魔法少女まじかる★スクミィ

あきらつかさ

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09 最終決戦!!

9-1

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 昇が目を閉じて、深呼吸をする。エリーがその後ろから指示していた。
「――昇、各ポイントの繋がり、魔力の流れをより強く意識して、集中して」
 昇たちは、学校の裏山にいた。
 昇はスクミィに変身した姿で杖をまっすぐ掲げていた。
 終業式の前日の、午前中だった。
 前夜、昇は明里の家に泊まり、朝から行動を開始していた。朝の早い内に残っていた空白ポイントの一つにマーキングを施していた。塞護措置をしたために集める量の減った魔力を補うためのことで、その後四人で裏山に集まっていた。
 祠の正面に昇は立ち、杖に額を寄せるように頭を下げる。
 杖がふわりと光を増す。それは祠の中から杖に向かって伸び、祠は微かに振動していた。
「え……エリー、これ、壊れたりしないよね」
「そこまでじゃないでしょうけど」
 そう言っている内にも祠は振動を止めず、昇の持つ杖に光を流し込み続ける。
「ん、っく……」
 昇の喉が鳴る。
「昇くん?」
 明里は変身せず、ノースリーブのワンピースと、短いレースのレギンスをはいている。
「んっはぁ……っ」
 昇の口から吐息が漏れる。明里がくすっと笑みをこぼして「可愛いなぁ」と呟く。
「明里、ヘンなこと考えてない?」
「まっさかぁ。あたしは昇くんの恋を本気で応援してるよ」
 それより、と明里はかごバッグに入れたヒューを見る。
「向こうの動きは、今のところまだ?」
「――ああ。動きはない」
 明里は頷いて、昇の様子を見る。
 昇は、膝を震わせながらも足を踏ん張っていた。
「んぁ……何か、入って……っあぁっ」
 昇が緩く反り返る。息をはあはあと荒くして、杖を地面に刺して体重を預けるように寄りかかり、片手は水着の股間――分割部分にかかっていた。
「なんか、いつものマーキング後のより、激しくない?」
「そうね。繋げて、呼べるだけの量を引き込んできてるから、通常の獲得よりも体内に蓄積する魔力量が多いのよ」
 エリーはそう言って、表情を変えずにいるヒューに声をかけた。
「あなたも、その擬態解除したら?」
「遠慮する」
 光が、おさまっていた。
 昇は膝をついて、杖を両手で掴んでいた。
 明里とエリーが駆け寄り、昇は杖を支えに立ち上がり、まだ乱れた呼吸で、二人を見る。
「浅賀――さんは?」
「今はまだ動きがないよ、昇くん」
 明里が言って、昇は安堵の息を吐いた。
「よかった……。
 変身、解除――」
 水音を流して変身を解除した昇は、Tシャツとチェックスカートという服装になっていた。Tシャツもレディースのものだが昇にはやや大きいのかぶかっとしていて、靴はヒールの低いメッシュのサンダルだった。
「うわっ――忘れてた」
 昇が赤面して、小振りの可愛らしいポーチに収めようとしていた『魔力石』を出そうとするのを明里が止める。
「せっかく可愛くしてるんだから、そのままでいてよ、のぞみ」
「は、恥ずかしいですよ……」
 明里はどこからか取り出したカチューシャを昇の頭に着け、手櫛で髪を整える。
「お昼には服乾くからそれまで――あ、変身解除で服変えようとか思ったんでしょ。ダぁ~メ」
 昨夜、昇は明里に遊ばれた。
 昇が着ていた服は奪われて洗濯機に放り込まれ、明里の服を色々着せられ、メイクまでされたのだった。
 朝、明里の家を出たときに着せられたこの服も、ポーチも明里からの借り物である。
 女装している時の昇を、明里は『のぞみ』と呼ぶようになっていた。
 うっすらとメイクし直した頬を赤くした昇は、ずれた眼鏡の位置を整えて小さく嘆息する。眼鏡はさすがに普段のものを着けていた。
「じゃあ、向こうが動く前に先手必勝! 行こっか」
「だからこの服……」
 昇は、手を引く明里にわずかに抵抗を見せる。
 明里はそうだ、と思い出したように振り返った。
「のぞみの下着買ってあげるの忘れてたね。可愛いのにしようねー」
「そうじゃなくてっ」
 明里は冗談か本気か判らない含み笑いを浮かべるばかりだった。


 それから小一時間ほど後、昇たちは要市から北西へ数十キロ移動した所にある、湖の畔に到着していた。
 湖のほぼ中央に小さな島がある。
「エリー……本当に、ここが一番いいの?」
 心底心細そうな声で、昇はエリーを見る。
 エリーは真面目な眼差しで頷き、小島を指差す。
「あそこにあるポイントが、浅賀くるみ――アルブム・スクミィの占有エリアの中で最重要のはず、というより最初のマーキングエリアだから拠点にしている公算が極めて大きいわ。
 また、昇を狙って包囲しようとしている彼女のラインを考えると、ここを寸断することで戦いは有利になるはず」
 昇は溜息混じりに頷き、『魔力石』を取り出す。
 昼過ぎになっていた。
 県をまたいで相当な距離があったため、ここまでの移動はエリーとヒューの協力で発動させた長距離移動魔法で済ませていた。
「明里さんも、知ってた――んですか?」
 昇は昼を回ってまだ、女子の装いだった。
 明里は「さあねぇ~」と笑いながら彼女の『魔力石』らしい球状の黄色い石を手にしていた。
「用意はいい? のぞみ」
「のぞみって呼ばないでください……」
 二人、ほぼ同時に唱える。
「スクミィ・マナ・チャーム・アレイング!」
「チアリィ・マナ・グラドゥス・ファスキナーティオ!」
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