ、揺らいでいた。
「まず、そなたが巽丸だとして――」
「だから、そうだって。どうやって明かせば信じてくれるの?」
「――いや、わかった」
涙を滲ませる瞳に困惑したように玄信は手で巽丸を制し、間を置く。
「その、かけられたという妙な術のせいでは、ないのか」
巽丸が目を丸くして、口に手をやる。
唇も、艶とにくづきがいくらか増し、その感触に驚いたように巽丸は手を見る。
「しかしまあ――変わったものだなあ」
袖を通さず羽織ったままの格好で、肌を隠すことなくぺたんと座る我が子を、玄信はしげしげと眺める。
「すっかり、女子ではないか」
「おなご……」
巽丸にはまだ、女性経験はなかった。
女体は、風呂屋で見るばかりだった。
ふらふらと自分の体にまた手を這わせる。起伏のできた肢体をたどり、股間に行きついた。
「なく――なっちまった。そんな……」
呆然とした呟きをこぼし、肩を落とす。
「そんな、おれ、父上にも負けない乱波になって、霾の名を継げる強い男になりた……かったのに……」
娘のようになった息子の言葉を聞いた玄信は目を見開き、それからその目を細めて優しげな笑みを浮かべた。
「よいか――た、巽丸。
世の中には女の当主もおるし、女で腕の立つものもおる。女にしかできぬ技も、女でないとできぬつとめもある。
気概を失うな、よいな」
まだこの少女を息子と意識することに戸惑いを見せながらも、巽丸の細い肩を抱いて、ゆっくりと言う。
玄信は自身にも言い聞かせているようでもあった。
巽丸は、俯いたままでいたが、
「それに、妖かしの術でそうなったのならば、解く術もまたあるやも知れんぞ」
玄信の次の言葉でまた目を大きくして、父を見上げた。
「父上……?」
「確かにあるとはわしは言えんが、ないとも言えぬ、そう思わぬか?」
「は――はいっ」
巽丸の目に輝きが戻る。
だらりとしていた姿勢を座り直す。
「では父上、どうすれば――」
調子を拾いはじめた巽丸の頭を、玄信はぽんと撫でる。
安心したようにゆるりと笑って、言う。
「まずは、朝餉か。
――そのあと、わしと登城だ」
「登城?」
城はないが、便宜上そう云う。
「今回のつとめで、ご家老直々に労いたい、との仰せだ」
面倒そうな眉をわずかに作ってから、玄信は腰を上げた。
父の手を借りて、巽丸も立ち上がる。
「わしが叔父上を呼んでくるから、そなたは支度をしてくれるか」
「はいっ」
頷いて、巽丸はぱたぱたと駆けていった。
その様を見送ってまた玄信は複雑な表情をつくる。
「やはり、おなごのようだなあ……」
呟いて、頭を掻くのだった。
「なんと、女子であったか」
挨拶も早々に発した舎人の言葉は、驚きと自嘲を含んでいた。
「士別れて三日なれば刮目して相待すべし、というが、まさにそれか」
と、にこやかに膝まで叩く。
違うと、巽丸は言えずにいた。
目上に逆らえぬ、というところもあり、また、言ったところで『男として育てられた』ようにしか思われぬだろう。
あるいは『敵の術でこうなった』と説明しても、信じてもらえるかどうか定かではない。
舎人はいかにも面白いことに出会ったように、玄信の後ろに控えていた巽丸を近くに寄せ、しげしげと見る。
「少し前に会うたときはまだ男子のようじゃったが、すっかり、男の格好をしておっても娘と判るようになったのう」
「いや、その……」
陣屋の中ですれ違ったりしたことは別として、巽丸が舎人とこのように話すのは、数年ぶりであった。その時は確かに男だった。
巽丸も父も、正装であった。
この時も巽丸は、男の装いである。
それでも舎人は、姿を見せた巽丸のさまに、おなご、と言った。
「ご家老」
玄信が、巽丸の手を取ろうとしていた舎人を呼ぶ。
「仕様ない――巽丸、此度のはたらき、大義であった」
崩れ気味だった姿勢を戻して、舎人が言う。
さらに異を唱える機を逸して、巽丸は頭を下げる。
「ご家老、仔細話してもよい、とのことでしたが――」
「おお、そうであったな」
舎人は巽丸に、楽にするよう促してから話しはじめた。
「お主が奪った密書は、我が国の資源に関するものであった」
「資源――?」
「ははは、見当つかぬのも無理はない」
笑って、玄信に指示する。
舎人に代わって玄信が、巽丸に説明する。
「山から、有用なものを掘れるのだ。
たとえば、お前にも教えてある焔硝の材料に使う硫黄も、この領内で採れる」
焔硝とは、硝石のことを指すが、玄信がここで云ったのは精製し調合した玉薬、つまり黒色火薬のことであった。
玄信と巽丸は忍びの秘伝による硝石づくりと、そこからの玉薬調合を、家の風下になる場所で行っていた。
焙烙玉などを作るためである。
玄信がさらに言う。
「他にも少ないが鉄も出るし、良質な石もある。
先の間者が探っていたのは、どれほどそれが採れるのか、また、どのような質か、そういったことだ」
巽丸は曖昧に頷く。
「なにゆえ……」
「さて、それはまだ、仔細明らかとはいえぬ。これから吟味じゃな」
舎人が返して、しかし、と続ける。
「お主のはたらきで、どこの手のものか、また何を調べておるかわかった故、策の立てようも出てきた。
なかなかの娘乱波ではないか、のう左兵衛」
玄信は、小浦家に仕えるにあたり、官名として『左兵衛』を拝領していた。
娘、といわれ返答に窮したか口角をやや下げて、玄信は頭を垂れていた。
そうだ、と舎人が思い出したように話題を変える。
「元服の話をしておったが、女子だったとはなあ。
――これは、家内に任せるしかないか」
この時代、男子と女子では成人の儀礼が異なる。
「いや、あの――男のほうで、お願いしたく……」
どうか、という調子で巽丸が言う。
舎人が笑声をあげた。
「ならぬ」
短くいう。
「そこは分別をつけねばならぬぞ。女には女のつとめというものもある」
男の元服を否認する巽丸への口調はしかし、優しい。
「今は乱世でもないのだ。おなごが、男の役目を負うこともあるまい。
――まあ、格好までは咎めぬ。嫁入りまでこれまでと変わらぬ暮らしをしてもよかろう」
ただ、と言う舎人の目は、やはり柔らかだった。
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