【完結】皇帝との密会映像が、手違いで全世界に流出しました ~「拷問されている」と元婚約者が騒いでいますが、これただの溺愛です~

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帰還と提案は、記録されていた

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【帝国宮廷官報 号外 帝国歴四〇三年 冬 第一の月 21日】

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皇帝陛下・皇后殿下、本日帰還

 皇帝ジークハルト陛下と皇后ティアラ殿下は、静養先より本日正午に帰還されます。

 ご帰還に際し、中央大通りにてパレードが執り行われます。

 臣民の皆様におかれましては、沿道にてお迎えいただきますようお願い申し上げます。

 なお、フローレンス王国より謝罪使節団が到着しております。

 詳細は追って発表いたします。

    帝国宮廷府

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【帝国記録官 ハインリヒの私的メモ 同日 午前】

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 ようやく、帝都に戻れる。

 闇国での四日間。
 いや、体感では四十日だった。

 カジノでの工作。
 スパイの懐柔。
 暗殺者の襲撃。
 そして、聖女の断罪。

 私の胃は、もう限界だった。
 殿下からいただいた帝国製の胃薬も、残りわずか。

 しかし、帰還すれば平穏が戻る。
 記録官として、淡々と日常を記録する日々が戻る。

 そう信じていた。

 馬車が帝都の門をくぐった瞬間。
 沿道を埋め尽くす群衆の歓声が、耳を劈いた。

 「陛下万歳!」
 「皇后様万歳!」
 「結婚式はいつだ!」

 結婚式。

 そうだった。

 陛下様と殿下は、婚約しているのだ。
 そして、まだ正式な結婚式を挙げていない。

 群衆の熱狂を見て、私は悟った。

 物理的な死の危機は去った。
 これからは、過労による死の危機が始まる。

 胃薬の瓶を握りしめた。
 空だった。

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【映像ログ009-A 帝都中央大通り 同日 正午12:15】

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送信元:帝国記録局 第一班
映像品質:極めて良好
配信範囲:帝国内限定

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    (映像開始)

 帝都の中央大通り。

 白い石畳が、冬の日差しを受けて輝いている。
 両側には、帝国旗を振る群衆が詰めかけていた。

 その数、数万。

 馬車がゆっくりと進んでいく。
 純白の馬が四頭、金の装飾を施された車体を引いている。

 窓から、銀髪の男が顔を見せた。

 ジークハルト。

 氷の皇帝。
 しかし今日、その表情には穏やかさがあった。

 「おおおおお!」

 群衆が沸き立つ。

 その隣には、蜂蜜色の髪の女性。
 翠色の瞳が、柔らかく微笑んでいた。

 ティアラ。

 元・悪役令嬢。
 今は、帝国の皇后。

 「皇后様!」
 「ティアラ様!」
 「お美しい!」

 彼女は、群衆に向かって小さく手を振った。
 その仕草一つで、歓声が三倍になる。

 「結婚式はいつですか!」

 群衆の中から、声が飛んだ。

 ティアラが、夫を見上げた。
 ジークハルトは、眉を上げた。

 「……聞こえたか」
 「ええ、聞こえましたわ」
 「うむ」

 彼は、窓から身を乗り出した。

 群衆が、息を呑む。

 「近日中に発表する」

 低い声が、大通りに響いた。

 「おおおおお!」

 歓声が爆発した。
 帝国旗が、無数に振られる。

 ジークハルトは、満足げに頷いた。

 「陛下」

 ティアラが、小声で囁いた。

 「近日中とは、いつのことですの?」
 「知らん。お前が決めろ」
 「まあ」

 彼女は、くすくすと笑った。

 「では、今夜相談いたしましょう」
 「うむ。楽しみにしている」

 馬車は、ゆっくりと宮殿へ向かっていった。

    (画面隅に小窓が現れる:沿道の群衆が「近日中」という言葉に熱狂している。「一週間以内か?」「いや、三日だ!」「今日中に決まってるだろ!」という声が飛び交う)

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【帝国記録官 ハインリヒの私的メモ 続き】

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 パレードは、無事に終わった。

 「無事に」というのは、暗殺者も刺客も現れなかったという意味だ。
 闇国から戻ったばかりの私には、それだけで奇跡に思えた。

 しかし、群衆の熱狂は別の意味で恐ろしかった。

 「結婚式はいつだ」

 この問いが、沿道のあちこちから飛んでいた。
 陛下は「近日中」と答えた。

 近日中。

 つまり、具体的な日程は決まっていない。

 皇帝の結婚式。
 それは、一国の威信をかけた大事業だ。

 会場の手配。
 招待客の選定。
 警備の配置。
 式次第の作成。
 衣装の準備。
 料理の手配。

 通常なら、半年から一年はかかる。

 しかし、陛下は「近日中」と言った。

 誰がその準備をするのか。

 考えたくなかった。
 しかし、予感はあった。

 私の胃は、もう一度悲鳴を上げた。

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【映像ログ009-B 帝国宮殿 謁見の間 同日 午後2:00】

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送信元:帝国記録局 第二班
映像品質:良好
配信範囲:帝国内限定

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    (映像開始)

 謁見の間。

 天井は高く、白い柱が林立している。
 床は磨かれた大理石。壁には歴代皇帝の肖像画。

 玉座には、ジークハルトが座っていた。
 その隣には、ティアラ。

 二人の前に、五人の男たちが跪いていた。

 フローレンス王国の謝罪使節団。

 先頭の男が、額を床に擦りつけていた。

 「ヴァルトシュタイン帝国皇帝陛下、並びに皇后殿下。フローレンス王国を代表し、深く、深くお詫び申し上げます」

 声が震えていた。

 「我が国の王太子アルベルトが、皇后殿下に対し行った非道な行為。そして、聖女マリアが帝国に対し行った卑劣な攻撃。全ては、我が国の恥であります」

 彼は、顔を上げた。
 中年の男だった。髪には白いものが混じっている。

 「本日は、謝罪の証として、二つのものをお持ちいたしました」

 彼の手が、巻物を差し出した。

 「一つ目。フローレンス王国第一王子アルベルトの、王位継承権放棄書であります」

 沈黙が、謁見の間を満たした。

 「アルベルト王太子は、既にその地位を剥奪されております。彼はもはや、王族ではありません」

 ジークハルトの眉が、かすかに動いた。

 「そして、二つ目」

 使節の声が、さらに低くなった。

 「彼の身柄を、帝国にお引き渡しいたします」

    (場面転換)

 謁見の間の奥から、兵士に囲まれた男が連行されてきた。

 金髪。
 しかし、かつての輝きはなかった。
 目の下には隈が刻まれ、頬はこけている。
 両手には、銀の枷。

 アルベルト。

 かつてのフローレンス王太子。
 ティアラの元婚約者。
 そして、彼女を追放した張本人。

 「……」

 彼は、玉座を見上げた。

 その目には、もはや傲慢さはなかった。
 恐怖と、絶望と、そしてかすかな怒りだけが残っていた。

 「陛下」

 使節が、再び頭を下げた。

 「この男の処遇は、帝国にお任せいたします。煮るなり焼くなり、お好きになさってください」

 沈黙。

 ジークハルトは、アルベルトを見下ろした。

 氷のような視線。
 感情のない、冷たい目。

 そして──

 「いらん」

 一言だった。

 使節たちの顔が、凍りついた。

 「……は?」

 「聞こえなかったか。いらん、と言った」

 ジークハルトは、玉座に深く座り直した。

 「そんなゴミを帝国に持ち込むな。処分は貴様らで勝手にやれ」

 アルベルトの顔が、蒼白になった。

 「ま……待て!」

 彼は、一歩前に出ようとした。
 しかし、兵士に押さえつけられる。

 「俺を見ろ、皇帝! 俺は、フローレンスの王太子だぞ!」

 「だった、の間違いだろう」

 ジークハルトの声は、冷淡だった。

 「継承権を剥奪された。王族ですらない。ただの罪人だ」
 「ティアラ!」

 アルベルトが、叫んだ。

 「お前からも何か言え! 俺たちは婚約者だったんだぞ!」

 ティアラは、穏やかに微笑んだ。

 「あら、覚えていらしたのですね」

 彼女は、首を傾げた。

 「私を毒殺犯に仕立て上げ、処刑しようとしたこと。もうお忘れかと思いましたわ」
 「あ、あれは……マリアが……」
 「責任転嫁ですの?」

 ティアラの声が、かすかに冷たくなった。

 「見苦しいですわね。昔から、そういうところがおありでしたわ」

 彼女は、夫を見上げた。

 「陛下のご判断に、私も同意いたします。この方の身柄は、お引き取りくださいませ」
 「ま……待ってくれ……」

 アルベルトの声が、震えた。

 「フローレンスに戻されたら……俺は……」
 「それは、我々の知ったことではありませんわ」

 ティアラは、にっこりと笑った。

 「さようなら、アルベルト様。どうぞお元気で」

 使節団の長が、深々と頭を下げた。

 「……承知いたしました。では、この男は我が国で処分いたします」

 彼は、アルベルトを一瞥した。
 その目には、何の感情も浮かんでいなかった。

 「連れて行け」

 兵士たちが、アルベルトを引きずっていく。

 「待て……待ってくれ……俺を見捨てるのか……」

 彼の声は、謁見の間の外へ消えていった。

    (画面下部に魔導文字が浮かぶ:【フローレンス王国・元王太子アルベルト──身柄引き渡し拒否】)

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【帝国記録官 ハインリヒの私的メモ 続き】

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 「いらん」

 陛下は、そう言った。

 アルベルト元王太子の身柄を、「ゴミ」扱いで突っ返したのだ。

 政治的に見れば、これは合理的な判断だった。

 アルベルトを帝国が引き取れば、フローレンスとの関係はさらに複雑になる。
 彼を処刑すれば、「帝国が元王族を殺した」という口実を与えることになる。
 彼を生かしておけば、帝国内で反乱の火種になりかねない。

 だから、「お前らで処分しろ」と突っ返した。

 しかし、それだけではないだろう。

 陛下は、殿下を傷つけた男に、一切の価値を認めなかったのだ。

 「ゴミ」と。

 あれほど傲慢だった王太子が、その一言で片付けられた。
 彼の運命は、もはや帝国の知るところではない。

 フローレンスに戻されたアルベルトを、何が待っているか。

 第二王子派に処刑されるか。
 辺境に追放されるか。
 あるいは、「事故」で死ぬか。

 いずれにせよ、彼の人生は終わった。

 しかし、私が気になったのは別のことだ。

 使節団の長。
 あの男の目には、何の感情もなかった。

 実の兄を「煮るなり焼くなり」と差し出し、拒否されても動揺しない。
 あの男は、最初からこうなることを予想していたのではないか。

 「引き取りを拒否させる」ことで、帝国に責任を負わせずにアルベルトを処分する。
 そういう計算があったのではないか。

 第二王子派。
 彼らは、アルベルトとは違う。

 バカではない。

 背筋が、寒くなった。

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【ヴァルトシュタイン帝国 城下町 掲示板】

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【速報】元王太子、ゴミ扱いで帰国【ざまぁ】

1:名無しの帝国民
 アルベルト、身柄引き渡し拒否されたってよ

2:名無しの帝国民
 >>1
 は?

3:名無しの帝国民
 ソースは

4:名無しの帝国民
 >>3
 宮殿からの公式発表
 「帝国はフローレンスの内政問題に関与しない」だとさ

5:名無しの帝国民
 内政問題wwwww

6:名無しの帝国民
 森生える

7:名無しの帝国民
 陛下なんて言ったの

8:名無しの帝国民
 >>7
 「いらん」
 「そんなゴミを帝国に持ち込むな」

9:名無しの帝国民
 ゴミwwwww

10:名無しの帝国民
 元王太子がゴミ認定で森が世界樹越えた

11:名無しの帝国民
 これが「いい気味だ」ってやつか

12:名無しの帝国民
 >>11
 いい気味どころじゃないだろ
 存在ごと否定されてる

13:名無しの帝国民
 ティアラ様も何て言ったの

14:名無しの帝国民
 >>13
 「さようなら、アルベルト様。どうぞお元気で」

15:名無しの帝国民
 お元気でwwwww

16:名無しの帝国民
 煽り性能高すぎて森生える

17:名無しの帝国民
 絶対お元気でいられないやつ

18:名無しの帝国民
 フローレンスに戻されたらどうなるの

19:名無しの帝国民
 >>18
 処刑か追放か「事故死」

20:名無しの帝国民
 第二王子派、実の兄を売ったんだろ

21:名無しの帝国民
 >>20
 売ったというか、ゴミ出ししたというか

22:名無しの帝国民
 草

23:名無しの帝国民
 でも考えてみろ
 帝国が引き取ったら「帝国がフローレンス王族を処刑」になる
 拒否したから「フローレンスの内政問題」で済む

24:名無しの帝国民
 >>23
 陛下、頭良すぎ

25:名無しの帝国民
 いや、殿下の入れ知恵だろ

26:名無しの帝国民
 >>25
 それな

27:名無しの帝国民
 でも第二王子派もそこまで計算してたのでは

28:名無しの帝国民
 >>27
 怖すぎ

29:名無しの帝国民
 バカな兄より賢い弟の方が厄介説

30:名無しの帝国民
 >>29
 これ

31:名無しの帝国民
 まあ今はどうでもいい

32:名無しの帝国民
 >>31
 なんで

33:名無しの帝国民
 結婚式の話しようぜ

34:名無しの帝国民
 >>33
 それな!

35:名無しの帝国民
 陛下「近日中に発表」って言ってたよな

36:名無しの帝国民
 近日中っていつだよ

37:名無しの帝国民
 今日中

38:名無しの帝国民
 >>37
 せっかち乙

39:名無しの帝国民
 一週間以内説

40:名無しの帝国民
 来月説

41:名無しの帝国民
 結婚式自体は半年後くらいだろ普通

42:名無しの帝国民
 >>41
 陛下が半年も待てるわけないだろ

43:名無しの帝国民
 森生える

44:名無しの帝国民
 「余は待てん。明日やる」

45:名無しの帝国民
 >>44
 ありそうで怖い

46:名無しの帝国民
 引き出物は永久氷晶か?

47:名無しの帝国民
 >>46
 城三つ分の価値のやつを国民に配るのか

48:名無しの帝国民
 国家予算吹っ飛ぶな

49:名無しの帝国民
 陛下なら本気でやりそう

50:名無しの帝国民
 ハインリヒさんの胃が心配

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【映像ログ009-C 帝国宮殿 皇帝私室 同日 午後5:23】

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送信元:不明
映像品質:やや不安定
配信範囲:不明

    (映像開始)

 皇帝私室。

 夕暮れの光が、窓から差し込んでいた。
 暖炉には、穏やかな炎が燃えている。

 ソファには、ジークハルトが座っていた。
 その隣に、ティアラが寄り添っている。

 テーブルには、紅茶とクッキー。
 穏やかな午後の風景だった。

 「疲れたか」

 ジークハルトが、ティアラの髪を撫でた。

 「少し」

 彼女は、目を閉じた。

 「馬車での移動と、パレードと、謁見と……忙しい一日でしたわね」
 「うむ。よく頑張った」

 彼の手が、彼女の肩に回る。

 「今夜は、ゆっくり休め」
 「ありがとうございます、陛下」

 ティアラは、微笑んだ。

 しかし、その目には、少し真剣な光があった。

 「陛下」
 「何だ」
 「パレードで、群衆が言っていましたわね」

 彼女は、夫を見上げた。

 「結婚式は、いつですか、と」
 「ああ」

 ジークハルトは、頷いた。

 「余も気になっていた」
 「そろそろ、決めませんか」

 ティアラの声が、柔らかく響いた。

 「正式な結婚式を」

 ジークハルトの目が、輝いた。

 「本当か」
 「ええ」

 彼女は、くすくすと笑った。

 「婚約してから、もう二週間近く経ちますもの。そろそろ、全世界に見せつけて差し上げませんか?」
 「見せつける、か」

 ジークハルトの口元が、緩んだ。

 「いい響きだ」
 「でしょう?」

 ティアラは、紅茶を一口飲んだ。

 「私たちの結婚式を、全世界が見届ける。フローレンスも、闇国も、商業連合も。全ての国が、私たちの愛を目撃するのですわ」
 「うむ」

 ジークハルトの目に、危険な輝きが宿り始めた。

 「それなら、盛大にやらねばな」
 「ええ、もちろん」
 「会場は……そうだ、新しい大聖堂を建てよう」

 ティアラの手が、紅茶のカップを持ったまま止まった。

 「……え?」

 「氷で作る。永久氷晶を使えば、溶けない。余の魔力なら、一週間で完成する」
 「陛下、それは……」
 「招待客は、全人類だ」

 ジークハルトは、立ち上がった。

 「大陸中の民を招待する。いや、大陸だけでは足りん。海の向こうにも使者を送ろう」
 「陛下……」
 「引き出物は、永久氷晶の小物だな。全員に配る。百万個くらいあれば足りるか」
 「陛下」

 ティアラの声が、少し強くなった。

 「予算が」
 「予算?」

 ジークハルトは、首を傾げた。

 「国庫を使い果たしても構わん。余の妻の結婚式だぞ。何を惜しむ必要がある」
 「いえ、あの……」

 ティアラは、額に手を当てた。

 「国が傾きますわ」
 「傾いたら、また立て直せばいい」
 「そういう問題ではありませんの」

 彼女は、深く息を吸った。

 「陛下のお気持ちは、とても嬉しいですわ。でも、もう少し……その……現実的な規模にしませんか」
 「現実的?」

 ジークハルトの顔が、不満げになった。

 「余の愛を表現するのに、現実的では足りん」
 「でも」
 「氷の大聖堂。全人類招待。永久氷晶百万個。これでも、まだ足りないくらいだ」
 「陛下」

 ティアラは、夫の手を取った。

 「私が欲しいのは、氷の大聖堂ではありませんわ」

 彼女は、穏やかに微笑んだ。

 「陛下と、二人で誓いを交わすこと。それだけですわ」
 「……」

 ジークハルトの表情が、少し柔らかくなった。

 「本当に、それだけでいいのか」
 「ええ」
 「でも、余は……」

 彼は、少し困ったような顔をした。

 「お前に、最高のものを与えたい」
 「陛下」

 ティアラは、彼の頬に手を添えた。

 「陛下がいてくださること。それが、私にとっての最高ですわ」

 ジークハルトの耳が、赤くなった。

 「……ずるいぞ、そういうことを言うのは」
 「ふふ」

 ティアラは、くすくすと笑った。

 「でも、陛下」

 彼女の目が、少し真剣になった。

 「盛大な結婚式には、別の意味がありますわ」
 「別の意味?」
 「各国の首脳を招待するということは、外交の場になるということですわ」

 ティアラは、紅茶を置いた。

 「私たちの威光を示し、同盟を固め、敵を牽制する。結婚式は、そういう機会にもなりますの」
 「……なるほど」

 ジークハルトは、頷いた。

 「政治か」
 「ええ」

 ティアラは、微笑んだ。

 「ですから、盛大にやりましょう。ただし、国が傾かない程度に」
 「……分かった」

 ジークハルトは、少し残念そうだった。

 「では、氷の大聖堂は諦める」
 「ありがとうございます」
 「でも、引き出物は永久氷晶にする」
 「……百万個は」
 「招待客の数だけでいい」
 「……それなら」

 ティアラは、ほっと息をついた。

 「承りますわ」

    (画面隅に小窓が現れる:部屋の隅で、ハインリヒが青い顔でメモを取っている。「氷の大聖堂……永久氷晶百万個……国が傾く……」と呟いているのが見える)

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【帝国記録官 ハインリヒの私的メモ 続き】

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 死ぬかと思った。

 「氷の大聖堂を建てる」
 「全人類を招待する」
 「永久氷晶を百万個配る」

 陛下の口から、その言葉が出た時。
 私は、本気で意識が遠のいた。

 国家予算。
 三年分? いや、十年分かもしれない。

 しかし、殿下が止めてくれた。

 「国が傾きますわ」

 その一言で、陛下は大人しくなった。
 いや、完全に大人しくなったわけではない。
 引き出物の永久氷晶は維持された。

 招待客の数だけ。
 つまり、数百個から数千個。

 それでも、城が何個か買える額だ。

 しかし、それ以上に気になったのは、殿下の言葉だった。

 「各国の首脳を招待する。外交の場になる」

 結婚式を、外交のカードとして使う。
 私たちの威光を示し、同盟を固め、敵を牽制する。

 殿下は、そう言った。

 つまり、結婚式は単なる祝い事ではない。
 戦争なのだ。

 招待客のリストは、味方のリスト。
 招待しない者のリストは、敵のリスト。

 私の胃は、また痛くなった。

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【映像ログ009-D 帝国宮殿 大会議室 同日 午後8:00】

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送信元:帝国記録局 第三班
映像品質:良好
配信範囲:帝国内限定

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    (映像開始)

 大会議室。

 長いテーブルの周りに、重臣たちが座っていた。
 宰相、財務大臣、外務大臣、宮廷長官。

 そして、上座には──

 「結婚準備委員会を発足する」

 ジークハルトが、宣言した。

 重臣たちの顔が、引きつった。

 「委員長は、余が務める」
 「陛下が、ですか」

 宰相が、恐る恐る尋ねた。

 「うむ。余の結婚式だ。余が指揮を執る」
 「しかし、陛下には国政が……」
 「どうでもいい」

 ジークハルトは、手を振った。

 「結婚式の方が大事だ」
 「……」

 重臣たちは、絶句した。

 ティアラが、静かに口を開いた。

 「皆様。私から補足させていただきますわ」

 彼女は、穏やかに微笑んだ。

 「結婚式には、各国の首脳を招待いたします。つまり、これは外交の場でもあります」
 「なるほど……」

 外務大臣が、頷いた。

 「帝国の威光を示す機会、ということですな」
 「ええ、その通りですわ」

 ティアラは、書類を配った。

 「こちらが、招待客リストの素案です。ご確認くださいませ」

 重臣たちが、書類に目を落とした。

 「ふむ……商業連合は招待。闇国は……招待しない、ですか」
 「ええ」

 ティアラの目が、かすかに冷たくなった。

 「闇国とは、友好関係にありますが……まだ信用しきれませんので」
 「なるほど」
 「フローレンス王国は……招待、ですか」

 財務大臣が、驚いたように言った。

 「敵国を招待するのですか」
 「第二王子派を、ですわ」

 ティアラは、にっこりと笑った。

 「アルベルトを処分した後、彼らがどう動くか。直接確かめたいのです」
 「……なるほど」

 重臣たちは、顔を見合わせた。

 結婚式が、外交戦の舞台になる。
 そのことを、彼らはようやく理解したようだった。

 「予算については」

 ティアラが、続けた。

 「国家予算の範囲内で、最大限盛大に。これを基本方針といたします」
 「国家予算の範囲内……」

 財務大臣が、ほっと息をついた。

 「それなら、何とか」
 「ただし」

 ジークハルトが、口を開いた。

 「引き出物は、永久氷晶だ」
 「……は」

 財務大臣の顔が、また青くなった。

 「招待客の数だけでいい。余が作る」
 「陛下が、お作りになる……?」
 「うむ。余の魔力なら、造作もない」

 ジークハルトは、平然と言った。

 「妻への愛を込めて、一つ一つ手作りする」
 「……」

 重臣たちは、絶句した。

 皇帝が、引き出物を手作りする。
 前代未聞だった。

 「では、予算は大幅に削減できますな」

 宰相が、苦笑した。

 「永久氷晶の材料費は、陛下の魔力で賄われるわけですから」
 「うむ」

 ジークハルトは、満足げに頷いた。

 「経費削減だ。余は倹約家だからな」
 「……」

 誰も、何も言わなかった。

    (画面隅に小窓が現れる:ハインリヒが机の下で胃を押さえている)

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【帝国記録官 ハインリヒの私的メモ 続き】

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 結婚準備委員会が発足した。

 委員長:皇帝陛下。
 副委員長:皇后殿下。

 この時点で、私の胃は悲鳴を上げていた。

 しかし、殿下の手腕は見事だった。

 陛下の「氷の大聖堂」「全人類招待」「永久氷晶百万個」という暴走を、見事に軌道修正した。

 「国家予算の範囲内で」
 「招待客は各国首脳と重要人物に限定」
 「引き出物の永久氷晶は陛下が手作り」

 これなら、国は傾かない。
 たぶん。

 しかし、気になることがあった。

 殿下が配った「招待客リストの素案」。

 闇国は、招待しない。
 フローレンスは、招待する。

 つまり、これは「敵味方のリスト」なのだ。

 招待される者は、帝国の味方。
 招待されない者は、帝国の敵。

 結婚式という祝いの場で、敵味方を選別する。

 殿下は、そういう人だった。

 美しく微笑みながら、全てを計算している。

 恐ろしい。
 しかし、だからこそ、この帝国は安泰なのだろう。

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【ヴァルトシュタイン帝国 城下町 掲示板】

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【朗報】結婚式、正式決定【速報】

1:名無しの帝国民
 結婚準備委員会が発足したらしい

2:名無しの帝国民
 >>1
 きたああああ

3:名無しの帝国民
 委員長は誰

4:名無しの帝国民
 >>3
 陛下

5:名無しの帝国民
 陛下が委員長wwwww

6:名無しの帝国民
 森生える

7:名無しの帝国民
 そりゃ本人だもんな

8:名無しの帝国民
 いつやるの

9:名無しの帝国民
 >>8
 まだ発表されてない
 来月説が有力

10:名無しの帝国民
 来月か
 準備間に合うのか

11:名無しの帝国民
 >>10
 陛下がやるから間に合う

12:名無しの帝国民
 力技すぎて森生える

13:名無しの帝国民
 引き出物は永久氷晶らしい

14:名無しの帝国民
 >>13
 は?
 城買える奴じゃん

15:名無しの帝国民
 陛下が手作りするって

16:名無しの帝国民
 >>15
 は???

17:名無しの帝国民
 皇帝が引き出物手作り

18:名無しの帝国民
 歴史に残るな

19:名無しの帝国民
 愛が重い

20:名無しの帝国民
 >>19
 愛が重いんじゃない
 愛が強いんだ

21:名無しの帝国民
 名言出た

22:名無しの帝国民
 招待客リストはあるの

23:名無しの帝国民
 >>22
 まだ非公開
 でも各国首脳が来るらしい

24:名無しの帝国民
 商業連合は来るだろ

25:名無しの帝国民
 闇国は?

26:名無しの帝国民
 >>25
 来ないんじゃね
 マリア匿ってたし

27:名無しの帝国民
 フローレンスは?

28:名無しの帝国民
 >>27
 来るらしい
 第二王子派が

29:名無しの帝国民
 第二王子派って兄を売ったやつか

30:名無しの帝国民
 >>29
 そう
 怖いよな

31:名無しの帝国民
 でも敵を招待するって、すごいな

32:名無しの帝国民
 >>31
 殿下の作戦だろ

33:名無しの帝国民
 敵を目の前に連れてきて、威圧するってことか

34:名無しの帝国民
 >>33
 こわ

35:名無しの帝国民
 結婚式が外交戦になるな

36:名無しの帝国民
 >>35
 それな

37:名無しの帝国民
 でも俺たちは祝うだけでいいよな

38:名無しの帝国民
 >>37
 そうそう
 難しいことは殿下に任せて

39:名無しの帝国民
 陛下万歳

40:名無しの帝国民
 ティアラ様万歳

41:名無しの帝国民
 結婚式楽しみすぎる

42:名無しの帝国民
 祝日になるかな

43:名無しの帝国民
 >>42
 なるだろ
 「皇帝婚礼記念日」とか

44:名無しの帝国民
 最高かよ

45:名無しの帝国民
 帝国に生まれてよかった

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【映像ログ009-E 帝国宮殿 皇帝寝室 同日 深夜】

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送信元:不明
映像品質:暗い
配信範囲:不明

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    (映像開始)

 皇帝寝室。

 月明かりが、窓から差し込んでいた。
 大きなベッドには、二つの人影。

 ジークハルトと、ティアラ。

 二人は、手を繋いで横たわっていた。

 「今日も、長い一日だったな」

 ジークハルトが、囁いた。

 「ええ」

 ティアラは、目を閉じたまま答えた。

 「でも、充実した一日でしたわ」
 「うむ」

 彼は、彼女の手を握りしめた。

 「アルベルトの件。よかったのか」
 「何がですの?」
 「引き取りを拒否して」

 ティアラは、ゆっくりと目を開けた。

 「ええ」

 彼女の声は、穏やかだった。

 「あの方の処分は、フローレンスに任せるのが一番ですわ。私たちの手を汚す必要はありません」
 「そうか」
 「それに」

 彼女は、少し笑った。

 「あの方を見ても、もう何も感じませんでしたわ」
 「何も?」
 「ええ」

 ティアラは、天井を見上げた。

 「かつては、婚約者でした。でも、今はただの他人。いいえ、ゴミですわね」
 「……余が言ったことを、そのまま使うな」
 「だって、陛下がおっしゃったのですもの」

 彼女は、くすくすと笑った。

 「でも、本当にそう思いましたわ。あの方は、もう私の人生には関係ない。ただのゴミですわ」
 「……」

 ジークハルトは、彼女を抱き寄せた。

 「お前は、余のものだ」
 「はい」
 「余だけを見ていればいい」
 「ええ、分かっていますわ」

 ティアラは、彼の胸に顔を埋めた。

 「陛下だけを見ています。陛下だけを愛しています」
 「……うむ」

 ジークハルトの声が、かすかに震えた。

 「余も、お前だけを愛している」
 「知っていますわ」

 彼女は、微笑んだ。

 「だから、結婚式を楽しみにしていますの」
 「ああ」

 彼は、彼女の髪を撫でた。

 「全世界に、見せつけてやる。余とお前の愛を」
 「ふふ。楽しみですわね」

 月明かりが、二人を優しく照らしていた。

    (映像終了)

-----

【極秘ログ──送信者不明】

-----

記録日時:帝国歴四〇三年 冬 第一の月 21日 深夜11:59
ファイル名:[解析不能]
送信元:[解析不能]
送信先:[解析不能]

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    (音声のみ)

 羽ペンが紙を走る音。
 規則的なリズム。

「……」

 女の声。
 独り言のような呟き。

「招待客リスト」

 紙をめくる音。

「商業連合……招待。信用できる相手ですわ」

 ペンが動く音。

「闇国……招待しない。まだ早いですわね」

 間。

「フローレンス……第二王子派を招待。あの男たちの目を、直接見たいですもの」

 紙を置く音。

「アルベルト様は、どうなるかしら」

 くすくすと笑う声。

「処刑? 追放? それとも、事故死? どれでも構いませんわ。私には関係のないことですもの」

 椅子が軋む音。
 立ち上がる気配。

「さて」

 女の声が、少し低くなった。

「結婚式。各国の首脳が集まる、最高の舞台」

 窓を開ける音。
 夜風が入り込む。

「これ以上の『狩り場』は、ありませんわね」

 小さな笑い声。

「誰が味方で、誰が敵か。誰が信用できて、誰ができないか。全て、この目で確かめますわ」

 間。

「そして、敵には……」

 窓を閉める音。

「相応の『おもてなし』を」

 足音が遠ざかる。

「さあ、準備を始めましょう」

 羽ペンを置く音。
 椅子を引く音。

「……もう、こんな時間」

 小さな欠伸。

「陛下が、待っていらっしゃるわ」

 扉を開ける音。

 足音が、廊下を進んでいく。

 そして、別の扉が開く音。

「お待たせいたしました、陛下」

「遅い」

 低い男の声。
 しかし、怒りではなく、拗ねたような響きがあった。

「申し訳ありません。少し、仕事を」
「仕事より余を優先しろ」

 衣擦れの音。
 布団に潜り込む気配。

「……おやすみなさいませ、私の陛下」

「ああ。おやすみ、余の妻」

    (ログ終了)
    (このファイルは自動消去されました)

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【次回予告】

結婚式の準備が始まる帝国。
しかし、ジークハルトの「愛の暴走」は止まらない。

「氷の彫刻を千体作る」
「祝砲は百発では足りん」
「余の妻のドレスは、星の光を織り込んだものでなければならん」

ティアラ、頭を抱える。
ハインリヒ、胃薬を大量発注。

一方、フローレンスからの使者が再び到着。
第二王子派は、何を企んでいるのか。

そして、招待状を受け取った各国の反応は?

第10話「準備と暴走は、記録されていた」

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【おまけ:帝国宮殿 財務省 翌朝】

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「予算案が届きました」

 財務大臣は、青い顔で書類を見た。

「会場設営費……これは妥当」
「警備費……これも妥当」
「料理費……少し多いが、許容範囲」
「衣装費……まあ、仕方ない」
「永久氷晶の製作費……ゼロ?」

 彼は、首を傾げた。

「なぜゼロなのだ」
「陛下が、手作りなさるそうです」
「……ああ、そうだった」

 財務大臣は、頷いた。

「では、予算は抑えられるな」
「しかし、問題があります」
「何だ」
「陛下が、追加の項目を提案されています」
「追加?」

 彼は、書類の最後のページを見た。

「氷の彫刻……一千体?」
「はい」
「祝砲……五百発?」
「はい」
「花火……三時間連続?」
「はい」
「星の光を織り込んだドレス……って、何だこれは」
「不明です」
「不明って……」

 財務大臣は、頭を抱えた。

「皇后殿下は、何とおっしゃっている」
「『国が傾かない程度に』と」
「……」

 彼は、深く息を吸った。

「つまり、私が陛下を止めろということか」
「そのようです」
「……胃が痛い」

 財務大臣は、引き出しから胃薬を取り出した。

 まだ、準備は始まったばかりだった。
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