職業ガチャで外れ職引いたけど、ダンジョン主に拾われて成り上がります

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【第8章】初めての「勝利」

エピソード.35

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 魔王軍本部から戻った翌日。

 拓海と美咲は、リリアのダンジョンで報告会を開いていた。

 執務室には、リリアとゴルグも同席している。

「幹部候補……ですって?」

 リリアが目を丸くした。

「はい」

 拓海が頷いた。

「ゼノス様から、直々に」

「すごい」

 リリアが感嘆の声を上げた。

「転移されて、たった三ヶ月でしょう?」

「それなのに、もう幹部候補なんて」

「拓海、すごい」

 ゴルグも嬉しそうに言った。

「俺たちの、誇り」

「ありがとう、ゴルグ」

 拓海が笑った。

「でも、これはみんなのおかげだ」

「リリアさんが、俺たちを拾ってくれた」

「ゴルグたちが、協力してくれた」

「だから、ここまで来れた」

 リリアが微笑んだ。

「謙虚ね」

「でも、それがあなたの良いところよ」

 彼女は書類を取り出した。

「さて、こちらも良い知らせがあるわ」

「何ですか?」

「今月の魔力生産量」

 リリアが数字を示した。

-----

魔力生産量(今月)

月間目標:1000単位  
実績:1620単位

達成率:162%  
評価:S

-----

「S評価……」

 美咲が驚いた。

「そんなの、初めて見た」

「ええ」

 リリアが誇らしげに言った。

「私のダンジョン史上、初めてよ」

「あなたたちのおかげで、ここまで来れた」

 彼女は立ち上がり、二人の前に立った。

「本当に、ありがとう」

 深々と頭を下げる。

「リリアさん……」

 美咲が慌てた。

「頭を上げてください」

「私たちこそ、感謝してます」

「居場所をくれて、認めてくれて」

「ここがなければ、私たちは……」

 リリアが顔を上げた。

 その目には、涙が浮かんでいた。

「私も同じよ」

 彼女が微笑んだ。

「あなたたちがいなければ、私はダンジョン主を解任されてた」

「孤独で、絶望してた」

「でも今は、仲間がいる」

 三人は抱き合った。

 ゴルグも、嬉しそうに見守っている。

「みんな、家族」

 彼が呟いた。

「ずっと、一緒」

-----

 午後、拓海は第二層の点検をしていた。

 美咲の定期清掃が行き届き、通路は常に清潔に保たれている。

 モンスターの配置も最適化され、効率的に機能している。

「完璧だな」

 拓海が呟いた。

 このダンジョンは、もう自分たちがいなくても運営できる。

 マニュアルがあり、ゴブリンたちが自主的に動いている。

 それが、少し寂しくもあった。

「拓海くん」

 美咲の声がした。

 振り返ると、彼女が小走りで近づいてくる。

「どうした?」

「リリアさんが呼んでる」

「お客さんが来たって」

「お客さん?」

 二人は執務室に向かった。

-----

 執務室には、見知らぬ女性が座っていた。

 豪華なドレスを着た、美しい女性。

 黒髪を優雅に束ね、深紅の瞳が印象的だ。

「こちらが、蒼井拓海と白石美咲」

 リリアが紹介した。

「私の協力者よ」

「初めまして」

 女性が立ち上がった。

「私は、ダンジョン主のセリナ」

 その名前に、拓海と美咲は顔を見合わせた。

 セリナ。

 ダンジョン主の集会で、自分たちを笑った女性だ。

「あの……」

 美咲が戸惑った。

「セリナさんが、どうして……」

「頼みがあって来たの」

 セリナが真剣な顔で言った。

「私のダンジョンを、見てほしい」

「え……?」

「報酬は払うわ」

 セリナが続けた。

「あなたたちの成果、聞いてる」

「リリアのダンジョン、アルガスのダンジョン」

「全部、劇的に改善されたって」

「私のダンジョンも、同じようにしてほしい」

 拓海は少し考えた。

 集会の時、セリナは自分たちを馬鹿にした。

 掃除係を笑った。

 それを、今さら……。

「どうして、俺たちに?」

 拓海が尋ねた。

「プライドはないんですか?」

 セリナは一瞬、言葉に詰まった。

 そして、深く息を吐いた。

「……ないわ」

 彼女が正直に答えた。

「あの時は、馬鹿にした」

「ごめんなさい」

「でも、結果を見て分かった」

「あなたたちは、本物だって」

 セリナが頭を下げた。

「お願い。助けて」

 リリアが拓海を見た。

 拓海は美咲を見た。

 美咲が小さく頷く。

「……分かりました」

 拓海が答えた。

「見ます」

「でも、条件があります」

「何?」

「二度と、職業で人を馬鹿にしないこと」

 拓海が真剣に言った。

「どんな職業にも、価値がある」

「それを、認めてください」

 セリナは数秒、黙っていた。

 そして、深く頷いた。

「約束する」

 彼女が答えた。

「二度と、馬鹿にしない」

-----

 翌日、拓海と美咲はセリナのダンジョンを訪れた。

 「魅惑の迷宮」と呼ばれる、華やかなダンジョンだ。

 内装は豪華で、装飾が施されている。

 しかし、拓海のスキルが即座に問題点を検出した。

「装飾が多すぎます」

 拓海が指摘した。

「魔力の流れを阻害してる」

「でも……」

 セリナが困った顔をした。

「この装飾が、私のダンジョンの特徴なの」

「見た目も大事でしょう?」

「見た目と効率、両立できます」

 拓海が答えた。

「装飾の配置を変えるだけで、魔力の流れは改善できる」

「本当に?」

「はい」

 拓海は図を描き始めた。

 装飾を残しながら、魔力の流れを最適化する配置。

 セリナは感心したように図を見つめた。

「すごい……」

 彼女が呟いた。

「こんな発想、思いつかなかった」

「美咲、掃除を」

「うん」

 美咲がスキルを発動する。

 緑色の光が、通路を包む。

 装飾が輝き、魔力の流れが改善されていく。

「綺麗……」

 セリナが感動した。

「装飾が、さらに輝いてる」

「汚れが取れたからです」

 美咲が説明した。

「本来の輝きを、取り戻しただけです」

 セリナは美咲を見た。

 その目には、尊敬の念があった。

「あなたの能力……素晴らしいわ」

 彼女が言った。

「掃除係なんて、馬鹿にしてごめんなさい」

「こんなに価値がある職業だったなんて」

「いいんです」

 美咲が微笑んだ。

「私も、最初は自分の価値が分からなかった」

「でも、拓海くんやリリアさんが教えてくれた」

「どんな職業にも、使い道があるって」

 セリナは深く頷いた。

「本当に、そうね」

-----

 一週間後。

 セリナのダンジョンは、劇的に改善されていた。

 装飾はそのままに、魔力生産効率が30%向上した。

「信じられない……」

 セリナが資料を見つめた。

「こんなに効率が上がるなんて」

「まだ改善の余地はあります」

 拓海が答えた。

「でも、基礎は整いました」

「後は、定期的な清掃と点検を続けるだけです」

「ありがとう」

 セリナが深々と頭を下げた。

「本当に、ありがとう」

 彼女は報酬の袋を差し出した。

 中には、魔石が200個入っている。

「これが、約束の報酬」

「それと……」

 セリナがもう一つ、小さな箱を取り出した。

「これは、私からの個人的なお礼」

 箱を開けると、美しいペンダントが入っていた。

「魔力を高めるペンダントよ」

 セリナが説明した。

「美咲に」

「え……でも……」

「受け取って」

 セリナが微笑んだ。

「あなたは、私に大切なことを教えてくれた」

「職業の価値は、名前じゃなく使い方だって」

 美咲は涙ぐみながら、ペンダントを受け取った。

「ありがとうございます……」

-----

 帰り道、二人は並んで歩いていた。

「また一人、認めてもらえたね」

 美咲が嬉しそうに言った。

「ああ」

 拓海も笑った。

「最初は馬鹿にしてた人が、今は感謝してる」

「それが、一番嬉しい」

「うん」

 美咲がペンダントを見つめた。

「私たち、ちゃんと価値を証明できてるんだね」

「ああ」

 拓海が頷いた。

「これからも、証明し続ける」

「俺たちの能力を」

「そして、どんな職業にも価値があることを」

 二人は夕日に向かって歩いた。

 長い影が、地面に伸びていく。

 かつて無能と呼ばれた二人。

 しかし今は、多くの人に認められている。

 それが、何よりの勝利だった。
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