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第二部 【第11章】最後の任務完遂
エピソード.50
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深夜。
転移者居住区の廊下は静まり返っていた。
月明かりが、窓から差し込んでいる。
高瀬の部屋。
扉がわずかに開き、影が一つ、また一つと滑り込む。
全部で五人。
全員が憔悴しきった顔をしていた。
目の下には隈。
頬はこけている。
服も汚れたままだ。
高瀬が椅子に座っていた。
拳には、包帯が巻かれている。
昨夜、壁を殴り続けた傷だ。
一人が口を開いた。
「高瀬……どうするんだ」
声が震えている。
「木村が死んで……もう、限界だ」
高瀬が顔を上げる。
その目は、何かに取り憑かれたように光っていた。
「拓海が幹部になった」
低く、冷たい声。
「奴はもう、完全に敵だ」
「敵……」
一人が呟く。
「でも、拓海のおかげで俺たちは……」
「黙れ」
高瀬が遮った。
「あいつのせいで、俺たちはこうなったんだ」
「木村が死んだのも」
「俺たちが苦しんでるのも」
「全部、拓海のせいだ」
静寂。
誰も、反論できない。
別の一人が言った。
「じゃあ、どうするんだよ」
「ダンジョン攻略も進まない」
「仲間は減る一方だ」
「俺たち、このまま死ぬのか?」
高瀬が立ち上がった。
窓の外を見つめる。
「俺たちは、拓海を止める」
「止める……って、どうやって」
「それだけだ」
高瀬が振り返った。
その目には、狂気が宿っていた。
「泣き言は聞きたくない」
「お前たちが嫌なら、出ていけ」
誰も、動かなかった。
動けなかった。
高瀬の存在感に、押されていた。
「いいか」
高瀬が全員を見回す。
「俺は勇者だ」
「必ず、元の世界に帰る」
「そのためには、拓海を……」
言葉が途切れる。
だが、全員に伝わった。
一人が小さく頷いた。
もう一人も、頷く。
全員が、高瀬についていくことを選んだ。
他に、道がなかったから。
-----
同じ頃、別の部屋。
田中と中村が、小さなテーブルを挟んで向かい合っていた。
テーブルの上には、資料が広げられている。
ダンジョンの地図。
モンスターの配置図。
攻略ルートの提案書。
全て、拓海が提供してくれたものだ。
中村が資料を指差した。
「これ、全部拓海が作ってくれたんだよな」
「ああ」
田中が頷く。
「このおかげで、俺たちは生き延びてる」
「最近のダンジョン攻略も、成功率が上がった」
「拓海の分析のおかげだ」
中村が腕を組んだ。
「なのに、高瀬は拓海を敵だと思ってる」
「……ああ」
田中の声が沈む。
「木村が死んでから、高瀬は完全におかしくなった」
「全部、拓海のせいだって」
「でも、違うだろ?」
中村が言った。
「木村が死んだのは、ダンジョンで判断ミスしたからだ」
「拓海は関係ない」
「分かってる」
田中が頭を抱えた。
「分かってるけど……」
「高瀬は、聞く耳を持たない」
沈黙。
二人とも、何も言えなかった。
やがて、中村が口を開いた。
「田中、俺たち……選択の時が来るかもな」
「選択……?」
「高瀬についていくか」
中村が真剣な顔で言った。
「それとも、拓海を信じるか」
田中の拳が、震えた。
「俺は……」
言葉が続かない。
高瀬は、元親友だ。
クラスのリーダーで、頼りになる存在だった。
でも今の高瀬は、狂っている。
一方、拓海。
自分が見捨てた相手。
でも、その拓海が今、自分たちを助けてくれている。
「俺、分からないんだ」
田中が呟いた。
「どっちが正しいのか」
「どっちについていけばいいのか」
中村が肩を叩いた。
「焦るな」
「まだ時間はある」
「でも……」
「大丈夫だ」
中村が微笑んだ。
「俺たちは、一緒に考えよう」
田中が頷いた。
でも、不安は消えない。
この選択が、自分の運命を決めるような気がした。
-----
翌朝。
魔王軍の事務棟。
明るい陽射しが差し込む、清潔なオフィスだ。
橋本たちは、デスクに座って仕事をしていた。
書類整理。
データ入力。
報告書の作成。
地味だが、安全な仕事だ。
給料も出る。
寮も綺麗だ。
食事も美味しい。
ダンジョンで命を賭ける必要もない。
一人が伸びをした。
「ふう、今日の分終わった」
「お疲れ」
橋本が微笑む。
「今日は早く終わったね」
「うん」
仲間が笑った。
「夕方、街に買い物行かない?」
「いいね。新しい服、欲しかったんだ」
明るい会話。
笑顔。
平和な日常。
そこに、別の仲間が入ってきた。
「ねえ、聞いた?」
資料を手に持っている。
「来週から、戦闘訓練が始まるって」
「訓練?」
橋本が顔を上げた。
「うん」
仲間が頷く。
「転移者の安全確保のための、基礎戦闘訓練だって」
「剣の使い方とか、魔法の基礎とか」
「へえ」
一人が興味深そうに言った。
「それ、いいかも」
「自衛できるようになるし」
「私も参加しようかな」
橋本が資料を見た。
指導官の名前が書かれている。
「蒼井拓海……」
彼女が呟く。
「蒼井くんが、指導してくれるんだ」
「優しそうだし、安心だね」
仲間が笑った。
「うん、参加しよう」
全員が賛同した。
笑顔で、明るく。
でも。
橋本だけは、わずかに違和感を覚えていた。
なぜ、今になって訓練なのか。
四ヶ月間、一度もなかったのに。
木村が死んだ、この時期に。
でも、その疑問を口にすることはなかった。
みんなが笑っている。
その輪を、壊したくなかった。
「橋本も、参加するよね?」
仲間が尋ねる。
「うん」
橋本が笑顔を作った。
「一緒に行こう」
会話は続く。
笑い声が響く。
しかし、その笑顔の裏に。
何が隠されているのか。
まだ誰も、知らなかった。
運命の歯車は、静かに回り続けていた。
転移者居住区の廊下は静まり返っていた。
月明かりが、窓から差し込んでいる。
高瀬の部屋。
扉がわずかに開き、影が一つ、また一つと滑り込む。
全部で五人。
全員が憔悴しきった顔をしていた。
目の下には隈。
頬はこけている。
服も汚れたままだ。
高瀬が椅子に座っていた。
拳には、包帯が巻かれている。
昨夜、壁を殴り続けた傷だ。
一人が口を開いた。
「高瀬……どうするんだ」
声が震えている。
「木村が死んで……もう、限界だ」
高瀬が顔を上げる。
その目は、何かに取り憑かれたように光っていた。
「拓海が幹部になった」
低く、冷たい声。
「奴はもう、完全に敵だ」
「敵……」
一人が呟く。
「でも、拓海のおかげで俺たちは……」
「黙れ」
高瀬が遮った。
「あいつのせいで、俺たちはこうなったんだ」
「木村が死んだのも」
「俺たちが苦しんでるのも」
「全部、拓海のせいだ」
静寂。
誰も、反論できない。
別の一人が言った。
「じゃあ、どうするんだよ」
「ダンジョン攻略も進まない」
「仲間は減る一方だ」
「俺たち、このまま死ぬのか?」
高瀬が立ち上がった。
窓の外を見つめる。
「俺たちは、拓海を止める」
「止める……って、どうやって」
「それだけだ」
高瀬が振り返った。
その目には、狂気が宿っていた。
「泣き言は聞きたくない」
「お前たちが嫌なら、出ていけ」
誰も、動かなかった。
動けなかった。
高瀬の存在感に、押されていた。
「いいか」
高瀬が全員を見回す。
「俺は勇者だ」
「必ず、元の世界に帰る」
「そのためには、拓海を……」
言葉が途切れる。
だが、全員に伝わった。
一人が小さく頷いた。
もう一人も、頷く。
全員が、高瀬についていくことを選んだ。
他に、道がなかったから。
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同じ頃、別の部屋。
田中と中村が、小さなテーブルを挟んで向かい合っていた。
テーブルの上には、資料が広げられている。
ダンジョンの地図。
モンスターの配置図。
攻略ルートの提案書。
全て、拓海が提供してくれたものだ。
中村が資料を指差した。
「これ、全部拓海が作ってくれたんだよな」
「ああ」
田中が頷く。
「このおかげで、俺たちは生き延びてる」
「最近のダンジョン攻略も、成功率が上がった」
「拓海の分析のおかげだ」
中村が腕を組んだ。
「なのに、高瀬は拓海を敵だと思ってる」
「……ああ」
田中の声が沈む。
「木村が死んでから、高瀬は完全におかしくなった」
「全部、拓海のせいだって」
「でも、違うだろ?」
中村が言った。
「木村が死んだのは、ダンジョンで判断ミスしたからだ」
「拓海は関係ない」
「分かってる」
田中が頭を抱えた。
「分かってるけど……」
「高瀬は、聞く耳を持たない」
沈黙。
二人とも、何も言えなかった。
やがて、中村が口を開いた。
「田中、俺たち……選択の時が来るかもな」
「選択……?」
「高瀬についていくか」
中村が真剣な顔で言った。
「それとも、拓海を信じるか」
田中の拳が、震えた。
「俺は……」
言葉が続かない。
高瀬は、元親友だ。
クラスのリーダーで、頼りになる存在だった。
でも今の高瀬は、狂っている。
一方、拓海。
自分が見捨てた相手。
でも、その拓海が今、自分たちを助けてくれている。
「俺、分からないんだ」
田中が呟いた。
「どっちが正しいのか」
「どっちについていけばいいのか」
中村が肩を叩いた。
「焦るな」
「まだ時間はある」
「でも……」
「大丈夫だ」
中村が微笑んだ。
「俺たちは、一緒に考えよう」
田中が頷いた。
でも、不安は消えない。
この選択が、自分の運命を決めるような気がした。
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翌朝。
魔王軍の事務棟。
明るい陽射しが差し込む、清潔なオフィスだ。
橋本たちは、デスクに座って仕事をしていた。
書類整理。
データ入力。
報告書の作成。
地味だが、安全な仕事だ。
給料も出る。
寮も綺麗だ。
食事も美味しい。
ダンジョンで命を賭ける必要もない。
一人が伸びをした。
「ふう、今日の分終わった」
「お疲れ」
橋本が微笑む。
「今日は早く終わったね」
「うん」
仲間が笑った。
「夕方、街に買い物行かない?」
「いいね。新しい服、欲しかったんだ」
明るい会話。
笑顔。
平和な日常。
そこに、別の仲間が入ってきた。
「ねえ、聞いた?」
資料を手に持っている。
「来週から、戦闘訓練が始まるって」
「訓練?」
橋本が顔を上げた。
「うん」
仲間が頷く。
「転移者の安全確保のための、基礎戦闘訓練だって」
「剣の使い方とか、魔法の基礎とか」
「へえ」
一人が興味深そうに言った。
「それ、いいかも」
「自衛できるようになるし」
「私も参加しようかな」
橋本が資料を見た。
指導官の名前が書かれている。
「蒼井拓海……」
彼女が呟く。
「蒼井くんが、指導してくれるんだ」
「優しそうだし、安心だね」
仲間が笑った。
「うん、参加しよう」
全員が賛同した。
笑顔で、明るく。
でも。
橋本だけは、わずかに違和感を覚えていた。
なぜ、今になって訓練なのか。
四ヶ月間、一度もなかったのに。
木村が死んだ、この時期に。
でも、その疑問を口にすることはなかった。
みんなが笑っている。
その輪を、壊したくなかった。
「橋本も、参加するよね?」
仲間が尋ねる。
「うん」
橋本が笑顔を作った。
「一緒に行こう」
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