アルマ エスペランサ

純鈍

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第1章 狼人の国

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 ◆  ◆  ◆

 高い場所からだと夕陽が沈んで行く様子がよく見える。石で出来た城壁を橙色にして、それが静かに消えて行く。城の上部にある渡り廊下から中庭を見ると、国の王であるラウルが一人で歩いているのが見えた。

「……っ」

 視線を感じたのか、ラウルがこちらを見上げて来たため俺は慌てて身を屈めて、あまり高さのない壁に無理矢理隠れた。

 危ねぇ、見つかるところだった。

 俺が檻から出たことをラウルの野郎が知ったか分からないが、あまり奴には見つかりたくはない。檻から出るまでに一日を要したのだ。

 コンラッドが寄越した布袋には小瓶が二つ入っていた。中身は薬だ。一つには赤い粒の薬が三つ、もう一つには食欲を削がれそうな青色の粒の薬が三つ。

『赤い方を飲め、ヒートが抑えられるはずだ』

 コンラッドが言った通り、抑えられたが、時間が掛かった。それに凄まじく苦かった。

 ヒートが始まったらこれを直ぐに飲めと言うから、三月《みつき》に一回はこの不味い体験をしなきゃならねぇってことだ。考えただけで気が滅入る。オメガってのは相当苦労してたんだな。

『この青いのは何だ?』

『避妊薬だ。飲めば確実に避妊が出来る。だが、次のヒートで反動が来る』

 青い薬の入った小瓶を摘み、昨夜の会話を思い出す。

「反動……ね」

 生々しい話で溜息しか出ない。望まないならば、ヒート中の……いや、避けろということか。確かに重い罰だよな。自分で死ねない上に、よく知らない嫌な奴と番にされ、いつ解消されるか分からない。

 ────ラウル、何故、番を解消しない?

 狼人の王の暇潰しは、一体、いつまで続くのか。誰か、早く、俺を殺してくれ……。

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