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7.言葉の魔術師 サイコパス
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ガチャン、バサバサッ!
音にするとこんな感じで、集合ポストを開けた瞬間になんか写真がたくさん落ちて、床に散らばった。
そこに写っていたのは明らかに隠し撮りされた宇佐神さんの姿で、会社帰りとかスーツ姿のものが多いけれど、中にはスーツを着た見知らぬ男性とラブホテルに入っていくような写真もあった。
「だ、れ……?」
思わず、拾い上げて、声が出た。
「僕の彼氏」
「は?」
宇佐神さんの返答に俺の口から疑問符が転がり出た瞬間、ガタタっという音がした。
何者かがエントランスの自動ドアを抜けて、外に走っていったようで
「ふーん、逃げたか」
宇佐神さんは余裕そうな口調で言った。誰かが、俺と宇佐神さんの会話を盗み聞きして様子見てたってこと?
「これ、ストーカーですか?」
写真を拾い上げながら俺は宇佐神さんに聞いた。一緒にラブホ入ってる人も気になるけど、ストーカーはもっと気になる。
「うーん、そうだね」
宇佐神さんはニコッと笑っただけだった。そこからはいつもと変わらぬ足取りでエレベーターに乗り、俺と部屋に帰った。
「脱いで」
唐突過ぎて、耳を疑う。部屋に入るなり俺から受け取った写真の束をローテーブルに適当に放って、宇佐神さんが笑顔で俺に言ったのだ。
「へ?」
意味が分からなさ過ぎて、身体から力が抜ける。
「いいや、脱がすね。そういう気分だから」
「そ、そういう気分って……」
抵抗する隙もないまま、ソファに押しやられて、そこに転がった。向き合った宇佐神さんはニコニコしてて、本当に心が読めない。
――なに? なに、どういう意味?
「顔真っ赤」
「うさ、みさん……」
俺を揶揄いながら宇佐神さんは俺のスーツのジャケットを脱がし、ネクタイを解いたあと、ズボンのベルトに手を伸ばした。
――やばい、ドキドキしてる。宇佐神さん、俺のタイプじゃないんだけど、急にそういう雰囲気になられると、やっぱり、こっちもそういう気分になるっていうか……。
「え?」
そう溢したのは当然のことながら俺である。するりと俺のスーツのズボンを脱ぎ去って、宇佐神さんがそれとジャケットを持って、急に俺からすっと離れたのだ。
――は? え?
戸惑いながら目で追うと、宇佐神さんは黙って、ハンガーに通したスーツに消臭スプレー(殺菌も出来るやつ)を吹きかけて、壁に掛けた。すごい吹きかけた。
――え、俺のスーツ臭かった? それとも悪霊とか憑いてた? 気分ってなに?
さらに戸惑いながら目で追うと、宇佐神さんは一人で寝室に入っていき、ジャケットとネクタイを置いて出てきた。それから腕まくりをして、黒いエプロンを着けて、キッチンに……立った。
――え、続きは? 自分で着替えなさい、と?
スーツ脱がせたかっただけ、ということでシャツとパンツ姿で放置されてショボンですよ。仕方ないから自室に行って、とりあえず、部屋着に着替えましたけど。
まさかとは思うけどさ、三重野が俺に触ったから、とかじゃないよね? そんな理由で宇佐神さん、あんな行動しないよね? ああ、自意識過剰か。ただ、俺のスーツが臭かっただけ……と。
「……ストーカー、ちゃんと対処したほうがいいんじゃないですか? 絶対、エスカレートしますよ?」
ソファに座り直して、ちらっとローテーブルの上に散らばる写真を見て、俺は料理をする宇佐神さんに言った。
「いいのいいの、警察は実害ないと動かないし」
何もなかったみたいに笑って、宇佐神さんは大きな鍋にパスタをジャッと入れる。
「あの、彼氏って……」
「ん?」
「いや、なんでもないっす」
写真に写っているスーツの男性について、詳しく聞きそうになって慌てて口を閉ざした。よく見たら、何枚もその人と写ってるし。
でも、そうだよ、別に俺と宇佐神さんは付き合ってるわけでもないし、セフレでもないし、宇佐神さんにそういう相手の一人や二人居たとしても不思議じゃないっていうか、俺が気にすることでもないよね。宇佐神さんが良ければ、それで。
俺、ここに居ていいの? 彼氏が家来たりしないのは、変なストーカーに写真撮られるから? 俺って、やっぱりペットってこと? 世話したいだけの対象ってこと? いや、それで良いんだって。俺には三重野がいるんだから。なにうじうじ気にしちゃってんの、ほんとに。
というか、ぜんぜん、雨降らないんですけど――?
音にするとこんな感じで、集合ポストを開けた瞬間になんか写真がたくさん落ちて、床に散らばった。
そこに写っていたのは明らかに隠し撮りされた宇佐神さんの姿で、会社帰りとかスーツ姿のものが多いけれど、中にはスーツを着た見知らぬ男性とラブホテルに入っていくような写真もあった。
「だ、れ……?」
思わず、拾い上げて、声が出た。
「僕の彼氏」
「は?」
宇佐神さんの返答に俺の口から疑問符が転がり出た瞬間、ガタタっという音がした。
何者かがエントランスの自動ドアを抜けて、外に走っていったようで
「ふーん、逃げたか」
宇佐神さんは余裕そうな口調で言った。誰かが、俺と宇佐神さんの会話を盗み聞きして様子見てたってこと?
「これ、ストーカーですか?」
写真を拾い上げながら俺は宇佐神さんに聞いた。一緒にラブホ入ってる人も気になるけど、ストーカーはもっと気になる。
「うーん、そうだね」
宇佐神さんはニコッと笑っただけだった。そこからはいつもと変わらぬ足取りでエレベーターに乗り、俺と部屋に帰った。
「脱いで」
唐突過ぎて、耳を疑う。部屋に入るなり俺から受け取った写真の束をローテーブルに適当に放って、宇佐神さんが笑顔で俺に言ったのだ。
「へ?」
意味が分からなさ過ぎて、身体から力が抜ける。
「いいや、脱がすね。そういう気分だから」
「そ、そういう気分って……」
抵抗する隙もないまま、ソファに押しやられて、そこに転がった。向き合った宇佐神さんはニコニコしてて、本当に心が読めない。
――なに? なに、どういう意味?
「顔真っ赤」
「うさ、みさん……」
俺を揶揄いながら宇佐神さんは俺のスーツのジャケットを脱がし、ネクタイを解いたあと、ズボンのベルトに手を伸ばした。
――やばい、ドキドキしてる。宇佐神さん、俺のタイプじゃないんだけど、急にそういう雰囲気になられると、やっぱり、こっちもそういう気分になるっていうか……。
「え?」
そう溢したのは当然のことながら俺である。するりと俺のスーツのズボンを脱ぎ去って、宇佐神さんがそれとジャケットを持って、急に俺からすっと離れたのだ。
――は? え?
戸惑いながら目で追うと、宇佐神さんは黙って、ハンガーに通したスーツに消臭スプレー(殺菌も出来るやつ)を吹きかけて、壁に掛けた。すごい吹きかけた。
――え、俺のスーツ臭かった? それとも悪霊とか憑いてた? 気分ってなに?
さらに戸惑いながら目で追うと、宇佐神さんは一人で寝室に入っていき、ジャケットとネクタイを置いて出てきた。それから腕まくりをして、黒いエプロンを着けて、キッチンに……立った。
――え、続きは? 自分で着替えなさい、と?
スーツ脱がせたかっただけ、ということでシャツとパンツ姿で放置されてショボンですよ。仕方ないから自室に行って、とりあえず、部屋着に着替えましたけど。
まさかとは思うけどさ、三重野が俺に触ったから、とかじゃないよね? そんな理由で宇佐神さん、あんな行動しないよね? ああ、自意識過剰か。ただ、俺のスーツが臭かっただけ……と。
「……ストーカー、ちゃんと対処したほうがいいんじゃないですか? 絶対、エスカレートしますよ?」
ソファに座り直して、ちらっとローテーブルの上に散らばる写真を見て、俺は料理をする宇佐神さんに言った。
「いいのいいの、警察は実害ないと動かないし」
何もなかったみたいに笑って、宇佐神さんは大きな鍋にパスタをジャッと入れる。
「あの、彼氏って……」
「ん?」
「いや、なんでもないっす」
写真に写っているスーツの男性について、詳しく聞きそうになって慌てて口を閉ざした。よく見たら、何枚もその人と写ってるし。
でも、そうだよ、別に俺と宇佐神さんは付き合ってるわけでもないし、セフレでもないし、宇佐神さんにそういう相手の一人や二人居たとしても不思議じゃないっていうか、俺が気にすることでもないよね。宇佐神さんが良ければ、それで。
俺、ここに居ていいの? 彼氏が家来たりしないのは、変なストーカーに写真撮られるから? 俺って、やっぱりペットってこと? 世話したいだけの対象ってこと? いや、それで良いんだって。俺には三重野がいるんだから。なにうじうじ気にしちゃってんの、ほんとに。
というか、ぜんぜん、雨降らないんですけど――?
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