【完結】皇帝との密会映像が、手違いで全世界に流出しました ~「拷問されている」と元婚約者が騒いでいますが、これただの溺愛です~

チャビューヘ

文字の大きさ
10 / 22

準備と暴走は、記録されていた

しおりを挟む
【帝国宮廷官報 号外 帝国歴四〇三年 冬 第一の月 22日】

-----

皇帝陛下・皇后殿下、婚礼準備を開始

 皇帝ジークハルト陛下と皇后ティアラ殿下の婚礼式典に向け、本日より準備が開始されました。

 式典は来月中旬を予定しております。

 なお、各国首脳への招待状は本日より順次発送いたします。

 臣民の皆様への詳細は、追って発表いたします。

    帝国宮廷府

-----

【帝国記録官 ハインリヒの私的メモ 同日 早朝】

-----

 朝、目覚めて窓を開けた。

 そして、絶句した。

 宮殿の庭園が、白く輝いていた。
 雪ではない。

 氷だ。

 いや、正確には──

 氷の彫刻だ。

 一体、二体ではない。
 数えきれないほどの彫刻が、庭園を埋め尽くしていた。

 その全てが、同じ人物を模している。

 ティアラ様だ。

 右手を振るティアラ様。
 紅茶を飲むティアラ様。
 本を読むティアラ様。
 微笑むティアラ様。
 少し困った顔のティアラ様。

 そして──

 寝起きのティアラ様。

 髪が乱れ、目を擦り、少し不機嫌そうな顔。
 どう見ても、朝起きたばかりの姿だった。

 私は、目を擦った。
 夢ではなかった。

 すぐに庭園へ向かった。
 そこで、財務大臣と出会った。

 彼は、青い顔で彫刻を数えていた。

 「何体あるのですか」
 「五百二十三体」
 「……」
 「まだ増えている」
 「増えている?」
 「陛下が、今も作っておられる」

 財務大臣は、庭園の奥を指差した。

 そこには、陛下がいた。
 早朝の冷たい空気の中、シャツ一枚で。
 右手を振るたびに、新たな彫刻が生まれていく。

 「……」

 私と財務大臣は、無言で顔を見合わせた。

 「胃薬、お持ちですか」
 「昨夜、使い果たしました」
 「私もです」

 二人で深い溜息をついた。

 同盟の始まりだった。

-----

【映像ログ010-A 帝国宮殿 庭園 同日 午前7:15】

-----

送信元:帝国記録局 第一班
映像品質:良好
配信範囲:帝国内限定

-----

    (映像開始)

 朝焼けに照らされた庭園。

 氷の彫刻が、オレンジ色の光を受けて輝いている。
 その数、既に六百を超えていた。

 「陛下」

 ティアラの声が響いた。

 彼女は、厚手のコートを羽織って庭園に立っていた。
 頬が、朝の冷気で薄く染まっている。

 ジークハルトが振り返った。

 「おお、起きたか」
 「起きましたわ。というか、起きざるを得ませんでしたわ」
 「なぜだ」
 「窓の外が白く輝いていましたの。何事かと思えば……」

 彼女は、周囲を見回した。

 「これは、何ですの」
 「結婚式の装飾だ」
 「……装飾」
 「うむ。お前の美しさを、永遠に残す」

 ジークハルトは、満足げに頷いた。

 「一千体作る予定だ」
 「……」

 ティアラの口が、数秒間開いたまま固まった。

 「陛下」
 「何だ」
 「これは、全て……私、ですの?」
 「当然だ。お前以外の何を彫る必要がある」

 彼は、首を傾げた。

 「世界で一番美しいのはお前だ。お前の姿を一千通り残す。これが、余の愛の証だ」
 「……」

 ティアラは、ゆっくりと深呼吸した。

 「陛下。お気持ちは、とても嬉しいですわ」
 「うむ」
 「でも、一つだけ、お願いがありますの」
 「何だ。何でも聞こう」

 彼女は、庭園の奥を指差した。

 「あれは、何ですの」

 その先には、一体の彫刻があった。
 髪が乱れ、目を擦り、少し不機嫌そうな顔。

 寝起きのティアラ像。

 「朝のお前だ」
 「……」
 「可愛いだろう。余の一番のお気に入りだ」
 「陛下」

 ティアラの声が、かすかに低くなった。

 「あれを、溶かしていただけますか」
 「なぜだ」
 「恥ずかしいからですわ」
 「恥ずかしい?」

 ジークハルトは、眉を寄せた。

 「なぜ恥ずかしいのだ。お前は朝も美しい」
 「そういう問題ではありませんの」
 「余には理解できん」
 「陛下」

 ティアラは、夫の手を取った。

 「あれを溶かしてくださったら、今夜、膝枕をして差し上げますわ」
 「……」

 ジークハルトの表情が、一瞬で変わった。

 彼は右手を振った。
 寝起きのティアラ像が、音もなく水に戻った。

 「消した」
 「ありがとうございます」
 「膝枕は約束だぞ」
 「ええ、もちろん」

 ティアラは、微笑んだ。

 しかし、その目は笑っていなかった。

    (画面隅に小窓が現れる:ハインリヒと財務大臣が、遠くから二人を見守っている。「殿下でなければ、止められませんな」「ええ。我々には無理だ」と囁き合う声が聞こえる)

-----

【帝国記録官 ハインリヒの私的メモ 続き】

-----

 「寝起きの彫刻」事件は、殿下の交渉によって解決した。

 しかし、残りの六百体は残った。
 いや、その後も増え続け、最終的には八百体を超えた。

 陛下曰く「一千体から減らした。倹約だ」とのこと。

 倹約の意味を、辞書で確認したくなった。

 しかし、問題はこれだけではなかった。

 午前十時。
 陛下は、衣装部屋へ向かった。

 「星の光を織り込んだドレス」を作るために。

 職人たちが困り果てていたのを、陛下は「貸せ」の一言で退けた。
 そして、自ら針を手に取った。

 皇帝が、針仕事を。

 私は、目を疑った。

-----

【映像ログ010-B 帝国宮殿 衣装部屋 同日 午前10:23】

-----

送信元:帝国記録局 第二班
映像品質:極めて良好
配信範囲:帝国内限定

-----

    (映像開始)

 衣装部屋。

 大きな窓から、陽光が差し込んでいる。
 部屋の中央には、仕立て台に掛けられた純白のドレス。

 美しい仕立てだった。
 しかし、職人たちの顔は暗い。

 「申し訳ございません、陛下」

 年配の仕立て職人が、頭を下げた。

 「『星の光を織り込む』とのご指示ですが……方法がわかりません」
 「星の光とは、具体的に何でしょうか」
 「光り輝く素材、ということでしたら、銀糸や金糸、あるいは魔石の粉末を──」
 「それでは足りん」

 ジークハルトの声が、静かに響いた。

 「余が言っているのは、本物の星の光だ」
 「……本物、ですか」
 「うむ」

 彼は、ドレスの前に立った。

 「貸せ」
 「は?」
 「針と糸を貸せ」

 職人たちが、慌てて針と糸を差し出した。

 ジークハルトは、それを受け取った。
 そして、窓を開けた。

 冬の冷たい空気が、部屋に流れ込む。

 彼は、空を見上げた。
 右手を、ゆっくりと持ち上げる。

 空気が、変わった。

 「……陛下?」

 職人の声が震える。

 窓の外で、何かが輝き始めた。

 小さな、無数の光。
 氷の微粒子が、陽光を受けて煌めいている。

 ダイヤモンドダスト。

 極寒の環境でのみ発生する、氷の結晶だ。
 それが、真冬とはいえ帝都の空に現れた。

 ジークハルトの魔力が、大気を凍らせたのだ。

 「来い」

 彼の声に応じて、ダイヤモンドダストが窓から流れ込んでくる。
 無数の光の粒子が、彼の周りを舞う。

 そして──

 彼は、針を動かし始めた。

 ダイヤモンドダストを、糸のように紡ぐ。
 氷の結晶を、一粒一粒、ドレスに縫い付けていく。

 その手際は、驚くほど繊細だった。

 「……」

 職人たちの口が、開いたまま固まった。

 氷の微粒子が、魔力で固定され、溶けることなくドレスに定着していく。
 縫い目の一つ一つが、小さな星のように輝いている。

 ジークハルトの額に、汗が浮かんだ。
 集中している。彼は、本気だった。

 「陛下」

 ティアラの声がした。

 彼女が、衣装部屋に入ってきた。

 「何をなさっていますの?」
 「ドレスを作っている」
 「ドレスを?」
 「お前のために」

 彼は、手を止めずに答えた。

 「星の光を織り込んだドレスだ。職人には作れん。だから余が作る」
 「……」

 ティアラは、ドレスに近づいた。

 純白の生地に、無数の光が散りばめられている。
 まるで、夜空をそのまま布に閉じ込めたような美しさだった。

 「綺麗ですわ」
 「まだ途中だ」

 ジークハルトは、針を動かし続けた。

 「完成すれば、お前が歩くたびに光が揺れる。世界で一番美しい花嫁になる」
 「陛下……」

 ティアラの目が、少し潤んだ。

 しかし、すぐに表情を引き締めた。

 「陛下。素敵ですけれど、一つ質問がありますわ」
 「何だ」
 「このドレス、重くありませんこと?」

 ジークハルトの手が、止まった。

 「……」
 「物理的に」
 「……軽くする」
 「どうやって」
 「魔力で浮かせる」
 「私がずっと魔力を使い続けるのですか」
 「いや、余が」
 「陛下が結婚式の間ずっと私のドレスを浮かせ続けるのですか」

 沈黙が流れた。

 「……検討する」
 「お願いいたしますわ」

 ティアラは、優しく微笑んだ。

 「でも、とても嬉しいですわ。陛下が、私のために針仕事をしてくださるなんて」
 「当然だ。お前のためなら何でもする」
 「……ありがとうございます」

 彼女は、彼の頬にそっと唇を寄せた。

 ジークハルトの耳が、真っ赤になった。

    (画面隅に小窓が現れる:職人たちが涙を流している。「あれだけの魔力を針仕事に……」「陛下の愛は、物理法則を超えておられる」と囁く声が聞こえる)

-----

【帝国記録官 ハインリヒの私的メモ 続き】

-----

 陛下は、本当に「星の光を織り込んだドレス」を作り始めた。

 ダイヤモンドダストを紡ぎ、魔力で固定し、一針一針縫い付けていく。
 その集中力は凄まじく、昼食も取らずに作業を続けた。

 しかし、殿下の指摘は的確だった。

 「重くありませんこと?」

 氷の結晶を大量に縫い付けたドレス。
 確かに、物理的な重量は相当なものになるだろう。

 陛下は「軽くする」と答えた。
 どうやって軽くするのかは、まだ決まっていないようだ。

 おそらく、また何か無茶なことを思いつくのだろう。

 それより問題なのは、私と財務大臣の仕事だ。

 結婚式の予算。
 招待客リスト。
 会場の設営。
 警備の配置。
 料理の手配。

 山のような仕事が待っている。

 しかし、陛下は彫刻を作り、ドレスを縫い、引き出物を手作りすることに夢中だ。

 実務は、全て我々に丸投げされている。

 財務大臣と私は、昼食を共にしながら作戦会議を開いた。

 「まず、予算を確定させましょう」
 「ええ。陛下の暴走を、どこまで許容できるか」
 「彫刻は八百体。これ以上は庭園が埋まります」
 「ドレスは一着。これは仕方ない」
 「引き出物は、招待客の数だけ」
 「問題は、招待客の数ですな」
 「ええ。現時点で、三百名を超えています」
 「三百……」

 財務大臣は、頭を抱えた。

 「永久氷晶を三百個。陛下が手作りなさるとして……」
 「一個あたり何分かかりますか」
 「わかりません。しかし、あの方の魔力なら……」

 私たちは、顔を見合わせた。

 「たぶん、できてしまいますね」
 「ええ。それが恐ろしい」

 二人で、深い溜息をついた。

-----

【映像ログ010-C 帝国宮殿 皇帝執務室 同日 午後2:00】

-----

送信元:帝国記録局 第二班
映像品質:良好
配信範囲:帝国内限定

-----

    (映像開始)

 皇帝執務室。

 机の上には、書類の山。
 しかし、それと同じくらいの高さで、別のものが積み上がっていた。

 永久氷晶。

 小さな氷の結晶が、机の上に整然と並んでいる。
 その数、既に五十を超えていた。

 ジークハルトは、机に向かっていた。
 右手で書類に目を通し、左手で氷晶を生成している。

 右手が書類に印を押す。
 左手から、新たな氷晶が生まれる。

 そのリズムは、一切乱れなかった。

 まるで二本の剣を同時に操るような離れ業だった。

 「陛下」

 ハインリヒが、恐る恐る声をかけた。

 「何だ」
 「引き出物の氷晶ですが……」
 「ああ、作っている」
 「何個まで作るおつもりで」
 「招待客の数だけ」
 「現時点で三百名を超えておりますが」
 「では三百個作る」

 彼は、手を止めずに答えた。

 「問題ない。余の魔力なら、一日で百個は作れる」
 「……」

 ハインリヒは、絶句した。

 「ところで」

 ジークハルトが、顔を上げた。

 「これに何と彫るべきだと思う」
 「彫る?」
 「そうだ。一つ一つに文字を彫り込む」

 彼は、手元の氷晶を見せた。

 その表面には、繊細な文字が刻まれていた。

 「Tiara & Sieghart」

 二人の名前だ。

 「どう思う」
 「……大変お美しいと思いますが」
 「だろう。余が彫った」
 「陛下が彫られたのですか」
 「当然だ。手作りと言っただろう」

 ハインリヒの目が、机の上の氷晶に向いた。

 五十個以上の氷晶。
 その全てに、同じ文字が刻まれている。

 「これを……全て……」
 「うむ。全て余が彫る」
 「三百個を」
 「三百個を」

 ジークハルトは、平然と答えた。

 「妻への愛を込めて、一つ一つ手作りする。当然のことだ」
 「……」

 ハインリヒは、言葉を失った。

 その時、扉が開いた。

 ティアラが入ってきた。

 「陛下、お茶をお持ちしましたわ」
 「おお、ティアラか」

 ジークハルトの表情が、一瞬で柔らかくなった。

 「来てくれたか」
 「ええ。お仕事に集中されているようでしたので、一息入れていただこうと」

 彼女は、机の横にお茶を置いた。
 そして、氷晶の山を見た。

 「これは?」
 「引き出物だ。三百個作る」
 「まあ、もうこんなに」

 ティアラは、一つを手に取った。

 「『Tiara & Sieghart』……素敵ですわ」
 「気に入ったか」
 「ええ、とても」

 彼女は、微笑んだ。

 「でも、陛下。あまり無理をなさらないでくださいね」
 「無理などしていない」
 「そうですか?」

 ティアラは、彼の顔を覗き込んだ。

 「少し、お疲れのようですわ」
 「……」

 ジークハルトは、目を逸らした。

 「平気だ」
 「陛下」
 「……少しだけ疲れた」
 「正直でよろしいですわ」

 彼女は、彼の髪をそっと撫でた。

 「今夜は早めにお休みくださいませ。私が膝枕をして差し上げますわ」
 「……約束か」
 「ええ、約束ですわ」

 ジークハルトの耳が、また赤くなった。

    (画面隅に小窓が現れる:ハインリヒが部屋の隅で固まっている。「膝枕で釣れば何でも言うことを聞く……最強の交渉術だ」と呟いているのが見える)

-----

【ヴァルトシュタイン帝国 城下町 掲示板】

-----

【速報】宮殿の庭がティアラ様で埋まる【画像あり】

1:名無しの帝国民
 見てきた
 庭園が氷の彫刻だらけになってる

2:名無しの帝国民
 >>1
 まじ?

3:名無しの帝国民
 何体くらいある

4:名無しの帝国民
 >>3
 八百体以上

5:名無しの帝国民
 八百wwwww

6:名無しの帝国民
 森が世界樹になってる

7:名無しの帝国民
 全部ティアラ様なの?

8:名無しの帝国民
 >>7
 全部
 色んなポーズのティアラ様

9:名無しの帝国民
 色んなポーズって

10:名無しの帝国民
 手を振るティアラ様
 お茶を飲むティアラ様
 本を読むティアラ様
 微笑むティアラ様
 とかがずらーっと

11:名無しの帝国民
 陛下作ったの?

12:名無しの帝国民
 >>11
 陛下が全部手作り

13:名無しの帝国民
 愛が重い(物理)

14:名無しの帝国民
 氷だけに

15:名無しの帝国民
 うまくない

16:名無しの帝国民
 寝起きのティアラ様像があったって噂

17:名無しの帝国民
 >>16
 まじ?

18:名無しの帝国民
 あったらしいけど溶かされた

19:名無しの帝国民
 殿下が恥ずかしがったんだろうな

20:名無しの帝国民
 かわいい

21:名無しの帝国民
 陛下、寝起きの殿下も彫刻にしたんか

22:名無しの帝国民
 >>21
 「余の一番のお気に入り」だったらしい

23:名無しの帝国民
 重い
 愛が重い

24:名無しの帝国民
 でも殿下もまんざらじゃなさそう

25:名無しの帝国民
 >>24
 恥ずかしいだけで嫌がってはいないだろうな

26:名無しの帝国民
 ところで結婚式いつだ

27:名無しの帝国民
 >>26
 来月中旬らしい

28:名無しの帝国民
 近い

29:名無しの帝国民
 祝日になるかな

30:名無しの帝国民
 >>29
 なるだろ

31:名無しの帝国民
 招待客は各国首脳らしい

32:名無しの帝国民
 俺たちは見れないのか

33:名無しの帝国民
 >>32
 映像配信あるんじゃね

34:名無しの帝国民
 >>33
 あの「誤送信」で?

35:名無しの帝国民
 今度は意図的配信だろ

36:名無しの帝国民
 意図的誤送信とは

37:名無しの帝国民
 哲学か?

38:名無しの帝国民
 ドレスの噂聞いた?

39:名無しの帝国民
 >>38
 何それ

40:名無しの帝国民
 陛下が殿下のドレスを手作りしてるらしい

41:名無しの帝国民
 は?

42:名無しの帝国民
 皇帝が針仕事?

43:名無しの帝国民
 >>42
 しかも「星の光を織り込む」とか

44:名無しの帝国民
 何それ

45:名無しの帝国民
 ダイヤモンドダストを縫い付けてるらしい

46:名無しの帝国民
 物理法則どうなってんの

47:名無しの帝国民
 陛下の愛は物理法則を超える

48:名無しの帝国民
 名言出た

49:名無しの帝国民
 引き出物も陛下手作りなんだろ

50:名無しの帝国民
 >>49
 永久氷晶に「Tiara & Sieghart」って彫ってるらしい

51:名無しの帝国民
 三百個を?

52:名無しの帝国民
 三百個を

53:名無しの帝国民
 陛下の時給いくらだよ

54:名無しの帝国民
 計算しちゃダメなやつ

55:名無しの帝国民
 ハインリヒさんの胃が心配

-----

【映像ログ010-D 帝国宮殿 謁見の間(少人数) 同日 午後4:00】

-----

送信元:帝国記録局 第三班
映像品質:良好
配信範囲:帝国内限定

-----

    (映像開始)

 謁見の間。

 通常の広大な空間ではなく、小会議室として使われる一角だった。
 テーブルの周りには、ジークハルト、ティアラ、外務大臣、そしてハインリヒが座っていた。

 テーブルの上には、一通の手紙が置かれていた。

 「フローレンス王国からの返信です」

 外務大臣が、手紙を広げた。

 「招待状への回答が届きました」
 「誰が来るのだ」

 ジークハルトが、低く尋ねた。

 「第二王子フェリックス殿下です」
 「第二王子か」
 「はい。アルベルト元王太子は、既に表舞台から排除されています。代わりに、第二王子が王位継承者となりました」

 外務大臣は、手紙を読み上げた。

 「『兄の不始末につきましては、深くお詫び申し上げます。帝国のご意向通り、彼は二度と表舞台に立つことはございません。結婚式には、私が参列し、両国の新たな関係を築きたいと存じます。フローレンス王国第二王子、フェリックス』」

 沈黙が流れた。

 「……」

 ジークハルトの目が、わずかに細くなった。

 「随分と整った文面だな」
 「はい。非常に丁寧です」
 「丁寧すぎる」

 彼は、テーブルに指を置いた。

 「アルベルトとは違う匂いがする」

 ティアラが、静かに口を開いた。

 「陛下の仰る通りですわ」

 彼女は、手紙を手に取った。

 「文字が整いすぎていますわ。一字一句、計算されている。感情が、全く見えませんの」
 「どういうことだ」

 外務大臣が、困惑した顔で尋ねた。

 「普通、このような手紙には感情が滲み出るものですわ。謝罪なら恐縮が、友好なら期待が。でも、この手紙には何もありませんの」
 「それは……」
 「完璧に中立。完璧に冷静。完璧に計算されている」

 ティアラは、手紙を置いた。

 「アルベルト様は、愚かでした。感情に任せて行動し、自滅した。でも、この方は違いますわ」
 「違う?」
 「ええ」

 彼女の目が、かすかに冷たくなった。

 「話が通じる相手です。だからこそ、油断なりませんわ」
 「……なるほど」

 ジークハルトが、頷いた。

 「つまり、厄介だということか」
 「ええ。アルベルト様より、ずっと」

 ティアラは、夫を見上げた。

 「結婚式に来られるということは、直接お会いできるということですわ」
 「ああ」
 「その時に、この方の目を見たいですわ。何を考えているのか、確かめたい」
 「お前の目で見るのか」
 「ええ」

 彼女は、微笑んだ。

 「私の目は、嘘を見抜きますの」

 ジークハルトは、彼女の手を取った。

 「なら、余はお前の背後に立つ」
 「ありがとうございます、陛下」
 「お前が何を見ても、余がお前を守る」
 「知っていますわ」

 二人は、静かに見つめ合った。

    (画面隅に小窓が現れる:外務大臣が「この二人、敵に回したくないな……」と呟いている)

-----

【帝国記録官 ハインリヒの私的メモ 続き】

-----

 フローレンスの第二王子、フェリックス。

 その名前は、今日初めて聞いた。

 アルベルト元王太子については、情報が多かった。
 愚かで、傲慢で、感情的。
 敵としては、扱いやすい相手だった。

 しかし、第二王子は違う。

 手紙の文面だけで、殿下は「話が通じる相手」と判断した。
 そして、それを「厄介」と評した。

 話が通じる相手が厄介。
 普通なら矛盾した言葉だ。

 しかし、殿下の意図はわかる。

 アルベルトは、挑発すれば自滅した。
 感情を煽れば、勝手に墓穴を掘った。

 しかし、冷静で計算高い相手には、その手は通じない。
 こちらの手を読み、対策を立て、隙を突いてくる。

 「バカな兄より賢い弟」。

 掲示板で見た言葉を思い出した。
 まさにその通りだった。

 結婚式が、新たな戦いの始まりになる。

 陛下と殿下は、それを覚悟している。
 いや、むしろ楽しみにしているようにすら見えた。

 「この方の目を見たい」と殿下は言った。
 「何を考えているのか、確かめたい」と。

 結婚式という祝いの場で、敵を観察する。
 恐ろしい女性だ。

 しかし、だからこそ、この帝国は安泰なのだろう。

-----

【映像ログ010-E 帝国宮殿 財務省 同日 午後5:30】

-----

送信元:帝国記録局 第四班
映像品質:良好
配信範囲:帝国内限定

-----

    (映像開始)

 財務省の執務室。

 書類の山に埋もれた机で、財務大臣とハインリヒが向かい合っていた。

 「予算の確認をしましょう」

 財務大臣が、書類を広げた。

 「会場設営費、警備費、料理費、これらは予算内です」
 「問題は?」
 「陛下の『手作り』項目です」

 彼は、別の書類を取り出した。

 「氷の彫刻八百体。材料費ゼロ。労働費ゼロ。陛下の魔力で全て賄われます」
 「ええ」
 「星の光のドレス一着。材料費ゼロ。労働費ゼロ。同上です」
 「ええ」
 「永久氷晶三百個。材料費ゼロ。労働費ゼロ。同上です」
 「……」

 ハインリヒは、頭を抱えた。

 「全て陛下の魔力で賄われるのですね」
 「ええ。つまり、予算は大幅に抑えられます」
 「それは良いことでは?」
 「一見そう見えます」

 財務大臣は、深い溜息をついた。

 「しかし、問題があります」
 「何でしょう」
 「陛下が過労で倒れたらどうするのです」
 「……」

 沈黙が流れた。

 「氷の彫刻を八百体。星のドレスを一着。永久氷晶を三百個。全て手作り」
 「ええ」
 「しかも、通常の政務もこなしながら」
 「ええ」
 「これで倒れない方がおかしいでしょう」

 ハインリヒは、顔を青くした。

 「陛下が倒れたら、結婚式どころではありませんね」
 「ええ。だから、我々がどうにかして陛下を休ませなければなりません」
 「どうやって?」

 財務大臣は、首を振った。

 「わかりません。しかし、殿下なら……」
 「殿下に頼むのですか」
 「他に方法がありますか」

 二人は、顔を見合わせた。

 「……膝枕」
 「……膝枕」

 同時に、同じ言葉を呟いた。

 「殿下の膝枕で、陛下は何でも言うことを聞きますね」
 「ええ。あれは最強の交渉術です」
 「我々には使えませんが」
 「使えたら困ります」

 二人で、乾いた笑いを漏らした。

    (画面隅に小窓が現れる:二人の前に、空になった胃薬の瓶が三本並んでいる)

-----

【ヴァルトシュタイン帝国 城下町 掲示板】

-----

【朗報】フローレンス第二王子が結婚式に参列【情報】

1:名無しの帝国民
 招待状の返信が来たらしい

2:名無しの帝国民
 誰が来るの

3:名無しの帝国民
 >>2
 第二王子フェリックス

4:名無しの帝国民
 第二王子って誰

5:名無しの帝国民
 >>4
 アルベルト(ゴミ)の弟

6:名無しの帝国民
 ゴミの弟か

7:名無しの帝国民
 兄を売った奴だろ

8:名無しの帝国民
 >>7
 そう
 「ゴミ出し」した張本人

9:名無しの帝国民
 怖いな

10:名無しの帝国民
 賢いってことだろ

11:名無しの帝国民
 バカな兄より賢い弟

12:名無しの帝国民
 どっちが厄介かって話だな

13:名無しの帝国民
 バカは自滅する
 賢いのは自滅しない

14:名無しの帝国民
 >>13
 つまり厄介なのは弟

15:名無しの帝国民
 でも殿下がいるから

16:名無しの帝国民
 >>15
 それな

17:名無しの帝国民
 殿下 vs 第二王子

18:名無しの帝国民
 どっちが上か見ものだな

19:名無しの帝国民
 陛下は?

20:名無しの帝国民
 >>19
 陛下は殿下の味方だから実質二対一

21:名無しの帝国民
 最強夫婦

22:名無しの帝国民
 結婚式が外交戦になるな

23:名無しの帝国民
 >>22
 それな

24:名無しの帝国民
 俺たちは見てるだけでいいよな

25:名無しの帝国民
 >>24
 見てるだけが一番

26:名無しの帝国民
 胃が痛くなりそうなのはハインリヒさんだけでいい

27:名無しの帝国民
 >>26
 それな

28:名無しの帝国民
 でも楽しみだな結婚式

29:名無しの帝国民
 >>28
 楽しみすぎる

30:名無しの帝国民
 陛下と殿下の晴れ姿が見れる

31:名無しの帝国民
 星のドレスって本当にできるのかな

32:名無しの帝国民
 >>31
 陛下が作ってるんだから出来るだろ

33:名無しの帝国民
 物理法則は陛下の愛の前には無力

34:名無しの帝国民
 名言が続くな今日

35:名無しの帝国民
 帝国に生まれてよかった

-----

【映像ログ010-F 帝国宮殿 皇帝寝室 同日 深夜】

-----

送信元:不明
映像品質:暗い
配信範囲:不明

-----

    (映像開始)

 皇帝寝室。

 月明かりだけが、窓から差し込んでいた。
 大きなベッドの上で、二つの人影。

 ティアラが、ソファに座っていた。
 その膝の上に、ジークハルトの頭が載っている。

 約束の膝枕だった。

 「今日は、お疲れ様でした」

 ティアラが、彼の髪を撫でた。

 「……」
 「陛下?」

 返事がない。

 彼女は、彼の顔を覗き込んだ。

 ジークハルトは、目を閉じていた。
 寝息が、静かに聞こえる。

 「あら」

 ティアラは、小さく笑った。

 「お疲れでしたのね」

 彼女は、彼の頬をそっと撫でた。

 「氷の彫刻を八百体。星のドレスを一着。永久氷晶を五十個。全て私のために」
 「……」
 「重いですわ、陛下」

 彼女の声が、柔らかくなった。

 「でも、嬉しいですわ」

 月明かりが、二人を照らしていた。

 「陛下」

 ティアラは、静かに囁いた。

 「結婚式が楽しみですわね」
 「……うむ」

 ジークハルトが、寝言のように答えた。

 「世界で……一番……美しい……」
 「ふふ」

 彼女は、彼の額に唇を寄せた。

 「おやすみなさいませ、私の陛下」

    (映像終了)

-----

【極秘ログ──送信者不明】

-----

記録日時:帝国歴四〇三年 冬 第一の月 22日 深夜11:59
ファイル名:[解析不能]
送信元:[解析不能]
送信先:[解析不能]

-----

    (音声のみ)

 羽ペンが紙を走る音。
 ゆっくりとした、規則的なリズム。

「フェリックス」

 女の声。
 低く、静かな呟き。

「第二王子。王位継承者。兄を売った男」

 紙をめくる音。

「手紙の文面は完璧でした。一字一句、隙がない。感情が見えない」

 ペンを置く音。

「アルベルト様は、愚かでした。だから、扱いやすかった」

 くすくすと笑う声。

「でも、この方は違う。話が通じる。だからこそ、厄介ですわ」

 椅子が軋む音。
 立ち上がる気配。

「結婚式」

 女の声が、少し楽しげになった。

「各国の首脳が集まる。第二王子も来る。全ての駒が、一つの盤上に揃いますわ」

 窓を開ける音。
 夜風が入り込む。

「この方の目を、直接見たい」

 小さな笑い声。

「何を考えているのか。何を企んでいるのか。全て、この目で確かめますわ」

 間。

「そして、もし敵意があるなら」

 声が、かすかに冷たくなった。

「相応の『おもてなし』を」

 窓を閉める音。

 足音が、扉に向かう。

「さて」

 女の声が、また穏やかになった。

「陛下が待っていらっしゃるわ。膝枕の続きを」

 扉を開ける音。
 足音が廊下を進む。

 別の扉が開く音。

「……起きていらしたのですか、陛下」

「起きた」

 低い男の声。
 眠そうな、しかしどこか満足げな響き。

「膝枕の続きはどうした」

「今、参りますわ」

 衣擦れの音。
 布団に潜り込む気配。

「……陛下」

「何だ」

「フェリックス王子のこと、どう思われますか」

 間。

「……厄介だな」

「やはり、そう思われますか」

「ああ。しかし」

 男の声が、かすかに笑みを含んだ。

「お前がいるなら、何も恐れるものはない」

「陛下……」

「お前が見抜く。余が守る。それでいい」

「……ええ」

 女の声が、柔らかくなった。

「その通りですわ」

 衣擦れの音。
 二人が寄り添う気配。

「おやすみなさいませ、私の陛下」

「ああ。おやすみ、余の妻」

    (ログ終了)
    (このファイルは自動消去されました)

-----

【次回予告】

結婚式まで、あと二週間。
各国から招待状への返信が届き始める。

商業連合の代表団、到着。
「商談」と「祝辞」の狭間で、彼らは何を企む?

一方、フローレンスでは──
第二王子フェリックスが、静かに微笑んでいた。
「さて、あの『悪女』はどんな顔をするだろうね」

そして、ついに完成する「星のドレス」。
その輝きは、世界を照らすほどだった。

ティアラ「まぶしすぎて、何も見えませんわ」
ジークハルト「それでいい。お前以外は見えなくていい」
ティアラ「そういう問題ではありませんの」

第11話「招待状と返信は、記録されていた」

-----

【おまけ:帝国宮殿 庭園 翌朝】

-----

 朝日が、庭園を照らしていた。

 八百体の氷の彫刻が、オレンジ色の光を受けて輝いている。

 「壮観ですな」

 宰相が、感嘆の声を漏らした。

 「しかし、これを結婚式まで維持できるのですか」
 「陛下の魔力が込められていますので、溶けることはありません」
 「なるほど」

 彼は、彫刻の一つに近づいた。

 微笑むティアラ像。
 その表情は、本物と見分けがつかないほど精巧だった。

 「陛下の技術は、彫刻家を廃業に追い込みますな」
 「笑い事ではありませんよ」

 ハインリヒが、青い顔で答えた。

 「この彫刻の維持費は予算に含まれていません」
 「維持費?」
 「陛下の魔力です。彫刻を維持するために、常に魔力を消費しています」
 「……」

 宰相の顔が、かすかに曇った。

 「つまり、陛下は常に疲労している、ということですか」
 「はい」
 「それで、政務もこなし、ドレスを縫い、引き出物を作り……」
 「はい」
 「陛下は、いつ休んでいるのですか」
 「殿下の膝の上で」

 沈黙が流れた。

 「……なるほど」

 宰相は、深く頷いた。

 「殿下は、帝国の宝ですな」
 「ええ。文字通り」

 二人は、朝日に輝く彫刻を見つめた。

 「結婚式まで、あと二週間」
 「長いようで短いですな」
 「陛下の体力が持つことを祈りましょう」
 「ええ。殿下の膝枕に」

 遠くから、ティアラの声が聞こえた。

 「陛下、朝食ですわ」
 「今行く」

 ジークハルトが、庭園から宮殿に向かって歩いていく。

 その背中は、どこか軽やかだった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

不貞の子を身籠ったと夫に追い出されました。生まれた子供は『精霊のいとし子』のようです。

桧山 紗綺
恋愛
【完結】嫁いで5年。子供を身籠ったら追い出されました。不貞なんてしていないと言っても聞く耳をもちません。生まれた子は間違いなく夫の子です。夫の子……ですが。 私、離婚された方が良いのではないでしょうか。 戻ってきた実家で子供たちと幸せに暮らしていきます。 『精霊のいとし子』と呼ばれる存在を授かった主人公の、可愛い子供たちとの暮らしと新しい恋とか愛とかのお話です。 ※※番外編も完結しました。番外編は色々な視点で書いてます。 時系列も結構バラバラに本編の間の話や本編後の色々な出来事を書きました。 一通り主人公の周りの視点で書けたかな、と。 番外編の方が本編よりも長いです。 気がついたら10万文字を超えていました。 随分と長くなりましたが、お付き合いくださってありがとうございました!

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

「地味で無能」と捨てられた令嬢は、冷酷な【年上イケオジ公爵】に嫁ぎました〜今更私の価値に気づいた元王太子が後悔で顔面蒼白になっても今更遅い

腐ったバナナ
恋愛
伯爵令嬢クラウディアは、婚約者のアルバート王太子と妹リリアンに「地味で無能」と断罪され、公衆の面前で婚約破棄される。 お飾りの厄介払いとして押し付けられた嫁ぎ先は、「氷壁公爵」と恐れられる年上の冷酷な辺境伯アレクシス・グレイヴナー公爵だった。 当初は冷徹だった公爵は、クラウディアの才能と、過去の傷を癒やす温もりに触れ、その愛を「二度と失わない」と固く誓う。 彼の愛は、包容力と同時に、狂気的な独占欲を伴った「大人の愛」へと昇華していく。

「貧相な小娘」と罵った第一王子へ。番(つがい)は貴方ではなく、国王陛下(お父様)でした

しえろ あい
恋愛
「お父様、わたくし、あの方と目が合った瞬間、分かってしまったのです」 十六歳のデビュタントの夜、ルーセント侯爵令嬢フェリシアを待っていたのは、残酷な罵倒だった。第一王子カシウスは、可憐な白いドレスを纏った彼女を「貧相な小娘」と呼び、己の番(つがい)であることを真っ向から否定する。 会場に響く冷笑と、愛用の刺繍に込めた自信さえ打ち砕くような屈辱。しかし、絶望の淵に立たされた彼女を見つめていたのは、王子ではなく、圧倒的な威厳を放つ「ある男」だった。 魂を焦がすような熱い視線が重なり、静まり返る謁見の間。この出会いが、王室を揺るがす大事件の幕開けになるとは、まだ誰も知らない。自身の価値を否定された少女が、真実の愛によって世界で最も幸福な王妃へと駆け上がる、逆転溺愛ストーリー。 ※小説家になろう様にも投稿しています※

婚約破棄で悪役令嬢を辞めたので、今日から素で生きます。

黒猫かの
恋愛
「エリー・オルブライト! 貴様との婚約を破棄する!」 豪華絢爛な夜会で、ウィルフレッド王子から突きつけられた非情な宣告。 しかし、公爵令嬢エリーの心境は……「よっしゃあ! やっと喋れるわ!!」だった。

3回目の人生は、悪役令嬢を辞めて引きこもります~一歩も出ずに国を救ったら、なぜか「聖女」として崇められ最強の男たちが部屋を包囲してくる件~

放浪人
恋愛
公爵令嬢エリザベートは、1度目は悪役令嬢として断罪され処刑、2度目は改心して聖女となり国に尽くしたが過労死……という悲惨な最期を遂げた。 記憶を持ったまま3度目の人生が始まった瞬間、彼女は固く決意する。 「もう絶対に働きません! 今世は部屋から一歩も出ず、睡眠と趣味に命をかけます!」 最強の拒絶結界『絶対領域』で部屋に籠城し、婚約破棄イベントも夜会も全て無視して惰眠を貪ろうとするエリザベート。 しかし、彼女の「働きたくない」一心からの行動――適当な農業アドバイスや、安眠妨害への容赦ない迎撃――が、周囲には「国を憂う深慮遠謀」「慈愛に満ちた奇跡」として超好意的に解釈されてしまう!? ヤンデレ化した元婚約者の王太子、物理で愛を語る脳筋騎士団長、効率厨の隣国王子、さらには古代の引きこもり少年までをも巻き込み、事態は国家規模の大騒動へ。 部屋ごと空を飛んで戦場を浄化し、パジャマ姿で古代兵器を操り、地下牢をスイートルームに変えながら、エリザベートは究極の安眠を手に入れることができるのか? 塩対応すればするほど愛され、逃げれば逃げるほど伝説になる、最強引きこもり令嬢の勘違いドタバタ溺愛ファンタジー、ここに完結!

酒飲み聖女は気だるげな騎士団長に秘密を握られています〜完璧じゃなくても愛してるって正気ですか!?〜

鳥花風星
恋愛
太陽の光に当たって透けるような銀髪、紫水晶のような美しい瞳、均整の取れた体つき、女性なら誰もが羨むような見た目でうっとりするほどの完璧な聖女。この国の聖女は、清楚で見た目も中身も美しく、誰もが羨む存在でなければいけない。聖女リリアは、ずっとみんなの理想の「聖女様」でいることに専念してきた。 そんな完璧な聖女であるリリアには誰にも知られてはいけない秘密があった。その秘密は完璧に隠し通され、絶対に誰にも知られないはずだった。だが、そんなある日、騎士団長のセルにその秘密を知られてしまう。 秘密がばれてしまったら、完璧な聖女としての立場が危うく、国民もがっかりさせてしまう。秘密をばらさないようにとセルに懇願するリリアだが、セルは秘密をばらされたくなければ婚約してほしいと言ってきた。 一途な騎士団長といつの間にか逃げられなくなっていた聖女のラブストーリー。 ◇氷雨そら様主催「愛が重いヒーロー企画」参加作品です。

王太子に求婚された公爵令嬢は、嫉妬した義姉の手先に襲われ顔を焼かれる

克全
恋愛
「アルファポリス」「カクヨム」「小説家になろう」「ノベルバ」に同時投稿しています。 『目には目を歯には歯を』 プランケット公爵家の令嬢ユルシュルは王太子から求婚された。公爵だった父を亡くし、王妹だった母がゴーエル男爵を配偶者に迎えて女公爵になった事で、プランケット公爵家の家中はとても混乱していた。家中を纏め公爵家を守るためには、自分の恋心を抑え込んで王太子の求婚を受けるしかなかった。だが求婚された王宮での舞踏会から公爵邸に戻ろうとしたユルシュル、徒党を組んで襲うモノ達が現れた。

処理中です...