職業ガチャで外れ職引いたけど、ダンジョン主に拾われて成り上がります

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第二部 【第11章】最後の任務完遂

エピソード.52

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 深夜二時。

 高瀬の部屋。

 カーテンは閉め切られ、明かりも消されている。

 月明かりだけが、窓の隙間から漏れていた。

 高瀬はベッドに座っていた。

 頭を抱え、膝を抱えている。

 包帯を巻いた拳が、わずかに震えていた。

 静寂。

 しかし、高瀬の耳には。

 声が、聞こえていた。

「高瀬……」

 高瀬が顔を上げる。

 部屋の隅。

 そこに、木村が立っていた。

 血まみれの姿。

 胸に、大きな傷。

 ダンジョンで受けた、致命傷だ。

「木村……」

 高瀬が呟く。

 木村が近づいてくる。

「痛いよ……高瀬……」

 その声は、苦しそうだった。

「助けて……なんで助けてくれなかったの……」

「やめろ……」

 高瀬が頭を振る。

「お前は死んだ……もう、いない……」

「痛いよ……」

 木村が手を伸ばす。

 血が滴る。

「高瀬……お前のせいだ……」

「違う!」

 高瀬が叫んだ。

「俺は……俺は必死だった!」

「お前が弱かったからだ!」

 木村の姿が、消えた。

 高瀬が荒い息をする。

 幻覚だ。

 分かっている。

 でも、声は止まらない。

 今度は、別の声。

「高瀬くん……」

 相沢の声。

「あなた、変わってしまった……」

「怖いよ……」

「黙れ……」

 高瀬が呟く。

 そして、拓海の声。

「お前は無能だ」

 冷たい声。

「勇者なのに、仲間も守れない」

「お前は失敗した」

「やめろ!」

 高瀬が叫んだ。

 立ち上がり、壁を殴る。

 ドン。

 包帯が赤く染まる。

 でも、痛みが現実を教えてくれる。

 俺は、まだ生きている。

「俺は……」

 高瀬が呟く。

「俺は勇者だ……」

 拳を握りしめる。

「勇者なんだ……」

 声が、また聞こえる。

 今度は、クラスメイトたちの声。

「高瀬、頼りない」

「あいつ、変わったよな」

「拓海の方が、すごいらしいぞ」

「拓海……」

 高瀬の目が、鋭く光った。

「拓海……」

-----

 高瀬が鏡の前に立った。

 映るのは、憔悴しきった自分の顔。

 目の下には隈。

 頬はこけている。

 これが、勇者の姿か。

 高瀬が自嘲的に笑った。

「ハハ……」

 笑いが、止まらない。

「俺は……勇者なのに……」

 拳が震える。

「なのに……」

 全てが、頭の中で繋がっていく。

 木村の死。

 それは、拓海が情報を出し惜しみしたからだ。

 俺たちパーティの崩壊。

 それは、拓海が成功して俺たちが惨めに見えるからだ。

 クラスメイトたちの視線。

 あいつらは、拓海を称賛している。

 俺を、見下している。

 全部。

 全部、拓海のせいだ。

「拓海……」

 高瀬が鏡を見つめた。

「お前が……」

 拳を握りしめる。

「お前が、いなければ……」

 感情が、爆発した。

「全部、元に戻るんだ!」

 高瀬が鏡を殴った。

 バキッ。

 ガラスが割れる。

 破片が散らばる。

 拳から、血が滲む。

 でも、高瀬は笑っていた。

 狂ったように。

「そうだ……そうすればいいんだ……」

 割れた鏡に映る、自分の顔。

 目が、異様に光っている。

「拓海を殺す」

 高瀬が呟いた。

「そうすれば、全てが元に戻る」

「俺が、また勇者になる」

「みんなが、また俺を見る」

 高瀬が破片を拾った。

 鋭く尖った、ガラスの欠片。

「お前を……」

 欠片を握りしめる。

 血が流れる。

 でも、痛くない。

「殺してやる」

-----

 翌日の深夜。

 高瀬の部屋に、五人が集まっていた。

 過激派のメンバーたち。

 全員が、緊張した面持ちだ。

 高瀬が立ち上がった。

 包帯を巻いた拳。

 その目は、狂気に満ちていた。

「明日の深夜」

 高瀬が低く告げた。

「拓海のオフィスを、襲撃する」

 静寂。

 誰も、何も言えなかった。

 一人が震える声で尋ねた。

「本当に……やるのか?」

「やる」

 高瀬が断言した。

「拓海を殺す」

「そうすれば、全てが変わる」

 相沢が部屋の隅で、膝を抱えていた。

 彼女も呼ばれていた。

「高瀬くん……」

 震える声。

「本当に……やるの?」

 高瀬が相沢を見た。

 その目に、温もりはない。

「お前も来い」

「でも……」

「来るんだ」

 高瀬が命令する。

 相沢が涙を流した。

 でも、頷くしかなかった。

 別の一人が言った。

「でも、拓海は幹部だぞ」

「警備も厳重だろうし……」

「知っている」

 高瀬が遮った。

「だから、深夜を狙う」

「美咲が残業しているという情報がある」

「あいつを人質にする」

 全員の顔が、青ざめた。

「人質……」

「そうだ」

 高瀬が笑った。

 狂気に満ちた笑み。

「拓海は、美咲を守ろうとする」

「そこが隙だ」

「でも……」

 一人が口を開きかけた。

「やめるなら、今すぐ出ていけ」

 高瀬が冷たく言った。

「お前たちも、拓海に屈するのか?」

 誰も、動けなかった。

 高瀬の存在感が、部屋を支配していた。

「いいか」

 高瀬が全員を見回す。

「これが、俺たちの最後のチャンスだ」

「拓海を殺せば、全てが元に戻る」

「俺が、また勇者になる」

「お前たちも、報われる」

 一人が、小さく頷いた。

 もう一人も、頷く。

 全員が、高瀬についていくことを選んだ。

 他に、選択肢がなかったから。

 高瀬が窓の外を見た。

 月が、雲に隠れている。

 暗い夜。

 明日の夜も、きっと暗いだろう。

「明日、全部終わらせる」

 高瀬が呟いた。

 拳を握りしめる。

 血が滲む包帯。

「拓海……」

 その名を、憎悪を込めて呟く。

「お前を殺して、俺は勇者に戻る」

 部屋に、重い沈黙が降りた。

 相沢が、静かに泣いていた。

 でも、誰もそれに気づかなかった。

 高瀬の狂気だけが、部屋を満たしていた。

 運命の歯車が、大きく回り始めていた。

 明日。

 全てが変わる。

 血が流れる。

 誰かが、倒れる。

 そして――物語は、新たな局面を迎える。
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