赤獅子皇帝の花嫁

桃源郷

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本編

サベージの人間

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「入れ。」

そう短く告げられて、部屋の中へ入る。
中には、書類に囲まれたレオンとグレンがいた。

「レオン様・・・」

声を出せば、小さい音だったのにもかかわらず拾って、何か大事な話だと理解したのか目配せをしてステラとグレンを下がらせる。
二人は、お辞儀をして出て行った。

「どうした?」

とても優しげに安心させる様レオンは聞いてきた。

「・・・お話が、あります。」

本当は、言いたくない。この頼みごとが我儘だとわかっているし、私がサベージの人間だったと伝えなければいけないのも知っている。
けれど、言いたくない。言って、軽蔑されたくない。あの国は、獣人たちにとって地雷だ。獣人と蔑むくせに獣人を攫い、奴隷として働かされたり闘わせたり愛玩具の様に扱ったりしている。だからかこそ言いたくはない。
とくにレオンには、知られたくない。軽蔑されたくない。

(言わなくてはならない事ははわかってはいるのだけれど・・)

心の中で、言わなければという覚悟と言いたくないという思いがせめぎあっていた。
揺らいでしまいそうになる覚悟を、ステラの悲しげな表情を思い出して固める。意を決して、レオンに話しかけた。

「私の、仲間・・・いいえ、家族と連絡がつかないのです。探すのを手伝ってくださいませんか?」

レオンが近づいてくる。出来るだけ、冷静に言った。

「あぁ。そんなに畏まらなくても助けるさ。ルナの大切なものを守ると言っただろう?」

さも当然という風にレオンが言ったその言葉に、唐突に目の奥が熱くなり溢れそうになる。
それを、瞼をぎゅっと閉ざすことによってなんとか漏れ出すことを止めた。

「詳しく聞こう。」

そう言って執務室の隣にある、休憩する為のスペースに通された。そこは、中央に横になれる程の大きなソファと机、椅子などがあり快適な空間になっている場所だ。

「それで、連絡がつかないというのは?」

ゆっくりとだが、まっすぐ強くルナリアの目を見て聞いてくる。

「ステラの弟である、ノクスと連絡がつかないのです。」

視線を落として、ドレスのを握りしめる。少し黙って、考え込んでいればガタリと何か音がした。
しかし、どういう風に話そうか。どこから話せばいいかしら?など頭の中で考えていて、レオンが向かい側から隣に移動したのに気づかなかった。

「ルナ、シワができてしまう。」

ぎゅっと片手で服を握りしめた手を包まれる。そして、もう片方の手を頬に添えレオンの方に顔を向けられる。

「ルナ、大丈夫だ。言ってごらん?」

優しく包み込む様に問いかけられた。

「わ、私はーーー・・・・」



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