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第二部 【第11章】最後の任務完遂
エピソード.51
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翌朝、拓海は執務室で資料と格闘していた。
机の上に広げられた、分厚いファイル。
「転移者戦闘訓練プログラム・詳細計画書」
訓練内容、スケジュール、必要な装備、指導官の配置。
全てを確認し、承認しなければならない。
拓海がページをめくる。
剣術の基礎訓練。
魔法の発動練習。
陣形の組み方。
回避行動の訓練。
一つ一つは、確かに自衛に必要なものだ。
でも。
拓海の胸に、違和感が残る。
なぜ、今なのか。
四ヶ月間、一度も実施されなかった訓練。
木村が死んだ、この時期に。
副官が入ってきた。
「拓海様、訓練場の視察をお願いします」
「分かりました」
拓海が立ち上がる。
美咲が心配そうに見つめていた。
「拓海くん……」
「大丈夫だ」
拓海が微笑む。
でも、その笑顔は強張っていた。
「これって本当に、自衛のためだけなのかな?」
美咲の声が小さい。
「分からない」
拓海が正直に答えた。
「でも、嫌な予感がする」
二人は視線を交わした。
何かが、おかしい。
この訓練には、別の目的があるような気がする。
-----
魔王軍の大訓練場。
広大な敷地に、訓練用の設備が並んでいる。
的、障害物、模擬戦闘用のエリア。
拓海が現場を歩く。
指導官たちが、訓練内容を説明していた。
「ここで剣術の基礎を」
「あちらで魔法の発動練習を」
「この広場で陣形訓練を行います」
拓海が一つ一つ確認する。
スキル「情報収集」で、設備の配置を記憶していく。
そして「傾向分析」で、訓練の効率を計算する。
「この配置だと、移動時間が無駄になる」
拓海が指摘した。
「剣術エリアと魔法エリアを入れ替えた方がいい」
指導官たちが顔を見合わせる。
「確かに……その通りですね」
「さすが、蒼井様」
拓海は複雑な心境だった。
自分の分析能力が、訓練の効率を上げる。
それは、転移者たちをより早く戦力化することを意味する。
もし、この訓練に別の目的があるなら。
俺は、それに加担していることになる。
足音が近づいてきた。
振り返ると、グレイスが立っていた。
魔王軍の部隊長。
歴戦の戦士だ。
「蒼井」
グレイスが腕を組んだ。
「お前の指摘は的確だ」
「ありがとうございます」
拓海が頭を下げる。
グレイスが訓練場を見渡した。
「お前は、指揮の才能がある」
「戦場でも、その能力を見せてもらった」
拓海の胸が、ざわついた。
戦場。
その言葉が、引っかかる。
「今回の訓練で、それを発揮してくれ」
グレイスが拓海の肩を叩いた。
「転移者たちを、立派な戦力に育ててくれ」
拓海が思わず尋ねた。
「グレイスさん」
「何だ」
「転移者たちを、何のために訓練するんですか?」
グレイスの表情が、一瞬曇った。
ほんの一瞬。
だが、拓海は見逃さなかった。
「……自衛のためだ」
グレイスが答える。
「ダンジョン攻略で、仲間を失わないために」
「本当に、それだけですか?」
拓海が食い下がる。
グレイスが拓海を見つめた。
その目は、何かを隠しているように見えた。
「それだけだ」
グレイスが断言する。
「お前は、余計なことを考えるな」
「命じられた仕事をこなせばいい」
そう言って、グレイスは去っていった。
拓海は、その背中を見送った。
嘘だ。
拓海の直感が、そう告げていた。
グレイスは、何かを隠している。
この訓練には、別の目的がある。
拓海の拳が、握りしめられた。
俺は、何に加担させられようとしているんだ。
-----
夜。
拓海はリリアのダンジョンに戻っていた。
ここが、今の自分の居場所だ。
オフィスよりも、ずっと落ち着く。
リリアが紅茶を淹れてくれた。
「お疲れ様」
カップを受け取る。
温かい湯気が、顔にかかる。
「拓海」
リリアが真剣な顔で言った。
「気をつけて」
「……何を?」
「魔王軍は、何か隠してる」
拓海が顔を上げた。
リリアも、気づいているのか。
「戦闘訓練なんて、今まで一度もなかった」
リリアが続ける。
「転移者たちは、四ヶ月間放置されていた」
「なのに、なぜ今になって」
「俺も、そう思う」
拓海が頷いた。
「今日、グレイスに聞いた」
「何て?」
「自衛のためだ、って」
拓海が苦笑する。
「でも、嘘だと思う」
「あの人の目が、何かを隠していた」
リリアが腕を組んだ。
「理由がある」
「それを見つけないと」
「ああ」
拓海が決意を込めて答えた。
「俺は、真実を知る」
「そして、みんなを守る」
リリアが微笑んだ。
「あなたらしいわ」
彼女がカップを置いた。
「私も協力する」
「ダンジョン主のネットワークで、情報を集めてみる」
「ありがとうございます」
拓海が頭を下げた。
リリアが拓海の頭を撫でた。
「あなたは、一人じゃないのよ」
「美咲も、私も、ゴルグたちも」
「みんな、あなたの味方」
その言葉が、拓海の胸に沁みた。
そうだ。
俺は、一人じゃない。
仲間がいる。
信じられる人たちが、側にいる。
拓海が窓の外を見つめた。
月が、雲の間から顔を出している。
明日から、訓練が始まる。
転移者たちが、戦闘訓練を受ける。
その意味を、俺は知らなければならない。
魔王軍が隠している真実を。
必ず、見つけ出す。
そして。
みんなを、守る。
拓海は、そう心に誓った。
運命の歯車は、また一つ回った。
机の上に広げられた、分厚いファイル。
「転移者戦闘訓練プログラム・詳細計画書」
訓練内容、スケジュール、必要な装備、指導官の配置。
全てを確認し、承認しなければならない。
拓海がページをめくる。
剣術の基礎訓練。
魔法の発動練習。
陣形の組み方。
回避行動の訓練。
一つ一つは、確かに自衛に必要なものだ。
でも。
拓海の胸に、違和感が残る。
なぜ、今なのか。
四ヶ月間、一度も実施されなかった訓練。
木村が死んだ、この時期に。
副官が入ってきた。
「拓海様、訓練場の視察をお願いします」
「分かりました」
拓海が立ち上がる。
美咲が心配そうに見つめていた。
「拓海くん……」
「大丈夫だ」
拓海が微笑む。
でも、その笑顔は強張っていた。
「これって本当に、自衛のためだけなのかな?」
美咲の声が小さい。
「分からない」
拓海が正直に答えた。
「でも、嫌な予感がする」
二人は視線を交わした。
何かが、おかしい。
この訓練には、別の目的があるような気がする。
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魔王軍の大訓練場。
広大な敷地に、訓練用の設備が並んでいる。
的、障害物、模擬戦闘用のエリア。
拓海が現場を歩く。
指導官たちが、訓練内容を説明していた。
「ここで剣術の基礎を」
「あちらで魔法の発動練習を」
「この広場で陣形訓練を行います」
拓海が一つ一つ確認する。
スキル「情報収集」で、設備の配置を記憶していく。
そして「傾向分析」で、訓練の効率を計算する。
「この配置だと、移動時間が無駄になる」
拓海が指摘した。
「剣術エリアと魔法エリアを入れ替えた方がいい」
指導官たちが顔を見合わせる。
「確かに……その通りですね」
「さすが、蒼井様」
拓海は複雑な心境だった。
自分の分析能力が、訓練の効率を上げる。
それは、転移者たちをより早く戦力化することを意味する。
もし、この訓練に別の目的があるなら。
俺は、それに加担していることになる。
足音が近づいてきた。
振り返ると、グレイスが立っていた。
魔王軍の部隊長。
歴戦の戦士だ。
「蒼井」
グレイスが腕を組んだ。
「お前の指摘は的確だ」
「ありがとうございます」
拓海が頭を下げる。
グレイスが訓練場を見渡した。
「お前は、指揮の才能がある」
「戦場でも、その能力を見せてもらった」
拓海の胸が、ざわついた。
戦場。
その言葉が、引っかかる。
「今回の訓練で、それを発揮してくれ」
グレイスが拓海の肩を叩いた。
「転移者たちを、立派な戦力に育ててくれ」
拓海が思わず尋ねた。
「グレイスさん」
「何だ」
「転移者たちを、何のために訓練するんですか?」
グレイスの表情が、一瞬曇った。
ほんの一瞬。
だが、拓海は見逃さなかった。
「……自衛のためだ」
グレイスが答える。
「ダンジョン攻略で、仲間を失わないために」
「本当に、それだけですか?」
拓海が食い下がる。
グレイスが拓海を見つめた。
その目は、何かを隠しているように見えた。
「それだけだ」
グレイスが断言する。
「お前は、余計なことを考えるな」
「命じられた仕事をこなせばいい」
そう言って、グレイスは去っていった。
拓海は、その背中を見送った。
嘘だ。
拓海の直感が、そう告げていた。
グレイスは、何かを隠している。
この訓練には、別の目的がある。
拓海の拳が、握りしめられた。
俺は、何に加担させられようとしているんだ。
-----
夜。
拓海はリリアのダンジョンに戻っていた。
ここが、今の自分の居場所だ。
オフィスよりも、ずっと落ち着く。
リリアが紅茶を淹れてくれた。
「お疲れ様」
カップを受け取る。
温かい湯気が、顔にかかる。
「拓海」
リリアが真剣な顔で言った。
「気をつけて」
「……何を?」
「魔王軍は、何か隠してる」
拓海が顔を上げた。
リリアも、気づいているのか。
「戦闘訓練なんて、今まで一度もなかった」
リリアが続ける。
「転移者たちは、四ヶ月間放置されていた」
「なのに、なぜ今になって」
「俺も、そう思う」
拓海が頷いた。
「今日、グレイスに聞いた」
「何て?」
「自衛のためだ、って」
拓海が苦笑する。
「でも、嘘だと思う」
「あの人の目が、何かを隠していた」
リリアが腕を組んだ。
「理由がある」
「それを見つけないと」
「ああ」
拓海が決意を込めて答えた。
「俺は、真実を知る」
「そして、みんなを守る」
リリアが微笑んだ。
「あなたらしいわ」
彼女がカップを置いた。
「私も協力する」
「ダンジョン主のネットワークで、情報を集めてみる」
「ありがとうございます」
拓海が頭を下げた。
リリアが拓海の頭を撫でた。
「あなたは、一人じゃないのよ」
「美咲も、私も、ゴルグたちも」
「みんな、あなたの味方」
その言葉が、拓海の胸に沁みた。
そうだ。
俺は、一人じゃない。
仲間がいる。
信じられる人たちが、側にいる。
拓海が窓の外を見つめた。
月が、雲の間から顔を出している。
明日から、訓練が始まる。
転移者たちが、戦闘訓練を受ける。
その意味を、俺は知らなければならない。
魔王軍が隠している真実を。
必ず、見つけ出す。
そして。
みんなを、守る。
拓海は、そう心に誓った。
運命の歯車は、また一つ回った。
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