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本編
閑話 不穏な足音 (ベティナside→ノクスside)
しおりを挟むベティナside
ベティナは憤慨していた。
とある取引で噂を聞いたのだ。
「なんで、あの女が皇帝のとなりにたっているの!」
ベティナが聞いたのは、『皇帝の花嫁が見つかった。』『銀髪で青い瞳のそれは美しい人で、ルナリアと言う女性だ。』『皇帝の傍らで幸せそうに微笑んでいた。』などという話だった。
順調に、交易を減らす事が出来て、民衆を煽り計画どおりにいっているのに。ベティナにとっては寝耳に水だった。
(なんで!なんで!なんであの子ばかり幸せになってるの?私と一緒のくせに!殺せなかったから、追い出したのに!)
カリカリカリカリカリカリ・・
音を鳴らし、親指の爪を噛む。
ベティナがルナリアを殺せなかったのは、民衆の支持が王家ではなくルナリアにあり、ルナリア至上主義の連中(商会の連中のことよ。)によって常に外敵から守られていたからだ。
それに、王家が追い出したと分かれば、民衆の敵意を操りやすいという算段もあった。だから、殺さず追い出すことにした。一応、人形を使って監視させたがルナリアの侍女に見つかり粉々に壊された。
ベティナは素早い足取りで、廊下を歩いた。彼女の後ろに付いているのは小さな男の子だった。だが、彼からは生気を感じない。少年が歩くたびに聞こえるのはかすかなギギィっといた何かが軋む音だった。
城でベティナに与えられた、部屋の一室にたどり着く。怒りのままに、家具を殴り、蹴り、壊す。辺りは、悲惨な状態になっていた。自身の手や足も怪我をしてしまった。
「フェルス。これ直しておきなさい。」
ただ、淡々と少年に言った。自身に治癒と浄化の魔法をかける。
フェルスと呼ばれた少年はただ頷き。魔法を展開していった。
「あの、馬鹿達の元へ行かないと」
少し冷静になったベティナは呼ばれていたことを思い出し、にこやかに笑顔を作って修復し終えたフェルスを伴い部屋を出て行った。
ーーーーーーー
ノクスside
ノクスはここ数日、ベティナという少女のことを調べていた。なぜなら、彼女の行動におかしな点が多く見受けられたからだ。
彼女が、参加した交易の交渉は数日後には破談になり、税率を上げる様に進言したりとサベージのクビを絞める様な事ばかりをしている。
別に、サベージが滅んだ所で、なんとも思わないのだが彼女のとる行動がとてもおかしい。
(お嬢様に何かがあってはいけない。姉さんに報告するか。)
お嬢様が、この国から出る前は愚か者王子の婚約者として城に出入りしていた。その頃から、彼女も王子に取り入り城に来ていた。だが、お嬢様を見かけても声をかけることなく憎々しげに睨んでいたことを思い出す。
そんな事を思い出して、今日の報告案件のことを考えていた時だった。ノクスが危惧していた、ベティナが王子の部屋から出た時に聞いてしまった。
「うん、順調ね。あの王子も王も甘い言葉をかければすぐコロッと行くのだから簡単な話だわ。流石にドラニアに戦争を吹っかけると言ったら断ると思ったのにね。」
廊下にはノクスとベティナ、それと彼女がいつも連れている少年以外は誰も居ない。
ベティナは小声で言っているが、ノクスは獣人である。人族の何倍もの聴力でその言葉を拾った。
ノクスが、気配を消せる術を心得ていなければ彼女がどんな行動をするか、一瞬見えたベティナの歪んだ笑みで悟る。
慎重に、この場を離れようとするが彼女の次の一言で動揺してしまった。
「そうだ、あの忌々しい女を、ルナリアを騒動に乗じて殺してしまおうかしら?」
妙案思いついたという風に、少しだけキーが上がった声が聞こえる。
「・・っ!」
息を呑み、後ろに後ずさる。一瞬だが動揺したために物音を立ててしまった。
「な、何か、いる」
ひどく無機質な声で少年が言った。
(しまった!気づきれた!)
「あら、本当?じゃ、捕まえて。」
ベティナが言った瞬間、人間と思えない動きで少年か近づいてきた。すぐさま逃げようとしたが、その動きに反応出来ずあっという間に捕らえられてしまった。
「ぅぐ・・」
(クソ!しくじった。)
頭を押さえつけられ息がしにくい。その腕は、まるで陶器の様に硬く人間の暖かさを感じない。
「あなた、陛下の側にいる文官じゃない?フェルス、彼私の部屋に連れてきて話しがしたいわ。」
その言葉と共に呼吸を止められ、目の前が真っ黒になった。
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