職業ガチャで外れ職引いたけど、ダンジョン主に拾われて成り上がります

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【第5章】ダンジョン経営の実態

エピソード.20

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 一週間が経過した。

 拓海と美咲の働きは、目に見える成果を生み始めていた。

 第二層の主要通路は、ほぼ完全に浄化された。床は輝き、壁からは清潔な空気が漂っている。

 リリアの執務室で、三人は週次報告を行っていた。

「素晴らしいわ」

 リリアが資料を見ながら言った。

「魔力生産効率が、ついに40単位/日を超えた」

-----

魔力生産量(週次推移)

1日目:34単位/日(改善前)  
3日目:38単位/日(+11.8%)  
7日目:42単位/日(+23.5%)

-----

「予想以上です」

 拓海も驚いていた。

「計算では20%程度の改善を見込んでいましたが」

「美咲の浄化能力が、想像以上に効果的なのよ」

 リリアが美咲を見た。

「あなたのおかげで、魔力循環が劇的に改善された」

「そんな……」

 美咲が照れくさそうに頬を染めた。

「本当よ」

 リリアは真剣に続けた。

「それに、モンスター配置の最適化も効いてる」

「冒険者の進行速度が落ちて、ダンジョン内での滞在時間が増えた」

「その分、魔力の精錬が進む」

 拓海は満足そうに頷いた。

「次は、トラップの最適化に入ります」

「トラップ?」

「はい」

 拓海が地図を広げた。

「現状、トラップの配置が少なすぎます」

「冒険者は、ほぼ警戒せずに進める」

「これを改善すれば、さらに滞在時間を延ばせます」

「でも、トラップの設置は難しいわよ」

 リリアが懸念を示した。

「魔法陣を描いて、魔力を込めて……」

「時間も魔力も消費する」

「なら、物理的なトラップはどうですか?」

 拓海が提案した。

「落とし穴、揺れる床、崩れる天井」

「魔法を使わない、シンプルなもの」

「それなら……できるかもしれない」

 リリアが考え込んだ。

「ゴブリンたちに手伝ってもらえば」

「ゴルグさんに相談してみます」

 拓海が言った。

-----

 午後、拓海はゴルグを訪ねた。

 第三層の彼の住処は、意外と整理されていた。

 粗末な家具が並び、壁には武器が掛けられている。

「人間……拓海」

 ゴルグが迎えた。

「何の用?」

「相談があります」

 拓海は簡単にトラップの計画を説明した。

 ゴルグは黙って聞いていた。

「……できる」

 彼が頷いた。

「俺たち、穴掘り得意」

「石も動かせる」

「手伝ってくれますか?」

「ああ」

 ゴルグが立ち上がった。

「リリア様のため」

「それに……」

 彼は少し照れくさそうに言った。

「美咲が、ここを綺麗にしてくれた」

「俺たち、恩返ししたい」

 拓海は驚いた。

 ゴブリンたちが、美咲に感謝している。

「ありがとうございます」

 拓海は深く頭を下げた。

「よし」

 ゴルグが部下たちを集めた。

「みんな、仕事だ」

-----

 その日の午後から、ゴブリンたちは通路の各所で作業を始めた。

 拓海が指示した場所に、浅い落とし穴を掘る。

 床板を緩めて、踏むと揺れるようにする。

 天井に石を仕掛けて、振動で落ちる仕組みを作る。

 全て単純な仕掛けだが、油断した冒険者には十分効果的だ。

 美咲は作業を見守りながら、時折ゴブリンたちと会話していた。

「ゴルグさん、重くないですか?」

「平気」

 ゴルグが大きな石を運びながら答えた。

「これくらい、軽い」

「すごいですね」

 美咲が感心した。

 すると、小さなゴブリンが美咲に近づいてきた。

「美咲……」

「ん?どうしたの?」

「これ……」

 小さなゴブリンが、何かを差し出した。

 小さな花だ。洞窟の中で咲いている、珍しい花。

「ありがとう……掃除」

 ゴブリンが不器用に言った。

「わあ……」

 美咲は花を受け取り、涙ぐんだ。

「ありがとう」

 彼女はゴブリンの頭を優しく撫でた。

 ゴブリンは嬉しそうに笑い、仲間の元に戻っていった。

 拓海はその光景を見て、心が温かくなった。

 美咲は、ここで本当に愛されている。

-----

 夕方、作業を終えた一同は疲れ切っていた。

 しかし、その顔には達成感があった。

「できた……」

 ゴルグが拓海に報告した。

「全部、終わった」

「ありがとうございます」

 拓海は感謝を込めて頭を下げた。

「明日から、効果が出るはずです」

「期待してる」

 ゴルグが力強く頷いた。

-----

 その夜の食事は、特別だった。

 リリアが、ゴブリンたちも招いて宴会を開いたのだ。

 広間に長テーブルが並び、料理が山のように並んでいる。

 ゴブリンたちは最初、戸惑っていた。

 人間と一緒に食事をするなど、前代未聞だ。

 しかしリリアが笑顔で勧めると、彼らも席についた。

「今日は、みんなの頑張りを祝う日よ」

 リリアがグラスを掲げた。

「拓海と美咲の働き、ゴブリンたちの協力」

「全員のおかげで、このダンジョンは良くなってきてる」

 彼女は微笑んだ。

「ありがとう」

 拓海、美咲、ゴルグ、そして他のゴブリンたちもグラスを掲げた。

「乾杯!」

 広間に、歓声が響いた。

 食事が始まると、自然と会話が弾んだ。

 ゴブリンたちは意外と陽気で、冗談を言って笑い合う。

 美咲は小さなゴブリンたちに囲まれて、楽しそうに話している。

 拓海はゴルグと、今後の計画について話していた。

「次は、第一層の通路幅を狭める」

「分かった」

 ゴルグが頷いた。

「壁、作ればいい?」

「そうです。仮設の壁でいい」

「簡単」

 リリアはその光景を見て、満足そうに微笑んでいた。

 かつて孤独だったダンジョン主。

 しかし今は、仲間がいる。

 人間とモンスターが、共に笑い合っている。

 この光景が、彼女にとって何よりも嬉しかった。

-----

 宴会が終わり、皆が解散した後。

 拓海は一人、広間に残っていた。

 片付けを手伝いながら、今日の出来事を振り返る。

「拓海くん」

 美咲が戻ってきた。

「まだ起きてたの?」

「ああ。少し片付けを」

「手伝うよ」

 二人で黙々と片付けをした。

 皿を運び、テーブルを拭き、椅子を元に戻す。

「ねえ、拓海くん」

 美咲が作業の手を止めた。

「私たち、すごいことしてるよね」

「ああ」

「一週間前は、クラスメイトに囲まれて使われた」

 美咲の声が少し震えた。

「でも今は……」

「ゴブリンさんたちが、ありがとうって言ってくれる」

「リリアさんも、喜んでくれる」

 彼女は涙を拭いた。

「こんなに嬉しいこと、初めて」

「良かったな」

 拓海は優しく微笑んだ。

「お前は、ここで必要とされてる」

「拓海くんも」

 美咲が笑顔で言った。

「拓海くんがいなかったら、私はここまでできなかった」

「お互い様だ」

 二人は片付けを終え、廊下に出た。

 静かな夜。

 遠くから、ゴブリンたちの寝息が聞こえる。

「じゃあ、おやすみ」

「おやすみ」

 それぞれの部屋に入る前、二人は微笑み合った。

 一週間。

 短い時間だが、確実に変化が起きている。

 この場所が、二人の居場所になり始めていた。
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