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【第18章】国境の緊張
エピソード.83
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警報が鳴り響いた。
拓海は執務室で書類を整理していたが、その音に顔を上げる。
廊下を兵士たちが走っていく。
「何事だ?」
美咲が部屋に飛び込んできた。
「拓海くん、緊急会議だって!」
「緊急会議?」
拓海が立ち上がる。
「幹部全員、すぐに集合しろって」
拓海は外套を羽織り、美咲と共に会議室へ向かった。
-----
会議室の扉が開く。
既にゼノス、バルトス、セレスティア、グレイスが席についていた。
全員が険しい表情だ。
拓海が席に着く。リリアも隣に座る。
ゼノスが立ち上がった。
「全員揃ったな」
彼は地図を広げる。魔王領と人間領の境界線が描かれている。
「報告する。本日午前、辺境の前線基地に人間国家の偵察隊が侵入した」
会場がざわめく。
グレイスが身を乗り出す。
「撃退しましたか?」
「いや」
ゼノスが首を振る。
「逃げられた」
セレスティアが眉をひそめた。
「逃げられた、ですって?」
「森に逃げ込まれ、追跡を断念した」
バルトスが地図を見つめる。
「どこまで見られたのですか?」
「基地の訓練場だ」
ゼノスの声が重い。
「転移者の訓練も、視察された可能性が高い」
拓海の胸が締め付けられる。
訓練を見られた。つまり、人間国家は魔王軍が転移者を戦力化していることを知った。
セレスティアが冷たく言った。
「明らかな挑発行為です」
彼女が立ち上がる。
「境界を越えて侵入し、軍事情報を収集しようとした。これは宣戦布告に等しい」
バルトスが反論する。
「しかし、それに応じれば戦争を意味します」
「だからこそ、今のうちに叩くべきです」
セレスティアの目が鋭い。
「相手が準備を整える前に。迎撃部隊を送りましょう」
「待て」
ゼノスが手を上げる。
「まだその段階ではない」
彼は地図の上に駒を置いた。
「人間国家は、何かを企んでいる」
「何かとは?」
グレイスが尋ねる。
「わからん」
ゼノスが顎に手を当てる。
「しかし、この侵入は単なる偵察ではない気がする」
拓海が口を開いた。
「もしかして……」
全員の視線が拓海に集まる。
「もしかして、転移者の情報収集が目的だったのでは?」
ゼノスが頷く。
「おそらくな。奴らは知りたいのだ。魔王軍がどれだけの転移者を抱えているか、どの程度訓練されているか」
セレスティアが言う。
「ならば尚更、今動くべきです。情報が伝わる前に」
「いや」
バルトスが首を振る。
「もう遅い。偵察隊は既に帰還しているはずだ」
沈黙が落ちる。
ゼノスが再び口を開いた。
「人間国家は、すぐにでも動くつもりだ」
彼の言葉が、重く響く。
「おそらく、一週間以内に何らかの行動を起こす」
拓海の胸に、嫌な予感が走る。
戦争だ。
もう、避けられない。
-----
会議が終わり、幹部たちが席を立ち始めた。
拓海も立ち上がろうとする。
「蒼井拓海」
ゼノスの声が、拓海を呼び止めた。
「残れ」
拓海の足が止まる。
他の幹部たちが部屋を出ていく。美咲とリリアも、不安そうな表情で去っていく。
部屋には、拓海とゼノスだけが残った。
ゼノスが拓海の前に立つ。
「お前に、任務を与える」
拓海が緊張する。
「前線基地の防衛戦略を立案してもらう」
「防衛……戦略?」
「ああ」
ゼノスが地図を指す。
「人間国家は、まず前線基地を攻撃してくるだろう。お前の分析能力で、最適な防衛策を立てろ」
拓海の喉が渇く。
「でも、俺は……」
「断るのか?」
ゼノスの目が、鋭く拓海を見つめる。
その視線に、拓海は言葉を失う。
「俺は、戦略立案の専門家じゃ……」
「お前の分析能力は、既に証明されている」
ゼノスが遮る。
「五つのダンジョンを効率化し、転移者の訓練プログラムを組んだ。お前なら、できる」
拓海は答えられなかった。
断れば、どうなる?
幹部の地位を失う。
そうなれば、美咲やリリアを守れなくなる。
他の転移者たちも、危険にさらされるかもしれない。
ゼノスが一歩近づく。
「蒼井拓海。これは命令だ」
その言葉の重さ。
拓海の拳が震える。
俺は今、人間を殺す準備をしろと言われている。
故郷の人たちを。
家族を。
でも……
拓海が深呼吸した。
「わかりました」
声が震えている。
「お受けします」
ゼノスが満足げに頷いた。
「良い返事だ。期待している」
彼は書類を拓海に手渡す。
「明日、前線基地へ向かえ。転移者も何名か連れていけ」
「転移者を……?」
「ああ。実戦経験が必要だ」
ゼノスが背を向ける。
「防衛だけだ。攻撃はしない。わかっているな?」
「はい……」
拓海は書類を握りしめた。
「下がっていい」
拓海が部屋を出る。
扉を閉めた瞬間、足が震えた。
壁に手をつき、呼吸を整える。
廊下で、美咲とリリアが待っていた。
「拓海くん……」
美咲が駆け寄る。
「どうだった?」
拓海が答える。
「前線基地の防衛戦略を立案することになった」
美咲の顔が青ざめる。
「それって……」
「ああ」
拓海が頷く。
「人間国家と、戦うことになる」
リリアが静かに言った。
「転移者も連れていくの?」
「命令だ」
拓海が拳を握る。
「明日、出発する」
美咲が拓海の手を握った。
「私も行く」
「美咲……」
「一緒に行く。拓海くんを一人にしない」
リリアも頷く。
「私もよ」
拓海が二人を見た。
涙が滲みそうになる。
「ありがとう」
三人は廊下に立ち尽くした。
窓の外で、夕日が沈んでいく。
明日から、全てが変わる。
故郷と、初めて戦うことになる。
拓海の心に、重い石が沈んでいくようだった。
拓海は執務室で書類を整理していたが、その音に顔を上げる。
廊下を兵士たちが走っていく。
「何事だ?」
美咲が部屋に飛び込んできた。
「拓海くん、緊急会議だって!」
「緊急会議?」
拓海が立ち上がる。
「幹部全員、すぐに集合しろって」
拓海は外套を羽織り、美咲と共に会議室へ向かった。
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会議室の扉が開く。
既にゼノス、バルトス、セレスティア、グレイスが席についていた。
全員が険しい表情だ。
拓海が席に着く。リリアも隣に座る。
ゼノスが立ち上がった。
「全員揃ったな」
彼は地図を広げる。魔王領と人間領の境界線が描かれている。
「報告する。本日午前、辺境の前線基地に人間国家の偵察隊が侵入した」
会場がざわめく。
グレイスが身を乗り出す。
「撃退しましたか?」
「いや」
ゼノスが首を振る。
「逃げられた」
セレスティアが眉をひそめた。
「逃げられた、ですって?」
「森に逃げ込まれ、追跡を断念した」
バルトスが地図を見つめる。
「どこまで見られたのですか?」
「基地の訓練場だ」
ゼノスの声が重い。
「転移者の訓練も、視察された可能性が高い」
拓海の胸が締め付けられる。
訓練を見られた。つまり、人間国家は魔王軍が転移者を戦力化していることを知った。
セレスティアが冷たく言った。
「明らかな挑発行為です」
彼女が立ち上がる。
「境界を越えて侵入し、軍事情報を収集しようとした。これは宣戦布告に等しい」
バルトスが反論する。
「しかし、それに応じれば戦争を意味します」
「だからこそ、今のうちに叩くべきです」
セレスティアの目が鋭い。
「相手が準備を整える前に。迎撃部隊を送りましょう」
「待て」
ゼノスが手を上げる。
「まだその段階ではない」
彼は地図の上に駒を置いた。
「人間国家は、何かを企んでいる」
「何かとは?」
グレイスが尋ねる。
「わからん」
ゼノスが顎に手を当てる。
「しかし、この侵入は単なる偵察ではない気がする」
拓海が口を開いた。
「もしかして……」
全員の視線が拓海に集まる。
「もしかして、転移者の情報収集が目的だったのでは?」
ゼノスが頷く。
「おそらくな。奴らは知りたいのだ。魔王軍がどれだけの転移者を抱えているか、どの程度訓練されているか」
セレスティアが言う。
「ならば尚更、今動くべきです。情報が伝わる前に」
「いや」
バルトスが首を振る。
「もう遅い。偵察隊は既に帰還しているはずだ」
沈黙が落ちる。
ゼノスが再び口を開いた。
「人間国家は、すぐにでも動くつもりだ」
彼の言葉が、重く響く。
「おそらく、一週間以内に何らかの行動を起こす」
拓海の胸に、嫌な予感が走る。
戦争だ。
もう、避けられない。
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会議が終わり、幹部たちが席を立ち始めた。
拓海も立ち上がろうとする。
「蒼井拓海」
ゼノスの声が、拓海を呼び止めた。
「残れ」
拓海の足が止まる。
他の幹部たちが部屋を出ていく。美咲とリリアも、不安そうな表情で去っていく。
部屋には、拓海とゼノスだけが残った。
ゼノスが拓海の前に立つ。
「お前に、任務を与える」
拓海が緊張する。
「前線基地の防衛戦略を立案してもらう」
「防衛……戦略?」
「ああ」
ゼノスが地図を指す。
「人間国家は、まず前線基地を攻撃してくるだろう。お前の分析能力で、最適な防衛策を立てろ」
拓海の喉が渇く。
「でも、俺は……」
「断るのか?」
ゼノスの目が、鋭く拓海を見つめる。
その視線に、拓海は言葉を失う。
「俺は、戦略立案の専門家じゃ……」
「お前の分析能力は、既に証明されている」
ゼノスが遮る。
「五つのダンジョンを効率化し、転移者の訓練プログラムを組んだ。お前なら、できる」
拓海は答えられなかった。
断れば、どうなる?
幹部の地位を失う。
そうなれば、美咲やリリアを守れなくなる。
他の転移者たちも、危険にさらされるかもしれない。
ゼノスが一歩近づく。
「蒼井拓海。これは命令だ」
その言葉の重さ。
拓海の拳が震える。
俺は今、人間を殺す準備をしろと言われている。
故郷の人たちを。
家族を。
でも……
拓海が深呼吸した。
「わかりました」
声が震えている。
「お受けします」
ゼノスが満足げに頷いた。
「良い返事だ。期待している」
彼は書類を拓海に手渡す。
「明日、前線基地へ向かえ。転移者も何名か連れていけ」
「転移者を……?」
「ああ。実戦経験が必要だ」
ゼノスが背を向ける。
「防衛だけだ。攻撃はしない。わかっているな?」
「はい……」
拓海は書類を握りしめた。
「下がっていい」
拓海が部屋を出る。
扉を閉めた瞬間、足が震えた。
壁に手をつき、呼吸を整える。
廊下で、美咲とリリアが待っていた。
「拓海くん……」
美咲が駆け寄る。
「どうだった?」
拓海が答える。
「前線基地の防衛戦略を立案することになった」
美咲の顔が青ざめる。
「それって……」
「ああ」
拓海が頷く。
「人間国家と、戦うことになる」
リリアが静かに言った。
「転移者も連れていくの?」
「命令だ」
拓海が拳を握る。
「明日、出発する」
美咲が拓海の手を握った。
「私も行く」
「美咲……」
「一緒に行く。拓海くんを一人にしない」
リリアも頷く。
「私もよ」
拓海が二人を見た。
涙が滲みそうになる。
「ありがとう」
三人は廊下に立ち尽くした。
窓の外で、夕日が沈んでいく。
明日から、全てが変わる。
故郷と、初めて戦うことになる。
拓海の心に、重い石が沈んでいくようだった。
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