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画面越しの記憶
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朝、スマホを握りしめて本殿裏へ向かった。
朔さんは、もうベンチにいた。
「早いですね」
「お前こそ」
光輪は白い。通常モード。
でも私の手は汗で滑りそうだった。
「落とすなよ」
「落としません」
ベンチに座る。朔さんとの距離は、いつもより近い。
スマホの画面を開く。
ブログのトップページ。5年分の投稿が並んでいる。
「どこから見ますか」
「最初から」
「5年前ですよ」
「だから見たい」
その言葉に、喉が詰まった。
5年前。私が朔さんを好きになった頃。
画面をスクロールして、一番古い投稿を表示した。
日付は5年前の7月。タイトルは「はじめまして」。
朔さんの目が、文字を追っている。
光輪が、微かに揺れた。
「待て」
声が、低い。
「この文章」
「はい」
「読んだことが、ある」
光輪が大きく揺れた。
「窓際の席で、青い本を膝に置いて。でも本じゃなくて、スマホでこれを読んでた」
カフェ「木漏れ日」。一颯さんが言っていた場所だ。
「思い出せそうで、思い出せねえ」
朔さんの声が震えている。
「でも、この文体は知ってる」
「朔さん」
「ん」
「無理しないでください」
自分でも驚くほど、穏やかな声が出た。
「ブログは逃げません。朔さんのペースで、ゆっくり」
「お前」
「はい」
「いつから、そういう奴になった」
「どういう意味ですか」
「俺を気遣う側になったのは、いつからだ」
その問いに、答えられなかった。
「ファンは、推しを気遣うもんじゃねえだろ」
「私は巫女なので」
「都合よく使い分けんな」
朔さんが、少しだけ笑った。
光輪が、淡い夕焼け色を帯びている。
「でも、まあ」
「まあ?」
「悪くねえよ」
風が吹いた。大銀杏の葉が揺れる。
「明日、カフェに行きます」
「木漏れ日か」
「一颯さんなら、本のこと覚えてるかもしれない」
朔さんの光輪が、微かにくすんだ。
「聞いてこい」
声が、少し硬い。
「帰ったら、教えてください。何を思い出したか」
「ああ」
光輪が、ゆっくりと白に戻っていく。
朔さんは、もうベンチにいた。
「早いですね」
「お前こそ」
光輪は白い。通常モード。
でも私の手は汗で滑りそうだった。
「落とすなよ」
「落としません」
ベンチに座る。朔さんとの距離は、いつもより近い。
スマホの画面を開く。
ブログのトップページ。5年分の投稿が並んでいる。
「どこから見ますか」
「最初から」
「5年前ですよ」
「だから見たい」
その言葉に、喉が詰まった。
5年前。私が朔さんを好きになった頃。
画面をスクロールして、一番古い投稿を表示した。
日付は5年前の7月。タイトルは「はじめまして」。
朔さんの目が、文字を追っている。
光輪が、微かに揺れた。
「待て」
声が、低い。
「この文章」
「はい」
「読んだことが、ある」
光輪が大きく揺れた。
「窓際の席で、青い本を膝に置いて。でも本じゃなくて、スマホでこれを読んでた」
カフェ「木漏れ日」。一颯さんが言っていた場所だ。
「思い出せそうで、思い出せねえ」
朔さんの声が震えている。
「でも、この文体は知ってる」
「朔さん」
「ん」
「無理しないでください」
自分でも驚くほど、穏やかな声が出た。
「ブログは逃げません。朔さんのペースで、ゆっくり」
「お前」
「はい」
「いつから、そういう奴になった」
「どういう意味ですか」
「俺を気遣う側になったのは、いつからだ」
その問いに、答えられなかった。
「ファンは、推しを気遣うもんじゃねえだろ」
「私は巫女なので」
「都合よく使い分けんな」
朔さんが、少しだけ笑った。
光輪が、淡い夕焼け色を帯びている。
「でも、まあ」
「まあ?」
「悪くねえよ」
風が吹いた。大銀杏の葉が揺れる。
「明日、カフェに行きます」
「木漏れ日か」
「一颯さんなら、本のこと覚えてるかもしれない」
朔さんの光輪が、微かにくすんだ。
「聞いてこい」
声が、少し硬い。
「帰ったら、教えてください。何を思い出したか」
「ああ」
光輪が、ゆっくりと白に戻っていく。
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